お祈りの歌を詠いながら、墓掘りを願い出た男たちは、鉄鍬をもって墓地に向かった。遠い昔から、先祖たちがここを墓地として決めてきた土地だ。山が遠くに見え、何本かの高い木の梢が半分空を覆っている。湿っている土に、黄色いチロブの花がそこらじゅうに生えていた。
「ここがいいだろう」
一行を先導していた役男が言った。そこで墓掘り人たちは鍬を下ろし、穴を掘り始めた。土は硬かったが、男が三人協力してやれば、案外早くそれなりの穴ができてきた。ハルトの体を入れるのにちょうどいい大きさだ。サリクは穴を掘りながら、胸に何かせまるものがあって、何度か涙を落した。ハルトと一緒に遊んだ思い出が、ぽろぽろと浮かんできた。
もう会うことはないんだな。そう思うとまた涙があふれてきた。ついこの前まで一緒にいて、女をからかいながら酒を飲んでいたのに。
充分に穴が深くなってきたころ、とむらいの準備も整った。弟といとこが供え物の花と、お祈りの紐を準備した。その紐は干した茅草をよったもので、先に蝉の抜け殻に種をこめた鈴を結んであった。とむらいの歌を歌いながらそれを振り回すと、死者の魂が健やかにアルカラにたどりつけるのだという。
茅布で包んだハルトの遺体が、墓穴の横に寝かされた。その時になったら、女たちも参加してよいことになっていた。女たちが来ると、ハルトの遺体を見て一斉に泣いた。妹らしい女が、しきりに「あにや、あにや」と呼びながらしゃくりあげていた。それを見たサリクもまた涙があふれてきた。
感情は胸を破ってあふれ出てきた。サリクにはわけがわからなくなった。なんで死んだのか。なんで逝ってしまったのか。もう少しここにいてくれよ。かえってきてくれよ。そんな言葉が次々を自分の中からあふれてくるのを、サリクは自分でも少し驚きながら聞いていた。
みんなの愁嘆が高まってきたころ、突然巫医がやってきた。そして言った。
「族長が来るぞ。アシメックが来るぞ」