※残念ながら2013年12月で閉館となりました。
夏本番を間近に控えて蒸し暑い日が続いておりますので、たまには夏向きのスッキリサッパリな鉱泉を取り上げてみます。今回は久しぶりに千葉県の房総です。画像に写っているのは南房総市(旧富山町)にある岩婦湖という場所でして、湖というより池と称すべき小さなもの。一応バス釣りで有名なんだそうですが、訪問日には水位がかなり低下しており、初夏の爽やかな青空とは正反対な物寂しい空気が湖面を覆っていました。
その湖畔に佇んでいるのが、イオウ臭が大好きな温泉ファンにはつとに有名な鉱泉「岩婦館」です。
駐車場に車を停めて、何気なく建物の裏手に目をやったら、ボイラーの煙突の隣にヒョロヒョロとした櫓が立っていました。これって鉱泉中のメタンを曝気するための物でしょうか?
玄関前は車寄せのようなロータリー状になっていますが、狭いので車は入れません。玄関脇には料金表が掲示されていますが、宿泊の箇所は黄色いテープで目隠しされており、現在は宿泊営業は行っていないようです。
うららかな初夏の昼下がりに訪れたのですが、このときはお客さんがどなたもいなかったようで、宿のおばちゃんはテレビのワイドショーを見ながら、玄関上がってすぐのところに置かれているソファでお寛ぎの様子。入浴を乞うとおばちゃんは元気よく対応してくれ、私が1000円札を出すと博物館に所蔵されているようなかなり年代物のレジからお釣りを取り出しました。
帳場の左手が浴室なのですが、おばちゃんは「ちょっと待ってて」と浴室へ行き、しばらくして「いま湯船がとっても熱いから水を目いっぱい出してるからね」と言いながら、浴室へと案内してくれました。
脱衣所の戸を開けた途端に、強い硫黄の匂いが鼻を突きてきます。火山とは全く関係ない場所なのに、この強烈な硫黄臭は一体何なんだ! なお室内には棚、そして天井に扇風機があるだけです。
民宿然としたこじんまりとした古びてシンプルな浴室。浴室一番奥に浴槽がひとつ据えられ、そしてその手前両側にカランが並んでいます。上述のようにおばちゃんがお湯を薄めるために加水(これがただの水ではありません)してくれており、その吐出の勢いによって湯面は泡だっていました。
洗い場にはお湯と水のセットが5基。水栓は硫化して真っ黒に変色しています。お湯の蛇口からは加熱した源泉が、水の蛇口からはそのまんまの非加熱源泉が出てきます。この非加熱源泉がすごい。桶に貯めるだけでもわかるコーヒーのような琥珀色を帯びており、濃厚なタマゴ臭にモール系の香ばしい匂いを放ち、口に含むと強い茹で卵の卵黄味に清涼感を伴う苦味、そしてはっきりとした渋み・えぐみが舌に残りました。硫黄的な苦味や渋み・えぐみは全国の名だたる火山性硫黄泉にも比肩できるほど明瞭です。臭覚って普通はしばらくすれば麻痺してくるものですが、この浴室内で1時間ほど入浴しつづけたにも関わらず、臭覚が麻痺するようなことはありませんでした。それほど強い匂いなのであります。
おばちゃんが教えてくれたように、ボイラーの設定が強すぎなのか、訪問時の湯船のお湯はかなり熱かったのですが、浴槽自体はそんなに大きくないので、10分程度の加水でちょうど良い感じになりました。この加水がただものではない。水道水ではなく、洗い場の蛇口と同様、非加熱の鉱泉水なのであります。
源泉温度20℃以下の鉱泉ですし、自然湧出ながらその量はわずか毎分2リットルしかありませんので、通常は循環施設を稼働させているのかと思われますし、実際に浴室の戸には「全自動クリーンバスシステム」(いわゆる24時間風呂)のシールが貼られていましたが、訪問時はこの手の機械が稼働しているような気配はなく、消毒しているような感じもなく、単に加熱した鉱泉を貯めているだけのようでした。湯船が熱かったころは知覚が弱かったものの、非加熱源泉で薄めてゆくにつれ、上述のような知覚が次第にはっきりしてきました。強いツルツルスベスベ浴感が非常に爽快です。
窓を開けると、裏手には青いトタンの小屋を発見。おそらく源泉井と貯湯の施設だろうと思われます。なにしろ湧出量が毎分2リットルしかありませんから、予めプールしておく必要があるのでしょう。
運よく貴重な非加熱源泉を大量投入できたおかげで、浴槽でも新鮮なコンディションの鉱泉を堪能することができました。こちらの鉱泉の硫黄は当然火山性ではなく、生物起源のものでしょうけど、こんなに強い硫黄感を帯びていることには本当に感激してしまいました。
単純硫黄泉 17.9℃ pH7.91 2L/min(自然湧出)
Na+:68.6mg(50.08mval%), Mg++:15.5mg(21.51mval%), Ca++:32.0mg(26.89mval%),
Cl-:44.8mg(21.21mval%), HCO3-:246.0mg(67.85mval%), HS-:2.7mg(1.35mval%), S2O3--:0.7mg(0.17mval%),
H2SiO3:71.9mg, 遊離H2S:0.4mg,
JR内房線・岩井駅より徒歩30分強(2.3km)
千葉県南房総市高崎584 地図
0470-57-2836
※2013年12月で閉館しました
10:00~19:00
900円/1h
シャンプー類あり、他の備品類なし
私の好み:★★★
夏本番を間近に控えて蒸し暑い日が続いておりますので、たまには夏向きのスッキリサッパリな鉱泉を取り上げてみます。今回は久しぶりに千葉県の房総です。画像に写っているのは南房総市(旧富山町)にある岩婦湖という場所でして、湖というより池と称すべき小さなもの。一応バス釣りで有名なんだそうですが、訪問日には水位がかなり低下しており、初夏の爽やかな青空とは正反対な物寂しい空気が湖面を覆っていました。
その湖畔に佇んでいるのが、イオウ臭が大好きな温泉ファンにはつとに有名な鉱泉「岩婦館」です。
駐車場に車を停めて、何気なく建物の裏手に目をやったら、ボイラーの煙突の隣にヒョロヒョロとした櫓が立っていました。これって鉱泉中のメタンを曝気するための物でしょうか?
