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私的スポーツ漫画の金字塔「モンキーターン」を語る~ページをめくらせる多数のポイント

2014-11-28 | 漫画特集







2日前ぐらいに、ふと「モンキーターン読みたいな」って思ってパッと1巻から読んでたんですけど
最初の内は「ふんふん、そういえばそうだったなあ。」くらいの軽い気持ちでボチボチ読んでたんですが
昨日の夕方から今日の早朝にかけて読めば読むほどページを捲る手が止まんなくて、まあ完徹しちゃいまして
今日も夕方帰って来てから物凄いスピードで読み耽ってしまい数日で全30巻を読破してしまいました
ちょっと禁断症状になるくらいに「早く次の巻読みたい」っていう気持ちになってた自分に驚いたんですが
良い機会なので学生時代に熱中していた今作の魅力、素晴らしさを語っておきたいという気持ちに読み終えてから(衝動的に)なりました
あと私がどれだけ青島優子が大好きなのか、って事も全然書いて来た記憶がないのでその意味でも悪くないかな、と。


学生時代にハマってたスポーツ漫画・・・と言えば多分大抵某J誌か或いは某M誌、いや、はっきり言えばジャンプマガジンが人気でしょうけど、
私はといえばむしろスポーツ漫画に関してはサンデーのスポーツ漫画のが正直好きでした
その中でも河合克敏の描くスポーツ漫画が大好きで学校に毎日持参して読み耽るレベルでしたね
デビュー作である「帯をギュッとね!」も大名作で手に汗握りながらコミックスを読んでた記憶がありますが
「モンキーターン」に関してはコミックス派から追いついて、毎週続きを読みたくて本誌買ってた理由の一つでもあったので
多分クオリティに関して言えば五分五分とは思いつつ最終的な思い入れは「モンキーターン」のが強いとは感じます
ぶっちゃけて書くと少年誌のスポーツ漫画で一番面白いのは「モンキーターン」だと思ってるくらいです
ただ、その面白さに関して説明出来る自信がなかったので記述はしてこなかったんですが
今回一種の薬物みたいに中毒状態になってみて「これは少し語れるかな」、と
そんな風に感じたので幾つかのポイントに分けて書く事にしました。

いや・・・もっと正直に書けば「なんで自分はこの数日間ここまでモンキーターンを求めてしまったんだろう?」ってのを
自分なりに解明したいだけでしょうね(笑)。









①そもそもお話のピークポイントが後半に行けば行くほどある

まず、パッと思ったのがこれですね
「モンキーターン」は1巻からある程度面白いっちゃあ面白いんですけど
例えば20巻台中盤~後半と初期を比べると面白さの度合いも意味合いも比べ物になりません
それも、主人公の波多野が割とトントン拍子ではなく右往左往四苦八苦波乱万丈な競艇生活を送ってる事に起因するんですが
普通少年誌のスポーツ漫画の主人公って最初から無敵か或いは強いか、遅くても10巻以内には強豪のレギュラーだったりするけども
「モンキーターン」の場合波多野が本当の意味で競艇界をブイブイいわせるようになるのって後半も後半からで
読み進めれば読み進めるほど“強くなっていく”感覚を追体験出来るという素晴らしい作りの漫画になっているんですよね
急激に展開が進む事もなければ段階を飛ばす事もほぼない、一歩一歩堅実に競艇選手としての道のりを歩いてく
正に私が大好きな、
「堅実さを重視したスポーツ漫画」の理想形とも言えるフォルムの作品に仕上がってるからこそ気持ち良く読み進める事が出来たのかもしれません
様々な複線が後半になってきれいに一本の線で繋がる様とか実に考えて作られてるなあ、と思います

また、大きなトピックが来そうでも意外と上手くいかないからこそ、早くその瞬間を味わう為に続きが読みたくて仕方なくなる節もあったり
そういう構成力にもまた長けている漫画だなあ、と改めて感じました
全30巻なのにペース配分が凄く上手いっていうか。

序盤に派手な掴みを~、とか、もっと強い敵を~みたいなやり方じゃ到底辿りつけない地平に立っている漫画ですね
そういう漫画では決して得られないカタルシスが詰まっている作品です(別にそういう作品を否定してる訳じゃないですよ)
読めば読むほど主人公の確かな成長だったり、「あの頃」とは変わったなあ・・・ってしみじみする場面がどんどん増えていくので、
そういう主人公の“成長の複線”の積み重ねのような作品なんですよね
だから間違っても「試合の中で成長してやがる~」っていう展開は生まれません
試合の中で犯したミスを、犯した後によく考えて自分なりに答えを出して、それが後々成長の手ごたえとして伝わって来る・・・っていう
常に先々の展開を見据えた構成にしてて、しかもそれが抜群のタイミングできちっとハマる瞬間はとても美しくて最高です
下積み時代が長いからこそ、試行錯誤の描写が多いからこそ、後々の展開にも説得力が出てくるのは流石だなあ、と思いますね。



