先日、某コンチェルトの演奏会に行ったところ、ヴァイオリン4台&チェロ1台の曲のときに、小さいチェンバロのようなものがステージに出ていました。
これは、指揮者氏所有の「スピネット」というものらしく、かなり小型で持ち運びもできるものです。
・・いいなあ、これ・・・
と思って(もちろん買うわけじゃないですけど)、いろいろ検索していたら、さらに小型の
クラヴィコードなどもヒットして、へええ・・こんなにいろいろ鍵盤楽器ってあるんだ、と感心。チェンバロ習ってていまさらなんですが(汗)。
一瞬「大正琴」?と思ってしまったのですが、どうやら自分で組み立てて製作できるものらしく、円高のおかげで値下げされて23万円。
これが高いのか安いのかわからないのですけど、日曜大工などができる方にはいいかもしれませんねえ。そういえば、私の師匠所有のチェンバロのうち1台は素人の方の手作りときいています。
このクラヴィコードくらいの鍵盤数でモーツァルトあたりまでの曲はたいがい演奏できてしまうので、昼はグランド、夜はクラヴィコードで練習される演奏家もおられるようです。・・・いいな、それ。
クラヴィコードは弾いたことがないので、どういう感触なのかわからないのですが、チェンバロは指にジンジンくる振動がいいです。mixiのその筋のコミュをのぞいてみると、やはり「あの振動がたまらない」という方が結構いらっしゃるようです。
楽器演奏というのはたいがい振動を伴うものですけど、ああいう古い木製の楽器というのは、モダンのピアノとは振動も違っています。ヴァイオリンを初めて触ってみたときは、そのあまりダイレクトな振動と音にびっくりいたしましたけど、チェンバロもかなり似ています。
あとたとえばチェロの伴奏をしていると床を通じて振動がこちらに伝わりますので、それもまたある意味「近い」です。
ピアノでこういう、「近さ」というか振動を体感できるようになったのは実はかなり最近のことでして、やっぱりグランドピアノを「鳴らす」ということがなかなかできませんでした。あまりにも鍵盤上でやることが多すぎて、中の弦を鳴らすことにまで気持ちがいかない。というより、あまりそういうことを指導されたことがなかったです。
ところが、ここ2年くらいでしょうか、レッスンをしていただく先生先生に、「楽器を鳴らしましょう」「弦を鳴らしましょう」「ホールでよく響く音を出すように」と言われ、いやもうそればっかりといってもいいくらい指摘され、それを実現するためには、言うまでもなくいわゆる「脱力」といわれることができなければ無理なわけです。
今でも決してよくできているわけではありませんが、自分で弾いていて楽器の振動具合とか、ストライクな音とかがだいたいわかるようになってきました。
そうすると逆に、「ちゃんと鳴っている音」以外は出したくないわけです。たとえ音としてはカンペキに並んでいたとしても(そんなことはありえませんが)、それは弾いている気になれるものではないです。極端なことを言うと、ミスタッチでもストライクな音ならいいのですが、たいがいミスタッチというのはかすった音とか不用意に出した音なので、良い音であるわけがありません。
もともとミスすることそのものが悪いとは私は思っていないのですけど、ミスによって生じる適当な音はいただけない。
・・・・と今では思っているのですけど、こういう風に思い始めたのはほんとにここ2年くらいでしょうか?
なので、たとえば機械のようにミスタッチのない演奏をいうものには興味がないのですけれど、音を大切にした結果ミスタッチがない、という演奏には最大の敬意を払います。そういうミスタッチを生まないためには、練習もし技術も日々磨くということになるのでしょうが・・。
しかしながら、これは大変なことです。
娘が弾くくらいの簡単な曲でも、「ちょっとお母さんが弾くから」といって、すべてを充実した音で演奏して聴かすことは至難です。
「そこ、間違えない!」「もっと良い音で!」と口うるさく言うのは簡単なことなのですが、「じゃあやってみんさいや」と言われたらこれはなかなか難しい。
ヴァイオリンに関しては、すでにもうついていけてないのですけど、だからといって遠くからあれこれ指図だけするのは嫌なので、ヒマをみては娘の曲くらいは練習しています。・・・全然ダメですけど(汗)。
でもそんな状態でも、「そんな速く弾けんよ、そこは!」とカンシャクを起こす理由くらいは理解できるので、やらないよりはマシかな、と思っています。
振動や弓の感覚もなんとなくわかりますしね。
もともと私は現場が好きといいますか、デパートにお勤めするときも最初から店頭希望でした。どうも頭で考えるのはあとからといいますか、経験を積み上げていくほうが性にあっている気がします。それだけに回り道も多いですけど。
できるうちにいろいろやってみる・・という感じですかね。いい年をして、いまだに(笑)。