玄関前は車寄せのようなロータリー状になっていますが、狭いので車は入れません。玄関脇には料金表が掲示されていますが、宿泊の箇所は黄色いテープで目隠しされており、現在は宿泊営業は行っていないようです。
うららかな初夏の昼下がりに訪れたのですが、このときはお客さんがどなたもいなかったようで、宿のおばちゃんはテレビのワイドショーを見ながら、玄関上がってすぐのところに置かれているソファでお寛ぎの様子。入浴を乞うとおばちゃんは元気よく対応してくれ、私が1000円札を出すと博物館に所蔵されているようなかなり年代物のレジからお釣りを取り出しました。
帳場の左手が浴室なのですが、おばちゃんは「ちょっと待ってて」と浴室へ行き、しばらくして「いま湯船がとっても熱いから水を目いっぱい出してるからね」と言いながら、浴室へと案内してくれました。
脱衣所の戸を開けた途端に、強い硫黄の匂いが鼻を突きてきます。火山とは全く関係ない場所なのに、この強烈な硫黄臭は一体何なんだ! なお室内には棚、そして天井に扇風機があるだけです。
民宿然としたこじんまりとした古びてシンプルな浴室。浴室一番奥に浴槽がひとつ据えられ、そしてその手前両側にカランが並んでいます。上述のようにおばちゃんがお湯を薄めるために加水(これがただの水ではありません)してくれており、その吐出の勢いによって湯面は泡だっていました。
洗い場にはお湯と水のセットが5基。水栓は硫化して真っ黒に変色しています。お湯の蛇口からは加熱した源泉が、水の蛇口からはそのまんまの非加熱源泉が出てきます。この非加熱源泉がすごい。桶に貯めるだけでもわかるコーヒーのような琥珀色を帯びており、濃厚なタマゴ臭にモール系の香ばしい匂いを放ち、口に含むと強い茹で卵の卵黄味に清涼感を伴う苦味、そしてはっきりとした渋み・えぐみが舌に残りました。硫黄的な苦味や渋み・えぐみは全国の名だたる火山性硫黄泉にも比肩できるほど明瞭です。臭覚って普通はしばらくすれば麻痺してくるものですが、この浴室内で1時間ほど入浴しつづけたにも関わらず、臭覚が麻痺するようなことはありませんでした。それほど強い匂いなのであります。
おばちゃんが教えてくれたように、ボイラーの設定が強すぎなのか、訪問時の湯船のお湯はかなり熱かったのですが、浴槽自体はそんなに大きくないので、10分程度の加水でちょうど良い感じになりました。この加水がただものではない。水道水ではなく、洗い場の蛇口と同様、非加熱の鉱泉水なのであります。
源泉温度20℃以下の鉱泉ですし、自然湧出ながらその量はわずか毎分2リットルしかありませんので、通常は循環施設を稼働させているのかと思われますし、実際に浴室の戸には「全自動クリーンバスシステム」(いわゆる24時間風呂)のシールが貼られていましたが、訪問時はこの手の機械が稼働しているような気配はなく、消毒しているような感じもなく、単に加熱した鉱泉を貯めているだけのようでした。湯船が熱かったころは知覚が弱かったものの、非加熱源泉で薄めてゆくにつれ、上述のような知覚が次第にはっきりしてきました。強いツルツルスベスベ浴感が非常に爽快です。
窓を開けると、裏手には青いトタンの小屋を発見。おそらく源泉井と貯湯の施設だろうと思われます。なにしろ湧出量が毎分2リットルしかありませんから、予めプールしておく必要があるのでしょう。
運よく貴重な非加熱源泉を大量投入できたおかげで、浴槽でも新鮮なコンディションの鉱泉を堪能することができました。こちらの鉱泉の硫黄は当然火山性ではなく、生物起源のものでしょうけど、こんなに強い硫黄感を帯びていることには本当に感激してしまいました。
単純硫黄泉 17.9℃ pH7.91 2L/min(自然湧出)
Na+:68.6mg(50.08mval%), Mg++:15.5mg(21.51mval%), Ca++:32.0mg(26.89mval%),
Cl-:44.8mg(21.21mval%), HCO3-:246.0mg(67.85mval%), HS-:2.7mg(1.35mval%), S2O3--:0.7mg(0.17mval%),
H2SiO3:71.9mg, 遊離H2S:0.4mg,
JR内房線・岩井駅より徒歩30分強(2.3km)
千葉県南房総市高崎584 地図
0470-57-2836
※2013年12月で閉館しました
10:00~19:00
900円/1h
シャンプー類あり、他の備品類なし
私の好み:★★★
情報ありがとうございます。しばらく休業ですか…。場所柄、夏がシーズンでしょうから、もう少し様子をみながら、再開を期待したいですね。個性的な黒い鉱泉をそのまんまの形で楽しめる貴重な施設なので、閉じてほしくないですね。
そろそろ房総の観光シーズンが始まりますので、ちょっと期待していたのですが、やっぱりクローズは決定的なんですか…。あのタマゴ感の強いツルスベ鉱泉に入れないかと思うと、寂しい限りです。私も再開に期待しています。