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【君を救いたい】Wake Up,Girls! 七人のアイドル 感想

2015-09-12 | Wake Up,Girls!(アニメ)
                                    








島田真夢ことまゆしぃが所属していたI-1 clubが夢の東京ドーム公演を成功させている一方で
WUGのメンバーはといえば、学生が企画したメタルバンドのイベントに一曲オンリーで参加
当然まともに聴いてる人なんてほぼいない・・・っていう、そこでこの映画は終わってしまうんですね
正に月とスッポン、あまりにも残酷な対比とまゆしぃが“失ったもの”の大きさが如実に描かれる顛末でもある訳ですが
不思議と悲壮感はなく、
それは何故かと言えば挫折して燻っていたまゆしぃがもう一度アイドルとしてステージに立った
あまりにもあまりにも小規模ではあるけれど、確かにもう一度スタートする事が出来た
「一歩踏み出せた」からこそ対比されてても悲壮感は全くなく
むしろここからが新しい始まり、
伝説の幕開けなんだと。
そういう風に思えるようなエンディングの余韻が素敵で
また誰もが「何かが足りない」状態の中で、一致団結してスタートを切る事が出来た
その“小さな一歩”こそがこの映画を観ていて一番感慨深く思える部分であり
WUGのメンバー全員が一番始めに生み出した“結晶”なんだと思います
何だかんだいって、何かを「やり切る」事が最も難しい。
あのめまいがするような状況の中で
それでもなんとか夢を叶える為に一生懸命みんなが頑張っていたからこそ最後のダンスシーンも映える
それ相応の覚悟を持って臨んだからこそ、何も気にせずただただ歌い踊るメンバーの姿がしなやかで、尚且つ逞しく見えたのだと思います。
これがWUGちゃんが一番最初に成し遂げた事なのは疑いようもないでしょうね。



事務所のゴタゴタだったり松田は松田で色々な工面に追われてたりで
見せパン、つまり見せてもいいパンツすら用意出来なかった
というか、それどころじゃなくて
彼はきっと皆を踊らせるステージを探したり必死にチラシ作って配ったりで多分そこまで頭が回らなかったんでしょうね
ステージに立たせて尚且つ観てもらう事しか頭になかったような状態、だからこのままじゃステージに立てない状況に陥った訳だけど
折角用意してもらったステージ、アイドルとして歌い踊るのが夢だった、だったらもう腹括って立とう!と
そういう事よりもある意味プロとしてお客さんの期待を裏切らない方を“選んだ”訳ですね
それとここまで散々酷い目にあって紆余曲折あった過程があったのでもう腹括るしかなかったんでしょうね
つまりは、あそこでパンツを気にせず踊る、やり切るって行為そのものが
どういう状況になってもWUGとしてデビューステージをやり切ろう、っていう
彼女たちの覚悟の象徴だったんだと思います
貫く、勇気
言い訳しない、根性。
図らずもある種のプロ意識の芽生えとなっているのが何とも秀逸だなあ、とか思う訳ですが
設定だけで「パンツのまま」とか言われても、それを全く映さないんじゃ正直意味はないと思います
「こういう風に見えてます」「それでも美しくしなやかに、ただひたすらに踊っています。」っていうのが重要な訳で
そこから考えるとある種必然的な絵コンテだったとも言えます 覚悟の価値が下がりますからね。



まゆしぃは、決して本当はアイドルをやりたかった、本当は歌って踊る事が大好きな自分に気付いただけではないと思います
それ以上に、デビューステージがおじゃんになってアイドルが出来なくなって号泣しているあいりを見た時に
恐らくはかつての同じように不条理でアイドルが出来なくなってしまった自分と重ねたんだと思います
この子を救ってあげたい
かつての自分と同じ道を歩ませたくない
そしてそれは同時にかつての自分を救う事にも繋がる―、と
彼女が再び新しい一歩を踏み出した背景にはそんな感情もあったんじゃないかなー、なんて個人的には感じました
もうアイドル関係で泣く女の子を見たくなかったし、ここで自分が踏み出せば夢半ばだったかつての自分を救って自分を幸せにする事にも繋がるし。
本当は、みんなで一緒に頑張ってみんなで一緒に誰かの為に一生懸命になる、そんな輪の中に憧れてた。
そんなWUGちゃん立ち消えの危機に力になれるのはきっと自分しかいないって分かってた
その上で“本当の気持ち”を確認する作業こそ松田に貰ったDVDを観る事だったんでしょうね
本当の気持ち、
本当に自分が好きなこと・・・
背水の陣で、もう言い訳もしなくなったまゆしぃの姿は勇ましかったですし
ちゃんと自分で“選んで”グリーンリーブスの事務所にやって来たまゆしぃのシーンはその後の盛り上がりを含めて名シーンだったと思います
入るべき人が入った、もう一度WUGという生命体が息を吹き返した瞬間。素晴らしかったと思います。



