※今回の記事に温泉は登場しません。あしからず。
北海道にて公私両方の所用を済ませた冬の某日のこと。たまたまその翌日昼前に弘前方面で私用があったため、うまい具合に予定が組めないものかと思案したところ、旅行愛好者の間ではおなじみの急行「はまなす」の存在を思い出し、現在では数少ない夜行列車のひとつにしてJR唯一の定期運行急行列車であるこの「はまなす」で札幌から青森へ移動することにしました。
個人的な話ですが、就寝前の入浴が生活習慣として欠かせない私は、札幌駅での乗車前にひとっ風呂浴びておきたかったので、札駅から比較的近い場所にあるスーパー銭湯のひとつである桑園駅前の「天然温泉 北のたまゆら」(温泉ですが拙ブログでは未レポ)で一日の汗を流すとともに着替えて身支度を調えてから、札幌駅5番ホームへと向かいました。夜行列車利用に際して、乗車駅付近に入浴施設があるかないかを事前に調べることは、車内での一晩を快適に過ごす上で重要ですね。
手稲の札幌運転所方向からDD51牽引の「はまなす」が入線してきました。ヘッドマークがちょっと首を傾げているような感じ。
急行「はまなす」青森行。多くの鉄ちゃんがこの列車に関するレポートをネット上で紹介していますので、今回の記事では委細な説明を省きますが、簡単に申し上げると、現在のJRグループでは珍しい客車列車であり、希少な夜行でもあり、更には唯一の定期運行の急行列車、というレアな要素が凝縮された列車でありまして、寝台車(B開放寝台)の他、急行券と指定券を購入すればゴロゴロと横になって就寝できるカーペットカー、そして自由席や指定席などの座席車(いわゆるハザ)も多様な車種が連結されているため、青函間をチープに移動したい旅行者から熱い支持を受けております。その一方で北海道新幹線の開業を数年後に控えて廃止の噂も絶えず、老朽化してボコボコになっている車体の表面は、そんな不吉な話を裏打ちしているように見えました。
札幌駅22時正時出発。
やっぱり長距離列車は、始発駅00分出発じゃないと箔がつきませんね。
ホームから自由席を覗いてみます。まだこの時点では空席もちらほら見えましたが、結局この日は自由席・指定席ともにほぼ満席となりました。当日は札幌でイベントがあったらしく、その関係で結構な乗車率になったようでした。
当初、私はこの画像のような普通の座席(指定席)に乗車する予定でしたが…
出発直前に札駅の窓口で訊いてみたら、「はまなす」の乗り得車両である「カーペットカー」の、しかも非常にレア度の高い上段を確保することに成功! おそらくこの日に急遽乗れなくなった人がキャンセルしたものを、タイミング良く入手できたのだろうと思われます。乗車まで何度も窓口に問い合わせていたものの、その都度満席という返答だったので、出発直前でこのチケットが入手できるとは想像だにしませんでした。何事も最後まで諦めてはいけないんですね。
装甲車を連想させるヘンテコな窓割りの車両がカーペットカー。いかにも「無理して改造しました」感ありあり。車体に描かれたワンコのイラストがこの車両の利用方法を端的に表しています。
カーペットカーの車内。この日の車両はオハ14 512。「ハ」ってことは一応普通座席車として扱われているんだな…。知らなかった。でもご覧のように普通座席車じゃないことは一目瞭然。車内の小上がりにはカーペットが敷かれており、そこへゴロゴロと横になって就寝することができるんですね。しかも普通座席の指定席車と同じく、急行券と指定席券で利用できてしまうのですから、非常に利用価値が高い。それゆえにこの車両は指定券の発売から早々に埋まってしまう人気を博しているのであります。
就寝スペースは上と下の2段に分かれており、下段はフェリーの3等客室のように雑魚寝状態なのですが・・・
上段は上画像のように一人一人の区分が線路方向に配置されており、B寝台とほぼ同じ幅のスペースを占有できちゃうため、下段のように両隣を気にすることなくグッスリ横になることができちゃうんですね。こんなに使い勝手が良いのに下段(さらに言えば指定の座席車)と同じ料金なのですから、ぜひとも上段を利用したいところですが、人気が高いうえに席数がとても少ないため、繁忙期はプラチナチケット化しており入手は非常に困難であります。そんな事情でしたから札駅窓口で上段のチケットを入手できたときに思わず興奮してしまったのでした。
今回割り当てられたのは「24上」。一人用の区画にはカーペットの他、毛布や枕、ハンガーが用意されていました。一般的にこの手の車両サービスはリネン類を省略するからこそ寝台料金が不要なのですが(特急「あけぼの」のゴロンとシートなど)、厳寒のエリアを走る列車ですから毛布が使えるのは非常にありがたいところです。
カーペットは電気カーペットなので、この上で体を横にして毛布を被れば、寒い冬でもヌクヌク。
小窓にはカーテンが設けられ、また頭上には小さな照明も取り付けられています。でも通路側にはカーテンが無いので、車内の明るさや音などは遮断できませんが、ま、安い料金ですから贅沢は言えませんね。
目の前にはクーラーの吹き出し口。
冷房の時季だったら冷風を直撃?
