温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

上の湯温泉 銀婚湯 その3(貸切露天風呂「どんぐりの湯」「もみじの湯」)

2013年01月05日 | 北海道
その1その2に引き続き今回も「上の湯温泉 銀婚湯」です。
今回からは3編に分けて、銀婚湯の真骨頂といっても過言ではない宿泊者専用の貸切露天風呂5ヶ所をすべて取り上げていきます。この貸切露天風呂を巡りたいがために銀婚湯を宿泊する方も多いのではないでしょうか。かく言う私もその一人であります。まずは「どんぐりの湯」と「もみじの湯」から。


 
銀婚湯は5つの源泉を有しており、そのうち4つもしくは2つをブレンドして、館内の内湯や貸切露天風呂へ引いています。今回の話題とは関係ありませんが、画像左(上)は源泉1号、画像右(下)は源泉2号で、それぞれ本館の傍に位置しており、館内の内湯や露天で用いられているそうです。1号に関しては成分の関係で配管内にスケールが詰まりやすいので、加水して詰まりを防止しているとのこと。湯小屋と見紛うその姿に、私はてっきりここでも入浴できるものと勘違いしてしまいました。

宿泊者専用の貸切露天風呂は5つあり、それぞれが広い敷地内に離れて位置しています。
貸切露天を利用する際には、帳場で希望する露天風呂の入浴札を受け取ってから、その目的地へと歩いて向かいます。帳場に希望する露天の入浴札が無い場合は、既に他の宿泊客がそのお風呂を利用中ですから、そのお客さんが帳場へ札を戻してくれるのを待つか、あるいは他に空いているお風呂を利用することになります。このようなシステムですから、もし露天をハシゴしたくても、一旦帳場に戻って札を戻してから、改めて次に目指すお風呂の入浴札を受け取る必要があります。
なお多少の雨でも入浴は可能でして、そうした日には玄関でゴム長靴と傘を貸してくれます。


 
5つある貸切露天のうち、3つは落部川の対岸に設けられており、そこへ向かうにはこの赤い吊り橋を渡っていくことになります。注意書きによれば、この橋は一度に五人以上で渡ってはいけないみたいです。


 
吊り橋から落部川を川を眺めます。川底の石ひとつひとつがくっきり見える、非常に清らかな流れです。


●どんぐりの湯

渡り切ったら道が三方向に分岐しており、道しるべが立っています。
露天まで散策を兼ねてちょっとした探検気分が味わえるのが面白いところです。まっすぐ進むと「トチニの湯」、左へ折れて川上へ向かうと「もみじの湯」、右への川下方向へ往くと「どんぐりの湯」です。私が一番初めに入手できた入浴札は「どんぐりの湯」のものでしたから、ここでは右へ進みます。


 
落ち葉の絨毯が敷き詰められた落部川の左岸の爽快な遊歩道を、川下に向かってテクテクと歩きます。空気が清らかでとってもいい気分。
帳場から約7~8分、吊り橋から約3~4分で「どんぐりの湯」に到着です。森の中にポツンと佇む微笑ましい構えですね。


 
野趣あふれる雰囲気ですが、貸切施設としての役割を果すべく、扉は意外としっかりとした構造になっていて、帳場で借りた入浴札を戸の裏の穴に差し込むと、閂が動かなくなって鍵がかかるようになっているのです。これは他の貸切露天でも同様です。



戸から緩やかに右へカーブする階段を下りてゆくと、川岸に文字とおりドンクリのような可愛らしい形状をしている露天風呂が私を待っていました。絵葉書にできそうな明媚なロケーションと、可愛らしいお風呂に思わず一目惚れしちゃいました。




お風呂の傍らには、原木を製材せずそのまんま骨組みに用い、茅で側面を囲った小屋が建てられており、ここで更衣します。衣類用にカゴが2つある他、小さな置時計もひとつ用意されていますので、適宜時間を気にしながら他のお客様にも配慮して利用させていただきました。


 
湯船の一部にも屋根がけされているので、小雨程度でしたら支障なく入浴できるでしょう。 
オカメドングリのような真ん丸い浴槽は石や湾曲した自然木で縁取られています。湯口の樋にも自然に湾曲した木を刳り貫いたものが使われており、川向1号・3号源泉がチョロチョロと落とされていました。旅館内の内湯こちらと同じ源泉の他、旅館傍の2源泉も一緒にブレンドされていますが、こちらは川向の源泉のみでブレンドされており、川向の源泉の方が若干成分が濃いらしく、色合いも知覚面(塩味・出汁味・炭酸味など)もこちらの方が強く表れているように感じられました。また内湯と異なり、こちらは加水の無い完全掛け流しのようで、浴槽を満たしたお湯は槽の切り欠けから静々と溢れ出ていました。
清流を望む開放的なロケーションの中、自然木の質感と周囲の環境を存分に活かした、可愛らしい露天風呂でした。


●もみじの湯

さて続いては、上述の道標から川上へ向かったところにある「もみじの湯」です。「どんぐりの湯」の入浴札を一旦帳場へ返した上で、改めて「もみじの湯」の入浴札を借り、再び赤い吊り橋を渡って十字路を左へ向かいました。次々回で取り上げる予定の「トチニの湯」を含め、今回は吊り橋の対岸の露天風呂3つ全てを制覇していますので、入浴札を帳場へ戻したり借りたりするため、吊り橋を3往復したことになります。本来ならば連泊してゆったりとハシゴしてゆくべきなのでしょうが、生来の貧乏性とせっかちさが仇になり、悲しいかな、一気に攻めないと気が済まないのです。


 
川沿いの遊歩道は川岸からちょっと離れて森の間を抜けていきます。3つの露天を回遊路のように結んでいるこの遊歩道ですが、短いながらも景観は変化に富んでおり、またとても歩きやすいので、お風呂に入らずにただ散策するでも爽快です。朽ちながらも立っていた枯れ木にはサルノコシカケが分厚く育っていました。



「もみじの湯」は川の対岸にある露天風呂の中では吊り橋から最も近く、橋から2~3分歩けば着いちゃいます。玄関からですと6~7分といったところでしょうか。川岸の崖が目隠し代わりになっている「どんぐりの湯」と異なり、こちらは遊歩道側からも川を挟んだ対岸の旅館側からも視界に入っちゃうフラットな立地だからか、周囲の囲いはガッチリとした造りになっています。



あたかも砦のような雰囲気ですね。これなら敵に攻め込まれる心配なし! でも敵なんてどこにもいませんけどね。


 
こちらの脱衣小屋も自然の素材の味わいを活かして建てられていますが、「どんぐりの湯」と比べて一回り大きく、造りもかなりしっかりしており、ありがたいことに内部にはハンガーが用意されていました。
川に面して目隠しの柵が立っていますが、程よく隙間が開いているので、景観をあまり邪魔しません。銀婚湯の敷地内では一番立派なモミジの銘木が川の畔にせり出ており、その根元にお宿のスタッフが一年がかりで作り上げた露天風呂がこの「もみじの湯」なんだそうです。清流を望むこじんまりとした浴槽の頭上で、樹齢200年のもみじが泰然と枝を伸ばしていました。



対岸の下流側斜め前に旅館の建物が臨めます。冬場は木々がすっかり葉を落としてしまうので、柵以外に視界を遮るものがないんですね。といっても肉眼ではっきり見えるような距離じゃありませんし、銀婚湯に泊まるお客さんは皆さん紳士淑女が多いでしょうから、余計な心配はご無用でしょう。


 
銀婚湯の貸切露天風呂は、単なる露天ではなく、小屋やお風呂に用いている素材の全てが天然物であり、それゆえに周囲の環境と何らの違和感なく溶け込んでいるところが秀逸なんですよね。
「もみじの湯」において浴槽や湯口には岩が使われており、体を湯船に沈めるとしっくりとフィットする安定した入り心地に包まれました。この岩のお風呂ともみじの老木のおかげで、入浴中は落ち着きとゆとりが辺りの空気を支配し、軽くうとうとしてしまいました。
訪問時は雪こそ降っていませんでしたが、辺りの木々はすっかり葉を落として冬支度を調え終わった後でしたから、残念ながら紅葉を愛でることはできませんでしたが、秋にこの露天風呂に入ったら、さぞかし美しい紅葉に抱かれながら湯浴みすることができるのでしょうね。ちなみに「もみじの湯」は冬季閉鎖となるそうです。


貸切露天風呂はまだまだ続きますよ。
次回は吊り橋の手前にある「かつらの湯」と「杉の湯」です。


川向1号・川向3号の混合
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉 74.5℃ pH7.3 23.5L/min(混合) 溶存物質7.364g/kg 成分総計7.606g/kg
Na+:2265mg(93.83mval%),
Cl-:2203mg(58.07mval%), SO4--:953.1mg(18.54mval%), HCO3-:1521mg(23.30mval%),
H2SiO3:109.9mg, HBO2:136.8mg, CO2:242.3mg,

※貸切露天風呂は宿泊者専用です。日帰りでは利用できません。また夜間も使用不可です。

次回に続く…。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 上の湯温泉 銀婚湯 その2(... | トップ | 上の湯温泉 銀婚湯 その4(... »

コメントを投稿