温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

あつみ温泉 かしわ屋旅館

2017年10月12日 | 山形県
 
前回記事に引き続き山形県あつみ温泉でお風呂を巡ります。今回は、朝市広場の斜め前に位置している「かしわ屋旅館」で日帰り入浴した際の記録を書き綴ります。こちらのお宿は創業380年という老舗。破風の屋根が印象的な伝統工法の木造3階建は、歴史を感じさせる堂々たる構えです。玄関で声をかけて日帰り入浴をお願いしますと、快く対応してくださいました。



年代物の木造建築ですが、館内はその古さを味わいとして活かしつつ、時代に合わせた模様替えも行われており、今のニーズにマッチしたサービスを心がけようとする意気込みが伝わってきます。私が訪問したときには、若旦那がわざわざ浴室前まで案内してくださいました。廊下を進んで右へ折れた先に浴場の暖簾が掛かっています。


 
洗面台には昭和レトロを感じさせるタイル張りの洗面台が現役で使われているのですが、壁などの内装はリフォームされており、また洗面台も綺麗に維持されているので、古い旅館ではなく和風アンティークテイストと表現すべき心地の良い空間となっていました。また、単に見た目が改善されているのみならず、タイルの洗面台にはアメニティ類と並んで、お風呂で触れたタオル等を入れるためのビニル袋まで用意されいます。神は細部に宿ると言いますが、このような痒いところに手が届く細かな配慮には頭が下がります。


 
お風呂は男女別の内湯が1室ずつ。タイル張りの室内には、後述する浴槽がひとつ、そして(男湯の場合は)右側に洗い場が配置されており、シャワー付きカランが3基並んでいました。脱衣室同様にお風呂も手入れが行き届いており、気持ち良く入浴することができました。


 
浴槽は逆L字型で、最大寸法で幅約1.8mおよび奥行約2.4m。槽内はスカイブルーのタイル張りで縁はグレーの御影石ですが、ステップはご当地のあつみ杉でつくったもの。木材ならではの質感が、見た目と足の裏に優しい温もりを伝えてくれます。
隅に設置されている湯口の上からは温泉がポコポコと音を立てながら噴き上がっており、お湯は段々に刻まれた湯口の表面を流れながら浴槽へと落ちてゆきます。湯口のお湯はかなり熱く、私が湯船へ入る時も脛にピリッとくる熱さを感じたのですが、浴槽の傍には大きな湯もみ棒が立てかけられており、それでしっかり掻き混ぜることにより、加水することなく快適に入浴できる湯加減まで落ち着きました。もちろん加水することもできますが、いきなり加水せずまずは掻き混ぜてみることをおすすめします。

こちらで使われているお湯は、前回記事で取り上げた「湯之里公衆浴場」と同じ5・6・7号源泉のミックス。湯加減調整のために加水することがあるそうですが、加温循環消毒の無い放流式の湯使いであり、しかも共同浴場のように利用客の出入りが多い訳ではないのでお湯のコンディションが良好です。浴槽のタイルが綺麗であり、また湯鈍りが無いため、無色透明のお湯は大変クリアで湯の花などは見当たりません。湯口にあるコップで飲泉してみますと、出汁のような香りと焦げたような匂いがふんわり放たれ、甘塩味+出汁味+少々焦げたような香ばしさが口の中に広がりました。上述のように湯船への入りしなは脛にピリピリ感が走ったのですが、これは熱さはもちろんのこと、硫酸塩に由来する部分もあったかと思われます。また湯中では食塩泉的なツルスベ浴感が主役であるとともに、腕を擦ると途中で2~3回グリップが効いたのですが、これもまた硫酸塩のしわざではないかと推測されます。食塩泉の滑らかさと硫酸塩泉の頼もしさを併せ持つお湯ですから、入浴中は安らぎが得られる一方で湯上がりは体の芯までしっかり温まり、しかも湯中では全身がまろやかなフィーリングに包まれるので、多少熱くてもついつい長湯したくなってしまいました。

退館時には若旦那ご夫婦が玄関まで見送ってくださり、おかげさまで私の旅の記憶のみならず、あつみ温泉に対する印象もグッと良くなりました。昔ながらのスタイルを今に伝える伝統建築の旅館で、古いものの良さと現代的なニーズを融合させて努力している姿勢を、心から応援したくなります。今回は日帰り入浴のみでしたが、次回は是非宿泊利用してみたいものです。


温海5・6・7号源泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 56.5℃ pH7.3 蒸発残留物2360mg/kg 溶存物質2312mg/kg
Na+:636.2mg, Ca++:174.1mg,
Cl-:876.3mg, SO4--:407.9mg, HCO3-:96.3mg,
HwSiO3:68.4mg,
(平成21年2月13日)
加水あり(源泉温度が高いので水道水を加えて温度調整)
加温循環ろ過消毒なし

JR羽越本線・あつみ温泉駅よりあつみ交通の路線バスで「足湯あんべ湯前」バス停下車すぐ
(時刻などの検索は庄内交通HPを参照)
山形県鶴岡市湯温海甲191  地図
0235-43-2011
ホームページ

日帰り入浴15:00まで(開始時間は調査し忘れ)
500円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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確認 (永田和仁)
2019-10-30 20:29:54
前に、宿泊したときに美味い塩辛はいまもありますか。
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Unknown (K-I)
2019-11-02 01:27:32
永田和仁様
塩辛について、私は存じ上げません。
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