温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

芦之湯温泉 きのくにや旅館 その2(別館「貴賓殿」)

2013年05月14日 | 神奈川県
その1(本館「湯香殿」)の続編です。


一旦着替えて本館「湯香殿」を出て、渡り廊下を歩いて別館「貴賓殿」へと向かいます。廊下の壁には芦之湯の昔の分析表が展示されていました。


 
廊下右手の小さな扉の向こうには「亀」と「鶴」の2室が並ぶ家族風呂が離れとして建てられています。残念ながら日帰り利用の場合は入浴不可能ですが、「亀」「鶴」とも無色透明の「湯の花揚湯2号泉」が完全掛け流しで使われているんだそうです。宿泊した方のみの特典ですね。


 
暖簾を潜って「貴賓殿」の更衣室へ。こちらもよく手入れされており綺麗です。本館よりも和のテイストがより強く現れている内装であるように思われます。洗面台に揃っているアメニティーのラインナップは本館と同様でした。


 
浴室にはふんわりと硫黄の匂いが漂っていました。内湯に据えられた浴槽は長方形で大きさとしては6~7人サイズ、小豆色をした御影石で縁取られており、薄っすらと白く濁ったお湯が張られています。
洗い場にはシャワー付き混合水栓が5基並んでいます。



このお風呂は湯船に突き出ている5本の湯口が特徴的でして、ネットで検索すると各湯口から異なる源泉が出ているという情報が散見されるのですが、先日訪問した時には一部が止まっており、左から順に…停止、ぬるい白濁湯がチョロチョロ、無色透明湯ドバドバ、停止、無色透明湯ドバドバ、といった感じでお湯が吐出されていました。真ん中と右端の湯口から出ているお湯はおそらく「湯の花揚湯2号泉」、左から2番目で弱々しく落とされている白濁湯は本館「湯香館」で使われている硫黄泉の「黄金湯」源泉だろうと推測されます。湯船に注がれるお湯は無色透明の「湯の花揚湯2号泉」が圧倒的に多いのですが、そこへ少量とはいえ個性的な「黄金湯」源泉が加わっているため、室内には硫黄臭が漂い、湯船も薄く濁っているのでしょう。しかしながら「黄金湯」の芳醇な硫黄的知覚は弱まっているし、一方で「湯の花揚湯2号泉」も硫黄の個性に邪魔されている上に循環消毒されているため、クリアで柔らかい質感も薄くなっています。混ぜあわせたことで誰も得をしないような中途半端な結果になっているようでした。ついでに言えば、浴室名は「黄金湯」ですが、上述のようにメインで用いられているのは町営温泉の「湯の花揚湯2号泉」ですから、名前と実態がテレコになっているわけで、オツムの弱い私は混乱しそうです。


 
露天風呂「山風の湯」は庭園に囲まれた岩風呂で、頭上は屋根で覆われています。風景画の中にいるような趣きのある佇まいなのですが、庭の向こうには旅館の建物が幾棟か建っているため、入浴していると建物からの視線がちょっと気になるところでもあります。浴槽の傍には使用してる源泉に関する説明が立てられていました。


 
竹筒の湯口が3本突き出ているのですが、そのうち1本のみ使われていました。筒の先っちょには真っ白い析出がビッシリ付着しています。館内の説明によれば、私が訪れた冬季の湯使いは「循環半掛け流し」、夏季には「全掛け流し」となるそうでして、加温や塩素系薬剤による消毒も行われているそうですが、消毒に関してはほとんど気にならず、また湯加減はやや熱めでしたが、体を沈めてみると肌になじむ柔らかさやスベスベ感があり、循環を思わせないシャキっとした感覚も得られました。使用されている源泉は「湯の花揚湯2号泉」のみで、無色澄明で石膏感と弱芒硝感があり、微かな苦さを帯びているようでした。この日入った「きのくにや」のお風呂では、本館「湯香殿」の「神遊風呂」に次いで気に入りました。

「きのくにや旅館」にはこの他にも「正徳の湯」や「枯淡の湯」といった宿泊者限定の貸切浴室があるのですが、当地で歴史ある芦之湯1号泉「仙液湯」源泉に入れるのはその2つだけであり、すなわち日帰り入浴で入れる範囲しか取り上げていない当レポートは「きのくにや旅館」のお湯の核心に迫っていないわけです。言わば本丸天守閣に攻め込まず、外堀やいくつかの櫓に踏み込んで満足しているに過ぎません。こだわりのラーメン屋に入っておきながら餃子だけ食ってお勘定するようなものです。しかしながら日帰り入浴で利用できるお風呂もなかなかのレベルであり、特に本館「湯香殿」の「神遊風呂」は秀逸でした。


芦之湯温泉 揚湯2号泉(芦之湯第11号)
カルシウム・ナトリウム・マグネシウム-硫酸塩・炭酸水素塩泉 66.4℃ pH8.0 蒸発残留物0.989g/kg 成分総計1.098g/kg
Na+:92.8mg(30.95mval%), Mg++:34.0mg(21.43mval%), Ca++:119mg(45.77mval%),
SO4--:440mg(72.41mval%), HCO3-:195mg(25.29mval%),
H2SiO3:192mg,
(この源泉に関しては箱根町公式サイト内で分析データ公開されています。こちらをご参照ください)
別館「貴賓殿」の内湯・露天とも加温・循環・消毒(塩素系薬剤投入)あり、ただし露天「山風の湯」は夏季になると全量掛け流しとのこと。

芦之湯バス停より徒歩2分
神奈川県足柄下郡箱根町芦之湯8
0460-83-7045
ホームページ

日帰り入浴1000円/2時間
平日12:30~16:00(受付15:00まで)
土日祝12:30~15:00(受付14:00まで)
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

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