【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

駆け込み乗車/『爆発する太陽電池産業』

2009-02-25 18:37:20 | Weblog
 この前上京した時のことをふっと思い出しました。山手線の内回りに乗ると、絶妙のタイミングだったのでしょうか、駅で停車するたびにホームの反対側に外回りの電車が停車していました。つまり外回りはぴったり「二駅一台」で運行中に見えたわけです。さすがに東京は便利だなあ、と思いました。一電車のがしても、数分待てばすぐ次の電車がやって来るわけですから。
 そこで気になったのが、それでも駆け込み乗車をしている人がいることです。個人にはそれぞれ急ぎの事情があるでしょうが、暇だったのでちょっと時間の損得に関する暗算をしてみました。
得:駆け込むことでその人が次の電車を待たずにすむ時間を3分とします。
損:電車に乗っている人(500人としましょう)が駆け込み乗車をする人によって閉じかけたドアが開いて遅れる時間を5秒とします。
 さて、この“損得勘定”はどうなるでしょう? 「得」は1×180秒=180人秒。「損」は500×5=2500人秒。おやおや、駆け込み乗車は、電車一編成に乗っている人間が36人以下の場合に限定しないと、計算上は「社会的損失」の方が大きな行為、と言えそうです。

【ただいま読書中】
爆発する太陽電池産業 ──25兆円市場の現状と未来』和田木哲哉 著、 東洋経済新報社、2008年、1600円(税別)

 著者は野村證券の金融経済研究所のアナリストで、どちらかというと「エコ」の立場よりは経済に偏した立場から太陽電池産業を論じています。文章も薄味で繰り返しが多く、そのへんによくあるビジネス書のようにさくさく読めます。
 ……しかし素直に読んだらすごいタイトルですね。まるで爆発する太陽電池で商売するみたい。

 太陽電池には大きな誤解がある、と著者は始めます。
1)シリコン精錬に大きな電力が必要で、発電でその電力を回収できない。
2)生み出された電力は高コストで、商業ベースに乗らない。

 1)については「それは20世紀のお話」だそうです。2001年NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の調査報告書では、結晶法では1.5年・薄膜法では1.1年で製造に要した電力を発電できるとのことです。
 2)については1)ほど明快には言えません。1キロワット・アワーあたりの発電コストは、原子力発電6円、火力発電10円、太陽光発電35~46円とされています。たしかにこれでは太刀打ちできません。ただし、消費者が電力会社から買っているコストは昼間で23円です。すると太陽光発電が1/2にコストダウンできれば、電力会社に売ることが商業的にペイすることになります。
 さらに国の政策が絡みます。ドイツでは、フィード・イン・タリフという電力買い取り制度があり、電力会社には販売価格の4~5倍で太陽光発電の電力を買い取る義務があります。日本の買い取り制度はネットメタリング制度と呼ばれ、販売価格で買い取るものです。EUではフィード・イン・タリフを梃子に太陽光発電の拡充が政策的に進められています。韓国でも07年度にフィード・イン・タリフが始まりました(現在世界一高い買い取り価格です)。その他、補助金制度やクリーンエネルギーの使用を義務づけるなど、太陽光発電を普及させようと(熱意に差はありますが)各国は取り組んでいます。

 太陽光発電は、ハイテクの塊ですが、半導体や液晶に比べると生産ライン一式を一括導入するターンキー・システムがあり、企業の参入の敷居が低くなっています。そのため製造装置市場が急成長しています。太陽電池メーカーは現在200社。ただしこれはこれからどんどん淘汰が進むだろうと著者は予想しています。
 2004年には世界の太陽光発電の50%を絞めていた日本は、2007年にはドイツの半分で米国とスペインに猛追されるポジションに落ちぶれました。政府が「もういいや」と政策を転換したからですが、クリーンエネルギーよりも電力会社の既得権の方が重要、という判断だったのかな?



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