温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

イズミル市街で電車を乗り継ぐ

2015年01月16日 | トルコ
前回記事の続編です。今回も記事中に温泉は登場しませんので、あしからず。

 
デニズリ(Denizli)からの普通列車は、定刻より40分遅れの17:48に、夜の帳が下りたイズミル(Izmir)のバスマーネ(Basmane)駅に到着。都市のターミナル駅なのに、規模が小さくて薄暗く、垢抜けなくて哀愁たっぷりだ。


 
バスマーネ駅の駅舎と駅前の大通りの様子。さすがトルコ屈指の大都会だけあり、交通量が多く、ひっきりなしにクラクションが鳴らされていた。

前回記事でも述べたが、イズミルの鉄道ターミナルは方面別に駅が異なり、いま私が乗ってきたデニズリからの列車はバスマーネ駅に到着した。しかし次に乗り継ぎたいコンヤ行きの夜行列車は、この駅ではなく、ここから北へ3kmほど離れたアルサンジャック(Alsancak)駅より発車する。駅前にはタクシーが待機しているので、それに乗っちゃえば簡単にアルサンジャック駅へ移動できるが、それでは旅の面白さが減ってしまうから、ここは是非市内の公共交通機関を乗り継いでゆきたい。手持ちのマップによれば、バスマーネからメトロ(地下鉄)で次のヒラル(Hilal)駅まで乗り、そこで近郊電車のイズバン(Izban)に乗り換えれば、一駅でアルサンジャックへ辿り着けるようだ。



てっきりメトロの入口は大きな行灯か何かでわかりやすく表示されていると思いきや、駅構内にはそれらしき表示が見当たらない。仕方なく人の流れが多い方へ行ってみると、その流れの先の、駅の裏手の暗くて目立たないところに、地下鉄の出入口が口を開けていた。公共交通機関なのに、どうしてこんな他所者が近寄りがたいロケーションに設けたのだろうか。


 
地下鉄駅構内は至って無機質。利用者のほとんどは事前購入の接触型乗車券を所持しており、みなさん改札機にタッチして足早に去ってゆく。イズミルの交通機関で不可解なのは、いわゆる一回きりの片道乗車券を現金購入できないことだ。東京であれば、たとえば地下鉄で渋谷から外苑前まで乗車したければ、券売機で170円の切符を買えば良い。日本のみならず世界各国どこの交通機関でも、一回だけ有効の片道乗車券を売っている。しかしイズミルではそんなごくごく当たり前な常識が通用しない。当地ではプリペイド型の乗車券購入客の利用を前提としており、もし一回限りの乗車であっても、回数券を購入しなければならないのだ。地元の定期利用客が大半であることから、徹底的に合理化を図ってそのようなシステムにしたのだろうが、旅人にとっては非常に理不尽である。私が構内まで下りると、改札脇の出札窓口では別の外国人旅行者が切符の購入を求めようとしていたが、切符が買えないことがわかると、メトロの利用を諦めて地上へ戻っていった。

さて今度は私の番だ。乗車には回数券を購入しなければならない。回数券は3回券から発売されているようだが、この回数券はメトロのみならず、近郊電車でも路線バスでも利用可能である。ということは、ヒラル駅で乗り換えるイズバンでも使えるわけだから、1回分は無駄になってしまうが、考えようによっては乗換駅での切符購入の手間が省け、手元には乗車記念として券が残るわけだ。そもそも私は敢えて好き好んで、このメトロを選んでいるから、あまり文句を言えた立場じゃない。トルコ語で回数券はどのように言うのか、スマホの「グーグル翻訳」で調べた上で、グーグル先生が教えてくれた通りに「キタップ ビレット 3 (Kitap bilet 3)」と窓口のおばさんに告げたところ、スムーズに3回分の回数券が購入できた。料金はたしか6.25リラだったはず。



