ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

合理・不合理? 霧笛143号から

2023-07-27 23:02:05 | 詩誌霧笛137号(2021)以降
不合理ゆえに我信ずというようなことをパスカルも言っていたはずだが私は不合理ゆえに我信ずとは言えないしかし世の中は不合理の大海の中にうっすらとひと筋の道筋が浮かぶのみいや一筋ではなくいくつもの筋の道筋は一つではないそして未踏の道筋がある不合理の大海に新たな道筋を見いだす不合理の大海はエネルギーに満ちて豊かな不合理の中にこそ生きる力生き延びる力が潜んでいる波立つ大きな暗い海にひと筋の明るい道筋を刻み込 . . . 本文を読む

完全なひと あるいは無常ということ 霧笛143号から

2023-07-27 22:57:21 | 詩誌霧笛137号(2021)以降
完全なひとはいないひとは死んで初めていろんなものが欠けたままのあのひととして定まる生きている間は危なっかしいどう転ぶかわからない聖人君子が犯罪者となるちゃらんぽらんな男があっと驚く誠実さを見せるまあほとんどはどっちつかずの宙ぶらりんの中庸という言葉もあるがああ無常定常はない定住の地はない明日には転げ落ちて行方も知れぬああ無常情けもない情けない完全なひとはいないどこにもいないああ無情 . . . 本文を読む

霧笛143号 「チヒローズのおふたりから」と〈編集後記〉

2023-07-26 10:40:09 | 霧笛編集後記
  チヒローズのおふたりから石津ちひろさん、なかがわちひろさんの「チヒローズ」のことはここでも何度も紹介しているところだが、なかがわちひろさんから、142号のご感想をいただいた。「ぱらりと開いて、最初の畠山さんの「そのときを」を読み、ふっと涙ぐみました。とても平明なリズムで。ロシアのワグネルでは、「人のTSUNAMI」になれと強要されるそうですね。前線の兵が死んでもその死体を超えて突進しろという意 . . . 本文を読む

はたけやまなぎ・文 白幡美晴・絵 畠山重篤・エッセイ ととのはたけと、うたれちゃったしか ヒマッコブックス2022

2023-07-21 22:14:12 | エッセイ
 タイトルの作品は絵本前半で、後半は、最終ページから読み始める、畠山重篤氏のエッセイ「”いきもの好き“少年記」となる。 はたけやまなぎ君は、重篤氏の孫、気仙沼市唐桑小学校の1年生だった。現在は3年生である。白幡美晴さんは、なぎ君から見ると叔父さんの配偶者で、はんこイラストレーターであり、NPO法人森は海の恋人の事務局も担う。 カバーにこう記される。「”森は海の恋 . . . 本文を読む

畠山美由紀&藤本一馬『夜の庭』リリースツアー 気仙沼公演with小池龍平2023.7.16

2023-07-17 12:18:39 | エッセイ
 7月16日(日)、気仙沼中央公民館ホールで、久しぶりに、畠山美由紀のライブが行われた。 30年も前の、ホテル望洋でのPort of Notes名義のライブ、その後の喫茶ヴァンガードでのライブ、震災後、複数のミュージシャンと一緒だった市民会館大ホール、松岩の八幡神社境内の野外ステージでと、気仙沼に戻ってくるたび聴かせてもらっている。 今回は、ギタリスト藤本一馬との双頭名義のアルバム発売を記念したラ . . . 本文を読む

ヤニス・バルファキス著・江口泰子訳 クソったれ資本主義が倒れた後の、もう一つの世界 講談社2021

2023-07-16 11:37:10 | エッセイ
 ヤニス・バルファキスは、カバー裏の紹介を見ると、1961年、アテネ生まれの経済学者で、ギリシャの財務大臣を務めた。2015年ギリシャ経済危機のさなかのことで、その後、2018年にアメリカの大統領選に名乗りをあげたバーニー・サンダース上院議員らとともにプログッレシブ・インタナショナルを立ち上げ、世界中の人々に向けて民主主義の再生を語り続けているという。【SF小説であり、経済学書】 この書物は、SF . . . 本文を読む

大澤真幸 新世紀のコミュニズムへ 資本主義の内からの脱出 NHK出版新書2021

2023-07-14 12:34:23 | エッセイ
【朝のコーヒー】 私にとって、朝起きて、好きなCDを選んで、お湯を沸かして、豆を挽き、コーヒーを淹れて、妻とともに飲むという幸福が存在する、それでいいのではないか。地球上のあらゆる場所に、もちろん日本の中、この狭い気仙沼の街においても、解決すべき問題があり、貧困があり、虐待があり、不幸があるとしても、我が家のLDKで、妻と、ロックとその系譜を中心とする音楽(坂本龍一やら小沢健二やら)を聴いて、コー . . . 本文を読む

兼本浩祐 普通という異常 健常発達という病 講談社現代新書2023

2023-07-10 13:18:59 | エッセイ
 兼本氏は、著者紹介によれば、1957年生まれ、京都大学医学部卒の精神科医で、愛知医科大学医学部精神科学講座教授、てんかんや発達障害についての著書をお持ちのようである。詩人でもあり、『世界はもう終わるときが来たというので』、『深海魚のように心気症を病みたい』、『ママチャリで僕はウルムチに』、『象の耳を埋めることができるわけではないのだけれど』の4冊の詩集をものされているとのこと。【定型発達あるいは . . . 本文を読む

詩誌回生ん号 付録 あめのちかいせい 快晴出版 2023

2023-07-05 15:55:58 | エッセイ
小熊昭広さん編集の「回生」ん号(通巻第49号2023.6.20発行)に、今回も、やまうちあつしさん編集の「あめのちかいせい」が、別冊付録として付いている。 この回生は、“いろは”で号数が付されているのだが、考えてみると「ん」号ということは、いろは47文字が一巡したということである。後書きのランダム・メモリーに、「四十七文字のかななのに通算四十九号とはこれ如何に」と記される。 . . . 本文を読む

フジコ・ヘミング絵・石津ちひろ文 ねことワルツを 福音館2022

2023-07-04 15:59:44 | エッセイ
 フジコ・ヘミングとは何者か?ロシア系スウェーデン人の画家・建築家を父とし、日本人のピアニストを母にもつ、ピアニストである。いま、『La Campanella』というアルバムを聴きながら書いている。有名な音楽家であるので、ここで私が紹介するまでもない。ただ、ウィキペディアを見ると、16歳で右耳の聴力を失い、一時、両耳の聴力を失っていた時期もあり、経済的にも苦難の時代が長かったようである。父の影響で . . . 本文を読む