フレデリックのメジャーデビューアルバム「oddloop」を聴いた。
NHK-FMの「ミュージックライン」って番組でやたら掛ってて、正直それまで知らなかったんですが
「明日のゲストはフレデリックです」って言われて女性ソロシンガーなのかな?って思ってしまったのは内緒です(笑
勿論そうではなく4人組のダンスロックの流れを汲んだバンドでした しかもそれがやたら耳に残って離れなかったので音源まで買ってしまった
したらこれが相当中毒性があって面白くて、でもちょっと切なさも混じっている高品質のロックミュージックになっていて個人的に当たりだと思いました
一曲一曲が濃密かつ曲ごとにちゃんとしたフックがあって繰り返して聴いてても飽きない類の傑作に仕上がっています
踊ってるだけで退場
それをそっかそっかっていって
お幸せについて討論
何が正義なんかって思う (オドループ)
まずリードトラックである「オドループ」の中毒性が凄いですよね
ちょっと奇妙かつポップなアレンジに個性的なボーカル、掴みどころのない歌詞と
この一曲だけでフレデリックらしさというのものが一発で分かるくらいに名刺代わりの一曲として機能しています
その上で歌詞に於けるフックというか、冒頭の「自分たちに都合の良い正義」を振りかざす輩に対してのアンチ精神だったり
正しい/正しくないだけでは済まされない感情の置き処の表現だとか意味がないようで実は意味があるような歌詞のバランス感覚がとても秀逸で
ひねくれた、掴みどころのない、ある種分かりやすさに於いてはそこまでではない歌詞にこの曲だけではなく全体的に仕上がっているんですが
要所要所で「ああ、これはこういう事を言ってるのかな こういうテーマを投げかけてるのかな」ってふと思える
そういうセンスが個人的に聴いてて好きだなあと思えるような音源に仕上がっています
サビの歌詞の良い意味での意固地さも聴いててとっても痛快で、
ポップでキャッチー、ノリ重視かと思いきや水面下でそれだけではない感情も表現出来てる塩梅がイイなあ、と。
何よりこの曲を聴いてると他の一切を忘れて無心でずっと踊っていられる、踊っていたいと思うような良い意味での快楽性があるのが素敵ですね
他の曲も面白く“踊れるロック”を追求しつつ童話や歌謡曲のようなエッセンスも含んだ和の要素も感じさせる音像や
ちょっと不気味だったり不思議だったりストレンジだったりする作中観をたっぷり楽しめる仕上がりになっています
とことん印象的なリフ、アレンジの妙に人懐っこさのあるはっきりとした発音が逆に浮いているボーカル
そして我が道を往く印象のオリジナリティ抜群の歌詞世界の組み合わせが兎角気持ち良いですね
例えば小気味良い雰囲気のポップソングがあったと思ったら
かなり不穏で怪しいダンスナンバーがあったりと
本当に掴みどころのない印象なんですが
ある意味その掴みどころのない、自由な感じこそフレデリックらしさなのかもしれません
ダンスロック、ノリの良い踊れるロックというのが根底にありつつも昔の歌謡曲みたいなメロディセンスがあったり
童話的センスも垣間見れる作中観の楽曲もあったりするその振り幅の広さが実に面白くユニークだと思えたデビューアルバムでした
大抵の曲と違って一歩引いた感じの素直にポップなサビが逆に印象に残る「幸せっていう怪物」、
不穏で不気味なアレンジにゾクゾクしつつロックバンドらしい反骨精神もサビで感じられる「砂利道」、
いつもクラスにひとりかふたりはいた掴みどころのない女の子を歌ったという「うわさのケムリの女の子」に関しては
歌詞の語感がいちいち引っかかるしちょっと童話みたいな感じもするし、でも音は紛れもなく最近のダンスロックの流れを汲んでるしで
本来の意味で変態って形容が似合うような奇天烈だけどポップでもある一曲に仕上がってて今作でも特に推しですね
そして最後の「人魚のはなし」
ハローの次に使う言葉を考える年頃なんです
井の中の蛙 なにもわからず ただ待っていた (人魚のはなし)
ストレンジで物語的な楽曲が続いた後で急に現実に引き戻されるようなペーソス溢れる楽曲が来るので
余計に沁みるというか、バランス的にもちょうどいいなというか、そういう掴みどころのある/なしのコントロールが上手い印象ですね
正直そんなに売れる、とか大人気になりそう、っていうよりは独自のバンド観でどっしり居座りそうな予感のが大きいですが
ファーストにしてこれだけ完成されてるバンド観を持ってるのでどう転んでも楽しませてくれそう・・・
って思えるくらいにはクオリティもオリジナリティも高い感触のアルバムでした
全体的に新鮮で面白い作風になってるのでユニークなバンド好きなら多分気に入ると思います
日常のちょっとした違和感を曲で表現するのが上手いバンドなので今後どういうテーマでもってやっていくのか、期待ですね。
凄くハマれるアルバムです。ヘビロテは確定かと。
平和主義の人でも犯罪者の人でも
悲しみが絞りだす涙は同じ味だ (幸せっていう怪物)
ひねくれポップ、かつ踊れるロックが好きなら多分ツボにハマる(と思う)バンド。
その奇妙でありながら筋もちゃんと通っている音楽性に今ちょっと陶酔しています。