JR函館本線の小樽〜長万部間は通称「山線」と呼ばれており、本線と称しているものの、普通列車が1日数往復しか走っていない典型的な閑散ローカル路線です。ニセコの麓にある昆布駅はこの山線の駅の一つであり、1本のホームに小さな待合室が設けられている小さな無人駅です。
今回訪れる昆布川温泉「蘭越町交流促進センター 幽泉閣」は、この昆布駅のすぐ真裏にあり、ホームの目の前で線路と平行に建てられています。小樽から列車に乗ってやってきた私は、まず昆布駅のホームにある跨線橋で線路を越え、駅の裏側へと向かいました。
(※この記事では便宜上、翌朝撮影した画像を用いております)
跨線橋を渡りきってから100mほど歩いて正面玄関に到着しました。線路側からはわかりませんでしたが、正面のファサードは妙に仰々しく、結婚式場か新興宗教などではないかと勘違いしてしまう佇まいです。駅からすぐという好立地、そして朝食付きで一泊5,450円という安さに惹かれ、今回私は宿泊目的でこちらを訪れたのでした。
宿からはニセコ連峰はもちろんのこと、羊蹄山も眺望することができました。
私が案内された客室は上画像の和室で、広さは6畳+α。テレビや冷蔵庫、トイレや洗面台などひと通りの設備が揃っているほか、Wifiも飛んでいるのでネット環境も問題ありません。また冷蔵庫にはあらかじめ冷水が入れられていたため、湯上がりの水分補給には大いに役立ちました。
朝食は食堂でバッフェをいただきます。品数豊富でよりどりみどり。
ご当地蘭越町は近年美味しいお米の産地として注目されるようになりましたが、そんな町の新しい特産物をアピールすべく、ご飯はご当地産のゆめぴりかとななつぼしを選べようになっていました。近年頓に人気を博すようになった道産米の2トップを食べ比べすることができるんですね。
さてお風呂へと向かいましょう。日帰り入浴の場合は利用時間が限られていますが、宿泊客は夜通し入浴できます。お風呂は男女別の大浴場と、別途料金(1,000円)を要する貸切風呂があるのですが、今回貸切風呂は利用しておりません。また大浴場に関しては、脱衣室内に小さいながら"NO PHOTO"と表示されておりましたので、申し訳ございませんが今回記事に限り、文章のみで紹介させていただきます。もし浴場の画像をご覧になりたい方は公式サイトをご覧ください。
仰々しい外観から想像できるように、浴場スペースもかなり大きく確保されており、イベントホールを連想させるほど空間が広がっていました。深夜や早朝は私一人でひたすら独占させてもらったのですが、自分一人で使うのが申し訳なくなるほどです。
男湯の場合、入って左手に乾式と湿式のサウナが並び、その隣に洗い場が配置されています。洗い場に設けられているカランは計14基(これに加えて立って使うシャワーが1基)あり、全てシャワー付きです。洗い場と隣り合うようにして浴室中央に据えられているのは、直径1.8mほどの円形の水風呂、そして加水されていない源泉そのままの熱いお風呂の2浴槽です。後者の熱い浴槽の湯口からは直に触れないほど熱いお湯が注がれており、湯船も私の体感で45〜6℃はあるため、熱い湯船に慣れていない一般のお客さんは入れないかと思いますが、グッと堪えて湯船に肩まで浸かると意外にも浴感が気持ち良く、後述する主浴槽よりもはるかに温泉の持つ特徴がはっきりと現れているため、私はマゾヒストになったような感じで何度も入ってしまいました。
浴室最奥部には部分的に円形となっている気泡湯槽が設置され、加水によって適温に調整された温泉が張られていました。またガラス窓を挟んだ屋外側には露天風呂が設けられており、岩風呂の浴槽には部分的に屋根がかけられていました。周囲は人家や駅が集まる地区であるため、目隠しの高い塀が四方に立ちはだかっているのですが、それでも羊蹄山の方角だけは塀をくりぬいて透明のアクリルボードを嵌めこんでおり、これによって入浴中でも山のてっぺんだけ辛うじてながめられような配慮がなされていました。なお露天風呂のお湯は新鮮源泉と循環を併行して使用している半循環の湯使いかと思われます。また、内湯は(宿泊客に限って)夜通し利用可能ですが、露天風呂は22:00から翌6:00までクローズされます。
