温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

岩倉温泉

2016年10月23日 | 秋田県
 
前回記事に引き続き、昨年秋に湯巡りした記録をアップさせていただきます。この日は秋田県大仙市の名湯であり、秘湯を守る会の会員宿でもある「岩倉温泉」で日帰り入浴させていただきました。旧南外町の山中にある一軒宿で、温泉街が形成されているわけではありませんが、この辺りの地名はズバリ「湯元」。地名にするほど存在感がある地域の誇りなのでしょうね。


 
玄関で声をかけて入浴をお願いしますと、スタッフの方はとても丁寧に対応して下さいました。館内は和の趣きたっぷりの落ち着いた雰囲気です。


 
玄関からカーペット敷きの廊下を歩き、中庭の池をコの字形に迂回して浴場へと向かいます。訪問した日はあいにくの天気でしたが、深紅に染まった中庭の紅葉は、雨に濡れて一層色を濃くしていました。


 
浴場出入口の手前に洗面台が並んでおり、温泉の飲泉所も兼ねているようです。


 
暖簾をくぐって脱衣室へ。室内は至ってシンプルで実用的です。目を惹くのが壁に張り出された案内書き。浴室内のシャワーから出てくるお湯は温泉なのですが、温泉に含まれるカルシウムが多く石鹸が泡立たないため、石鹸やボディーソープの備え付けは無く、シャンプーのみ置いていると書かれていました。ヨーロッパなど海外で洗濯なさったことのある方ならご存知かと思いますが、海外で多い硬水の水道ですと、洗剤が泡立ちにくいんですよね。これと同じ理屈で、カルシウムやマグネシウムが多い温泉は石鹸類が泡立ちにくいわけです。詳しい説明は花王株式会社公式サイトの製品Q&Aなどをご覧ください。ということで、入浴前にはシャワーでしっかりと体を濯ぎましょう。


 
浴室も奇を衒わないタイル張りなのですが、男女両浴室の仕切りにはガラスブロックが用いられており、屋内に明るさと視界的な広さをもたらしています。浴室手前側に洗い場が設けられ、シャワー付きカラン1個とスパウトのみの水とお湯のセットが1組、計2基が並んでいます。先述のようにカランから出てくるお湯は温泉です。


 
男女両浴室の間に挟まれる形で石灯籠が立っており、その下で口を開ける龍から温泉が滔々と注がれていました。そして温泉成分の析出により龍の顔面は真っ白に覆われていました。湯口のそばに置かれたコップで飲泉してみますと、しっかりとした塩味と石膏味、ほろ苦味が感じられ、そしてふんわりとした石膏臭が喉から鼻へ抜けていきました。


 
浴槽は2.5m×2mのタイル張りで、縁には黒い御影石が採用されており、やや深い湯船はしっかりとした入り応えがあります。浴槽に張られたお湯は無色透明なのですが、タイルの色の影響を受けているのか、僅かに翠色を帯びているようにも見えました。
湯中ではトロミを伴う滑らかなフィーリングが得られるとともに、キシキシと引っかかる硫酸塩泉的な浴感もはっきりと存在感を主張しています。肩まで湯に浸かると思わず「ほっ」と息が出てしまうような、絶妙な湯加減がキープされているのですが、しばらく浸かり続けていると、まるで子泣き爺が載っかっているんじゃないかと勘違いしたくなるほど、体にズシリと重くのしかかるような感覚があり、熱くないのに長湯するのが躊躇われるほど、ヘビー級のパワーが全身に伝わってきました。そして湯上がりもしばらくは汗が引かず、いつまでもホコホコし続けました。落ち着いた雰囲気も相まって、一見すると大人しそうなお湯に見えますが、実はかなりの実力を持っている良質な温泉なのであります。今回は日帰りでの利用でしたが、宿泊してこのお湯に浸かったら、きっと深い眠りに就けそうです。いずれ泊まってみたいなぁ。

わずか400円の日帰り利用にもかかわらず、退館時はスタッフの方がわざわざ玄関まで見送ってくださいました。お湯も良ければホスピタリティもすばらしい。ブリリアントな名湯でした。


