温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

鳩之澤温泉(仁澤温泉)

2013年04月28日 | 台湾
宜蘭県の太平山国家森林遊楽区にあるいで湯「鳩之澤温泉」は台湾の方に大変人気の温泉施設でして、日本で発行されているガイドブックでも紹介されている他、拙ブログでもリンクしておりますTakemaさんもこちらを訪れていらっしゃいますので、どんなところか興味を抱き、この度私も行ってみることにしました。この温泉はかつては仁澤温泉と呼ばれており、現在でも温泉前のバス停は「仁澤」のままですが、温泉施設の方は日本風の名前である「鳩之澤」に改称された(日本時代の名前に戻された)ようです。



温泉は太平山国家森林遊楽区のエリア内にあるのですが、エリアへの立ち入りに際しては所定の料金を納付する必要があります。アクセス路に設けられているこの料金所にて一人200元を支払います。


 
料金と引き換えにスタンプが捺された領収書を受け取りました。料金所のおじさん曰く「このスタンプを温泉の受付に提示すると、入浴料金から50元値引いてくれるよ」とのこと。


 
メインストリートから逸れて温泉へ下る一本道を走っていると、途中で熱湯が大量に流れる土管を発見。その上方では真っ白い湯気がもくもくと上がっていました(一帯は立入禁止)。地熱資源が豊かな場所なんですね。


 
広い駐車場に車をとめ、周囲の環境に調和している木造のレセプション棟に入ります。宿泊営業は行なっていないため、建物自体はこぢんまりしていますが、館内で軽食程度の食事が可能です。
鳩之澤温泉には(1)水着着用の混浴露天(SPA)、(2)裸入浴の男女別露天、(3)家族風呂の3種類の温浴施設があり、受付時にどれを利用するか選択して、各施設の所定料金を支払います。(1)の水着着用SPAはネット上で画像を見たことがあり、どのような施設か見当ついていたので、今回は未知なる(2)の裸入浴露天風呂をチョイスしました。先述の料金所で受け取ったスタンプ付きの領収書を受付に提示すると、おじさんの説明通り50元引きの料金になりました。



料金と引き換えに入浴券とフェイスタオルをそれぞれ1枚ずつ受け取ります。入浴券は後で別の窓口に差し出しますから、まだカバン等にはしまわないでおきます。


 
レセプション棟から一段下がったところには、鳩之澤温泉を紹介するサイトやガイドブックで必ず画像が掲載される富士山型の温泉玉子槽があり、山のオブジェの周囲を取り囲んでいる槽には、フツフツと音を立てながら湯気を朦々と上げる熱湯が注がれていました。このお湯にタマゴを浸せば温泉卵が作れるわけですね。



鳩之澤温泉の施設はどれも周囲の環境を邪魔しない建築でして、こちらは家族風呂なのですが、すっかり山の木立に溶け込んでいますね。今回はこの家族風呂の前を通り過ぎます。


 
欄干が青く塗られた「鳩澤橋」の前には礫ばかりの荒涼とした川原が広がっており、その向こうの山肌では先ほど来るときに見つけた白い蒸気が山のそよ風にたなびいていました。


 
今回利用した裸入浴の男女別露天風呂「鳩之澤裸湯区」は上述の「鳩澤橋」そばに建てられています。
レセプション棟からここまで200m弱あり、建物の前には駐車場も確保されていますので、歩くのが面倒でしたら車で目の前まで乗り付けちゃっても問題ありません(もちろん料金は支払っておく必要がありますが)。
男女別に分かれた入口の先にあるカウンターには係員がいて、先程手にした入浴券を差し出しますと、係員はカウンター内にあるスイッチを押して、浴室への扉の鍵を開けてくれました。浴室は常に電磁キーで施錠されていて、料金を支払っていない人は入室できないようになっているわけです。


 
扉の向こう側では広々とした露天風呂が白濁したお湯を湛えていました。まるでプールみたいな浴槽です。せっかくの広い露天なのですが、頭上には目の細かな緑色のネットが張られているため、低い天井で頭を押さえつけられているような圧迫感を受けてしまいます。


