温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

栃尾又温泉 自在館 その2(うえの湯)

2015年08月06日 | 新潟県
前回記事の続編です。
※この記事は2015年2月時点の様子をレポートしたものです。

前回記事では栃尾又温泉「自在館」に宿泊した際のお部屋や料理などに関して紹介致しましたが、今回からは主役であるお風呂を取り上げてまいります。と言っても、宿泊客が利用できるお風呂は計5ヶ所もあるため、4回に分けて扱います。まずは共同浴場「うえの湯」から。
栃尾又温泉には2軒の共同浴場がありますが、一般的な共同浴場とは異なり、当地に3軒ある旅館の宿泊客専用の外湯として機能しており、日帰り入浴はできません(かつては可能でした)。昔の温泉地は宿に内湯が無かったので、客は外湯を利用したわけですが、当地ではそんな昔ながらのスタイルを今でも継承しているんですね。


  
旧館から急な階段を下りて、勝手口のような狭い出入口から「うえの湯」へと向かいます。「自在館」以外の宿にお泊まりの方は、いつもでしたら屋外を歩いてアクセスするのですが、この日のような積雪期は、旧館下の雁木(伝統的な雪よけ屋根)の下を通うことになります。雁木を通るだなんて、いかにも越後の冬って感じがして良いじゃないですか。


 
勝手口から出て雁木下の通路と合流した後は、スノーシェッドを潜って玄関へ。積雪期ならではのアクセス方法ですね。「うえの湯」は「栃尾又温泉センター」という公民館のような建物に内包されているのですが、雪囲いと建物が直結しているので、冬期は建物の外観を目にすること無く建物へと吸い込まれてゆきます。


 
広々としたフローリングの玄関ホール左手には受付カウンターがあり、ガラスの向こうにはレジの機械が見えますが、普段は無人らしく、また現在は日帰り入浴もできないはずなので、このレジが活躍する機械は少ないのでしょう。浴室入り口はこのホールの右手を手前に戻るような形でクイっと曲がったところにあり、初見時はその場所がわからず、どの扉を開けたらお風呂へたどり着けるのかとホール内をウロウロ彷徨ってしまいました。
建物の図体は大きいのにお風呂は一室しか無いため、私の訪問時は朝5:00~15:00が男湯、30分のインターバルをあけて15:30~23:00が女湯というように、時間によって男女を分けていました。


 
入口のドアを開けると、通路の左右に脱衣室が一室ずつ配置されていました。いずれも棚と洗面台、そしてドライヤーが備え付けられていて、入浴客は左右どちらを使っても構わないようです。どうして1室にまとめず2室に分けたのだろう。その設計思想が理解できれば、より充実した湯浴みができたのかもしれませんが、察しの悪い私は記事を書いている今に至るまで、ちっとも解っておりません。


 
室内には源泉や湯使いに関する説明が掲示されていました。あついお湯は加温循環(放流式を兼用)で、ぬるいお湯は完全放流式とのこと。


 
浴室は広々としているものの、共同浴場という役割に則したタイル貼りの実用的な造りなのですが、谷側に面して大きなガラス窓が採用されていて、日中はとっても明るくて快適です。窓の左下に据えられている大きなお風呂は完全放流式のぬる湯が湛えられている主浴槽。15人は余裕で同時に入れそうなキャパを擁しており、若干深めで入り応えのある造りになっているのですが、槽内のステップに腰を下ろすと更に良い塩梅で浸かることができました。


 
浴槽内に用いられているコバルトブルーのタイルが、お湯の清らかさを際立たせています。お湯は中央に突き出ている島より注がれており、上には飲泉用のコップが置かれていました。完全放流式とのことですが、さすがに厳冬期の非加温はぬるくて入浴には厳しいのか、底面には小さな穴がたくさん開けられている塩ビ管が沈められており、管の中には熱いお湯が流れるステンレスのフレキ管が通されていて、そのフレキ管のお湯で他の季節と同程度になるよう、補助的な加温が行われていました。
お湯は無色澄明でほぼ無味無臭。肩までお湯に浸かると軽くてで優しいフィーリングに包まれます。35~6℃という不感温度帯なので身体への負担が無く、時間を忘れていつまでも湯浴みしつづけられ、実際に入浴客の多くが瞼を閉じてまどろみながら、長湯を楽しんでいらっしゃいました。


 
脱衣室側から見て右手の手前は洗い場で、窓側は上がり湯(あついお風呂)と寝湯が並んでいます。洗い場にはシャワー付きカランが3基設けられていました。次回記事で述べるもうひとつの共同浴場「したの湯」には洗い場に相当するような設備が無いに等しいので、汗や垢を流すには「うえの湯」が最適なんですね。


 

仲良く並ぶ2つの小さな浴槽のうち、主浴槽と同じ色をした窓側の浴槽は寝湯。主浴槽からのお湯を受けており、主浴槽より更にぬるいのですが、体を横にしても入りやすいよう、底面の形状が工夫されていました。一方、ぬる湯の浴槽より濃い群青色の浴槽は上がり湯槽(あついお風呂)。熱いといっても40℃くらい。ぬる湯じゃ物足りない方はこちらでしっかり温まってから上がると良いわけですね。説明表示で記されているように、上がり湯では加温循環されており、お湯の投入口には飲泉できない旨が記されていました。

この記事を書くに当たって、公式サイトに付帯しているブログを見ていたところ、この「うえの湯」は現在工事中なんだそうでして、今年の9月には装いも新たに生まれ変わるんだとか(詳細はこちらで)。本記事で取り上げているように、私の訪問時にはブルーとホワイトのタイル貼りの実用的な造りでしたが、改装後は「したの湯」のような雰囲気となるばかりでなく、大浴場を増築して多客時の混雑にも対応できるようにするんだそうです。
そのモデルとなった「したの湯」がどんなお風呂なのかは、次回記事にて取り上げることにします。


栃尾又1号
単純弱放射能温泉 36.8℃ pH8.6 104L/min(自然湧出) 37.0×10^-10Ci/kg(10.2マッヘ) 溶存物質272.4mg/kg 成分総計272.4mg/kg
Na+:30.8mg(39.19mval%), Ca++:40.8mg(59.65mval%),
Cl-:12.4mg(10.80mval%), SO4--:117.3mg(75.30mval%), HCO3-:19.8mg(9.88mval%),
H2SiO3:46.1mg,

その3へつづく。

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