岩倉1号井
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 58.3℃ pH7.7 溶存物質4570mg/kg 成分総計4580mg/kg
Na+:1106mg(65.90mval%), Ca++:491.5mg(33.60mval%),
Cl-:1915mg(72.52mval%), Br-:6.7mg, I-:0.4mg, SO4--:958.5mg(26.80mval%),
H2SiO3:49.6mg, HBO2:15.3mg,
(平成22年3月12日)
加温加水循環消毒なし

JR大曲駅より大仙市コミュニティバス・南外線で「岩倉温泉」バス停下車すぐ(時刻などはバスを運行している羽後交通の公式サイトでご確認ください)
秋田県大仙市南外字湯元1   地図
0187-74-2345
ホームページ

日帰り入浴時間10:00〜19:00(時間内でも入浴不可な場合あり)
400円
ドライヤーあり、シャンプーのみ備え付けあり(理由は本文参照)

私の好み:★★★
コメント (6)
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小坂町立老人憩の家 あかしや荘

2016年10月03日 | 秋田県
 
秋田県小坂町の老人福祉施設「小坂町立老人憩の家 あかしあ荘」には温泉浴場が設けられており、外来者でも利用することができるので、ちょっと立ち寄ってみることにしました。施設としては昔からあるのですが、7年ほど前に完全リニューアルされ、黒基調のシックで綺麗な建物へと生まれ変わっております。



施設の前にはコミュニティーバスの停留所が立っています。バスは小坂町の中心部から某有名野湯の入口にあたる集落までを往復しており、その途中でこのバス停を経由するようです。括り付けてある時刻表によれば、平日は1日4本されるのですが、土曜と日曜祝日は1日2本しか運行されず、しかも午前中のみ。日曜祝日に関しては運行される日とされない日があるという変則的な運転パターンなので、観光目的でバスを使うのはちょっと難しそうです。


  
 
玄関を入り、下足場に設置されている券売機で料金を支払って、窓口に券を差し出します。老人憩の家と称するだけあって、館内は談笑できるようなくつろぎのスペースが広く確保されており、ポカポカな陽だまりのフローリングホールの向かいには、横になって休めそうなお座敷も設けられていました。またホールの一角にはキッチンもあり、公営の福祉施設でありながらアットホームな雰囲気が漂っていました。


 
脱衣室は決して広くないものの綺麗に手入れされており、備品もひと通り揃っているので、使い勝手に問題はありません。この室内で目を惹いたのが、注意喚起の張り紙です。デカデカと「うんち・おなら」と書かれたこの張り紙を小学生が見たなら、大爆笑すること間違いないでしょう。でも老人福祉施設という性質上、笑えない切実な話なんだろうと思われます。私も別の施設のスタッフさんから、お年寄りがお風呂で漏らすので困っているという話を聞いたことがあります。お年寄り本人としても、意図的に漏らしたい訳ではなく、老いた体を自分で制御しきれないのでしょうね。「子供叱るな来た道だ、年寄り笑うな行く道だ」という言葉がありますが、この大きな文字を見て、いずれは自分もこの注意を真剣に受け止めなきゃいけない歳を迎えるのかと想像すると、笑うどころか暗澹たる心境になってしまいました。


 
お風呂は男女別の内湯のみで露天風呂はありません。浴室は実用的なつくりですが、窓から差し込む陽光のおかげで明るく、綺麗に清掃されており、現代的な建材やデザインを採用しているため、快適な入浴環境が保たれていました。
最奧に据えられた浴槽の手前左右両側に洗い場が設けられ、シャワー付きカランが計7基取り付けられています。なおボディーソープなどの備え付けはないため、利用時には各自持参しましょう。


 
浴槽は(目測で)2m×4mの四角形で、大体7〜8人サイズ。上述のように陽光が燦々と降り注いでいるため、日中の浴室はとても明るいのですが、それでも湯船のお湯は強く濁っていて、浴槽内の様子が全く目視できません。このため正面に大きく掲示された注意書きが、浴槽内に段差があることを利用客に案内しています。私もこの掲示が無ければ、2段ステップがあることには気づきませんでした。


