温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

じょっぱり温泉

2017年04月22日 | 青森県

上画像は旧柏村(現在はつがる市の一部)の水田から眺めた津軽の霊峰岩木山。別称津軽富士。実質的に単独峰であるこの山は、見る方角によってそのスタイルや印象が異なります。太宰治の『津軽』では・・・
さまざまの方面からこの津軽富士を眺めたが、弘前から見るといかにも重くどつしりして、岩木山はやはり弘前のものかも知れないと思ふ一方、また津軽平野の金木、五所川原、木造あたりから眺めた岩木山の端正で華奢な姿も忘れられなかつた。西海岸から見た山容は、まるで駄目である。崩れてしまつて、もはや美人の面影は無い。
と記述されており、まさにその表現の通り、木造と五所川原の間に挟まれている柏から眺める岩木山は、左右対称に山裾を広げて端正そのものです。右上の稜線がちょっとギザギザしていますが、好きな異性の八重歯みたいなものと解釈すれば、むしろ可愛く見えてくるようにも思えます。いや、それは津軽を第二の故郷だと思い込んでいる私独特の、「あばたもえくぼ」的な主観なのかもしれません。


 
さて、そんな岩木山を眺めがら、私は久しぶりに旧柏村の県道37号線沿いにある公営温泉入浴施設「じょっぱり温泉」でひとっ風呂浴びてきました。じょっぱりとは津軽弁で意地っ張りや頑固者を意味する言葉。個人的には10年ぶりの再訪なのですが、別に強情を張って再訪を躊躇っていたわけではありません。


 
玄関を入って券売機で料金を支払い、受付のおばちゃんにその券を手渡します。受付前のロビーにはワインレッドのタイルカーペットが敷かれており、ベンチが設置されて休憩できるようになっていました。


 
広々とした脱衣場を抜けて浴場へ。お風呂は内湯のみであり、中央に据えられた浴槽を囲むようにして四方の壁に洗い場が配置されるという、青森県の温泉銭湯では標準的に見られる構造ですが、天井が高くて広いため、屋内空間であってもストレスなくのびのびと入浴することができるかと思います。大きなお風呂は銭湯ならではの醍醐味ですよね。
その浴槽は、後述する湯口のところで大小に二分割されており、大きな浴槽ではブクブクと音を立てながら泡風呂装置が稼働していました。


 
浴槽を囲むようにカランが約30基並んでいるのですが、シャワー付きの混合水栓だったり、あるいは宝式(押しバネ式)水栓と固定式シャワーの組み合わせだったりと、場所によって取り付けられている水栓の種類が異なっていました。なお全てのカランから出てくるお湯は40℃前後に調整された温泉のお湯でした。


 
男女両浴場を隔てる高い塀の一部には装飾目的の石がたくさん埋め込まれており、パーテーションで仕切られた内側には1本の打たせ湯が設けられていました。



浴室の奥にはサウナと小さい浴槽が2つ並んでいます。2つのうち、ひとつは源泉のお湯が張られた泡風呂で、もうひとつは水風呂でした。


 
独楽のような形状をしている丸い湯口から、大小両方の浴槽へ温泉が均等に落とされていました。出入口に近い大きな方には、上述のように泡風呂装置が設置されていて、ブクブクと泡を立てています。一方、小さな浴槽にはそのような設置はないのですが、その代わり若干深めに作られており、湯温も若干高く、私個人としてはこちらの方が入り応えがあるように感じられました。

湯船のお湯は薄いモスグリーンを帯びた山吹色で、透明度は高く、湯の花などの浮遊は見られません。浴場内には磯を思わせる香りが漂っており、カランのお湯を口に含んでみると強い塩気と出汁味が感じられました。津軽平野の温泉でよく見られる典型的な化石海水タイプのお湯かと思われます。館内には湯使いに関する表示が見当たらなかったのですが、源泉温度に比べて湯口における温度が低く(適温になっており)、また浴槽の縁からお湯がオーバーフローしている一方で、浴槽底面に吸引口も設けられているので、おそらくはしっかり加水した上で、循環と放流式を併用しているものと想像されます(もしかしたら循環は止まっているかも)。
湯中ではツルツルスベスベの大変滑らかな肌触りが得られ、入浴中は何度も自分の肌をさすってしまいました。分析書によれば、炭酸水素イオンが429.1mg、そして炭酸イオンが29.1mgも含まれており、ミリバル%に換算すると小さな数値になって目立ちませんが(ナトリウムと塩化物の両イオンが圧倒的に多いので)、絶対的な数量としては比較的多く、これらが滑らかな浴感をもたらしているものと思われます。また食塩泉ですから、湯上がりはしっかりと火照ります。夏ですと汗が止まりにくいのですが、冬には長時間にわたって温浴効果が続くので、厳冬期には心強い味方になってくれるはずです。

駐車場や館内に昭和の歌謡曲が流れ続けるこの温泉施設。地域のご老人にとって無くてはならない憩いの場なのでしょうね。名前こそじょっぱりですが、決して意地っ張りでも頑固でもない、ジェントリーで且つ力強い温泉でした。


桑野木田温泉
ナトリウム-塩化物温泉 58.8℃ pH7.9 湧出量測定不能(掘削動力揚湯) 溶存物質11.626g/kg 成分総計11.652g/kg
Na+:4156mg(95.41mval%), NH4+:4.7mg, Ca++:57.1mg,
Cl-:6551mg(95.35mval%), Br-:26.0mg, I-:1.9mg, SO4--:30.8mg, HCO3-:429.1mg, CO3--:29.1mg,
H2SiO3:131.5mg, CO2:26.1mg,
(平成24年10月12日)

青森県つがる市柏桑野木田若宮258  地図
0173-25-2390
つがる市公式サイト内の紹介ページ

9:00〜21:00 第1・3月曜定休
320円
有料ドライヤー(10円/5分)・ロッカーあり、番台にて入浴グッズ販売あり

私の好み:★★
コメント
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