温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

常布の滝下温泉 2016年11月

2017年01月04日 | 群馬県
※今回記事で取り上げる「常布の滝下温泉」へのルートは現在閉鎖されています。もし行かれる場合は自己責任で。

 
前回記事で取り上げた香草温泉から戻ってくる途中、このエリアにあるもう一つの有名野湯「常布の滝下温泉」にも立ち寄ってみることにしました。前回記事の前半で、常布の滝へ下りる道は土砂崩れのために閉鎖されていると述べましたが、これから目指す野湯はその道を進んでいかなければなりません。身の危険を承知でチャレンジすることにしました。



谷筋に沿って大沢川の方へ下ってゆくのですが、道が閉鎖されて長い年月が経っているため、完全に廃道状態となっており、道筋は完全に笹薮に呑み込まれていました。自分の背丈以上に生い茂っている笹藪をひたすら漕ぎながら前進します。


 
実質的な廃道とはいえ、かつては日本の滝百選に選ばれた滝へ向かうアクセスルートだった意地の表れなのか、腐っても鯛で、ほとんど笹藪に呑まれているこの道も、所々で踏み跡が鮮明となり、そこだけは歩きやすくなります。その明瞭な道筋は、たとえ人の管理から外された今でも、れっきとした道であったことをアピールしているようでした。でもそんな区間は全体のほんの一部。ルート前半の大部分は笹薮に呑まれて道がすっかり消えており、かろうじて踏み跡らしい薄い筋が残っている程度ですから、山歩きに慣れていない人は道に迷ってしまうでしょう。また笹を踏むと非常に滑りやすく、急な斜面が続きますので、足元に注意しないと、笹で足を滑らせて谷の下へ滑落する危険性もあります。


 
このように鎖が張られて箇所もあるのですが、その位置が中途半端に低いので、かえって歩行の邪魔になっていました。しかも先の方では支柱が根こそぎ倒れて無残な姿を晒していました。土砂崩れの跡なのかもしれません。


 
鎖が倒れているあたりから笹藪は消え、枯れた藪や倒木で覆われた急斜面が続くようになりました。その荒涼とした光景から想像するに、おそらくこの辺りも土砂崩れに見舞われたのでしょう。笹藪でかろうじて残っていな薄い踏み跡も、ここでは完全に消えています。いままでの野湯探索で培った経験則に基づいて五感をフル活動させながら、道なき急傾斜を下ってゆくと、赤テープが巻きつけられた太い木を発見。


 
その木の向こう側では、落差数メートルの小さな滝がゴウゴウと水飛沫を上げながら轟いていました。前回記事で取り上げた香草温泉のお湯を含む大量の酸性水が川となって流れ落ちており、滝に近づくと酸っぱい飛沫がこちらに飛んできました。名瀑常布の滝はもっと上流ですから、この滝は名も無き小瀑です。川水が流れ落ちる滝の表面は、酸性でも繁殖できる藻に覆われていました。



この滝の周りでは少量の温泉が湧出し、あたりの石を白く染めていたのですが、今回の目当てはこれではありません。


 
滝の白くて太い筋の左奥に、茶色くて小さい池みたいなものが隠れていますね。それが今回の目当てである常布の滝下温泉であります。山の空気は冷たいので、できれば温泉の傍で着替えたいのですが、温泉は滝の裏の半洞窟のような空間にあり、そのまわりに着替えられるようなスペースはありません。しかも滝裏まで滝の飛沫で濡れずに行けるような足場もありません。そこで仕方なく滝の手前の岩場で着替え、裸のまま一旦冷たい滝壺に入ってから、酸っぱい飛沫を浴びつつ滝の裏へ向かったのでした。


 
滝行の心意気で冷たい飛沫を浴びながら、滝の真裏にある湯だまりまでやってきました。温泉のお湯は杏色に濁っており、弱い金気味と若干の甘味、そして少々の酸味を帯びているのですが、酸味に関しては滝から流れ込んでくる川の水の影響かと思われます。針葉樹の枯葉が浮かんでいますが、放りっぱなしの野湯にしては不快な浮遊物や沈殿物が少なく、比較的綺麗な状態が保たれていました。


 
お湯に計測器を突っ込んだところ、36.1℃・pH6.40という数値が表示されました。pHに関しては上述の通りですので、温泉だけで計測できたらもうちょっと中性寄りの数字になるかと思われます。強酸性の温泉が多い当地にあって、金気を有する中性寄りの温泉が湧くとは意外ですが、ここからちょっと北東へ行けば(直線距離で2~3km)、かつて露天掘りで採掘していた群馬鉄山の跡がありますから、もしかしたら鉱脈の一部がこちらの方へ伸びていて、その影響を受けながら湧出しているのかもしれませんね(あくまで素人の推測にすぎません)。



洞穴の中は狭く、且つ目の前で滝が落ちているので、いつものようにミニ三脚で自撮りすることができず、湯浴み中の足を撮って入浴した証を残しました。湯溜まりは2人までなら入れそうなサイズがあり、腰まで浸かれる深さがありました。お湯を肩にかけながら湯浴みすれば長湯できそうなものですが、洞穴の天井や前方から絶え間なく酸っぱい滝飛沫が降りかかってくるので、あまり落ち着いて湯浴みできませんでした。ま、それが野湯というものでしょうけどね。

ここへのルートはたしかに危険ですが、でも北アルプスなどの中・上級向け登山道では決して珍しくない程度の難易度ですので、廃道状態の現在でも、登山経験者でしたら案外あっさりとたどり着けてしまうかと思います。
余談ですが、湯浴みを終え、この滝の目の前で服を着た際、それまで身につけていた1000円の安物腕時計を置き忘れてしまいました。もし岩の上に置かれた黒いベルトの腕時計があったら、それは私のものです。よろしければもらってください。


.

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 粗忽者の香草温泉探訪 2016... | トップ | 上山田温泉 瑞祥 上山田本館 »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ぬる湯マスター)
2017-12-27 19:59:47
こんばんわ^^。
さすがK-1殿、野人パワー全開で滝行ですか!
この一つ前の記事でも凄まじい荒行でしたね(笑)
体育会系で育った私でもちょっと自信がありません。
もはや温泉の申し子、野湯マスターですな^^b
いよいよ今年も残りわずかとなりました。
私は年末に友人とゴルフ旅行に出かけるのですが、
もしかしたら群馬の白寿の湯、と言う温泉施設にて、
湯浴みする機会があるかもしれません^^。
K-1殿も、実りある日々をお過ごし下さいませ。
そしてまた来年も良い年でありますように。

返信する
Unknown (K-I)
2017-12-29 00:11:24
ぬる湯マスターさん、こんばんは。
ここは正直なところ躊躇ったのですが、イチかバチかで行っちゃえと自分の鞭打って、怖い思いをしながらたどり着きました。グループ行動なら心細さが紛れるのでしょうけど、私は独りなので恐怖心と闘いながら野湯を探すはめになります(笑)。
今年も大変お世話になりました。また来年も何卒よろしくお願いいたします。ゴルフではよいスコアをぜひ! よいお年を!
返信する

コメントを投稿