 
お湯は御影石で組まれた湯口から注がれており、湯船を満たしたお湯は反対側にある目皿より排湯されていました。館内表示によれば、循環のない放流式の湯使いなんだそうですが、加水や加温は行われているらしく、特に加温によって濃いオレンジ色の濁りが発生するものと推測されます。この湯口をよく観察しますと、下から立ち上がっている配管と上から降りてくる配管が湯口内で合流しており、後者の配管には激熱のお湯が流れているので、この施設においては、源泉のお湯を直接加熱するのではなく、ぬるい源泉のお湯に高温の沸し湯(おそらく水道水)を加えることによって温度調整を図っているのではないかと思われます。つまり先述の加水とは、単に水道水で薄めているという意味ではなく、加温用の沸かし湯を足していると解釈すべきものなんでしょうね。
余談ですが、分析書によれば、湧出温度は36.1℃だそうですから、冬季はしっかり加温する必要がありますが、夏季はむしろそのままの温度の方が気持ち良いので、季節限定で非加温のお湯を提供してくれたら、結構人気を博しそうな気がします(あくまで個人的な見解ですが)。それにしても、こんな濃い濁りが発生しちゃうお湯ですから、配管のメンテナンスには相当ご苦労なさっているものとお察しします。

お湯を口に含むと、はっきりとした金気味と薄い塩味、そして石膏感が得られます。どうしても濁りや色が強いために、金気という特徴に関心を奪われがちですが、分析書によれば硫酸イオンが2463mgも含まれており、この数値は特筆に値するほど多いかと思われます。その一方で、見た目はご近所の超有名野湯や前回記事のビニールハウス浴場のお湯と似ていますが、こちらのお湯からはあまり炭酸らしい特徴は感じられませんでした。
湯中ではギシギシとした引っ掛かりの強い浴感があり、湯上がりにタオルで体を拭おうとすると、白いタオルがオレンジ色に薄く染まってしまいました。個性的なお湯が楽しめる実力派の施設でした。


あかしあ荘源泉
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉 36.1℃ pH6.9 溶存物質5534.0mg/kg
Na+:106.7mg(56.69mval%), Mg++:110.7mg(11.13mval%), Ca++:501.5mg(30.56mval%), Fe++:2.9mg, Fe+++:0.9mg,
Cl-:882.4mg(30.12mval%), I-:1.2mg, SO4--:2463mg(62.05mval%), HCO3-:385.8mg(7.65mval%),
H2SiO3:36.3mg, HBO2:36.0mg, CO2:75.5mg,
(平成19年10月30日)
加水あり(温泉の供給量の不足を補うため)
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
循環消毒なし

秋田県鹿角郡小坂町小坂鉱山字渡ノ羽58  地図
0186-29-2434

10:00~19:00(受付18:30まで) 火曜定休
350円
ロッカーあり(100円有料)・ドライヤーあり、シャンプー類なし

私の好み:★★

コメント (4)
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八九郎温泉 2015年11月 再訪

2016年10月01日 | 秋田県
 
次なる目的地は、前回記事で取り上げた超有名野湯のゲートウェイにあたる集落の端っこでぽつんと佇むこのビニールハウスです。拙ブログとしては2009年8月以来7年ぶりの再登場となります(以前の記事はこちら)。


 
各部材が適宜補修されてるようですが、基本的な構造や様子は前回訪問時とほとんど同じでした。農業用のビニールハウスでつくられた簡素な施設でありながら、浴室がちゃんと男女別に分かれているのは立派です。唯一以前と明らかに違う点は、出入口の内側にこの入浴施設に関する説明が2点掲示されていることでしょうか。1点目は免責事項に関することで、この温泉は公衆浴場法で規定する入浴施設ではないから、関係者以外が入浴した場合の事件事故疾病などに関しては一切責任を負いませんよ、という内容が記されています。もう1点は施設の設立趣旨であり、この温泉は「地域の賑わいづくり」として地域住民自らが整備した施設である旨が記載されていました。


