ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

第17回図書館総合展での雑感など

2015-11-16 17:11:51 | エッセイ

 11月10日~12日まで、横浜のパシフィコ横浜で、第17回図書館総合展が開催され、私は、10~11日の二日間、足を運んでみた。

 10日の朝、出発して、お昼まえには会場に入ると、岡本真さんのARG(アカデミック・リソース・ガイド)のブースで、いがやちかさんと鎌倉幸子さんに岡本さんが入って、鼎談が行われていた。これは、印刷のプログラムに掲載されというふうに事前に告知されていたものではなかったと思うが、図書館関係では話題の、ちくま書房からの新書版の著者ふたりをならべてのもので、まずは、聴いてみることにした。いがやさんとは、はじめての対面で、終了後ご挨拶をさせていただいた。

 3人のお話、面白く最後まで聴かせていただいたが、なかで、いがやさんが「図書館はインフラであり、決してイベントではない」とおっしゃっていて、これはここまでのところ、私がつかんできたものと同じ趣旨のことで、この表現は使える、と思ったところだった。千葉経済大学の齊藤誠一先生が「基本を押さえた図書館」を作らなければならないとおっしゃったことと平仄の合う話であった。

 また、図書館が「遺贈」を受けるというお話も興味深いものだった。きちんと遺書で、図書館への寄贈を書き残してもらう。一般的なセミナーとして「遺贈の仕方」などという講習会を開いて、その中で、実習の例として「図書館に遺贈するとすれば」という文例を書いてもらうとか。図書館の存在が社会的に認知が進むとすれば、こういうかたちでの図書館資料の充実ということもあってしかるべきものではあろう。

 10日の午後には、小布施町図書館の館長だった花井裕一郎さんから岡本氏が話を聞きだす体の対談、11日の午前中は展示会場内のオープンな会場でのCCC図書館カンパニー長で、海老名市中央図書館長の高橋聡氏と、東洋大学南学先生、立命館大学湯浅俊彦先生の「公共図書館の未来像」と題する報告を聞かせていただいた。

 実は、この3つのうちのどれの、誰がおっしゃった発言か定かでないのだが、ノートに、岡山県瀬戸内氏の市長が、NPM(ニュー・パブリック・マネージメント)だかPPP(パブリックとプライベートのパートナーシップ)だかの専門家なのだが、図書館については直営でいくとの決断をしたという趣旨のメモがある。岡本さんの発言だっただろうか?

 また、仙台に石井さんというワークショップの運営についてのプロがいるという話題。これはちょっと調べてみて、ぜひ、いちどお会いする機会を作ってみたいものだと思う。

 CCCの高橋さんには、気仙沼にも足を運んでいただいたことがあり、武雄市の現場でもお会いしているが、ひさしぶりにお話を聞くことができた。いろいろと経験を積み、ご苦労なされているようである。

 CCCは、恐らく、現在進めているプロジェクト以外に、図書館については、数を増やすことにはならないと思う。あえて、ツタヤと組もうとする首長は、少なくとも当面、出てこないはずだ。いっとき、日の出の勢いで成長するかと思われたその勢いは削がれたものと思う。

 高橋さんは、とても謙虚で、図書館について学んで行こうとする姿勢が前面に出ていたような印象を受けた。しかし、だからと言って、決して自信を失ったというふうではないが。

 武雄がこれからどう成長していくのか、海老名でどういう図書館像を見せるのか、そして、来年3月にはオープンする多賀城がどんな図書館となるのか。

 CCCの受託した図書館が良き図書館として機能していくのかどうか、みんな見まもっていると思うし、CCCとしては、良き図書館をつくり上げていくものだろうと思う。

 図書館という場所は、何か、不思議な魔力を持った場所である。

 恐らく、CCCも、図書館という世界の中に入り込んで、それなりの仕方でそこに馴染んで、CCCの図書館というものをつくり上げていくのだろうと思う。それは、ある意味では、当初武雄の樋口市長と組んで作り上げた新しい公共施設像からは、変貌して、インパクトは弱まった、と感じられるようなものになる、のであるかもしれない。

 そんなふうなことを考えながら、お話を聞いていたところであった。

 伝え聞くと、CCCは、図書館部門では収益が上がっていないというようなことであるようだ。しかし、図書館に進出することで学んだことはあるのではないだろうか。新たな大きな出店施設は、図書館で学んだノウハウを活かしているところもあるのではないだろうか?これは推測に過ぎないが。

 終わってから、高橋さんにご挨拶させていただいた。おひさしぶりで、と。

 私自身、CCCから、高橋さんから、ここ数年多くのことを学んだと思っている。多賀城が、来春3月にはオープンする、ぜひ、見に来てくださいとのお誘いで、それは当然のこと、楽しみにしています、とお答えした。

 気仙沼では、高橋さんと、いま、花巻の富士大学の教授、当時南相馬市図書館の早川光彦さんに、同時に来ていただいて、ふたりからそれぞれのお話を聞くという勉強会を開催したことがある。宮城県で多賀城の図書館と、それとは1年は遅れることになるが、気仙沼の新しい図書館と、並べて、どういう図書館となるか、興味深い対比となるのではないかなどと考えてもいるところである。

 確か、南先生が、図書館の運営の在り方について、直営か指定管理かという対比のことをおっしゃっていて、必ずどちらかでなくてはならないということはないのだとおっしゃっていた。それは、まさにその通りであろう。実際にどう運営され、市民にたいしてどういうサービスを実現できているかが問題なのであると。

 そのあたりは、まったくその通りである、そうでありながら、もうひとつの観点を置いてみる必要がある、と考えていた。

 それは、市民自治の中での図書館と言ったらいいだろうか。地方自治の本旨の二つの側面、「団体自治」と「住民自治」、その「住民自治」が、理想的な形で実現した暁には、直営だとか、指定管理だとかという論点がずっと後景に退いてしまう。ただまあ、民主主義というものが、現に既に実現されてしまっているものではなく、常に理想の位置にとどまるものだということと同じことで、市民自治も、完全に実現されるものではありえないものではあるのだが。

 「市民自治の中での図書館」という問題設定は、いまのところ、まだそんなに多くは見ることがないような気もするな。ここら、追求すべきポイントかな。

 さて、図書館総合展は、昨年に引き続きまだ2回しか参加したことがないが、面白い、興味深い出会い、再会が必ずあるところのようだ。

 あ、そうそう福岡県小郡市の永利館長にも、みなとみらいの駅でばったり会うことができた。昨年の図書館大会の折にも、通りすがりばったり遭遇した。永利館長には、視察で訪れた際に、決定的なことを学ばせていただいた思いがある。市の政策の中に位置づく図書館像といったらいいか、そういう論点を、永利館長さんから教示いただいた。そうそう、市民自治に関わる論点である。市の政策のもとにある、その管理下にあるという側面と、政策作りに関与していく、という両面の大切さ。(このあたりは、もっと詳しい論法が必要なところだが、それは、後に改めて。)

 と、まあそういうことで、図書館というところは、なにか足抜けできない魅力、魔力に満ちた不思議な世界だ、というような思いをますます深くしているところである。


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