そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

大型農業=機械依存農業=外部資本依存=経営効率の低下=労働時間の増大、これが攻める農業の実態

2017-02-14 | アベノミクス

安倍晋三は日本の農業を攻める農業にと転換を促す。攻める農業とは、大きくすることである。農業の規模を大きくすれば経営が安定するという、固定概念がある。農業は工業のように、商業のように徒に大きくすれば、効率が上がって経営が安定するというようなものではない。農業の持つ基本的な生産性は、規模とは無関係である。規模拡大することによって、粗収入が増えて機械屋さんも飼料屋さんも乳業メーカーさんも、沢山お金が回っているから農協さんもホクホクでお奨めなのである。
上の記事は(クリックすれば大きくなります)友人が送ってきたものであるが、それは全く農家のためになっていないことを、珍しく経済学者が語っている。つい先日の朝日新聞のコラム欄である。
一般的な酪農家は、働き手が2.4人で70.9頭搾乳している。粗収入が7592万円であるが経費が5979万円となっている。農家手取りが1613万円である。労働時間は8078時間であるから、時給は1997円になる。
一方、在来型の小規模農家では働き手が1.2人で28頭搾っている。粗収入が2775万円であるが経費が1035万円である。労働時間は3489時間であるから、時給は4987円になる。
この数字は根室地方ではもっとこの差は大きい。筆者は経済学者であろうが、酪農の現場はこの数字以上のものがある。上の一般的な農家は乳量が多く、労働の質が格段に濃いのである。簡単に言えば牛から目が離せない、小規模農家は牛が長生きしているので、それほどの負荷がかかっていない。
一見収入がどちらも多いように見えるが、休日のない労働時間を考えてください。そして、何よりも時給換算の労働評価が、ほぼ5倍も異なるのである。
かつては酪農家は誰もが小規模であったから、規模を大きくはしてみたが手取りは変わらないけど労働の価値は5分の一になってしまったというのが実態である。沢山働いた分を、周辺産業に吸い上げられたといってもよい。アベノミクスの攻める農業とは、周辺産業のためのものであって、農家や家畜には大きな負荷をかけるばかりなのである。農家は補助金を目当てに経営の実態、農業の本質を失ってはならない。いつも責任を取らされるのは農家自身だからである。

コメント (6)
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