 
脱衣室も至って簡素ですが、室内には棚が設置され、農作業用の小さなコンテナを衣類を収める籠として活用しており、風呂としての体裁が整えられていました。この室内に料金箱があるので利用時には寸志を納めるのですが、その額の基準が書かれていないため、寸志の相場をご存知ない方は迷ってしまうでしょう。私は100円玉を数枚投入しましたが、大体2〜300円前後、少なくとも100円以上で良いのではないでしょうか。
寸志とはいえ、無銭入浴に関しては厳しく目を光らせているらしく、後述する湯船で私が湯浴みをしていると、どこからともなくお婆さんがやってきて、寸志箱の中にお金が入っていることを確認した後は、こちらへ何も言わず静かに立ち去っていきました。ということは、私の行動はどこかで監視されていたわけか…。


 
あいからわずこの浴室はお湯の溢れ出しがすごいですね。圧巻です。浴槽や床などお湯に触れる箇所は、悉くカルシウムに覆われ、金気で赤茶色に染まっていました。


 
男女の仕切り下よりシュワシュワと泡立ちながら絶え間なく湧出し続けていお湯の温度は41.1℃でした。湯口周りはサンゴ礁みたいなトゲトゲに覆われています。お湯を口に含むと、明瞭な炭酸味のほか、甘塩味や石膏甘味、そして強く金気味が感じられました。



お湯の投入口の真裏にあるこの丸い物体が源泉井なのかな。


 
湯船は3〜4人サイズ。湧きたての温泉が常時大量投入されているためお湯はとってもフレッシュですが、それでも外気に触れた瞬間に酸化がはじまるためか、湯船のお湯は潮汁のような微濁を呈しており、湯中では赤茶色の細かな湯の華がたくさん浮遊していました。
湯加減は40.6℃という長湯仕様ですが、食塩泉的な要素に加えて炭酸の温浴効果が発揮されるためか、じっくり湯浴みしていると、その湯温をはるかに上回るパワフルな温まりが得られ、湯上がりも長い時間にわたって体がホコホコし続けました。遊離炭酸ガス805.4mgという数値は伊達じゃありません。超有名野湯も最高ですが、こちらも負けず劣らずの素晴らしいお湯であります。

なお、私が利用したのは昨年11月であり、紅葉も終わって冬へと突入する時期でしたから、虫の被害に遭うことはありませんでしたが、炭酸ガスをたくさん放出する温泉であるため、夏季になるとアブに刺される可能性があります。吸血性の虫が発生する時季には気を付けてご入浴ください。


カルシウム・ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩温泉 41.6℃ pH6.4 溶存物質4284.9mg/kg 成分総計5090.4mg/kg
Na+:555.9mg, Mg++:94.7mg, Ca++:557.9mg, Fe++:3.9mg,
Cl-:904.2mg, I-:1.2mg, SO4--:765.5mg, HCO3-:1277mg,
H2SiO3:66.2mg, CO2:805.4mg,
(平成20年1月21日)
加温加水循環消毒なし

秋田県鹿角郡小坂町某所

入浴時間には特段制限はないようですが、地域住民のための施設ですので常識の範囲内で。
寸志
備品類なし

私の好み:★★★
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某所の超有名野湯 2015年11月、またまた訪問

2016年09月29日 | 秋田県
前回記事までは今年(2016年)1月の温泉訪問記を取り上げてまいりましたが、今回記事からはさらに時計の針を戻して、ほぼ一年前となる2015年11月に巡った北東北の温泉を連続してアップさせていただきます。毎度毎度のことですが、情報鮮度に欠けるブログで誠に申し訳ございません。言い訳になっちゃいますが、これから紅葉を迎える東北観光の参考にしてくだされば幸いです。

さて今回取り上げるのは、拙ブログにおいて4度目の登場となる、秋田県山中の超有名野湯。
最近では六本木の某テレビ局など各メディアでも取り上げられるようになったらしく、最早その知名度は全国的になっておりますので、いまさら匿名にする意味はありませんが、でも大っぴらに公表すると秘湯感が薄れるような気がするので、今回も世間の目を憚って匿名で書き綴らせていただくことにしました。



はい、到着です。私個人としては6回以上は訪問しているかと思います。今回訪れたのは2015年11月の某日。前回訪問したのは6月初旬だったためブヨの猛襲に悩まされましたが、冬を目前にしたこの日は紅葉もすっかり落ちており、野湯の大敵となる虫が完全になりを潜めていましたので、痒み痛みを気にすることなく湯浴みに専念できました。