さてこの日は朝から所用で忙しく動き回り、それが終わってからは日没を待たずにすすきので遊戯、そして桑園で出発直前まで風呂を浴びてから「はまなす」に乗車という、結構慌ただしいスケジュールでしたので、「24上」に横になって毛布を被ると疲労のためにいつの間にやら夢の国にいざなわれてしまい、途中で小窓から伊達紋別や長万部の駅名標を見たことは朦朧げながらに記憶しているものの、その他は全く憶えておらず、気づけば「まもなく青森」の車内アナウンスが流れていました。隣を気にせず横になって過ごせるのは非常に快適ですね。
定刻(5:40)より10分ほど遅れて青森駅に到着。連絡する特急「つがる」へ乗り継ぐお客さんの姿も多くみられました。
雪を巻き上げて白く染まった最後部とテールマーク。
凍てつく連結器を開放して列車から切り離されたED79。
そういえば函館で機関車はDD51からED79に替わっていたんですが、熟睡していたため全く気づきませんでした。きっと同じ列車に乗っていた鉄ちゃんたちは寒風ふきすさぶ函館駅のホームに立って、かじかむ手でカメラを構えながら機関車の入れ替え作業を撮影していたに違いありませんが、花より団子、物見遊山より3大欲求を優先する私は、そんなことはお構いなしに寝続けておりました。
まだ6時を回っていません。当然ながら駅前には人影ほとんど見あたらず。
この日予定していた私用までには全然早すぎるため、とりあえず駅前の「アウガ」で腹ごしらえすることに。こんな早朝に「アウガ」へ入るのは初めてだ…。
「アウガ」の地下市場には、青森駅前再開発により駅前市場が地下へ潜った当時に2度ほど行きましたが、それ以来全く足を踏み入れることのなかったので、約10年ぶりの再訪となります。時間帯の問題なのかお客さんの姿はまばらで、お店の方もいまいち覇気がなく、てっきり呼び込みの集中砲火を浴びるのかと覚悟していたのですが、そんな心配は杞憂に終わったどころか寧ろ虚しさがこみ上げてきてしまいました。
市場だというのに早朝から開いている飲食店は限られていたのですが、そんな中で店頭の大きな手書き品書きが目立っていた「すし処三国」の暖簾をくぐり、海鮮丼を注文。ワイルドな盛り付けの魚介に心の中で拍手を送りながら、朝っぱらからガッツリいただきました。鮮度良好で美味かったなぁ。青森や対岸の函館においてはそれぞれ新鮮な魚介が観光の目玉ですが、少なくとも海鮮物の食事に関しては、他所者の足元を見ている強気な函館朝市よりも、あまり色気を出していない青森の方がはるかにコストパフォーマンスに優れているように思われます。
ちなみに今回乗車券として利用したのは、周遊きっぷの「札幌・道央ゾーン」とそのアプローチ券(登別→町田)です。往路は飛行機利用でしたので、アプローチ券である「周遊きっぷ(かえり)」の券面には「往空」と印字されています。
国鉄時代やJR初期までには多種多様な周遊券が発売されていましたが、旅行形態の変化や利用者の減少などに伴って周遊券は徐々に縮小されてゆき、「周遊きっぷ」と名称が変更されてからはその制度の複雑さと使い勝手の悪さ、そして周遊ゾーンの相次ぐ廃止などによって一層の利用者離れが進んでしまい、ついに2013年3月末で廃止されることになりました。
現行の「周遊きっぷ」は駅の係員ですら発行に手惑うほど仕組みが難解であり、近年では全くと言って良いほどJRサイドから存在自体をアナウンスしていなかったので、旅行上級者向けのマニアックなきっぷになってしまっていたような感があり、むしろ今日まで存続できたことが不思議なくらいです。とはいえ、国鉄時代から長い間旅行者の利便性の貢献してきた「周遊」という言葉が、JRのきっぷの歴史から姿を消すことには一抹の淋しさを覚えずにはいられません。
北海道にて公私両方の所用を済ませた冬の某日のこと。たまたまその翌日昼前に弘前方面で私用があったため、うまい具合に予定が組めないものかと思案したところ、旅行愛好者の間ではおなじみの急行「はまなす」の存在を思い出し、現在では数少ない夜行列車のひとつにしてJR唯一の定期運行急行列車であるこの「はまなす」で札幌から青森へ移動することにしました。
個人的な話ですが、就寝前の入浴が生活習慣として欠かせない私は、札幌駅での乗車前にひとっ風呂浴びておきたかったので、札駅から比較的近い場所にあるスーパー銭湯のひとつである桑園駅前の「天然温泉 北のたまゆら」(温泉ですが拙ブログでは未レポ)で一日の汗を流すとともに着替えて身支度を調えてから、札幌駅5番ホームへと向かいました。夜行列車利用に際して、乗車駅付近に入浴施設があるかないかを事前に調べることは、車内での一晩を快適に過ごす上で重要ですね。
