第77回菊花賞回顧~時代を担う「2000mの絶対的なスピード」

2016-10-23 17:46:02 | 血統予想

京都11R 菊花賞
◎10.ウムブルフ
○6.ディーマジェスティ
▲3.サトノダイヤモンド
△1.カフジプリンス
注9.イモータル
注16.プロディガルサン
ディーマジェスティは母父ブライアンズタイムはモンドインテロと同じ。母系にロベルトとグロースタークが入るのはニューダイナスティと同じ。母系にサドラーズウェルズが入るのはトーセンラー=スピルバーグ兄弟やヴァンキッシュランと同じ。ディープインパクト牡駒としては長距離のスタミナ十分な配合だ。にもかかわらず、スローで末脚の鋭さ勝負になったダービーでも五分に渡り合ったのが高く評価できるし、ここは距離適性で優るぶんサトノより上位にみたい。サトノダイヤモンドはヘイローの継続クロスは長距離を走るのにそれほど割引ではないと思っているが、典型的な中距離馬だった母マルペンサに似たところもあるだけに、◎と能力は五分でも印は少しだけ下げたい。カフジプリンスはアドマイヤラクティのようなステイヤーだと思っているが、ハーツクライ産駒はスタミナ十分なのに菊も春天も勝ちきれないのは、ディープ産駒やステイゴールド産駒に比べると3角からの下りでスピードに乗りにくいという弱点があるから。ウムブルフは母系をハイペリオンとドイツ血脈で固めた配合はワールドエースと似ている。ハイペリオンの影響が強い伸びのない体型も似ているが、こちらのほうが薄手でよりステイヤー然とした体質で、レースぶりや成長曲線もステイヤーっぽい。母系にオリオールのスタミナが入るのはトーセンラー=スピルバーグ兄弟やファタモルガーナやサトノラーゼンなどと同じで、ディープインパクト牡駒が長距離を走るためのスタミナは保証された配合といえる。やはり母系にドイツのスタミナ血脈を引き、夏の札幌2600mを連勝してステイヤーとして覚醒し、その勢いで菊花賞をも制したマンハッタンカフェ。あの再現もありうるとみて狙いたい。

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今年は皐月賞、ダービー、菊花賞、桜花賞、オークス、秋華賞の勝ち馬が全て異なるというなかなか面白い年で(あれ…◎が勝ったのは秋華賞だけかな)、うち桜花賞以外の5Rはディープインパクト産駒が制し、うち4頭はHaloのクロスという、まさにディープ産駒とHaloクロスの年でした

そんな2016年クラシックロードを締めくくったのは、Halo3×4・5のディープインパクト産駒サトノダイヤモンド

そして皐月賞をSadler's Wells持ちのディーマジェスティが力まかせに差し、スローのダービーを最も瞬発力のあるマカヒキが差し、そして菊花賞を最も伸びのある体型のサトノダイヤモンドが勝って、3強が仲良く三冠を分け合ったというのは、テイエムオペラオー、アドマイヤベガ、ナリタトップロードの年と似た巡り合わせでもありましたね

公式ラップによると、1000mごとのラップは59.9-64.5-58.9、道中13秒台が2つあって見た目よりも中盤でけっこう息が入ってて、これが距離が長いと思われたエアスピネルが踏ん張れた理由やと思います

ディーマジェスティはパドックや返し馬では少しゴトゴトして見えましたが、それは春よりもマッチョになってパワーアップした証でもあるでしょう

それにしても春はここまで掻き込んで走ってはいなかったし、母方のRoberto×Sadler's Wellsのパワーがさらに発現してきたぶん、中山で捲る能力はアップしたけれど京都外回りを下る能力はダウンしてしまったのではないかと

それぐらい下りからの手応えがサトノダイヤモンドとは違いすぎたし、そこから最後まで決してバテてはいないんですが、京都外回りの直線では走法的にこれ以上スピードに乗れない、というような負け方に見えました

あまり3000mのスタミナを問われるレースにはならず、いかに下るかに重点が置かれるレースになったぶんエアスピネルが先着した、京都を下る能力でエアスピネルのほうが上だったと

レインボーラインはノーザンテースト4×5で、母母父レインボーアンバー(菊花賞2着のステイヤー)にAlycidonが入るので、オルフェーヴル=ドリームジャーニーやゴールドシップと配合のアウトラインは似ています

こちらはノーザンテーストのクロスにVice Regentも脈絡させているのでちょっとパワーに寄った体質ですが、ノーザンテーストの頑強さを増幅しているという点でステイゴールド産駒の教科書的好配合には違いなく、アイスフォーリスなんかとも配合はよく似てますね

秋華賞後に「福永祐一は小さなディープ牝駒を操るのが巧い」と書いたばかりですが、今日は444キロのステイゴールド牡駒、こういうエンジンが超抜ではない馬、たとえ道中行きたがっても押さえられる自信がある馬に乗れば、非常にソツのない騎乗でプランどおりに導いてくることを先週につづいて証明しました

カフジプリンスは下りから速くなる展開だとやっぱりポジションが下がってしまうし、直線は狭くなって追いづらいシーンもありましたが、今年も終わってみれば、淀の長丁場はステイゴールド>ハーツクライ(Princely Gift>トニービン)という結果になりましたねえ…

ウムブルフはちょっと行きたがってましたが真っ向勝負で完敗、この馬はファタモルガーナみたいなピュアステイヤーですからこの上がりではどこから行っても難しかったと思いますが、G1でこういう真っ向勝負をやれるからこそG1を勝てるんだな…と思わされる浜中の騎乗はなかなかよかった

サトノダイヤモンドの血統については「競馬道Online」の有力馬解説より再掲します
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2013106101/

