アシメックはミコルが泣いていることを感じて、自分も深く頭を下げた。神の声とはどんな声だろう、と思いながらアシメックは昨夜見た夢のことを思い出した。そうだ、あのことをミコルに相談しなければならない、のだが。
ふとアシメックは、まだそれはやらないほうがいいような気がした。あれはまだ、自分の中で秘密にしておいたほうがいい。誰にも言わないほうがいい。
祈りの儀式はすぐに終わった。ミコルは涙で化粧が少し崩れた顔をあげ、言った。
「カシワナカは受け取ってくれた。ことしも皆で喜べと言ってくれた」
感動が、そこにいた人間の中に走った。誰もミコルのことばを疑わなかった。アシメックも感動していた。カシワナカはずっと見ていてくれるのだ。こうして、ミコルを通して、美しいことをみなに言ってくれるのだ。
みなで神に感謝のことばを捧げ、広場に戻ってくると、もう村人が祭の準備を九分通り終えていた。