温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

登別温泉 観音山聖光院

2012年02月22日 | 北海道
今回はお寺を取り上げます。といっても五木寛之を真似て全国の寺院を巡礼するつもりは毛頭なく、いつものように温泉が主役です。登別エリアには寺院なのに温泉入浴ができるところが2ヶ所もあって、その中の一つが今回の主役「浄土宗観音山聖光院」です(地元では観音寺と呼ばれることも多いそうです)。以前は寺院運営の傍らユースホステルとしても営業していたんだそうですが、現在宿泊営業は中止しており、その名残なのか、事前連絡を要するものの入浴のみ外来利用を受け入れています。私の場合、入浴を希望する日の前日に電話で直接連絡しました。



えてして北海道の仏閣は、和人文化が当地へ流入してまだ百数十年しか経っていないためか、もしくは厳冬の気候に合理的に対応させるためか、本州以南の人間の固定概念を覆す近代的な造りをしていたり、あるいは民家然として所謂お寺らしくない外観である場合が多いのですが、こちらのお寺もご多分に漏れず寺院造とはかけ離れた鉄筋コンクリート造で、初見時は浄土宗ではなく新興宗教の施設なのではないか、変な勧誘されやしないかと、訪問を一瞬躊躇ってしまいました。
場所はパークホテル雅亭の真ん前。車で訪問する場合は半地下の駐車場を使えますが、どういう事情か天井がめちゃくちゃ低く、私がレンタカーで借りたワゴンRでギリギリでした(アンテナは収容必須)。ミニバンだとアウトかもしれません。



玄関ではニャンコのたかお君がお出迎え。お風呂へは奥様が案内してくださいました。館内には食堂などまだユースホステル時代の設備がそのままになっています。玄関からまっすぐ伸びる廊下を進んだ突き当りの左側が浴室。一室しかないため貸切風呂となります。民家のお風呂をお借りしているような雰囲気ですが、元々客商売していただけあって脱衣所は一人で使うなら十分な広さの空間が保たれていました。



壁にはこの温泉が自家源泉であること、夏季は加水していること、熱交換器により温泉熱を給湯や冬の暖房に活用していること、などが説明されていました。余所では入れない自家源泉のお風呂に入れるなんて嬉しい限りですね。事前連絡してお邪魔した甲斐があります。また、こうした説明書きが掲示されているということは、このお風呂が自家用ではなくれっきとした客向けであることがわかります。



実用本位でシンプルな造りの浴室。室内にはグレーの石板が貼られていますが、場所柄墓石に見えてしまったのは私が邪心の塊だからかな。戸を開けた途端に登別らしい硫黄の香りがプンと鼻孔を刺激します。熱めのお湯が注がれているこじんまりとした浴室なのですが、硫化水素ガス対策のおかげなのか、冬だというのに換気状態が良好で、湯気があまり籠っていなかったのは意外でした。



貸切風呂ですが、洗い場にはシャワー付き混合栓が3基も設置されていました。なお水栓の上にはシャンプー類が置かれていますが、おそらくこれはご住職ファミリーがお使いのものでしょうね。私は持参したものを使いました。




 
浴槽は縦に入れば一人、膝を折って詰めて入れば二人入れるサイズ。湯口の上に観音様のレリーフが置かれているあたりは、いかにもお寺らしいところ。かなり熱めの自家源泉は弱いツルスベ感を有し、薄い灰色と黄色が混ざったような色の笹濁りで、底には白い湯の華が沢山沈澱しており、湯船に足を入れるだけでブワッと一気に舞い上がります。鼻をツンと刺激する火山の噴気帯のような硫化水素臭とクレゾールのような消毒液的アブラ臭が絡み合いながら湯面から香り、口にしてみると塩味とともに苦みと渋みが強く舌に残ります。特に渋みが際立っており、唇が痺れて口腔内にしぶとく残るほどです。



こちらは加水用のバルブです。湧出温度60℃以上のお湯が完全掛け流しで注がれているため、当然ながら湯船はかなり熱く、奥様がお風呂へ案内してくださるときには「熱いので遠慮なく加水してくださいね」と仰ってくださいましたが、熱い風呂が好きな私は何回か掛け湯をしているうちにそのままで入れてしまったため、このバルブを開くことはありませんでした。でも普通の方なら薄めた方がいいでしょうね。
いかにも登別らしい主張の強い硫黄のお湯で、入りしなは「熱い上にクドいお湯なのかな」と想像したのですが、意外や意外、火照ってのぼせそうになっても、体が「まだお湯から出たくない」と訴えかけてくるほど後を引く心地よい浴感で、入ったり出たりを繰り返していたら、いつの間にやら1時間が過ぎていました。

湯上りにはご住職と軽くお話しさせていただきましたが、懐の広い人柄が伝わってくるとても穏やかな方で、どこの馬の骨かわからない私のような風来坊にも「また是非お越しください」とおっしゃってくださいました。個性をしっかり主張するお湯を貸切で堪能できる幸せ…。ありがたいお湯でした。合掌。



観音湯
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉(硫化水素型) 62.6℃ pH6.3 30L/min(動力揚湯) 溶存物質4.572g/kg 成分総計4.918g/kg
Na+:995.0mg(60.84mval%), Ca++:337.2mg(23.66mval%),
Cl-:2231mg(87.73mval%), HS-:4.8mg(0.20mval%),
H2SiO3:201.6mg, 遊離CO2:319.0mg, 遊離H2S:27.2mg 

道南バス登別温泉行で終点下車、徒歩5分ほど(あるいはパークホテル前下車すぐ)
北海道登別市登別温泉町119-1  地図
0143-84-2359

事前連絡必要(入浴可能時間は17:00まで)
無料

私の好み:★★★

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