温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

サビハ・ギョクチェン空港からドーハ経由で帰国の途へ

2015年03月04日 | トルコ
※今回の記事に温泉は登場しません。あしからず。
前回取り上げたヤロワ・テルマル温泉のハマムで入浴し、トルコ温泉めぐりの最後を締めくくった後は、その日のうちに空港へ向かって、帰国の途へ就きました。


●"İDO"のフェリーでヤロワからペンディッキへ
 
ハマムを出た後、前夜泊まった「テルマル・パルク・オテル」へ一旦戻って帰国の支度を調えたのち、午前11時前にチェックアウト。ホテルの目の前を通るミニバスに乗り込んで、約30分ほどでヤロワ港の"İDO"フェリー埠頭に到着です。この埠頭はバスターミナルと隣接しており、バスからフェリーへ便利に乗り継げるのですが、運転手さんは気を利かせて、フェリーターミナルの真ん前でバスを停めてくれました。なおテルマルからヤロワまでの運賃は3リラです。


 
窓口にてペンディッキ行のチケットを購入します。購入に際しては、まず窓口右手にあるタッチパネル式の整理券発券機で整理券を受け取り、券面に印字された番号が窓口に表示されたら、その窓口で購入するという流れを踏みます。早い話が、銀行の窓口と同じシステムですね。


 
出航時間の30分程前に対岸からやってきたフェリーが着岸し、手際よく舫われた後、乗客や車両が次々と下船してゆきました。続いてそれと入れ替わる形で、私達が歩いて乗船します。船は定刻12:00に、汽笛を鳴らすこと無く静かに出航しました。ヤロワ~ペンディッキ間の航路は内海であるマルマラ海の奥部であり、且つ天候も晴れて穏やかであったため、海面は全く波立っておらず、自分が船上にいることを忘れそうになるほど、揺れること無く滑らかに航行してくれました。


 
マルマラ海を渡ってイスタンブール側へショートカットできるフェリーは需要が高いらしく、船内には数百人規模で乗船可能なほどキャパがあるのに、7~8割という比較的高い乗船率が見られました。船内にはカフェなど楽しい船旅を演出してくれる各種設備も用意されています。なお座席は指定制です。


 
大小の貨物船が輻輳する中をスムーズに航行。画像をご覧になってもおわかりいただけるかと思いますが、本当に波が無く、至って穏やか。海ではなく湖のようです。でも海面にはたくさんのクラゲが浮かんでおり、潮の匂いも強く漂っていますので、船上から眺める青い水面が海であることは疑いようもありません。約50分ほどで対岸のイスタンブール市内のペンディッキに到着しました。


 
乗客は慌ただしく下船してゆきます。このペンディッキという街はイスタンブール市内と言っても、いわゆる旧市街や新市街などといった中心部から30kmも東へ遠く隔たっているのですが、市街地であることにはかわらず、埠頭前を横切る幹線道路は激しい往来が見られました。


 
埠頭の周辺はいわゆる繁華街が広がっており、週末だからか大変な人混みで、都会らしい喧騒に満ちていました。商店や飲食店が連なる先には立派なモスクがあり、更に奥へすすんでゆくと、高速鉄道"YHT"のイスタンブール側の起点となっているペンディッキ駅があるんだそうです。


●小さなハプニングその1 レストランにて
 

このペンディッキでは旅の最後を面白く演出してくれた2つの小さなハプニングに見舞われました。まず一つ目はレストランにて…。
ちょうどランチタイムでしたから、この街でトルコ最後の食事をとることに。と言っても、お店に何らのあても無かったので、たまたま目に入ったレストランに飛び込んで、2種類のケバプの盛り合わせを注文しました。この食事はなかなかの美味で、旅のラストを飾る食事として十分なものでしたが、びっくりしちゃったのが、店員のお兄ちゃんに勧められて飲んだ紫色のジュース。色合いからグレープジュースを想像したのですが、実際に喉を流れた味は、果汁の甘味とは対照的な、辛くて酸味の強い刺激的な味覚であり、未知なる衝撃的な味に驚き、思わず吐き出してしまいました。なんじゃこりゃ! なんてものを勧めてくれるんだ! その場でスマホを取り出し、ラベルの文字を翻訳したところ、どうやら赤ビートの絞り汁らしいことが判明。はじめの一口で懲りてしまい、ボトル一本をほとんど丸ごと残したのですが、トルコの方ってこんなものを平気でごくごく飲んじゃうのかな。食文化は本当に奥が深くて未知なる領域ばかりです。これが小さなハプニング、その1。


