第60回有馬記念回顧~名優は去り、新たな主役が

2015-12-28 00:39:11 | 血統予想

中山10R 有馬記念
◎12.リアファル
○15.ゴールドシップ
▲13.ルージュバック
△4.ラブリーデイ
△5.アドマイヤデウス
×6.アルバート
×7.ゴールドアクター
リアファルはクリソライトやマリアライトの3/4弟でアロンダイトの甥。パワーとスタミナを誇る牝系だ。サドラーズウェルズの影響が強い伸びのある体型で、母はボールドリーズン≒ネヴァーベンドの3/4同血クロス5×3を持ち、この影響で肩が立っていて前肢が伸びる走りではない。だから「京都の高速馬場だと鋭さ負けの心配がある」と菊の予想では書いたが、インのポケットで仕掛けが少し遅れたためにその心配が現実のものとなってしまった。急坂小回りの長丁場はパワーとスタミナを最大限に活かせる条件。ルメールが前走と同じ轍を踏むとは思えないし、「内枠は嫌だった」とコメントしているのも、上がり4Fのロンスパ戦に持ち込みたいという思惑が見え隠れする。ゴールドシップはロンスパ戦は望むところ。追い切りの動きに明らかに復調が見てとれるルージュバックは中山内回り向きとは言い難いが、気楽に大外一気でもまとめて面倒見れる斬れ味がある。好位にラブリーデイとゴールドアクターがいれば直線インにスペースはできるだろうから、内枠から4頭ヒモで拾っておく。

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引退レースで堂々の1人気に支持されたゴールドシップは、それに応えるべく一頭だけ1000m標識から猛然とスパートして先団に並びかけて観衆を沸かせ、しかも最後まで止まってはおらず前の馬たちと同じ脚色では上がっていて、「どや!このロンスパでG1を6つも勝ってきたんじゃい!」という、最後までゴールドシップらしいレースを貫いて8番目にゴール板を駆け抜けました

勝っても負けても、圧勝してもズッコケても、走るたびにそのパーソナリティが話題になる、みんなが「私のゴールドシップ論」をあーだこーだと語り合う、こんな存在は唯一無二で、最強馬かどうかはともかく最強のエンターティナ―だったことは疑いないし、競馬歴何十年のオッサンの心が震えるようなレースを見せてくれたのも間違いない

この希代の名優の最後の舞台にて、主役の座を奪い取ったのはその名もゴールドアクター、父スクリーンヒーローにちなんだ名を授けられた4歳牡馬でした

これでスクリーンヒーローは僅か3世代の産駒から、しかも決してトップクラスの肌馬を集めているとはいえない状況下で、世界のマイル王モーリスと有馬記念馬ゴールドアクターを輩出したことになります

グラスワンダーとダイナアクトレスがうなりながらマイルを走っているようなモーリスと、グラスワンダーとAlyshebaが長距離をジワリと抜け出すようなゴールドアクター、配合パターンもキャラも全く異なるチャンピオンを2頭出したというのがまた素晴らしい

ミアンダーにさかのぼる牝系にセダンやトサミドリのスタミナが重ねられ、そこにPharos=Fairway5・5・5×5・6のマナード、Native Dancer4×4のキョウワアリシバ、そしてNorthern DancerとHail to Reason4×4のスクリーンヒーローと配されて、「緊張と緩和」のリズム的にはモーリスより好きな配合ですね
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011105266/

ゴールドアクターのレースぶりには、母父キョウワアリシバの父Alysheba、Alydarの代表産駒でBCクラシックやKダービーなどに勝った北米年度代表馬の影響が強く感じられます

このAlyshebaを母系に持つ馬をTARGETで検索してみると、賞金上位はエアエミネム(デインヒル×Alysheba、オールカマー、神戸新聞杯、菊花賞3着)、ウイングランツ(ダンスインザダーク×Alysheba、ダイヤモンドS、目黒記念2着)、アラバンサ(El Gran Senor×Alysheba、ステイヤーズS2着、函館記念3着)、ベンチャーナイン(エイシンサンディ×コマンダーインチーフ×Alysheba、京成杯2着、ステイヤーズとダイヤモンド4着)

急坂と洋芝と内回りに強いのはAlydarらしいのですが、Alydarよりももっと重厚にジワリと捲り上げるような、もっと長距離のスタミナに寄っているというイメージの血なんですね

キョウワアリシバは通算19戦5勝、ベストパフォーマンスは京都内2000mで田原成貴が3-3-2-2とジワリと捲った朝日CC3着で、Aureole6×5のマイシンザンの大外捲りが決まったレース
https://www.youtube.com/watch?v=TAIwXtUmfiA

ゴールドアクターは東京でも長丁場の持続戦なら好位でねじ伏せる競馬で勝つのですが、昨夏の札幌2600でうなりながら抜け出す脚がかなりAlysheba的で、京都の菊花賞では鋭さ負けして3着というのがまたエアエミネムなんかとかぶるなあ…と思って見てました

1987年ケンタッキーダービー(4角捲って先頭に並びかけ、直線躓いた後抜け出してくるのがAlysheba)
https://www.youtube.com/watch?v=Zf3D2wK_-2Y

引っかかる馬ではないのでハナを切らんばかりの勢いで出していって、2角ではミルコにイン3を譲らず死守、そのまま4角まできて、グラスワンダーのように凄いパワーで一気に抜け出す脚はないけれど、先行馬を見ながらジワジワと進出

「乗りやすい馬だし、いい枠を引いたので思い切って乗ります」と語っていた吉田隼人はこれが嬉しいG1初勝利、ゴールドアクターとは3歳夏の札幌からコンビを組みつづけて[6-0-1-0]、菊花賞3着後も手綱を任されつづけてきたお手馬での勝利ですから、喜びもひとしおでしょう

