席に着き、予告が始まっても
隣の席の女性が連れの女性とおしゃべりの真っ最中だ
だが、声はない。
ものすごい速さの手話の手の動きが空気を切る音と
時々座席に当たる振動が
私まで届く。
ふと見ると二人ともまだ若い女性たちだ。
そうして、初めて映画の内容を思い起こし気づいた・・・
フランスの田舎の農家の風景、懐かしい曲
生活する中で普段あまり気にしないような音なのだが
聴こえない家族たちは容赦なく音をたてる
調理の音、歩く音、お皿を置く音なども結構すさまじい。
なんとも手話の速いこと、そうして動きもリズミカルですごいのだ
まるで踊っているようなしぐさが飛び交う
俳優さんたちは手話の猛レッスンをマスターして
役に挑んだのだろう
家族の中で長女ポーラだけが聴覚障害がなかったため
彼女が周りの人たちと家族との橋渡しの役目を担い
上手にコミュニケーションをとっていたのだが・・・
オープンで明るくて仲の良かった家族が
ポーラの歌の才能がわかりパリの音楽学校の試験を受けることになったことで
ガタピシ言い始める。
彼女の素晴らしい歌声を聴くことのできない家族は才能を信じることもできない
陽気な母もしっかり者の父もおませな弟も不安でいっぱいだが
それらを乗り越え
娘の才能を理解し、応援していく家族の葛藤ときずな
青春と旅立ちの作品がすがすがしかった。
ポーラ役のルアンヌ・エメラの声がなんとも素晴らしい
フランスで人気の歌のオーディション番組で注目を集めた新人だという。
泣いて笑って、家族の温かさを知る感動作。
ひさしぶりの涙が流れ伝った・・・