●小さなハプニングその2 タクシー
ハプニングその2は、食後に乗り込んだタクシーです。旅行先のタクシーにトラブルはつきものですけど、私が遭遇したトラブルは、まるでコントのような笑い草的ハプニングでした。

イスタンブールから国際線の飛行機に乗る場合は、アタチュルク空港を利用するのが一般的ですが、私が今回の旅行で入手した格安航空券はカタール航空のもので、往路は一般的なアタチュルク空港へ到着するのに、復路はイスタンブールのもうひとつの空港であるサビハ・ギョクチェン空港 (Sabiha Gökçen Uluslararası Havaalanı)から出発するという、オープンジョーもどきの風変わりなチケットでした。例えとして正しいかわかりませんが、東京で言えば往路は成田へ入国し、復路は羽田から出国する、といった感じでしょうか。このサビハ・ギョクチェン空港はイスタンブールのアジア側にあり、イスタンブール中心部からのアクセスが悪いために外国人旅行者からの評判はいまいちなようですが、ペンディッキからは大変近く、北東へ10キロ少々で辿り着けてしまうため、今回の私の旅にとってはむしろ好都合です。尤も、空港への公共交通機関は路線バス以外に無いようですが、大した距離じゃないので、タクシーを利用しても大した金額にはならないはず。そう考えて、食後に街中で待機していたタクシーに乗り込むことにしました。

乗車の際、つるっ禿げのおじさんドライバーに"Sabiha Gokcen Airport"と英語で告げたところ、おじさんは"OK! No Problem"と片言の英語で返答。車は薄汚れたヒュンダイのポンコツでしたが、発車と同時にメーターをちゃんと動かしてくれ、フロントガラスから見える標識にも"Havaalanı"(空港のこと)と表示されていたので、「問題なく空港へ辿り着けるはず」と安心して乗車していました。ところが世の中、そう甘くない。
ペンディッキから10分もしないうちに空港ターミナルビルが見えてきたので、「もうすぐだ」と降りる準備をしていたのですが、タクシーは何故か一旦近づいたターミナルビルから離れてゆくではありませんか。怪しく思った私は何度も「エアポート」と念を押しますが、その都度ドライバーは"No Problem"と自信満々で返答します。あれれ、俺はどこへ連れて行かれるんだろう、まさか遠回りしてメーターを稼ごうとしているのか…。そう疑ってトラブルに遭遇したことを覚悟した時、タクシーは巨大なショッピング施設の車寄せで止まりました。


 
そこは、サビハ・ギョクチェン空港近くにあるアウトレットモール"VIA PORT"カタカナで表記すればヴィアポートですね。どうやらドライバーは、私の「エアポート」という発音を「ヴィア・ポート」と勘違いして聞き取ったらしいのです。まさかエアポートの近隣にヴィア・ポートと称する施設があるとは予想だにできません。トルコって国は、最後の最後で面白いネタを提供してくれるぜ。思わずその場で爆笑してしまいました。これが小さなハプニング、その2。


●サビハ・ギョクチェン国際空港
 
オイラの発音が悪いのかもしれないし、ドライバーの思い込みも相当固そうだ…。口頭で伝えても埒が明きそうに無かったので、「指差し会話帳」を捲ってトルコ語で空港を意味する単語"Havaalanı"をドライバーに指し示したところ、彼はようやく理解してくれ、ポンコツヒュンダイをぶっ飛ばして、改めてサビハ・ギョクチェン空港へ向かって走ってくれました。アウトレットモール「ヴィア・ポート」から僅か数分で出発ロビーに到着です。トルコ滞在の最後の最後で面白い想い出をもたらしてくれたタクシーの運ちゃんには、感謝の意味を込めて普段より多めのチップを渡し、お互いに笑顔でハグして別れました。

イスタンブールを扱う日本語のガイドブックでは、その玄関口としてアタチュルク空港ばかり詳しく解説している一方、同じく国際空港であるサビハ・ギョクチェン空港に関しては「そんな空港もあるよ」程度しか触れておらず、アクセス面をはじめ、空港ターミナルの様子に関しても、ほとんど言及がありません。ガイドブックで取り上げなくても読者から文句が来ないほどの小規模な空港なのか、東京で言ったら調布飛行場みたいなものなのか…。しかし、実際の空港ターミナルは、私のそんな予想を大きく覆す、現代的なデザインの大変立派な施設でした。建物の大きさだけで捉えれば、中部国際空港と良い勝負ではないでしょうか。