初めての中山内回りでこんなにも理想的に乗れたのは、こんなにもAlyshebaらしく乗れたのは、ジョッキー吉田隼人がゴールドアクターという馬を誰よりも深く理解していたからに他なりません

ノリの逃げならばスローだろうと読む人は多かったでしょうが、枠順抽選のときにルメールは「リアファルはスタミナがあるのが長所」「内枠は嫌だった」とコメントしていて、それは「スタミナは一番だと信じて乗るので、菊のようにポケットに入ってスパートが遅れるのだけは避けたい」というメッセージに受け取れました

だからゴルシが動いてペースアップしたときに一頭だけズルズル後退していくのが信じられず、外から交わされたときに嫌気がさしてしまったんじゃないかと思ったんですが、スタート後にルメールはもう異変を感じていたようで、最初のホームストレッチでも馬の脚元を何度も確認するシーンが見られます

終わってみればリアファル以外の先行馬が全て残っているだけに、無事なら勝ち負けだったんじゃないか…とは言っちゃいけない

いずれにしても、私はSadler's Wellsが表現された急坂長丁場向きの中長距離馬だと思っているし、有馬記念はベストパフォーマンスを出せる舞台の一つだと今でも思ってるので、リアファルがカムバックしてそれを証明する日が来るのを待つしかないし、待つのみです

サウンズオブアースは行きたがるのをなだめて好位、リアファルの直後を取ってしめしめと機をうかがってましたが、リアファルが急激に下がってきたときに避けるロスがあっての惜しいクビ差2着

この馬についてはデビュー当時からずっと同じことを書いてますが、ネオユニヴァース×Dixieland Bandだからデルタブルースやアクシオンやフミノイマージンのようにパワーと粘りに長けた血統なのに、Secretariatのナスキロ柔さも強くてネオユニ産駒とは思えないしなやかストライドで走るのです

だから京都外回りでも中山内回りでも斬れ勝負でも機動力勝負でも同じぐらい好走するんですが、一方で強敵相手でも突き抜けてしまうようなスイートスポットがないという、そこが2着の多さにつながっているように思いますね

有馬記念も菊花賞も京都大賞典も神戸新聞杯も京都新聞杯も惜敗というのもなかなか凄い戦績で、前走JCはインベタ馬場で外を回るロスがあって5着、この先もっとパワーに寄ってくるのか、Dixieland BandのHyperionがもっと発現してくるのか、買いどころは常に難しいですがオモロイ馬です(・∀・)

ラブリーデイは連戦の疲れがなかったとは言えないだろうし、直線は進路を探しながらというところもありましたが、ゴール板をすぎてからアドマイヤデウスやトーセンレーヴにも交わされていたのは、やっぱり2400m超では2000mほどの瞬発力は使えず、京都大賞典ぐらい超スローで上がり特化でないと…という注文はつくのでしょう

有馬の回顧に取りかかろうとしたら引退式の中継がはじまり、最後のカーテンコールでも「ここらでちょっと盛り上げたろか~」とばかりにゴネはじめて、最後まで人間の思いどおりにならないゴルシを、みんなが笑顔で温かく見守ってたのがよかった(・∀・)

思いどおりにならないのが競馬の醍醐味やないかとよく思うんですが、だからゴールドシップを語ることは競馬の醍醐味を語ることでもあり、だからみんなゴールドシップについて熱く語り合ったんじゃないかと、夕暮れに白く浮かび上がるシルエットを見ながらそんなことも考えてました


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15 コメント

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ゴールドアクター (ゆーな)
2015-12-28 08:23:33
デインヒル≒Amerifloraだから、40%くらい(だいたいです。)ゴールドアクター≒エアエミネムなんですよね。

2015年のディープ2歳牡馬はホープフルが初重賞だったんですか。
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スクリーンヒーロー (ゆーな)
2015-12-28 08:30:08
14頭の勝馬で、9億6千万稼いで、2015年ランキング16位ということです。
EIも2.89で、ディープの2.55超えましたね。
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Unknown (GoldAllure)
2015-12-28 10:26:14
二頭の年間無敗馬を出すスクリーンヒーローは凄いですね。
でも、配合する繁殖の質が上がると在来の血を含む馬より海外の良血馬に交配
となって意外に活躍馬が出ない?なんて心配もしてしまいます。
当たる確率が上がって、どんどん活躍すると嬉しいですね。
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Unknown (MJ)
2015-12-28 10:42:56
ステイゴールドなんてわりとそうですよね
人気が上がって繁殖の質も上がっても、走るのは母父アドマイヤコジーンとか(^ ^;)
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Unknown (マルキーニョス)
2015-12-28 10:44:59
トーセンレーヴが上がり最速で6着な件…
ボウマンとよほど手が合うのでしょうか?
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Unknown (MJ)
2015-12-28 10:52:57
最近の馬では、ゴールドヘイロー×AlyshebaのコスモユウチャンってのもAlyshebaらしい脚質です
だいたい4-4-2-2で上がり3位ぐらいで勝つイメージ
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Unknown (ゴールドシップ)
2015-12-28 10:53:31
ワシはG1、6勝やで!
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Unknown (MJ)
2015-12-28 10:54:08
ボウマンの4角~直線の捌きは(有馬もホープフルも)エロかったです
内回りの達人と呼びたい
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Unknown (MJ)
2015-12-28 10:55:20
ホンマや、最後までやらかしてしまった…なおします
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Unknown (MJ)
2015-12-28 11:04:51
ボウマンは中山京都阪神の内回りに限定すると[3-0-1-1-1-2]で単回値280複回値108
平均人気4.9、平均単オッズ14.9でこれは見事
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