 
浴槽の最奥に立つ壁の上は源泉の流路になっており、その途中でお湯が壁を伝って浴槽へ落とされるようになっていました。お湯は激熱でして、直に触ると火傷しそうなほどです。またお湯が流れるその壁は硫黄の付着により黄色く染まっていました。
しかしながら、熱い源泉だけでこの広い浴槽を満たそうとすると、とても人間が入れるような温度ではなくなるためか、壁から落とされる源泉の投入量は絞り気味になっていて、不足分を埋め合わせるように、浴槽中央の底部に設けられている複数の穴から適温のお湯がモコモコと供給されていました。このような状況から推測するに、完全な源泉かけ流しではなく、循環させながら加水の上で、新鮮源泉も一緒に投入しているような半掛け流し的湯使いなのだろうと思われます。湯船のお湯は薄い青みを帯びた灰白色に弱く濁り、湯中では硫黄の細かな湯の中が無数に舞っていて、浴槽底部の隅にもたくさん沈殿していました。


 
ここのお風呂は洗い場がユニークでして、5つある各ブースには大きな樽が設置されているのですが、利用者はまず各自で水栓を開けて樽にお湯や水を溜め、適度に溜まったところで手桶で汲んで掛け湯をするのです。なおお湯のコックを開けると激熱の源泉が吐き出され、ふんわりとタマゴっぽい硫黄臭が漂ってきました。お湯を口にすると硫化水素の存在を主張するかのようにタマゴ味が感じられ、薄い塩味も伴っているようでした。水栓金具は見事なまでに硫化して黒く変色していますね。浴槽よりもこの水栓のお湯の方が質感は優れており、私は頻りにこの樽で掛け湯してしまいました。



室内の壁にはオリジナル書式の成分表が掲示されていました。その中から目につく数字を拾ってみますと・・・
 pH7.63, Na:1109.02, Al:156, Cl:28.74, SO4:7.75, HCO3:2484.69, SiO3:169,
とのことです。肝心の単位がいまいちよくわからないのですが 陽イオンはナトリウムイオンが、陰イオンは炭酸水素イオンがそれぞれ大きな数値ですし、また私の体感から考えても、少なくとも重曹泉かそれに近い泉質であることには間違いなさそうです。ただしっかり硫黄感を有している温泉であるにもかかわらず硫化水素などのデータが載っていないのは残念なところ。またレセプションで掲示されていた宜蘭県発行の分析データとも少々異なる数字であるのもよくわかりません。調べた源泉が違うのか、試験時期が異なっているのか・・・。ま、細かいことはさておき、良質なお湯であることには間違いなく、特に湯上がり後の、潤いを伴った肌のスベスベ感は非常に素晴らしいものがありました。


碳酸鹽泉 pH7.0 41.6~74.3℃
碳酸根離子(炭酸イオン)2980~3840mg/L(※) 溶解固体量2460~3160mg/L
(※CO3--がこんなに多いはずないので、数値にはおそらく炭酸水素イオンの量も含んでいるものと推測される)

宜蘭から國光客運の太平山行バスで仁澤下車すぐ(ただし運行は週末や休日のみ)
宜蘭県大同郷太平村焼水巷25号  地図
03-9809603

9:00~17:00
水着着用の混浴露天150元
裸入浴の男女別露天150元
ロッカー(10元リターン式)・ドライヤーあり

私の好み:★★★

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2 コメント

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Unknown (渡部健作)
2020-11-21 13:51:44
スクーターで行って来ました!
青白いヌルヌル感のあるお湯、最高でした!
凄くアルカリ性が強い様に感じましたが(体が解けていく感覚...)、あれってph7程度なのでしょうかね?
平日だったおかげか、他に誰も入浴客がいなかったので、ほぼ貸切状態でのんびりできました。

私は’裸湯池’の方に入浴しましたが、温泉池の頭上にネットが張ってありましたね。
私の様な虫好きには理解できましたが、あの泉質だと虫が温泉に落ちるとたぶん一瞬でご臨終だと思います。それと落ちた虫を放置しておくと、虫の死骸でとんでもないことになると思いました。
又機会があれば行きたいと思いました。
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Unknown (K-I)
2020-11-21 23:50:41
渡部さん、こんばんは。
新しいスクーターで宜蘭へお出かけになったことはブログで拝見していましたが、鳩之沢温泉にも足を伸ばしていたんですね。長距離ツーリング、お疲れさまでした。あのヌルヌル感は、アルカリ性由来ではなく、炭酸イオンや重曹などによってもたらされているのではないかと思います。とにかく青白く濁って実に良いお湯ですよね。私もまた行きたいです。でも人間にとって天国なこの温泉も、虫たちには地獄なんですね、なるほど。
早く台湾へ出かけたいところですが、とてもじゃありませんが、いまの日本の状況では無理ですね。台湾が心の底から羨ましいです。
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