温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

仏生山温泉 天平湯

2011年05月11日 | 四国(香川・徳島・愛媛・高知)
讃岐の地に掛け流しの温泉はあるのか…。探しているうちに、この仏生山温泉に行き当たりました。駅から近くて歩いて行けるこの温泉ははたしてどんなところなんでしょうか。


ことでん仏生山駅から歩いて10分弱で到着。表通りに看板が立っていたので迷ったり通り過ぎたりすることはなかったのですが、どうやらこの建物が今回目的の仏生山温泉のようです。
美術館かアトリエを思わせるファサードですね。これ、本当に温泉?


とても日帰り入浴施設とは思えない洒落た玄関。デザインに拘った民家か、あるいは麻布や青山あたりの隠れ家ダイニングみたいです。

 
料金を支払って中へ。玄関ホールから真っ直ぐにフローリング床の空間が奥へと伸びており、手前側は雑貨販売スペース、そしてその奥は休憩エリアとなっていました。
白い壁に高い天井、間接照明とシンプルな照明を組み合わせた柔らかな明かり、濃淡色調のコントラストをはっきりさせた木材の多用など、いますぐにでも渡辺篤史が飛んできそうな、北欧テイストのおしゃれな空間構成になっています。お風呂に入って疲れを癒した後に、こうした落ち着いた大人の雰囲気の中でゆっくり寛ぐことを想定して設計されたんでしょうね。私、こういう発想が大好きです。


世間では邪険にされがちな喫煙スペースですが、ここではこのような落ち着いたテラスで一服できます。とはいえ私はタバコは一切吸いませんが…。


上の画像は脱衣所を露天風呂から撮影した様子です。
脱衣所や内湯の内部は混雑のため撮影していません。
脱衣所も白と木目を組み合わせてデザイニングされており、部屋の片面は中庭や露天風呂に面したガラス張りになっていて、明るさや開放感を確保しつつ、単に着替えるだけでなく、庭を視界に入れ安らぎを感じながら脱衣所にいるひと時を過ごせるような配慮がなされていました。普通脱衣所は極めて実用的な空間として処理されてしまうことが多いのですが、ほんの僅かな時間しか使わない部屋であっても、そこで受けてしまいがちなストレスを少しでも軽減することによって、お風呂で得られた安らぎや寛ぎを損なわずに持続させることができるわけです。結構この点は全国各地の温浴施設で見落とされがちではないでしょうか。
敢えてここのマイナス点を挙げるならば、脱衣所がやや狭く、ロッカーの鍵の掛かり方も悪く、総じて使い勝手があまり宜しくないように思いました。とはいえ部屋の狭さは設計時点で既に気づいているらしく、部屋の最奥に配置された洗面台スペースは全面鏡張りになっていましたが、これは部屋を少しでも広く見せようとする常套手段だと思われます。なお脱衣所のフローリングには床暖房が設置されているので助かります。


内湯は総ヒバ造の浴槽がひとつ。7~8人サイズでしょうか。加温された源泉が放流式(非循環)で供給されています。
その脇が洗い場スペースでシャワー付きカランが8基設置されています。洗い場もちょっと数が足りないかも。腰掛や桶に至るまでこだわっているのがこちらの施設の特徴。特に桶は画像でご覧いただけるように、シンプルながらもちょっと変わった形状をしており、IKEAでサラダボールとして売っていそうな感じです。

 
ちなみにこの桶は館内で販売されており、お値段1575円也。デザイン料が高いのかな。

 
浴室は四角い中庭を中心にして、周囲の四辺を諸々のスペースが取り囲むスタイルになっており、四辺のうち一辺を脱衣所に、もう一辺を内湯&洗い場にあて、残りの二辺に露天風呂を設けています。露天風呂まわりはウッドデッキになっており、木材の質感を活かして中庭との調和を図っていますが、結構滑りやすいので要注意。
露天浴槽は計4つで全て総桧造り。脱衣所から見て左側に位置する露天主浴槽は二つに分かれ、いずれも3人サイズ、奥側は加温された源泉が張られており、その手前側は奥側から流れてきたお湯が溜められる浅めの浴槽になっています。


