温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

鶴田温泉

2012年06月26日 | 青森県
※残念ながら閉館しました(2019年)。


前回取り上げた「山田温泉」から数キロしか離れていない鶴田の市街地に位置する「鶴田温泉」へ行ってきました。私は鄙びている物件は好きなんですが、外観からは鄙びを通り越した薄ら怖い佇まいがそこはかとなく漂っているような気がしたので、以前から存在は知っていたものの今まで入湯を敬遠しておりました。
通りから専用アプローチをちょっと入った奥まった場所にあるのですが、アプローチの入口などには存在をアピールするわかりやすいものが立っていないため(いや有るかもしれませんが、単に私が見落としているだけかも)、初見ですとちょっと迷ってしまうかもしれません。
正面の「鶴の湯」と書かれた建物は旅館棟らしく、玄関の扉には「入浴はその右方にある別の入口へ行ってほしい」という旨の張り紙が掲示されていました。その玄関の前は車寄せのようなロータリーになっており、もしかしたら以前はそれなりの風格を有するお宿だったのかもしれません。いまでも旅館の方は営業しているのでしょうか。



駐車場に浴場の外壁が面しているのですが、相当草臥れている様子です。


 
さて「浴場入口」と書かれた浴場棟へ。手前の紫色の暖簾は鉄板焼き屋さんです。銭湯に内包されている鉄板焼き屋さんというのも面白いですね。


 
玄関には子供用自転車が置かれていたり、家族の靴がズラリと並べられていたりと、まるで他人の家の勝手口に上り込んでしまったかのような生活臭が妙に強く漂っていました。小さな卓を並べただけの小さな番台には誰もいませんでしたので、台に料金を置いて中へ入らせてもらいました。やけに天井が低いのは、建物が古いからか、あるいは何か意図があって低くしているのか。



青森県の公衆浴場らしい造りの脱衣所で、真ん中には腰掛が用意され、画像手前側に棚が並び、左側には大きな鏡が貼りつけられていました。室内の隅っこの方からウジ殺しの臭いがプンと漂ってきたのは、近くにトイレがあるからなのかしら。


 
室内には古いマッサージチェアが3台置かれていました。料金は20円。現在有料のマッサージチェアは100~200円が相場でしょうから、今と比べて1/5~1/10という物価基準の時代に生産された準骨董品なのであります。メーカーは同器具の業界では有名なフジ医療器です。さすがに今でも作動するかどうかは不明。作動させようとして何か起きたらおっかないので、今回は見学だけにしておきました。


 
壁いっぱいに描かれた大きな壁絵が目立つ浴室。雪を頂く山が重畳しており、その麓の湖畔には欧州の古城のような赤いトンガリ屋根の建物が聳え立っています。ヨーロッパのアルプスをイメージしているのかもしれませんが、そのわりには白樺と思しき木々の奥に生える木が黒松っぽく、山の稜線もアルプスというより八甲田・八幡平・早池峰あたりの東北を連想させるなだらかな線が連続しており、完全な欧州風に描けないところは壁絵職人さんの限界なのかもしれず、どことなく和洋折衷な感じが独特の世界観を生み出していました。

浴室の左右の壁にシャワー付きカランが計12基設けられ、それに挟まれるような形で2つの島があり、その島に押しバネ式水栓が計12基設けられています。カランからは桶が泡立つほど勢いよく源泉が出てきます。



浴槽は主浴槽・副槽・打たせ湯・空っぽ槽の4つ。
主浴槽は42℃くらい。この時はたまたま運が悪かったのか、汚いゴミみたいな灰色浮遊物(あきらかに湯の華とは異なり、陰毛もたくさん混じる埃や水垢のような物体)がたくさん浮遊しており、ちょっと入浴をためらいました。主浴槽の裏(壁側)にある副槽は源泉がそのまま投入されているのか、お湯は46度近くあってかなり熱く、こちらも入浴できませんでした。館内表示によれば、加水・加温・循環・ろ過は行われておらず、消毒に関しては塩素系薬剤を用いているとのこと。また毎日清掃と換水を実施しているそうですから、やはり今回は訪問したタイミングが悪かったのでしょう。



打たせ湯は1本のパイプから源泉が落とされており、滝つぼにあたる箇所は泡だっていました。カランから吐き出されるお湯といい、この打たせ湯といい、ここのお湯は泡立ちやすい性質を有しているのかもしれませんね。
お湯の見た目は津軽平野の温泉によく見られるタイプで薄い暗めの黄色透明、しょっぱさ+出汁味+ほろ苦さ+舌のしびれを有し、揮発油的なアブラ臭と臭素臭が混じって香っています。特にカランから出てくるお湯でアブラ臭がはっきり嗅ぎ取れました。アブラ臭を有していることは板柳から鶴田にかけてに分布する温泉の特徴のひとつです。食塩泉らしいツルスベで気持ち良い浴感が得られ、湯上りはなかなか汗が引きません。

お湯の質自体は良いのですが、浴場のお手入れがいまひとつ行き届いていないような感があったのは残念でした。鄙び系やB級系が好きな御仁でしたら楽しめるかと思いますが、そうでなければちょっとお勧めしにくい雰囲気でもあります。尤も、時間の流れ方がゆったりしている青森県ですら、このような古い施設は姿を消しつつありますから、昭和の面影に包まれたいレトロ好きな方でしたら、ビジュアル的に興奮できちゃうかもしれませんね。


ナトリウム-塩化物温泉 65.6℃ pH不明 

JR五能線・陸奥鶴田駅より徒歩6~7分(約500m)
青森県北津軽郡鶴田町鶴田字早瀬168-1
0173-22-2176  

※残念ながら閉館しました(2019年)。
6月1日~9月30日→9:00~13:00, 15:00~22:00
10月1日~5月31日→9:00~21:00
300円
ドライヤー10円、一応基本的な入浴道具の販売あり

私の好み:★★

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