東京23区の総面積の2倍以上もある広大な別海町は、人口が約1万6000人であるのに対し、牛は約12万頭なんだそうでして、人間が圧倒的にマイノリティである土地なんですね。そんな別海町にも掛け流しの温泉施設があると聞いて、国道272号「釧標国道」と国道243号「パイロット国道」の立体交差の角にある「別海道の宿温泉 しまふくろう」へやって参りました。今回は日帰り入浴での利用です。
後述するこちらの温泉の源泉名は「大平原の湯」というんだそうですが、その名の通り、施設の周囲は大平原が果てしなく広がっており、よく目を凝らすと遙か彼方で牛達が草をのんびりと食んでいるのが目視できました。こんな茫洋の牧草地で放牧されている牛たちはストレスも少ないんでしょうね。羨ましいなぁ。牧草地のみならず、こちらの施設の駐車場も無駄に広いのですが、土地を持て余しているのか、敷地内には路線バス「共春バス停」の待合室も併設されていました。
左右に長い平屋の真ん中にはロビーが位置しており、それを挟んで左が浴場、右がレストランと分かれています。このレストランで特筆すべきは、掘りごたつ状のテーブル下に温泉の足湯が設けられている点でして、足湯を楽しみながらお食事がいただけるというなんともユニークなレストランなのであります。
カウンターで料金を直接支払い、暖簾を潜って浴室へと向かいます。そのカウンターでは上画像のような「干し梅」を一ついただきました。こちらのお宿の「売り」なのかな。
脱衣室はシンプルな造りながら綺麗に手入れされており、棚や籠は多く、ロッカーや洗面台、そしてドライヤーや扇風機など、ひと通りのものが揃っているので、使い勝手もまずまずです。
浴室は黒系の色調によって占拠されており、何となくシックな装いです。確かに黒い建材が用いられていることには相違ないのですが、室内が黒系で占めている理由はそればかりでないことを、後述で明らかに致します。室内左側に配置されている洗い場には、シャワー付き混合水栓が8基と立って使うシャワーが1基取り付けられており、シャワーからは真湯が吐出されます。
浴室右側には2つの浴槽と打たせ湯が並んでおり、ちょっと奥まったブース内では、ぬるめの温泉の打たせ湯が2本落とされています。そして打たせ湯手前には水風呂も据えられていました。
室内の温浴槽は上画像に写っている大小の各槽でして、手前側の小さな浴槽ではジェットバスが稼働しており、この槽に限っては循環装置も使用されているんだそうです。
大きな主浴槽は10~12人サイズといったところ。この浴槽では掛け流しの湯使いとなっていますが、湧出温度が52℃であるのに対し、湯口や湯船では体感で43~4℃くらいでしたから、もしかしたら若干の加水が行われているかもしれません。湯口には湯の華をキャッチするべく布が巻かれており、湯船には無色透明のお湯が張られています。そして縁から床へとお湯が溢れ出ているのですが…
お湯は無色透明なのに、そのお湯が触れる槽内や浴槽周り(特に湯面ライン)、オーバーフローが流れる床のタイルは、まるでイカスミを流した(あるいは塗りたくった)かのように、真っ黒に染まっているのです。浴室が全体的に黒っぽく見えるのは、これも原因の一つだったんですね。そのビジュアルからして、このお湯は只者ではなさそうですよ。
続いて露天風呂へ。頭上は屋根掛けされており、周囲は目隠しの塀が立ちはだかってるため、周囲に広がる渺茫たる大平原を望むことはできませんが、塀の外側にはこれといった建物も樹林もないため、湯船に浸かっていても、周りにはだだっ広い空が果てしなく広がっていることを十分に体感できました。
内湯の主浴槽と同様に湯口には湯の華を濾し取るための布が巻かれています。浴槽は11~12人サイズの岩風呂。こちらも掛け流しの湯使いとなっていますが、内湯のように床へ溢れ出ることは無く、槽内に設けられた排水口より排湯されていました。それでも槽内は内湯同様に漆黒に染まっており、私の訪問時は西陽を反射して黒光りしていました。
さて肝心のお湯に関するインプレッションですが、見た目は上述のように無色透明で、口にすると非常にしょっぱく、薄い出汁味も感じられます。そしてヨード臭やアブラ臭に近い匂い(モール泉的な匂い)が湯口から漂っています。入浴中は食塩泉らしいツルスベ感が得られますが、湯上がりには強い火照りとベタツキが残って、汗もなかなか引きませんでした。高張性の食塩泉であり、化石海水由来の温泉だと思われます。
分析表にはヨウ素イオンも臭素イオンも記載されていないので断定的なことは言えませんが、お湯から感じられた匂いや、浴槽や床のタイルを真っ黒に染めている要因は、モール泉のような腐植質もあるのでしょうが、化石海水に含まれていたヨウ素や臭素が強く影響しているのではないかなぁ・・・なんていうことを、無知蒙昧な私は露天風呂に浸かりながらボンヤリ考えてしまいました。そんな小難しい話はともかく、濃厚な食塩泉はいつまでも湯冷めしませんから、別海町の厳しい冬には心強い存在ですね。とてもユニークな存在感を放つ温泉でした。
大平原の湯
ナトリウム-塩化物温泉 52.3℃ pH7.8 240L/min(動力揚湯) 溶存物質13.00g/kg 成分総計13.00g/kg
Na+:4433mg(89.55mval%), NH4+:9.8mg, Mg++:15.0mg, Ca++:357.9mg(8.30mval%),
Cl-:7741mg(99.36mval%), HCO3-:71.4mg,
H2SiO3:104.0mg, HBO2:152.0mg, CO2:1.9mg,
釧路駅前より阿寒バスの標津・羅臼方面行で「共春」バス停下車すぐ
北海道野付郡別海町西春別321 地図
0153-77-2960
9:30~21:30(受付21:00まで)
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★+0.5
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます