温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

下湯ダム上流の野湯 2014年10月

2015年05月06日 | 青森県
青森市の下湯ダム上流には、温泉ファンの間で有名な「たぬきの湯」という野晒しの露天風呂があり、私は2009年に一度訪れたことがあるのですが、その後の様子はどうなっているのか確かめるべく、5年ぶりに再訪してみることにしました。今回の記事では2009年当時の画像も随所に織り交ぜてまいります。


 
まずはダム湖の上流端に位置する「あやめ公園」に車を止め、そこから歩いて橋を渡り、川の右岸を遡ります。前方に架かる橋は県道122号線。この道を南下して山を登れば酸ヶ湯方面へ出られるのですが、橋の先は未舗装の悪路であり、県道だからと言って迂闊に進もうとすると、泣きを見ること必至。県道から林道へ降格させた方が良いのかも。


 
コンクリ護岸の下からは湯気が上がっており、地熱によって足元もホカホカです。藪を抜けてから、平均台でバランスを取るように護岸上を歩き、川上へと向かってゆくのですが、その途中のちょうど県道の橋直下で、河床が青白くなっている箇所を発見しました。ここがどうなっているのか後ほど確めることにして、ひとまず先へ進むことに。


 
護岸の端に立てかけられたハシゴで河原に降り、滑りやすい足元に注意しながら小さな沢を越えると、岸の上に上画像のような浴槽が設けられているのですが、この日はあいにく空っぽでした。


 
ちなみに↑が前回訪問した2009年6月時点の様子です。浅めながら湯浴みできる嵩までお湯が張られており、私以外にも2人ほど入浴者がいました。当時は一定の「たぬきの湯」ファンが存在していたように記憶しています。当時の記録によれば「湯温は44.1℃でちょっと熱め」とのこと。



 
更に先(上流)へ遡ってみますと、そこには流木等がうず高く積み上げて人為的に築かれた砦のような構造物がありました。あれ? 以前にこんなもの有ったっけ? その砦の中を覗いてみますと、ここにもガッチリとした浴槽が設けられているではありませんか。とはいえ、先程の湯船と同様にこちらもお湯が張られておらず、内部はカラカラに乾いていました。今でこそもぬけの殻のようになっているこの砦ですが、以前には誰かしらが生活を営んでいたような形跡があり、縄張り臭がかなり強く、近寄りがたい雰囲気が漂っています。そもそもこんな砦を築いちゃったら、河川法などいろいろと問題があるんじゃないのかな。普段の野湯巡りではいろいろとお目こぼしを頂戴している私でも、さすがにこれはちょっと…。もしここの浴槽にお湯が張られていたら、誘惑に弱い私は入浴したい欲求に負け、入るべきか退却すべきか、大いに迷っていたことでしょう。従いまして、個人的な感情として正直なところ、この浴槽が空っぽだったことにより、誘惑を断ち切ることができてラッキーでした。



 
2009年時点では、現在ほど砦の「城壁」は高くなく、単に河原の石を積んだ石垣が並んでいるだけでしたが、その上には青いビニールシートが屋根のように張られており、中から頻りに首を出したり引っ込めたりして、入浴者の様子を窺っているおじさんの姿が見られました。モグラたたきじゃあるまいし…。世捨て人でも住んでいたのかな。そして社会との隔絶をより確固たるものにするため、要塞を高くしていったのかな。



  
 
人工的な浴槽での入浴を諦めて、県道の橋の下まで戻り、さきほど見かけた青白い河床を調査します。テトラポットの間から盛んに白い湯気が上がっており、あちこちに青白い湯だまりができていますした。あたりには温泉の熱が立ち込めており、足元を注意しないと火傷してしまいそうです。



 
2009年当時の様子を振り返ってみますと、現在盛んに湯気を上げたり湯だまりができている川の右岸は、当時は川の本流となっており、テトラポットすら見られません。2009年は初夏の増水期だったことに対し、今回は水位の低い秋季であるという違いこそあれ、テトラポット設置等の河川改修によって流れが変わり、これによって、今まで奔流に呑み込まれていた自噴源泉が、河原で顕在化するようになったのかもしれません。



 
 
広範囲にわたって湯気が上がっていることからもわかるように、川原のあちこちから温泉が自噴しており、湧出点のひとつに温度計を突っ込んでみたところ、80.3℃という大変な高温が計測されました。なお水素イオン指数はpH=6.9。川水の影響を受けているのかもしれませんが、ごく僅かに酸性に傾いていると言えるでしょう。湯気からは砂消しゴムを連想される硫化水素の匂いがほんのり漂ってきました。口に含むと、硫化水素の存在が確認できるゴムのような味が得られた他、石膏のような味も含まれていました。


 
湧出した時点では80℃という高温ですが、川水とブレンドすることにより大幅に下げられ、上画像の大きな湯だまりでは、野湯にもってこいな35.5℃という湯加減になっているではありませんか。


 
そうとくれば、入浴しない訳にはいきません。一見すると浅く見えるこの湯溜まりですが、ちょっと寝そべると肩まで浸かれる深さがあり、不快な沈殿なども少なく、意外にも快適な野湯が楽しめました。温泉によって底の礫は白く染まり、お湯自体も弱い青白濁りを呈しています。頻りに冷たい川水が流れこんで来るのですが、熱い源泉の湧出量もそれに負けないほど豊かであり、腕で適宜お湯をかき混ぜることによって、比較的安定した湯加減を維持することができました。上述の「砦」に関してはネット上でいくつかの情報が見られたので、ここでの入浴はほとんど期待していなかったのですが、想定外の野湯ポイントを発見したことにより、道端で100円玉を拾ったような、ささやかな幸福感が得られました。さすがは温泉天国、青森県です。もちろん場所が場所だけに、川の状況によって野湯ができるかどうかは、全く変わってきちゃうかと思いますから、現在この湯溜まりがどうなっているのかは、わかりません。


野湯につき分析表なし

青森県青森市大字荒川字横倉
(地図による特定は控えさせていただきます)

野湯につき無料

私の好み:★★

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