 
ターミナルビルは確かに立派で綺麗なんです。でも市街中心部からアクセスが悪いためか閑散としており、余裕のあるキャパを持て余しているようでした。2020年のオリンピック開催地がイスタンブールに決まっていれば、この空港の将来性にも期待が持てたのでしょうけど…。また新しい施設であるためか、全般的にサービスや運用面が固まっていないような拙さが随所にみられ、改善の余地がまだまだ沢山あるように思われました。

タクシードライバーの勘違いにより、空港へ遠回りして着くはめになってしまいましたが、それでも搭乗便のチェックイン開始までまだ時間があったので、帰国後の日常生活に備え、ターミナル内のカフェでパソコンを開いてセコセコとお仕事をこなします(旅行先でも仕事をする私って、なんて哀しい生き物なんでしょう)。カフェの席にはコンセントが使え、Wifiも飛んでいるのでネット環境は問題ないのですが、ご多分に漏れずこの空港も物価が高く、たとえば350ml缶のスプライト一本が日本円で350円もすることにはビックリしました。パスポートコントロールの先にブランド物の免税店が並んでいることも各国の空港と同様。飲食店も数軒あり、これといった不便は感じられませんでしたが、どの店もお客さんが少なくて暇そうにしていたことが印象的でした。特にスタバなんて客がゼロ。この空港って、経営的に大丈夫なのかね…。


●ドーハでトランジット

イスタンブールのサビハ・ギョクチェン空港を定刻通り18:35に出発したカタール航空QR244便は、日付が変わろうとする真夜中23:40に、中東カタールのドーハ・ハマド空港へ到着。肌寒かったトルコとは打って変わって、灼熱の砂漠地帯にあるカタールは日没後でも30℃以上あり、秋物の服を着ていた私は、タラップを下りてバスへ乗り換える僅かな間で、うっすらと汗をかいてしまいました。なおQR244便の機材は、いまどきのナショナルフラッグキャリアが使うとは思えない、LCCへ回されていてもおかしくなさそうなA320の古参機。カタール航空って資金的にかなり余裕があるようなイメージがあるのですが、そんな会社でもサビハ・ギョクチェンというマイナーな空港を発着する路線には、お古があてがわれちゃうのかな。


 
ドーハという街は世界の旅行者から「世界一退屈な街」という不名誉な称号を与えられているらしいのですが、そんな事情もあってか、この空港を利用する旅客は別の国へ向かうトランジット客がほとんどで、私が乗ってきたQR244便のみならず、他便の乗客も、大多数は入国のゲートへ向かわずにトランジット専用ゲートへ列をなしていました。ドーハの新たな玄関口であるハマド空港ターミナルビルは、2014年に本格供用が開始されたとっても新しい施設であり、どこもかしこもデカくてピッカピカ。さすがオイルマネーで潤いまくっている国は違うなぁ。
さてトランジット専用のセキュリティチェックを通過すると、ターミナルの中央ホールへと導かれるのですが…


 
この中央ホールにはぬいぐるみのようなバカデカイ人形がデンと鎮座していました。黄色いぬいぐるみが電気スタンドの下でグッタリしており、グーグルの画像検索で「ハマド空港」と入力してみますと、リストアップされる中から結構な高比率でこの人形が写った画像が表示されますから、この空港を利用した人の多くが注目しているようです。でも何かがオカシイ。ディズニーの「くまのプーさん」のようであり、また所謂テディーベアのようでもあるけど、人形としては造りやデザインがユルユルで、かわいらしさが無い。ママに裁縫を習ったばかりの子供が、ボタンを使って初めてぬいぐるみに目を縫いつけたような、稚拙感に満ちあふれているのです。カタール版のユルキャラなのでしょうか。何らかの意味を込めてこんな姿にしているのでしょうけど、ぬいぐるみに関して特に説明はありません。しかも背後にまわったら、なんと電気スタンドのアームが、ぬいぐるみの背中を貫いているではありませんか。ユルキャラを超越したオカルトでもあったのです。一体これは何なんだ。