手稲の札幌運転所方向からDD51牽引の「はまなす」が入線してきました。ヘッドマークがちょっと首を傾げているような感じ。
急行「はまなす」青森行。多くの鉄ちゃんがこの列車に関するレポートをネット上で紹介していますので、今回の記事では委細な説明を省きますが、簡単に申し上げると、現在のJRグループでは珍しい客車列車であり、希少な夜行でもあり、更には唯一の定期運行の急行列車、というレアな要素が凝縮された列車でありまして、寝台車(B開放寝台)の他、急行券と指定券を購入すればゴロゴロと横になって就寝できるカーペットカー、そして自由席や指定席などの座席車(いわゆるハザ)も多様な車種が連結されているため、青函間をチープに移動したい旅行者から熱い支持を受けております。その一方で北海道新幹線の開業を数年後に控えて廃止の噂も絶えず、老朽化してボコボコになっている車体の表面は、そんな不吉な話を裏打ちしているように見えました。
札幌駅22時正時出発。
やっぱり長距離列車は、始発駅00分出発じゃないと箔がつきませんね。
ホームから自由席を覗いてみます。まだこの時点では空席もちらほら見えましたが、結局この日は自由席・指定席ともにほぼ満席となりました。当日は札幌でイベントがあったらしく、その関係で結構な乗車率になったようでした。
当初、私はこの画像のような普通の座席(指定席)に乗車する予定でしたが…
出発直前に札駅の窓口で訊いてみたら、「はまなす」の乗り得車両である「カーペットカー」の、しかも非常にレア度の高い上段を確保することに成功! おそらくこの日に急遽乗れなくなった人がキャンセルしたものを、タイミング良く入手できたのだろうと思われます。乗車まで何度も窓口に問い合わせていたものの、その都度満席という返答だったので、出発直前でこのチケットが入手できるとは想像だにしませんでした。何事も最後まで諦めてはいけないんですね。
装甲車を連想させるヘンテコな窓割りの車両がカーペットカー。いかにも「無理して改造しました」感ありあり。車体に描かれたワンコのイラストがこの車両の利用方法を端的に表しています。
カーペットカーの車内。この日の車両はオハ14 512。「ハ」ってことは一応普通座席車として扱われているんだな…。知らなかった。でもご覧のように普通座席車じゃないことは一目瞭然。車内の小上がりにはカーペットが敷かれており、そこへゴロゴロと横になって就寝することができるんですね。しかも普通座席の指定席車と同じく、急行券と指定席券で利用できてしまうのですから、非常に利用価値が高い。それゆえにこの車両は指定券の発売から早々に埋まってしまう人気を博しているのであります。
就寝スペースは上と下の2段に分かれており、下段はフェリーの3等客室のように雑魚寝状態なのですが・・・
上段は上画像のように一人一人の区分が線路方向に配置されており、B寝台とほぼ同じ幅のスペースを占有できちゃうため、下段のように両隣を気にすることなくグッスリ横になることができちゃうんですね。こんなに使い勝手が良いのに下段(さらに言えば指定の座席車)と同じ料金なのですから、ぜひとも上段を利用したいところですが、人気が高いうえに席数がとても少ないため、繁忙期はプラチナチケット化しており入手は非常に困難であります。そんな事情でしたから札駅窓口で上段のチケットを入手できたときに思わず興奮してしまったのでした。
今回割り当てられたのは「24上」。一人用の区画にはカーペットの他、毛布や枕、ハンガーが用意されていました。一般的にこの手の車両サービスはリネン類を省略するからこそ寝台料金が不要なのですが(特急「あけぼの」のゴロンとシートなど)、厳寒のエリアを走る列車ですから毛布が使えるのは非常にありがたいところです。
カーペットは電気カーペットなので、この上で体を横にして毛布を被れば、寒い冬でもヌクヌク。
小窓にはカーテンが設けられ、また頭上には小さな照明も取り付けられています。でも通路側にはカーテンが無いので、車内の明るさや音などは遮断できませんが、ま、安い料金ですから贅沢は言えませんね。
目の前にはクーラーの吹き出し口。
冷房の時季だったら冷風を直撃?