なお改札前にはいかにも券売機らしいマシーンが設置されているが、これはプリペイド型乗車券のチャージ専用機であり、切符は買えないようだ。


 
大きな荷物を引き摺る私を見て、改札前で警備していたガードマンのおじさんが、どこへ行くのかと英語で訪ねてきたので、アルサンジャックへ行きたいと伝えたところ、笑顔で乗り場を教えてくれた。ホームに下りてわずか2分でメトロの電車が入線してきた。夕方のラッシュアワーであるため、車内は大混雑。


 
バスマーネを出たメトロは間もなく地上に上がり、更には高架上を走って、わずか2分でヒラル(Hilal)駅に着いた。イズミルは港から丘へ向かって上へ上へと市街地が広がっているらしく、ホームからはそんな街並みの夜景が眺望できた。宝石をバラ撒いたかのよう。とても綺麗だ。


 
高架ホームから階段を下りてメトロの改札を出てから、目の前にあるイズバンの改札へと進む。方向によって改札が異なるので、行き先をよく確かめてから入場した。私が乗るべきはAliaga方面行だ。



イズバンのヒラル駅では、線路のダイヤモンドクロッシング(平面交差)が見られる。日本でもかつては路面電車をはじめとして、阪急の西宮北口駅などいろんなところに存在したが、現在では伊予鉄大手町駅や一部の車庫を除いてほとんど消滅している。


 
ホームの電光掲示板には、次の電車が時刻が表示される。小糠雨が降る中を待つこと約10分でAliaga行電車はやってきた。下顎が突き出てオデコが光っているその先頭形状は、チョウチンアンコウのようだ。


 
3分の乗車でアルサンジャック(Alsancak)駅に到着。ここは小田急江ノ島線・藤沢駅や東武野田線・柏駅のような頭端式ホームであり、一見すると行き止まりであるが、線路自体はY字型に伸びており、電車はまだまだ先へ進む。乗降が済んだらすぐにエンド交換(スイッチバック)してAliaga駅へ発車していった。


 
近郊電車と長距離列車が発着するアルサンジャック駅。ここからコンヤ行きの夜行列車に乗るのだが、列車の発車時刻まではまだ時間があるので、ひとまず駅の外へ出てアルサンジャックの街を逍遥し、夕食の店を探してみることに。


 
アルサンジャックには大きな港があり、周辺の交通量も非常に多いのだが、駅からちょっと離れると狭い裏路地ばかりになり、ひとり歩きに不安を覚える怪しげな雰囲気になった。小店の軒先からこちらを窺う男たちの視線に恐怖を抱く。しかも先程まで降っていた雨のために足元には水溜りができており、段差も多く、そのうえ細い道なのに渋滞を避ける車が猛スピードで飛ばしてくるので、色んな意味で危なっかしい。
しかし、気味悪さに耐えながら駅から西へ500メートルほど進むと、俄然明るくなって人通りの多い繁華街に行き当たった。どうやらここは「クブルス・シェヒットレル通り(Kıbrıs Şehitleri Caddesi)」という若者の街らしい。ここなら安心してレストランが選べそうだ。


 
通りにはいくつものレストランがあって迷ったが、明るくて清潔感溢れる店内が印象的だった「ラミズ(Ramiz)」というキョフテジに入ることにした。キョフテジとはキョフテ(トルコ風ハンバーグ)の専門店のこと。この"Ramiz"はトルコ全土に多くの店舗を構える老舗チェーン店であり、その後も各地を巡っているとこの店に出くわした。
色鮮やかな食材が並ぶ小洒落たカウンターの向こうにオープンキッチンがあり、シェフ達が手際よく調理している。ホールスタッフもみな愛想が良い。



メニューには写真が載せられていたが、その説明がトルコ語なので、よくわからずに戸惑っていると、スタッフが英語で一つ一つ親切に説明してくれた。この時注文したのはチーズ入りキョフテで14リラ(700円強)。若干しょっぱい気もするが、さすがチェーン店だけあって安定しており、美味しさもボリュームも十分満足。

お腹を満たしたところで、駅へと戻って夜行列車に乗り込む。

次回に続く

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