②主人公のレベルは1から、余裕で勝ち切れるようになるのは本当後半くらい

微妙に①と被ってる気がしないでもないですが、まあその通りです
それも後述の要素によって完全安定はしませんけど、本当に終わり際になって波多野の実力も作中ではピークを迎えるんです
これがどういう事かと言うと、後半の数巻だけそういう状態になるって事は裏を返せば「波多野、勝って当たり前だな。もっと強い敵出す?」って
そういう引き延ばし的な展開に持っていく必要性が全くなくなるんで最高の状態のまま物語が終わるって事です
事実最後に波多野が競り合う相手も序盤~中盤で出て来たキャラばっかりですから、余計な付け足し要素もなければ
「主人公ばっかり勝ってつまらない。波乱が必要だな。」っていう展開を用意する必要もない
最後の最後に“実力で”ナンバーワンクラスになる訳ですから読者としてもホントに気持ち良い状態でゴールテープを切ってくれる感覚があります
或いはラストに主人公が番狂わせを行うようなミラクルじゃなく、本当の意味でトップクラスに仕上がって終わる訳ですから
これすっげえ綺麗な形で終わってるって事なんですよね。絶妙だと思います。



③主人公補正が効かない、主人公「だけ」がピンチにならない

これめちゃくちゃ読んでて感心してしまったんですが
物凄い大事なステージ、いかにも「これから波多野がかますぞっ!」って試合でなんとミスによる欠場をかましたり
「これ勝ったら大金星だ!」って試合で負けたりするので所謂“主人公補正”ってやつをあんまり感じません
また、こういうスポーツ漫画・或いは試合を描く漫画の場合やたら主人公サイドにミスやケガ、所謂ハンデが生まれますが
この漫画の場合例えそれがあっても、それがやたら主人公サイドに集中するなんて事もなく普通に敵にミスやハンデが生じます
つまり敵にとってラッキーな展開が生まれると同時に主人公サイドにとってもラッキーな展開も生まれる訳で
その与えられるハンデの量は五分五分、つまりは公平な感覚が凄くあるんですよね

それは強烈なリアリティを生むのと、更には試合の展開が単調じゃなくなり
例え主人公格であってもみすみす敵にラッキーな勝利を献上するパターンもありますよ。っていう
本当にページを捲らなきゃレースの勝敗が分からないドキドキ感・・・ちゅうか確認したくなる気持ちを煽って来るんですな
めちゃくちゃ上がり調子の主人公だったとしても、それで勝ち続けられるなんて甘い事はなくつまらんミスでチャンスを不意にしたりする
でもそれが最高に生々しくて漫画と言えどちょっとドキュメント的な面白さも含んでたりもする
波多野より普通に実力が下の奴がまるで主人公みたいな強運とタイミングで勝っちゃったりするんで
本当に主人公補正が効かない、だからこそ人一倍努力して少しでもミスの可能性を減らし勝ちあがってく姿が感動的にも映るっていう
そういう部分が強いからこそ分からない勝敗にハラハラしてページをめくりたくなったのかもしれません
なんというか、「主人公だけが主人公じゃないよ。」って作中から伝わって来るみたいでしたね。



④同期の仲間の存在

波多野は競艇の養成所時代に一緒の班、もしくは縁深く過ごした同期の仲間たちがいますが
この人らの近況がたまにクローズアップされるんです
波多野は努力家だし負けん気の強い性格なんで持ち前の江戸っ子気質も味方して一歩ずつ強くなっていきますが
当然誰もが誰も波多野みたいにはなれない訳で、闇落ちしてたり、辞めるか辞めないかの瀬戸際に立たされてたり、波多野がとっくに手にした称号を
物語の後半になってやっと手にするような同期がいたりと、波多野の堅実な成長っぷりでリアルな成り上がり疑似体験を出来ると同時に
そういう彼とは違った歩み方をする人達の心情に触れる事が出来たりドラマを味わえるのもまたこの漫画の面白い部分ですね
また彼彼女らのエピソードが良い具合に物語の潤滑油になっていてそれもまた飽きずにツルっと読める要因ですし
何よりも波多野みたいな生き方だけがすべてじゃないよ。って水面下のメッセージ性みたいなものが感じられるんです
それが凄く奥深いっちゅうか、確かに漫画に於いて主人公の存在は絶対ですけど、
でもそれも数ある選択肢の中の一つであって存在以外の部分は絶対でもないんですよね