最近、この野湯には行政関係と思しき方によってロープが張られるようになりました。ネット上では「とうとう関係当局によって目をつけられるようになったのか」とか「もしかしたら入れなくなるかも」などといったような憶測が広がりましたが、実際に現地で確認したところ、立入禁止を宣告するものではなく、ゴミや人工物は置きっ放しにしないでね、といった程度の注意喚起でした。ゴミの放置はもってのほかですが、以前は桶など入浴グッズも置かれており、入浴者にとっては便利であった反面、人工物を放置することは当地に関係する法令に抵触してしまい、結果として何らかの措置を取らざるを得ない状況になりかねないため、そうした事態を招かないよう、行政の担当者が注意してくれているんだろうと推測されます。つまりとっても親切な配慮なんだと思います。
そうした呼びかけのためか、前回訪問時に見られたケロリン桶などはすべて撤去されており、自然に近い姿へ戻されていましたが、それでも当地でテントを張ったり、あるいは車中泊をする方が残していったのか、残念ながら川沿いの駐車スペースにはゴミが散らかってされました。そんなこともあろうかと、私は持参したビニール袋でゴミ拾いをしましたが、一介の温泉ファンとして僭越ながら申し上げれば、ゴミの持ち帰りは徹底していただきたいと強く願っております。


 
この野湯は、湧出地こそ決まっていますが、そこから流れ出る下流側の湯溜まりは、来るたびにその位置や形状を変えているようです。前回訪問時と比べると、湯溜まりがひとつ増えていました。誰かさんが手掘りしたのかな。その一方、炭酸カルシウムの付着のためか、天然ジャグジーのメイン湯溜まりは、若干小さくなっているような気がしました。


 
天然ジャグジーはこの日も元気に湧出しており、温度計を突っ込んだら44.1℃と表示されました。炭酸味+塩味+金気という知覚的特徴は以前と同様であり、噴出する勢いにも衰えは見られません。この温泉はしばらくは安泰でしょう。


 
前回訪問時には無かったと思われるこの小さい湯溜まりは、大人一人が入るのにちょうど良いサイズなのですが、湧出地から若干離れているため程良くお湯が冷めており、噴出地直上の44℃という湯温が熱く感じる方でも入れるるような、丁度良い湯加減になっていました。



私は多少熱くても天然ジャグジーの直上が良いので、湧出地で湯浴みさせていただきました。
はぁ、いい気持ち。極楽だぁ。ここは何度訪れても最高ですね。

余談ですが、4年前の『小坂町議会だより』第60号(平成24年2月10日)の中で気になる記事を見つけましたので、ちょっと古いネタですが、当記事の最後にご紹介させていただきます。この天然のジャグジーは当然ながら地元の方々もご存知であり、この自然の恵みを求めて私のように他県からわざわざ足を運ぶ観光客も多いため、他県からの訪問者を町おこしへつなげられないかと地元の方が考えるのは至極自然な流れです。実際にそうした発想が平成23年12月の町定例議会で提案されました。議会において或る議員が「観光振興について」と題して、最近多くなっている●●温泉を訪れる観光客への対応とその利活用について町長に質疑したところ、町長は「国有林内であること、法的な手続きをとった本来の温泉施設ではないことから、現状では自己責任で利用していただく事としており、観光施設としては位置づけておりませんので今のところは現状のままと考えております」と答弁しました。詳しくは「小坂町議会だより」第60号(平成24年2月10日)の8ページをご覧ください。翻って思い出しますと、確かにこの野湯では数年前から営林署名義で同様の文章を記した看板が立つようになりましたね。そして答弁から4年経った現在でも、マス媒体に取材されながらも以前と同じ状態が維持されつづけているということは、当時の町長の見解が今でも通用しており、今後も余程のことが無ければ関係機関による黙認状態が続いて、従来通りに野湯を楽しむ事ができるのだろうと思われます。尤も、議員の提案のように観光目的で下手に人工的なものが設けられると興醒めですし、逆に国有林関連の法令に抵触するとして閉鎖されるのは最も避けたい事態ですから、我々温泉ファンとしても現状維持が最善な形です。そのためにも、ぜひゴミの持ち帰りやゴミ拾いを心がけていただき、またテントなどで山火事を起こさないようくれぐれも注意していただきたいと心より願っております。


