温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

浅間温泉 坂本の湯旅館

2014年08月02日 | 長野県
 
前々回・前回と信州の浅間温泉に点在する外湯を取り上げてまいりましたが、今回は同じ浅間温泉にある旅館で日帰り入浴利用した際のことを書き綴ってみます。浅間温泉ではたくさんのお宿が営業しているのですが、日帰り入浴となると時間帯が限られてたり、あるいは日帰り入浴そのものを受け入れていなかったりと、宿によって方針が様々です。そこで今回は事前に調査して、日帰り入浴に寛容で且つお湯も良いと評判の「坂本の湯旅館」へ向かうことにしました。温泉街の奥の方に位置しており、人気の日帰り入浴施設「枇杷の湯」の手前に位置しています。平屋の建物やその周りからは品の良い和の趣きが感じられます。


 
信州といえば辻々に佇む道祖神が有名ですが、こちらのお宿の軒先にも小さな双体道祖神が飾られており、信州らしさを演出していました。暖簾がかかった玄関の右下には小さなゴミ箱が写っていますが、これはペット用でして、何とこちらのお宿はペットと泊まれるのです。


 
帳場周りのロビーは靴のままで入館できるのですが、下足で歩くのが躊躇われるほど館内は綺麗に維持されています。この帳場で日帰り入浴をお願いしますと、女将さんが快く応対してくださいました。玄関の左側が浴場です。


 
浴室手前のショーケースには骨董ものと思しき器などと共に、2枚の古い感謝状が展示されていました。一方は皇紀2600年(つまり昭和15年)付・松本陸軍病院長からのもので、支那事変(いわゆる日中戦争)勃発後に戦傷兵士が増加したにもかかわらず洗濯設備が不十分であったところ、4年間にわたってこちらの宿の女将と思しき女性が病衣の洗濯奉仕を続け、銃後婦人として活躍したことに感謝するもの。もう一方は終戦直後の昭和20年11月付・東京都長野出張所長からのもので、都内にある国民学校から当地へ避難してきた学童疎開に関して、寮主として宿の主人が疎開を受け入れたことに対する謝状でした。学童疎開の謝状の上にはセピア色の古い集合写真が立てられており、毬栗頭の男の子達やオカッパ頭の女の子達、そしてその一番端には先生と思しき大人が一人写っていました。当時ここで疎開生活を過ごした学童達は、いま何歳になっているのでしょうか。まさか、こんなところで戦争の面影に遭遇するとは想像だにせず、近現代史が好きな私としてはつい釘付けに。


 
脱衣室も非常に綺麗で清潔感にあふれており、棚や籠にもゆとりがあるので、快適に使うことができました。なおロッカーはありませんので、貴重品は帳場に預けましょう。



お風呂は男女別の内湯のみで露天はありません。和の趣きに満ちた浴室では、窓から浴槽に向かって陽光が降り注いでおり、程良い明るさと落ち着きが両立しています。床には正方形のタイル状木板が用いられているのですが、メンテナンスを考慮してか、表面にはニスか何かの樹脂がコーティングされていました。木材をそのまま使う従来の工法も良いのですが、このようにタイル状にして上からコーティングしちゃった方が、後で部分補修する際に作業が楽になりますし、また見た目にも木の柔らかさとモダン和風な佇まいが共存しているように感じられるので、こうした手法はなかなかの妙案であるかと思われます。


 
浴室の左右に分かれて洗い場が設けられており、計4基のシャワー付き混合水栓が取り付けられています。シャンプーやボディーソープの備え付けもあり。


 
長方形の浴槽は7~8人サイズといったところで、床と同じように槽内底面にもタイル状の木板が敷き詰められており、木肌の濃淡によってモザイク模様ができあがっていました。窓の下に立てられている札には、このお湯は掛け流しで加熱加水循環濾過消毒など一切ない旨が説明されています。


 
浴槽縁の左右には切り欠けがあり、特に右側の切り欠けからは、掛け流しを証明するかのように、浴槽のお湯がどんどん床へ溢れ出ていました。こうして惜しげも無くお湯が溢れてゆく様を目にするだけでも、豪快な気分になれますね。


  
湯口には宿の屋号が配された鬼瓦が載せられており、湯口周りには白い析出が付着していました。
浅間温泉にはいくつかの源泉が湧出していますが、こちらに引かれているのは1号源泉の一本のみ。そのお湯は無色透明で、特に湯の華らしきものは見当たりませんでしたが、1号源泉の特徴というべきタマゴ的な味と匂いがほんのりながらもはっきりと感じられ、白い析出として現れているように若干の芒硝感も得られました。お湯の中ではスルスルっとした軽やかな浴感が心地よく、また加水や加温の無い完全掛け流しにもかかわらず42~3℃という絶妙な湯加減が保たれており、鮮度感も良好で、実に素晴らしい湯浴みが楽しめました。
品の良い落ち着いた雰囲気の浴室で、完全掛け流しのフレッシュなお湯をじっくり味わえる、とても素敵なお風呂でした。是非再訪したいお宿です。


第1号源泉
アルカリ性単純温泉 46.5℃ pH8.8 287L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質399.0mg/kg 成分総計399.0mg/kg
Na+:81.4mg(67.95mval%), Ca++:32.2mg(30.90mval%),
Cl-:31.7mg(16.67mval%), HS-:0.3mg, SO4--:185.0mg(72.11val%), HCO3-:25.9gmg(7.87mval%),
H2SiO3:35.7mg,

JR松本駅よりアルピコ交通バスの浅間温泉行で「浅間温泉」バス停下車、徒歩6~7分(350m)
長野県松本市浅間温泉3-31-30  地図
0263-46-1097
ホームページ

日帰り入浴時間不明(ネット上には「10:00~21:00で土曜は15:00まで」という情報あり)
600円
シャンプー類・ドライヤーあり、貴重品類は帳場預かり

私の好み:★★★
コメント
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