温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

那須町高久 金ちゃん温泉

2015年11月19日 | 栃木県
※2016年11月にリニューアルオープンしました。詳しくは公式サイトでご確認ください。当記事はリニューアル前の様子を取り上げています。

 
那須湯本から路線バスに乗って山を下りて、途中にある道の駅「友愛の森」で下車し、那須町が運営する観光客向けシャトルバス「キュービー号」に乗り換えて、次なる目的地である「金ちゃん温泉」へと向かいます。


 
「友愛の森」から乗車すること約15分。「那須わくわく広場」という停留所で下車。バス停の先にある丁字路に「金ちゃん温泉」の看板が立っていますので、これに従ってこの角を左折します。


 
雪化粧をした那須岳を望みながら、畑や森林がまだらに点在する那須の高原を北上します。


 
途中でサルの群れと遭遇しました。観光客慣れして人間をバカにしている日光のサルと違って、こちらのサルは人間との程よい距離感が保たれており、私が傍を通り過ぎても特に威嚇してくるようなことはなく、カメラを向けても「だからどうした」と言わんばかりの素知らぬ顔です。親子もおり、子猿の仕草が可愛いのなんの。


 
周囲に別荘が立ち並ぶ緩やかな坂を登りきると丁字路に突き当たり、そこを右折して間もなくすると、沿道に「営業中」の赤い幟、そして「金ちゃん温泉」の看板が立っていました。



「那須わくわく広場」バス停から徒歩約15分で「金ちゃん温泉」に到着しました。落葉樹林が広がる別荘地の中にひっそりと佇む日帰り温泉入浴専門施設です。2年ほど前にオープンしたばかりの、那須では新しい温泉施設です。
オープン当初は県外(埼玉県?)に住むオーナーさんが週末ごとに通って店を開けていたため、金・土・日のみの営業だったそうですが、その後経営形態が変わり、現在は定休日である水曜以外毎日営業しています。平屋の建物は、外装の色調こそ落ち着いていますが、いかにも当世風のコストと実用性を重視したプレハブっぽい造りです。



広い駐車場の一角には源泉井や貯湯タンクが設置されていました。いまから入るお風呂のお湯は、ここから湧出しているんですね。なお井戸の深さは1400mもあるんだそうです。


 
玄関入ってすぐのところにある受付で料金を支払い、浴室のある館内の奥へと進みます。館内の最奥部には食事処を兼ねた座敷があり、さらにその奥の屋外には休憩用のウッドデッキも設けられていました。またお座敷の前には冷水サービスも用意されていました。開業してまだ2年程度しか経っていないため、館内はどこもかしこも綺麗でピッカピカ。


 
ウッディーでぬくもりが感じられる脱衣室は、ガラス戸を通じて内湯や露天風呂まで見通せ、屋外から差し込むたっぷりの陽光のおかげで明るく爽やかです。洗面台まわりなどの清掃も行き届いており、気持ち良く使えました。また備え付けのロッカーは、一つ一つのスペースが大きく、しかも無料で施錠できるので、使い勝手も良好です。


 
内湯の浴室に入った途端、温泉由来のアブラ臭が香ってきたほか、建材として使われている木の芳香もふんわりと香ってきました。露天風呂側の大きなガラス窓から燦々と陽光が降り注ぎ、室内の採光具合は抜群です。床は石板敷きですが壁面下部には大谷石が用いられ、側壁上部の木材と相まって視覚的に柔らかな質感を生み出しています。
洗い場にはシャワー付きカランが計5基設けられており、ボディーソープやリンスインシャンプーも備え付けられています。


 
内湯の浴槽は目測で2.5m×1.5m強。おおよそ4人サイズ。縁には木材が用いられ、底面は石板敷きですが、槽内側面には大谷石が採用されていました。浴槽のお湯は薄い山吹色を帯びて弱く濁っています。お湯は完全掛け流しで、館内表示によれば源泉温度により加水することもあるんだとか。浴槽の隅っこに取り付けられた木箱の蓋を開けて内部を見てみますと、箱の中で2つの管が合流しており、おそらく2本のうちのどちらかが加水用の配管なんだと思われますが、この日はどうやら加水は止められていたようで、湯口から吐出されるお湯の温度を測ったところ、55.5℃という直接触れないほどの高温でした。ただ、加水せずに湯加減を調整するためか、お湯の投入量はチョロチョロ程度に絞られており、その甲斐あって湯船では41℃という入りやすい温度に落ち着いていました。
私が湯船に入った瞬間はザバーッと勢いよく溢れ出ていき、その後もしばらくは縁の切り欠けからオーバーフローしていましたが、私が上がった後は一気に嵩が減ってしまい、しかも投入量は決して多くないため、嵩のリカバリーが遅く、なかなか元の水位まで戻りませんでした。加水せず湯量を絞ることによって、お湯の濃さを維持して湯加減を調整しているわけですが、熱い源泉をかけ流す場合、このように投入量を減らしてお湯の濃さを維持するか、あるいは適度に加水してお湯の入れ替えペースを早めるか、どちらの手法を採用すべきか、非常に悩ましいところですね。