秋田県鹿角郡小坂町某所

私の好み:★★★

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長瀞温泉(パノラマ風呂)

2016年08月05日 | 秋田県
 
引き続き秋田県北部の温泉を巡ります。今回取り上げるのは大館市郊外にある温泉浴場「長瀞温泉」です。長瀞と聞くと、私のような関東の人間は埼玉県秩父の荒川上流にある景勝地を連想しますが、この温泉は秩父と全く関係がありません。でも首都圏の意外なところと謎の結びつきがあるみたいです。詳しくは後ほど。
この温泉は小さな集落の端っこに位置しており、周囲には山林が広がっています。そしてすぐ裏を奥羽本線の線路が東西に横切っており、私が駐車場に車をとめると、EF510形機関車「レッドサンダー」牽引のコンテナ貨物列車が青森方面へ向かって颯爽と走り去っていきました。


 
私は初めてこの温泉を訪れたのですが、館内へ足を踏み入れた刹那、まるで昭和から時が止まったかのような独特の雰囲気に、思わず息を呑んでしまいました。館内には使い古されてテロンテロンになっちゃった薄いグリーンのカーペットが敷かれており、その上に置かれている物品や、壁・天井などに取り付けられている設備から、ことごとく昭和の香りが漂ってくるのです。


 
いや、実際に時計の針が止まっているのかもしれません。昔懐かしいパチンコ機などが設置されているほか、使えるのかどうかわからない綿あめ製造機、そして昭和40~50年代の商店街の軒先でよく見られたコインで動く電動遊具が3つも並んでいたのです。しかも現役なのですから驚くほかありません。私も幼い頃に赤羽(東京都北区)の商店街で乗って遊んだ記憶がありますが、ここ30年ほどで街頭からすっかり姿を消してしまい、もう二度と見られないものと思っていましたので、ここで再会するとは想像だにせず、懐かしさのあまり思わず童心に帰り、画像を撮ってからその姿を自分の手で撫でてしまいました。きっとこの温泉だけ時空の歪みにはまり込んでしまったに違いありません。いや、特殊相対性理論が現実社会で成立している稀有な例なのかもしれません。きっとアインシュタインもびっくりするはず。是非とも科学誌『ネイチャー』で発表していただきたいものです。


 
こちらの温泉は、料金がちょっと高い「赤外線風呂」と、安い料金設定の「パノラマ風呂」があり、料金先払いの番台でどちらか一方を選ばなくてはなりません。どちらがどうなっているのかわからなかったのですが、今回は安い「パノラマ風呂」を選ぶ事にしました。脱衣室へ至るまでにユニット式洗面台が設置されている喫煙室を通過するのですが、その洗面台の脇には男湯の前なのになぜかパーマ機が置かれていました。林家ぺーのような髪型の方が常連さんがいらっしゃるのでしょうか。

このパーマ機と対峙するような位置に、「温泉分析書」なるプレートが掲示されているのですが、この記載内容がちょっと不可解なのです。昭和56年のままの古いデータであり、しかもデータの数値がちっとも詳しくないのですが、その程度なら他の温泉でも見られますので驚くに値しません。私の頭を混乱させたのは、分析の申請者に関する記載です。そこには「東京都千代田区九段4丁目3番地 (株)湖池公爵」と書かれていたのでした。おそらくこの温泉の経営に関係する企業なのでしょうけど、(株)湖池公爵ってどんな会社なのでしょうか。そもそも、なぜ公爵? 伯爵とか男爵もあるのかな? なぜ東京の企業が大館の田舎にある温泉とどんな関係があるのかな。
この企業の所在地に関してさらに掘り下げますと、昭和41年の住居表示実施によって千代田区から九段4丁目という地名は消えていますので、昭和56年以降に製作されたと推測されるこのプレートに、消えた地名を会社の所在地として書くのは誤記と言わざるをえません。ちなみに昭和41年以前に九段4丁目の奇数番地だったところは現在の九段南4丁目に該当し、市ヶ谷駅から靖国通りを神保町方面へ向かった右側の一帯、山脇美術専門学院や麹町郵便局があるエリアに相当します。いまでも湖池公爵という会社は存在しているのでしょうか。


