残暑厳しい某日、岩木山麓の嶽へ最盛期を迎えたキミ(とうもろこし)を買いに行った際、ついでに白濁した硫黄のお湯に入りたくなって、温泉街を形成するお宿のひとつ「縄文人の宿」へ立ち寄ってきました。いままでこちらのお宿の独特な雰囲気が私の性分に合わなかったために敬遠していたのですが、食わず嫌いはよろしくないと思いまして、今回こちらを選んだ次第です。
外壁にはマスコミによる取材歴が披露されていました。メディアによる取材に対して好意的なんですね。
薄暗く黒系の色調でまとめられている館内はアーティスティックというか何というか、独特なセンスに包まれており、素朴な民芸品あり、扇ねぶたの模型など郷土色の強い装飾あり、新聞の切り抜きあり、タレントなどのサイン色紙ありと、とってもカオスな雰囲気にちょっと圧倒されそうになったのですが、懸命に自己を立ち直らせつつそれらを観察してみたら、瀬戸内寂聴による「一遇を照らす」など天台宗系の言葉が比較的多く館内に掲示されているように、私の眼には見えました。天台宗云々はともかく、館内の雰囲気と言い、いろんなものを飾っている点といい、群馬県赤城温泉の「御宿 総本家」に近い装飾感覚があるのかもしれません。
脱衣所の壁にはねぷたの鏡絵と並んで津軽弁の詩が飾られており、また棚の上にはたくさんの民芸品が並べられていて、廊下ほどではないにせよ不思議な空気感に満ちていることには違いありません。室内はよく手入れされており、綺麗で清潔、気持ち良く使えました。
浴室の戸の下にある踏み込み石のまわりには木炭が敷かれているのですが、見た目もさることながら、脱臭効果も期待できるのでしょうね。
浴室もエキセントリックなのかしらと覚悟していたら、こちらは総木造で意外にも落ち着いた空間となっており、温泉風情を満喫できる良い雰囲気にすっかり満悦です。室内にはヒバの浴槽が大小ひとつずつ(計2つ)据えられており、洗い場にはシャワー付き混合水栓が2基設置されています。シャワーにはシャンプーが用意されていますが、ボディーソープは備え付けられていませんでした。お湯の繊細さに配慮しているのか、はたまた酸性のお湯にボディーソープが中和しちゃうことを避けているのか。
窓下に据え付けられている大きな浴槽は3人サイズで、訪問時はかなりぬるめの湯加減でした。窓から入ってくる太陽光受けている影響かお湯は綺麗な乳白色を帯びており、そして底が全く見えないほど強く濁っていました。
一方小さな浴槽は2人サイズで、大きな浴槽よりは若干温度が高かったものの、それでも一般的なお風呂に比べたらやはりぬるく、大きな槽と異なりやや青白い色みで、底が見える程度の濁りでした。
両浴槽とも短い樋の湯口から源泉が注がれており、槽上部に刳りぬかれている穴から排湯されていました(なぜが排湯が落とされる下には桶が置かれていました)。完全放流式の湯使いです。
湯中では白い粒子がコロイド状態となっており、温度や光線の具合によって乳白色や青白色などに変色して見えるのでしょう。口に含むと歯がギシギシするほか、柑橘系の酸味収斂と甘味・塩味・明礬味が感じられ、湯面から漂う火山の噴気帯のような硫黄臭や明礬臭が室内に充満していました。嶽の湯にしては両浴槽ともぬるめなのですが、長湯好きな方にはもってこいな仕様であるとも言えそうです。
日帰り入浴に関しては回数券を販売しているほど積極的に受け入れているこちらのお宿。今回は内湯のみでしたが、宿泊すれば専用露天風呂にも入れるんだそうです。何がどう縄文人と関係があるのか、鈍感な一見さんの私にはよくわかりませんでしたが、不思議な世界観の外観や館内と違って内湯は実に落ち着ける造りとなっており、そんな中で嶽の白濁硫黄湯をじっくりのんびり楽しむことができました。
嶽温泉旅館組合4・5号集湯槽、6~8号集湯槽
酸性-カルシウム-塩化物泉 46.9℃ pJ2.05 湧出量測定不可(動力揚湯) 溶存物質2.283g/kg 成分総計2.959g/kg
H:9.0mg(23.39mval%), Na:137.6mg(15.67mval%), Ca:258.7mg(33.77mval%), Cl:1061mg(77.34mval&), SO4:361.4mg(19.43mval%), 遊離CO2:676.2mg,
弘前バスターミナルまたは弘前駅より弘南バス・枯木平行で嶽温泉下車(所要約55分)
青森県弘前市大字常盤野字湯の沢14
0172-83-2123
日帰り入浴時間10:00~18:00
500円
シャンプーあり、ドライヤーは帳場で貸出
私の好み:★★
”群馬県赤城温泉の「御宿 総本家」に近い装飾感覚” 最高にわかりやすい説明です!
>わかりやすい
ありがとうございます(^^)
館内に入った時、真っ先に思い浮かんだのが「御宿 総本家」でした。この手の独特なセンスのお宿って、各地を巡っているとたまに出くわしますね。赤城温泉も嶽温泉も、泉質こそ全く違いますが、お湯はとても良いです。