あと、最高レベルのレースの強敵たちとの争いも燃えますけど、
最初期に出て来たメンバーがそれぞれのやり方で生き方で頑張ってるのを見ると
養成所時代に6巻分も費やしてるだけあってあの頃あんなだったあの人がねえ・・・って感じで感慨深くもあります
また養成所時代の出来事が後々に大きな複線になる事も結構あったのでその意味でも養成所時代の同期が出てくるとワクワクするものがありました

ただ、前述のようにリアリティ主義ですので
同期の縁深いメンバーが全員めちゃくちゃ出世出来た訳ではありません
でも、めちゃくちゃ出世出来なくとも懸命に頑張ってる姿には心うたれます
そういう波多野の視点からは全く別のドラマも味わえるのも面白い要因だと思いますし
波多野がお世話になっている先輩方も先輩方でドラマがあったり、波多野だけでなくその先輩たちを立てるレースもあったり
本当に“キャラ想い”の漫画です 実はそれこそが一番面白くて好きだったんじゃないかな、、、なんて思ったりもします


例えばいかにもな悪役顔でいやみったらしいセリフで牽制してきた和久井さんってキャラがいますが
その後ひょんなことから協力関係を結ぶ事になったりと分かりやすい悪役、使い捨てのキャラが全然いない事も特徴であり利点でもあります
そんないやみったらしいヒールから始まったはずの和久井さんが後々読み手を感動させるレースをしてくれた時は本当河合先生凄いなって思いました。
今まで噛ませ役だったキャラが終盤ようやくスポットライトを浴びたりとキャラに対する誠実さこそ「モンキーターン」一番のストロングポイントなのかも。
繰り返しますが、決して主人公だけが主人公じゃないっていう。



⑤青島優子

ある意味裏の主人公である青島さん、
学生時代に特に惚れ込んでいたヒロインの一人であり
また未だに思い出すと切なくなるキャラクターの一人でもあります
本誌で読んでて彼女が出る度に喜んでた記憶があり、だからこそ最後はとても辛かったんですが
彼女の存在もまた裏で着々と“ストーリー”を進行させていた続きを読みたくなる要因に大きく関わったキャラクターだったかと
初期からでっかいでっかい複線として存在していた彼女はそれを全力で回収するかのように後半になればなるほど出番も動きも増えていきますけど
そんな彼女の健気で、でも負けん気だって強い、
逞しくもある姿に感情移入し続けていた事もまた確実にその先に期待を掛けるには十分な役割を果たしたと思います

29巻の某展開は色々な意味で反響を呼びましたが、正直あれはリアルタイムで読んで興奮したクチですね私は(笑)。
なんというか、そこはかとない背徳感というか、まるでラブコメみたいなドキドキ感があって最高だったんですが
同時にいまいち決め手のなかった澄との最後の進展を後押ししたキャラだったとも言える
逆に言えばその為に利用されてしまった形にはなりましたが、
主人公の行為の是非はあれど確実に「面白い」展開だったのも事実
その展開に至る前のキュンキュンする感じとか、至った後の甘酸っぱくもほろ苦い感触といい、
間違いなく「モンキーターン」をめちゃくちゃ面白くしてくれたキャラクターの一人だったと思います

正直未だに「くっ付いてれば・・・」って人道に反しつつも思っちゃう自分もいたりしますが、
最終的に彼女が出した答えがラブコメ的には最も切ない答えの一つで今でも鳥肌が立つレベルではあるので
それ考えたら、あれはあれで絶対に忘れられない結末だったのかなあ、って思ったりもします
事実あれで更に青島さんの事が好きになったしね。
作者一番のお気に入りキャラであり、ある意味波多野以上に贔屓されたキャラではありますが、今でも自分は大好きで堪らないヒロインの一人、です。
巻数が進むにつれて上手い具合に出番が増え始めるのでそれもあってページを捲る手が止まらなかったんじゃ、と。
それにくらい魅力的であり革新的だったヒロインって事ですね。
なんかもー、「幸せになって!」って感じです。















その他にも「ワンレース毎にテーマ、トピックがあって飽きない」とか
「試合の勝因がいつも理論的で根性論や気合い、ミラクルで勝たない」とか
96年に始まった連載なのに絵がシャープなので全然古臭くないから、とか
あげていけばキリがないので今回はここまで
もうひとつ、読んでいて号泣してしまったワンエピソードがあったので次はそれを語りたいです

ちなみに30巻分を数日でぶっ通しで読破しても「この続きも読みたい!」ってなっちゃうのが一番凄いと思います(笑
つまりは長さを感じない面白さ、クオリティってことです!




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