私が乗り継ぎたいドーハ発羽田行QR810便は朝7:20発ですから、ここで7時間以上も時間を潰さねばなりません。ドーハでの乗り継ぎ時間が長い場合、カタール航空ではホテルを用意してくれるのですが(こちらを参照)、それには「8時間以内の乗り継ぎ便が運航していない場合」「乗り継ぎ時間が8時間以上」などといった条件があり、搭乗券の料金クラスによっても利用不可となるんだそうです。もしこのサービスを利用したとしてもホテルで寝られる時間は実質的に2~3時間ですし、ホテルとの行き来で慌ただしくなり、かえってストレスを招きそうな気もします。そこでこの時は空港内の「オリックス・ラウンジ」で過ごすことにしました。一般的に空港のラウンジは一定クラス以上の乗客に利用が限られていますが、このラウンジは40アメリカドルを支払えば誰でも利用可能という使い勝手の良い施設です。
シャワーを浴びてさっぱりし(ドライヤーが無いのが玉に瑕)、食事をつまみながら自分のパソコンで日本のバラエティー番組を見て時間を潰しているうち、いつの間にやらウトウトしており、気づけば窓の外が薄ぼんやりと明るくなっていました。




 
※トランジットの話題が出たついでに、往路での体験もちょっと話させてください。
今回の旅行では往路の羽田→イスタンブールでもドーハで乗り継いだのですが、乗り継ぎに数時間も待った上述の復路と違い、往路のトランジットは大変スリリングなものでした。というのも、定刻通りであっても、僅か1時間で乗り継がなければならなかったのです。でもハマド空港公式サイト内のトランジットに関する説明によれば、45分あれば大丈夫であるらしいし、発券時点で航空会社が短時間の乗り換えを認めているんだから、多少遅れても接続してくれるだろうと楽観的に考えていました。羽田でチェックインする際にも、ドーハから先のチケットと一緒に上画像のような「ショートトランジット」と記されたチケットホルダーが手渡されますので、ドーハ空港内でこれを手にしていれば、職員が一目瞭然で「この客は急がせなきゃ」とわかるようになっています。羽田発ドーハ行のQR811便も定刻通りに出発してくれたので、ここまでは問題ありませんでした。

しかし、偏西風に対してアゲンストな方向だからか、ドーハ到着は定刻より30分の遅延。定刻通りであっても1時間しか猶予が無かったのですから、30分も遅れたら残りはわずか30分。タイトなんてもんじゃありません。どうやら私以外にも乗り換えで困っているお客さんがいるらしく、ボーディングブリッジがなかなかセッティングされないことに皆さん苛立ちを隠せない様子。ドアが開かれたと同時にターミナル内をダッシュし、ダメ元で次なる搭乗口へ向かったところ、職員はちゃんとディレイを承知しており、私が乗りたかったイスタンブール行も我々を待っていてくれ、積み残しを発生させることなく、結局15分遅れでドーハを出発したのでした。もちろん乗客のみならず荷物の乗り継ぎも問題なく、イスタンブールのバゲッジクレームでは、自分の荷物を無事に受け取れました。不安からくる冷や汗だけでなく、ダッシュしたことで本物の汗も大量に掻いてしまいましたが、なんだかんだで無事乗り継げてホッとひと安心。ということで…
結論:ドーハでの乗り換えは、1時間しかなくても、たぶん大丈夫。



 
 
話を復路に戻します。朝6時ころにラウンジを出て搭乗口へ。羽田行きQR810便の搭乗口は、やたらと長い空港内の通路を延々歩かされた先にありました。サビハ・ギョクチェンからの便は古いA320の古い機材でしたが、打って変わって、羽田行は導入されたばかりのB787。やっぱり最新鋭の飛行機は快適ですね。カタール航空は日本語エンターテイメントも充実しており、タッチパネルの操作性もまずまずなので、ちっとも退屈しませんでした。


2015年の年明けから2ヶ月以上に亘って続けてきましたトルコ温泉巡りの旅シリーズも、これにて終了です。いつものような冗長で中身の無い記事にもかかわらず、お付き合いくださいましてありがとうございました。
今回私が実際に巡った温泉施設数は26にも及びます。この旅でバイブル的存在となったのは、葛西暢人さんのサイト「とるこのととと」と、このサイトの内容を書籍化した『魅惑の温泉めぐり トルコ』です。トルコで個人旅行する際のHOW TOをはじめ、とにかく温泉に関するコンテンツが充実しており、トルコの温泉に関する書籍でこの右に出るものはありません。個人で取材執筆なさっているとは思えないほど、対象エリアが広範囲であり、且つ各温泉に関する記載内容も微に入り細を穿っていて、旅行者目線に立った痒いところに手が届く親切な記載内容には、旅の立案段階でも、実際の旅の中でも、大変助けられました。トルコへの愛情と造詣の深さが伝わってくる素晴らしい力作です。これらのコンテンツ無くして私の旅は成り立ちませんでした。心より感謝申し上げます。

次回記事からは日本の温泉に戻ります。
引き続き拙ブログを何卒よろしくお願い申し上げます。

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