松田は松田で、ある意味まゆしぃと同じく夢半ばで挫折しちゃった人に見えます
会話から察するに元々バンドマンっぽかったんですけど、恐らく何かのきっかけで諦めて
特にしたいこともないまま宙ぶらりん・・・という印象を受けるんですね
(最初は)仕事も事務的ですし
やりたい、っていうよりは
やらされてる、って感じなんですよね
でも、昔の仲間のライブを観に行かないのはきっと辞めてしまった後ろめたさもあるでしょうし
きっと彼自身も燃え尽き症候群にもなれずに何を目標にして生きていいのかが分からないんでしょうね
やりたいからやっている、よりも仕方なく自分が出来る仕事を淡々とこなしてる感じ
 芸能プロダクションに在籍してるのに芸能人に詳しい訳でもなければ
そういう雑誌をチェックしている訳でもない(よしのが表紙なのにまるで覚えてない、気にしてないザルっぷり 笑)
そういう部分に関しては丹下社長の言う通りにまだまだ未熟、頑張れない「足りなさ」そのものなんでしょう
アイドルグループを作ろうっていうのに1人スカウトして来ただけで満足しているダメっぷりや
そんなみゅーの素質云々っていうよりずっとみゅーのおっぱいを見ているスケベっぷり
多分、意図的に情けなく描いてるんでしょうが(笑
こういう部分はまだ「夢見る少年」の甘さが抜けてないんでしょうね
 ただ、元々バンドマンだったからか、恐らくは色々な人を見て来て「こういう人は良い、こういう人はダメ」だとか
オーラのある/なし、には敏感だったんでしょうね
初見で知識ないのにまゆしぃの素質、魅力的であるという事を見抜き
その場で誘った行動力は松田は松田である意味光るものもある、という証拠なのだと思います
夢を捨て燻っているまゆしぃを見て、自分とは違って才能があって人を魅せられるまゆしぃを見て
懸命に説得する姿と言葉はきっと彼からしか生まれなかったんだろうし、結果的にまゆしぃを立ち直させるきっかけを作ったのも始めは松田なんだろうなと
あんまり彼の心境には触れられてない印象ですが、きっと「もったいない」って気持ちもあったんじゃないかなあ。
それは下世話な感想ではなく、自身がそういう場所に行けなかったからこそ、っていう。想像ですけどね。
そんな松田が、今後、どういう風な変遷を辿ってどういう風に自身への想いに決着を付けるのか・・・にも注目です
 でも、丹下社長との漫才も好きですけどね(笑
紛う事なき引き抜きをやらされる所と喫煙の罪を押し付けられる所なんかは彼の幸薄っぷりが良く出てて好きです
最終的には松田さんも自身の夢の落とし所を見つけられるといいんだけどな。そこまで描いて欲しい、っていう希望も込めつつ。



これが「初ライブ」ってどう考えても酷過ぎる(笑  でも、すべてはゼロから始まる。


それにしてもまゆしぃ以外のメンバーは見事に「足りない」女の子ばかりですよね
正直最初から完成されている、とはとても言い難いメンバー達
どこか楽観的過ぎるきらいがあったり
かと思えばストイック過ぎて他と合って無かったり
所謂・・・厳選したメンバーとかではなく全員合格の超ゆるゆるの関門だった訳ですから
ある意味ああなるのも当たり前なんですけど、だからこそ“等身大”で素晴らしいなあ。という印象があって
WUGの、この劇場版でのメンバーはもう無作為に夢見る地方都市の女の子そのまんまなんですよね
だからこそ現実を思い知らされる一面も今後出て来るわけなんですが
そのやけに夢見ちゃってる感じだとか
出来たてほやほやの時の根拠ゼロのはしゃぎっぷりとか
のれんに腕押しの状況に対して些細な喧嘩を繰り広げたりする未熟さだとか
「私たちこれからどーなるんだろ・・・」って当たり前の不安が滲んで行く感じだとか
この6人の描写自体がとっても“WUGらしい”っちゅうか今作の本質そのものなんじゃないか、とも思いました
いわば等身大の女の子たちが、等身大の問題にぶつかって、一つ一つ衝突しながらも一生懸命に壁を乗り越えて行く
それは【最底辺からのレジスタンス】、
足りない人同士が力を合わせて進んで行く様こそWUGちゃんらしさなのかな、と、この劇場版を何度も観返して改めて思いました
その空気感だったり、本当にゼロの状態から始まる手探り感覚から味わいたい方に向いてるんじゃないか、とも思いました
始めからキラキラ光っている訳じゃなく、原石を磨いたり自ら磨こうとする旅というか・・・。