ここのお風呂で最も気に入ったのが、脱衣所側から見ると中庭を挟んだ反対側に据えられたこの浴槽。加温・加水されること無く源泉がそのまま掛け流しで投入されているのですが、その質感が実に素晴らしい。
うっすら黄色透明、しょっぱいが角の取れた優しい塩味+重曹味で、特にこの源泉非加熱槽の湯口では弱い金気臭+食塩泉にありがちな表現の難しい有機的な匂いが感じられました。そしてこの非加熱槽ではお湯に入るとビッシリと炭酸ガスの気泡が付着し、肌をさすると重曹パワーのおかげでヌルヌルスベスベの非常に気持ちよい浴感が得られます。ぬるいのでじっくり長湯ができ、炭酸ガスの温浴効果のおかげで体の心からポカポカです。
ただひとつ残念なのは、湯口の見えるところに小さな筒が置かれ、そこにカルキの錠剤が入っていたこと…。まぁ不特定多数が利用する入浴施設で、たとえ掛け流しとはいえその量が大量に実施できないのであれば、消毒は止むを得ない措置だと理解しているつもりですが、できればそれが見えないよう工夫をこらして欲しいところです。

分析表によれば、陽イオンはナトリウムが99.32mval%で圧倒的、陰イオンは炭酸水素イオンが63.19mval%、塩化物イオン36.12mval%となっており、数値だけ見ると純粋に重曹と食塩だけで成り立っているといっても過言じゃない状態です。しかも溶存物質11.4544g/kgですからそれらが相当量お湯に含まれているわけです。食塩泉と重曹泉の双方のメリットが存分に発揮されている気泡たっぷりの素晴らしいお湯だと思います。

全国に多くある日帰り入浴施設は、その多くが大規模&和風をコンセプトとするあまり、どこも玉○設計的の似たり寄ったりな金太郎飴のようなデザインとなってしまっている悲しい現実があるわけですが、それに反してこの仏生山温泉は業界の流れに左右されない独自のスタンスを貫き通そうとしている姿勢がとても素晴らしく、かつ掛け流しで良質なお湯を堪能することが出来るのですから、個人的には大いに評価したい温泉入浴施設です。あまりに気に入ったので、高松滞在中は連日連夜通ってしまいました。
ただ、こうし優良施設であるがゆえ、混雑は必至。デザイン重視のため、混雑に対応できていないのがちょっと残念かな…。


仏生山砂蒸し源泉
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉 45.3℃ pH7.7 溶存物質11.4544g/kg 成分総計11.4544g/kg

ことでん(高松琴平電鉄)琴平線仏生山駅より徒歩10分(約700m)
香川県高松市仏生山町乙114-5  地図
087-889-7750
ホームページ

平日11:00~24:00、土日祝9:00~24:00(各曜日とも受付は23:00まで) 第4火曜定休
600円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

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3 コメント

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興味深いです (ぱと)
2011-05-11 20:23:56
四国も侮れないですね、今回掲載された天平湯の様に関東東北圏では、まず見られないお洒落な施設に興味を湧き立てられます!なかなかの進化系の施設ですね?これでお湯が塩素無しの掛け流しでしたら申し分ないですね!実際は無理でしょうが?山陰は名湯揃いですよと言われ飛んで行きたいのですが北関東からだと遠いですね、いつか機会を狙いたいです!
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Unknown (K-I)
2011-05-12 18:24:11
関東界隈だと例えば伊豆河津の「禅の湯」がこの仏生山温泉みたいにお洒落な雰囲気なんですが、たしかに他ではなかなかこうした空間を有する温泉はお目にかかれませんね。関東東北はお湯の良さに胡坐をかいて、あるいは採算のことばっかり考えて、お客さんをどのように受け入れようか、いかに寛いでもらうか、あまり深く考えていない施設が多いような気がしてなりません。
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Unknown (ぱと)
2011-05-12 18:54:55
k-Iの言われた通り、関東東北では採算のことばかりしか考えていない施設が多々ですね!鳴子のT施設なんて、被災者プランとか言って料理削り放題ですし、日帰り料金も下げたり上げたりと情けないやら、しかし中には下風呂温泉さつき荘などは日帰りでお金を取るのは?でも、周りの施設の関係もあるから仕方ないとさまざまですね!自分の所だけは助かりたいみたいな施設は叩かれて無くなった方が良いですね!
最近の経営者は損して得取れと言う言葉をしらないのかと?自分は、人好し、お湯良し、サービス良しの下風呂のさつき荘さんみたいな小規模な宿が好きです
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