母マルペンサはR.V.マンシリャ大賞典(亜G1・芝2000m)などの勝ち馬。母父オーペンはルアー(BCマイル連覇の名マイラー)の代表産駒でモルニ賞(仏G2・芝1200m)勝ち。マルペンサはHalo4×3、Northern Dancer4×4、Natalma4×5・5。血統表の3/4でAlmahmoudの子孫の血を何重にもクロスしている。自身はHalo≒Sir Ivorのニアリークロス3・5×4・5。どちらかといえば母親似で、ディープらしい斬れ味で差すというよりは機動力で立ち回るような脚質だ。マルペンサは典型的な中距離馬だったが、本馬もベストは2000mあたりかもしれない。ただしHaloやNorthern DancerやNasrullahのような時代を制圧するぐらいの2000mの優秀なスピードというのは、長距離の大レースをも制覇してしまうような柔軟性があるものだ。Haloのクロスの多さを割り引く必要はないだろう。

youtubeでマルペンサのレースを検索するといくつか出てくるので見ていただきたいですが、サトノダイヤモンドはディープインパクトよりマルペンサに似ていることが実感できるし、マルペンサはOrpenには似ておらずBuckpasserに似ていることも実感できます

みんなが褒めるサトノダイヤモンドの伸びやかな体型は、私は主にBuckpasser譲りと考えていて、Buckpasserの骨格にHalo的な筋肉をつけたのがマルペンサでありサトノダイヤモンドじゃないかと思ってます

まあでも、POGで選んだときに「速攻系のマイラー」と書いたように、最初に血統表を見たときはまさか菊花賞馬になるとは思わなかったです(^ ^;)

でもね、Haloのクロスが多いことは3000mでマイナスではないだろうと書いたのは、それはNorthern DancerだってNasrullahだってそうでしたからね

笠シショーが力説するように、「2000mの絶対的なスピード」こそが時代を担い、時代を塗り替えてきたのであって、Halo(芝9.5FのG1勝ち)もNorthern Dancer(Kダービー)もNasrullah(チャンピオンS)も2000mベストの競走馬で、2000m基軸のスピードを伝えた大種牡馬なのです

Nasrullahは英ダービーで直線先頭に立ったものの3着、Northern DancerもサンデーサイレンスもKダービーとプリークネスは勝ったけれど12Fのベルモントは取りこぼした

そういう「2000mの絶対的なスピード」をクロスで受け継いだ馬が、2400mや3000mの大レースを勝ってきたのだという歴史の流れからみても、このサトノダイヤモンドの菊花賞勝利は、来る「サンデーサイレンスをクロスする時代」へのプロローグとなりうるものでしょう


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13 コメント

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Unknown (スペシャルワンダー)
2016-10-24 11:06:48
2000mの絶対的スピードのサイレンススズカを思い出す時期になりました。種牡馬になってたらと今でも思います。
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Unknown (MJ)
2016-10-24 09:46:01
アイドリーム牝系は阪神内2000の重賞[2-2-2-2-0]ですな(・∀・)…シャカールとソミュールとメサイア3頭のデータですが
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Unknown (MJ)
2016-10-24 09:42:16
まあ今年の凱旋門は向こうの12F戦としてもかなり特殊な部類でしょうからね~
ハープスターが上がり最速を叩き出すレースでもあるわけでね
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Unknown (テノリオ)
2016-10-24 08:59:20
サトノダイヤモンドは血統こそ似てませんが、トーセンラーのような印象がずっとあるのでマイルでも長めの距離でも結果を出しそうなディープですね
池江先生はかつて凱旋門を勝つために春天を勝つくらいのスタミナがいると思っていたけど、今は思わないとそんな感じのことをどこかで言っていたので、今回のダイヤモンドにその辺りの感覚みたいのを感じました
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Unknown (メタボ博士)
2016-10-24 03:16:35
ルメールは来期どちらの馬で戦っていくのだろう?それとも、上手く使い分けして両方乗っていくのだろか?
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Unknown (マルキーニョス)
2016-10-24 01:32:55
エアスピネルは大阪杯に出てもらいたいです
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Unknown (MJ)
2016-10-23 23:19:52
ディープインパクトもマルペンサも「3/4スピード、1/4スタミナ」の配合形であり、この1/4のスタミナ血脈やアウトサイダー血脈も、「絶対的なスピード」をつくる上で必要不可欠なものなのです
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Unknown (MJ)
2016-10-23 23:18:01
つまるところサラブレッドはスタミナで走るんじゃなくスピードで走るわけで、距離適性なんてものは、ましてや高速馬場のスローにおいては、スピードの質によって決まるものであって、じゃあスタミナは必要ないのかというとそうではなくて、スピードを支える血は必要だし、スピードの血のクロスを緩和する血も必要なのです
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ディープの牡馬 (タップ)
2016-10-23 22:41:55
ディープの牡馬は国内G1一勝で終わることが多いですが、今後どうなりますか
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Unknown (名無し)
2016-10-23 21:45:04
今こそ噛みしめておきたい名エントリーですね
サンデークロス時代、ワクワクするなぁ
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Unknown (ノーマン)
2016-10-23 20:22:33
サトノダイヤモンドが、これから2000m辺りのGIタイトルを取れるか、注目したいです。
効率の良い走りが出来ることはよく分かりましたから、高いレベルで瞬発力も兼ね備えていて、中距離の究極の戦いを制することが出来るかです。
あのレベルなら、機動力を武器に勝てるかもしれませんが。
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Unknown (Unknown)
2016-10-23 20:18:04
相変わらずディープ産駒は京都で不調ですけど、G1はキッチリ拾っていくあたりさすがの一言
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Unknown (向日市の民)
2016-10-23 20:00:12
大変参考になります。
最近今まで以上に筆が冴えておられるような気がします。
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