 
余談がすっかり長くなってしまいました。ごめんなさい。
さてようやく脱衣室へとたどり着いたわけですが、棚と腰掛けしかない至って質素で殺風景な室内の奥には、これまた普段はあまり見かけない謎のベッドらしきものが据え置かれていました。コインタイマーが付帯されているので、有料で一定時間だけ何らかの動きをするのでしょうけど、これってマッサージベッドなのでしょうか? この温泉は単にレトロであるばかりでなく、謎も多くため、一つ一つを突っ込んでいったら、頭がこんがらがって夜に寝られなくなってしまいそうです。


 
脱衣室内にはユニット式洗面台が1つ据え付けられており、コンセントが1つ使えるようになっていたのですが、もし貸しドライヤーを使う場合は100円有料となり(番台で貸し出し)、もし持参のドライヤーを使う場合でも20円を要するとのこと。


 
こちらが浴室の様子。大きな浴槽に広い窓が接しており、この横に長い窓がパノラマと名乗る所以なのでしょう。窓外には池や庭木が配され、周囲の山林を借景としているような庭の景色が展開されているのですが、景色自体は退屈であり、しかも窓ガラスは汚れていて、視界を邪魔する網戸も張られているため、この大きな窓を以ってパノラマと称するのは、ちょっと無理があるような気がします。


 
浴室内はそこそこ広く、ほとんどの部分がタイル張りになっています。洗い場にはシャワー付きカランが計13基設置されており、一つ一つの間隔が広いため、隣の客との干渉をあまり気にせず使うことができるかと思います。この洗い場の奥にはサウナらしき小室と水風呂があるのですが、サウナらしきその小部屋は施錠されているようでした。


  
 
パノラマの窓ガラス下に横長の浴槽が設けられており、温度や機能などによって3つに分割されています。3つの浴槽のうち、中央の浴槽は最も大きく、洗い場側に向かって緩やかな曲線を描きながら膨らんでいます。この中央槽には、顎まわりに白い析出をこびりつけているライオンの湯口からお湯が注がれており、いつまでも長湯したくなるようなぬるい湯加減がキープされていました。そして浴槽のお湯は縁の切り欠けから洗い場へ向かって溢れ出ていました。
一方、脱衣室側の小さな浴槽は泡風呂で、中央の浴槽よりもさらにぬるい温度となっていました。


 
一番奥の浴槽には石を貼り付けた山型の壁飾りが施されており、その下部にある湯口から50℃以上はあろうかと思われる熱いお湯が投入されていました。この浴槽でもお湯の溢れ出しが見られるのですが、投入量に対して明らかに溢れ出す量が少なく、私が湯船に全身を沈めてようやくしっかりと溢れるような状況でした。槽内の底部に怪しい穴を発見したのですが、循環などが行われているかは不明です。でもこの浴槽のお湯は間違いなく加温されているでしょう。

お湯は無色透明で湯の花や泡つきなどは見られません。ライオンがお湯を吐き出す中央のぬるい浴槽においては、弱い石膏感と微かなタマゴ感が得られましたが、加温されているであろう熱い浴槽ではこれといった特徴の無い没個性のお湯と化していました。味や匂いなどの面はあまり印象に残っていないのですが、お湯に浸かって肌を撫でてみますと、ツルスベの中にグリップが効き、しかも湯上がりにはしっかり温まるという、大館エリアで湧く温泉に共通してみられる硫酸塩泉としての浴感をきちんと有していることが体感できました。謎の多い施設ですが、お湯はれっきとした温泉なんですね。
もう一つの浴場である「赤外線風呂」はまだ利用しておりませんので、この温泉の全貌を語ることはできませんが、昭和レトロが好きな方や、夏にぬるいお湯に浸かってリラックスしたい方には相応しい施設だろうと思います。


長瀞天然温泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 44.0℃ pH9.6 600L/min 蒸発残留物708mg/kg
他のデータは不明
(昭和56年1月8日)

秋田県大館市沼館字長瀞45-1  地図
0186-43-0345

6:00~21:30
パノラマ風呂(大浴場)310円、赤外線風呂460円
ロッカー(100円有料)・ドライヤー(100円有料貸出)あり

私の好み:★★
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