再び浴室に戻りますと、脱衣室側から見て右側に設けられた大きな浴槽が主浴槽です。全体的に緩やかな曲線を描く形容のしがたい形状をしているのですが、強いて言えば巨大なアメーバみたいに全体をくねらせており、最も長いところで15メートルはあったかと記憶しています。湯口からドバドバと豪快にお湯が注がれており、浴槽縁に設けられた3つの切り欠けから溢湯していました。加水によって長湯したくなるような、ちょっとぬるめの湯加減に設定されており、実際に私は真夜中に湯浴みをした際、ウトウトと微睡んでしまいました。そして脱衣室側の端には打たせ湯(真湯使用)も設けられていました。
お湯は薄い山吹色を帯びつつもほぼ透明で、薄い塩味と清涼感やほろ苦みを伴う重曹感を有し、ほんのりとアブラ臭が漂っていました。付近に湧く温泉から類推するにギシギシ引っかかる塩化土類泉系のお湯ではないかと予測していたのですが、豈図らんや食塩泉と重曹泉が仲良く混在している滑らかなタイプのお湯であり、特に重曹泉らしいヌルヌルを伴うツルスベ浴感がよく現れていました。分析書によれば炭酸イオンも多いので、これもツルスベの浴感に一役買っているものと思われます。特に浴室中央にある加水されていない小さな熱い浴槽のお湯は、この温泉の特徴が最も強く感じられ、熱さを我慢して入ると、まるで化粧水の中に浸かっているかのようなツルツルスベスベ感を得ることができます。また、湯上がりの爽快感も重曹泉そのものであり、食塩泉的要素でしっかり温まると同時に、粗熱の抜けも良いため、温まりと爽快感が共存するという実に理想的な温泉入浴を楽しむことができました。
なお湯使いに関する館内表示によれば、各浴槽において塩素系薬剤による消毒が行われているそうですが、必要最小限にとどめているのか、特に消毒臭が気になることはありませんでした。また中央の熱い浴槽は源泉100%かと思われますが、それ以外は加水によって温度調節が行われており、露天風呂においては循環装置が用いられていますが、それ以外の温泉使用槽は放流式かと推測されます。
駅のすぐ裏というとっても便利な立地である上、綺麗なのにリーズナブル、しかも大きなお風呂で美人の湯に入れるという、とても利用価値の高い施設でした。
幽泉閣4号泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 53.4℃ pH8.2 湧出量未記載(動力揚湯) 溶存物質1.496g/kg 成分総計1.496g/kg
Na+:470.4mg(97.47mval%),
Cl-:453.0mg(61.53mval%), HS-:0.8mg, S2O3--:0.4mg, HCO3-:366.4mg(28.89mval%), CO3--:24.0mg,
H2SiO3:99.9mg, HBO2:11.0mg,
(平成26年1月20日)
全浴槽において塩素系薬剤による消毒あり
あつ湯槽:加水加温循環なし
主浴槽・気泡湯:加水あり・加温循環なし
露天風呂:加水循環ろ過あり・加温なし
水風呂および打たせ湯は真水(もしくは真湯)、その他は温泉使用
JR函館本線・昆布駅からすぐ
北海道磯谷郡蘭越町昆布町114-5 地図
0136-58-2131
ホームページ(蘭越町公式サイト内)
日帰り入浴10:00〜21:30(月曜は12:00〜21:30)
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★+0.5
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