さてこの日は朝から所用で忙しく動き回り、それが終わってからは日没を待たずにすすきので遊戯、そして桑園で出発直前まで風呂を浴びてから「はまなす」に乗車という、結構慌ただしいスケジュールでしたので、「24上」に横になって毛布を被ると疲労のためにいつの間にやら夢の国にいざなわれてしまい、途中で小窓から伊達紋別や長万部の駅名標を見たことは朦朧げながらに記憶しているものの、その他は全く憶えておらず、気づけば「まもなく青森」の車内アナウンスが流れていました。隣を気にせず横になって過ごせるのは非常に快適ですね。
定刻(5:40)より10分ほど遅れて青森駅に到着。連絡する特急「つがる」へ乗り継ぐお客さんの姿も多くみられました。
雪を巻き上げて白く染まった最後部とテールマーク。
凍てつく連結器を開放して列車から切り離されたED79。
そういえば函館で機関車はDD51からED79に替わっていたんですが、熟睡していたため全く気づきませんでした。きっと同じ列車に乗っていた鉄ちゃんたちは寒風ふきすさぶ函館駅のホームに立って、かじかむ手でカメラを構えながら機関車の入れ替え作業を撮影していたに違いありませんが、花より団子、物見遊山より3大欲求を優先する私は、そんなことはお構いなしに寝続けておりました。
まだ6時を回っていません。当然ながら駅前には人影ほとんど見あたらず。
この日予定していた私用までには全然早すぎるため、とりあえず駅前の「アウガ」で腹ごしらえすることに。こんな早朝に「アウガ」へ入るのは初めてだ…。
「アウガ」の地下市場には、青森駅前再開発により駅前市場が地下へ潜った当時に2度ほど行きましたが、それ以来全く足を踏み入れることのなかったので、約10年ぶりの再訪となります。時間帯の問題なのかお客さんの姿はまばらで、お店の方もいまいち覇気がなく、てっきり呼び込みの集中砲火を浴びるのかと覚悟していたのですが、そんな心配は杞憂に終わったどころか寧ろ虚しさがこみ上げてきてしまいました。
市場だというのに早朝から開いている飲食店は限られていたのですが、そんな中で店頭の大きな手書き品書きが目立っていた「すし処三国」の暖簾をくぐり、海鮮丼を注文。ワイルドな盛り付けの魚介に心の中で拍手を送りながら、朝っぱらからガッツリいただきました。鮮度良好で美味かったなぁ。青森や対岸の函館においてはそれぞれ新鮮な魚介が観光の目玉ですが、少なくとも海鮮物の食事に関しては、他所者の足元を見ている強気な函館朝市よりも、あまり色気を出していない青森の方がはるかにコストパフォーマンスに優れているように思われます。
ちなみに今回乗車券として利用したのは、周遊きっぷの「札幌・道央ゾーン」とそのアプローチ券(登別→町田)です。往路は飛行機利用でしたので、アプローチ券である「周遊きっぷ(かえり)」の券面には「往空」と印字されています。
国鉄時代やJR初期までには多種多様な周遊券が発売されていましたが、旅行形態の変化や利用者の減少などに伴って周遊券は徐々に縮小されてゆき、「周遊きっぷ」と名称が変更されてからはその制度の複雑さと使い勝手の悪さ、そして周遊ゾーンの相次ぐ廃止などによって一層の利用者離れが進んでしまい、ついに2013年3月末で廃止されることになりました。
現行の「周遊きっぷ」は駅の係員ですら発行に手惑うほど仕組みが難解であり、近年では全くと言って良いほどJRサイドから存在自体をアナウンスしていなかったので、旅行上級者向けのマニアックなきっぷになってしまっていたような感があり、むしろ今日まで存続できたことが不思議なくらいです。とはいえ、国鉄時代から長い間旅行者の利便性の貢献してきた「周遊」という言葉が、JRのきっぷの歴史から姿を消すことには一抹の淋しさを覚えずにはいられません。
※湯田中「翠泉荘」泊ってきました。まったく変化無しで安心しました。
湯田中の記事、拝見しました。ナショナルの骨董品的なテレビはまだ置かれていたんですね。懐かしい雰囲気のお宿ですから、たとえ現役ではなくてもオブジェとして置き続けていただきたいなぁ、と個人的には思っております。
>手稲の札幌運転所方向からDD51牽引の
>「はなます」
>が入線してきました。ヘッドマークがちょっと首を傾げているような感じ。
>出発直前に札駅の窓口で訊いてみたら、
>「はなます」
>の乗り得車両である「カーペットカー」の、しかも非常にレ>ア度の高い上段を確保することに成功!
ご指摘ありがとうございます。細かいところまで読んで下さり感謝申し上げます。「はなます」(花増)だと、かつての日ハムのコーチになっちゃいますね(笑)。大変失礼いたしました。早速当該部分を訂正させていただきました。野生のハマナスはちょうど今頃実をつけているでしょうね。