  
屋根付きのアプローチを進んだ先でお湯を湛えている露天風呂は、全体を屋根で覆われている岩風呂で、10人は余裕で入れそうなキャパを擁しています。周りは目隠しの塀で囲まれていますが、露天と塀までの間に大小様々な岩が離れられて庭園のような空間が誂えられており、周囲の木々が借景となって、自然に恵まれた清々しい環境を実感できる造りになっていました。


 
熱いお湯が流れている岩の湯口はオレンジ色に染まっており、その温度は49.7℃という高温でした。内湯の場合は浴槽の容量が限られているため、温度調整を図るべく投入量が絞られていましたが、露天風呂は容量が格段に大きく、また外気の影響も受けるため、しっかりとした量が投入されていました。


 
上述のような岩の湯口の他、露天の底面には穴があいた黒いホースが沈められており、ここからもお湯が投入されて、浴槽全体の温度均衡が図られていました。こうした設備のおかげで、露天風呂では外気で冷めることなく、温度計は43℃を指していました。


 
露天の浴槽周りには岩が並んでいますが、側面や底面など槽内には大谷石が用いられており、多孔質の石材ならではの柔らかで滑らかな肌触りがとっても良好です。岩の上にはホビットの人形が並んで湯浴み客に微笑みかけていました。

さて肝心のお湯に関してですが、分析書によれば源泉温度はなんと82℃もあるんだとか。なお源泉井の深さは1400m。地下深くから汲み上げられた熱湯は一旦貯湯タンクにストックされ、ある程度冷ましてから浴室へ供給しているものと想像されます。湯船のお湯は薄い山吹色に弱く濁っており(実際には、槽内の石材の関係で若干緑色を帯びて見えます)、湯中では山吹色や橙色の湯の花が無数に浮遊および沈殿していました。
お湯を口に含むと(塩辛くはないものの)はっきりとした塩味を有している他、ミントのような清涼感、そして渋みや痺れを伴う苦味もあり、実際に唇などに少々の痺れが残りました。湯面からはいわゆるアブラ臭が放たれており、湯口でははっきりとその匂いを嗅ぐことができました。栃木県内でアブラ臭の温泉といえば喜連川が有名ですが、喜連川の匂いとは毛色が異なり、どちらかといえば以前拙ブログで紹介した大田原の「那須野ヶ原ベルビューホテル」に近いような感じがします。
お湯に浸かると、トロミが感じられる他、食塩泉らしいツルツルスベスベ感がはっきりと肌に伝わり、滑らかな浴感が気持ち良いので、何度も自分の肌をさすってしまいました。また食塩泉的なフィーリングに混ざって、硫酸塩泉のような引っかかりも少々混在しているのが、このお湯の面白いところです。湯上りには力強く温まり、しばらくは外套要らずで過ごせました。夏に入ったら汗が止まらなくなるかも。那須の温泉と言えば「鹿の湯」に代表される那須湯本の白濁した酸性硫黄泉が思い浮かびますが、大丸温泉のような硫酸塩泉系の単純温泉もあれば、この「金ちゃん温泉」のようにアブラ臭を伴う食塩泉もあり、実にバラエティー豊かです。那須という土地の魅力を改めて実感できる温泉でした。


ナトリウム-塩化物温泉 82℃ pH7.5 300.0L/min(動力揚湯) 溶存物質3.258g/kg 成分総計3.258g/kg
Na+:1083.9mg(96.14mval%), Ca++:27.1mg, Fe++:1.5mg,
F-:10.0mg, Cl-:1359.0mg(77.91mval%), SO4--:287.8mg(12.18mval%), HCO3-:265.4mg(8.84mval%),
H2SiO3:115.3mg, HBO2:89.9mg,
源泉温度が高すぎる場合、必要最小限の量で加水することあり

那須シャトルバス「キュービー号」で「那須わくわく広場」バス停下車、徒歩15分
栃木県那須郡那須町大字高久乙3370-3047  地図
0287-74-3526
ホームページ

※2016年11月にリニューアルオープンしました。詳しくは公式サイトでご確認ください。当記事はリニューアル前の様子を取り上げています。
10:00~21:00 水曜定休
800円(17:00以降は500円)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

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