自身の実力に自覚的だからこそ話にならない営業とプロデュースに不満タラタラの菜々美、
彼女の場合夢見てた、というよりも下手に実力がある分「このままでいいのか」という焦燥があるんでしょう
それに自尊心もメンバーの中ではトップクラスに高い
よしのも似た性格ではありますが、
菜々美に比べていまいち自信を持ち切れてない“弱さ”があります
スタイルも華やかさもありますが、その辺でもたついてしまう感じはまだ垢抜けてない証拠なんでしょうね
夏夜は逆にあんまりプライドがなく「取り敢えず、やってみよう」と割と前向きっちゃあ前向きな性格で
初ライブがスーパーの荷物置き場、しかも荷物は置きっぱなしというクソみたいな状況の中でも
自ら率先して荷物を運んだり出来るポジティブさと行動力が光るキャラですね
覚悟を持って来たまゆしぃにタオルを渡したり「やろうよ!」って声出したりある意味影のリーダーは夏夜かもしれません
実際お互いプライドの高い菜々美とよしのがぶつかりそうな場面でなだめたりする事もありました
ただ、その分燃えるような野心にはちょっと欠けてるのかもしれません
あいりは本当に普通の女の子
あまりにも普通過ぎて逆にそこが可愛いっていう
その弊害で飛び抜けた部分はあまりない・・・のがやはり欠点(でも時折勇気凄いけど)
みにゃみは、天然と言えば天然っぽいけど、その一方で泣いてるみゅーを優しくなだめる一言があったり
場の雰囲気を良くするギャグや極端にノリが良い部分とかもあって割と多面的なキャラクターですね
何でもそつなくこなすタイプだとは思うけどメンバーをグイグイ引っ張って行くタイプ、とはまたちょっと違うかもしれません
みゅーは、結成しただけで浮かれ気分だったり、根拠のないワクワクがあったり
多分WUGちゃんの楽観性を一人でグーンと上げちゃってるキャラですね
でもその分ムードメイカーな節もあったり
自身の事を「泣き虫天使」とかキャラ付けしてるけど、実際本当にメソメソしまくるリアルではただの泣き虫だったり(笑
作られているようで、実はそのまんまっていうのが逆に面白くて大好きなキャラクターです
身長はメンバーの中でもトップクラスに高いけど、ある意味妹分的な存在でもありますね



そうやって観ると、
意外と細かい部分でキャラがきっちり立ってるな、というか
それも記号的な立て方でなく割とリアルに近いタイプの立て方だと(個人的には)思います
そういう細かな性格の違いなども是非感じて楽しんで欲しいですし
「きっちりと“人間”を描く」
それこそ「Wake Up,Girls!」が目指しているものというか、本懐なんじゃないかな・・・って思うので。
個人的に、みんながバラバラである事実の象徴のような駅前のフリーライブのシーンが凄く好きです
一人一人の向いている方向性があまりにも違うこのシーン、まだまだ強い個性がぶつかり合ってる状態ですけど
でもこういうシーンだったりスーパーの荷物置き場(しかも荷物どかしてない、客も聴いてない野球少年二人)のシーンだったり、
そういうシーンがあるからこそ「それでも」頑張るみんなの姿が健気に映りますし
「ここから始まったんだなあ・・・」と思うとちょっと感慨深い気持ちにもなるんですよね(まだまだ大成功を収めたわけではないけれど 笑)
そうやって“下積み時代の苦労”を描く方向性もまたとってもWUGらしくて素敵だと思えるから好きです
先が見えない中でも頑張ってるからロマンがある。
例え客が誰もいなくても、
例えいても誰も聴いてなくても、
バンドがメインのイベントでアウェイだったとしても
みんなで結束を合わせて頑張ろうとする健気さこそWUGちゃんの最高の良さ。
何も約束されてない中で、誰も期待してない中でも自分たちなりに努力して貫き通し可憐で力強いステージを見せたWUGちゃん
それこそが一番の感動ポイントであり、彼女らのポテンシャルを表していたのでは、なんて思いました。
得たものは、たった一人のファンでしかなかったけれど、それも“過程”を考えれば大きな進歩。
マイナスからゼロへ、ゼロからプラス、それも「1」になる・・・というのが
この作品のエッセンスであり、美しい部分なんじゃないかな、と。
たった1、
されど1。
本人たちも、松田も、踏み出した小さな「1」歩。
諦めなかったから、もう一度立ち上がったからこそ生まれた「1」・・・という事で
非常に美意識とメッセージ性の高い初代劇場版だったんじゃないかと思います
何度観返しても笑えるし、
ほっこりするし、
個人的には胸も熱くなりますね。
最後のダンスシーンはもう振付がかっこかわいい感じで個人的にはツボど真ん中でございます
特に笑顔の夏夜と決まっているみにゃみが好きですね
あれ観てると、
やっぱみにゃみはそつなくこなせるタイプなんだなあ・・・ってつくづく感じます
でももうちょっと「みんなを引っ張って行くぞ」って自覚があってもいいかもね(笑
まあそんな出過ぎないところもみにゃみのいいところなんですけどね。












思い入れが強すぎたのかやたら長くなってしまいました
でもなんか、こういう上手く行く事の方が少ない、
まだ先が見えない感じこそ
「はじまり」って印象で
自分はとても好きな劇場版だったりします。可憐さ、美しさの中にも“憂い”が漂っているバランス感覚も非常に好みですね
その上で漂っている等身大の物語、って感覚こそが一番の強みなんじゃないかと思います。



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