セムドは村で人の仕事を決める仕事をしていた。だから村人のことはみな深く知っている。そのセムドが皮袋に入れた土を背負って村に帰って来ると、アシメックに声をかけられた。
「相談があるんだが、今いいか?」
アシメックが言うので、セムドは土を下におろしていった。
「ああ、いいよ。別に急ぎの用はない。なんだい?」
するとアシメックは少し言いにくそうに口ごもった。しかしすぐにセムドを見て言った。
「こどもがほしいんだ。ソミナに育てさせてやりたい。どこかに、こどもをくれる女はいないだろうか?」
「へえ? こどもか」
セムドの頭には、すぐに何人かの女が浮かんだ。子供をたくさん産みすぎて、少し困っている女はいたのだ。
「男がいいかい? 女がいいかい?」
「そうだな。女のほうが育てやすいっていうが、どっちかというと男がいい。将来的に、ソミナを助けてやって欲しいんだ」
「そうだろうな」
「おれも、いつまでも生きていないからな」
アシメックが言うと、セムドはきつい目をして、「そういうことをいうなよ」と言った。
「わかった。何人かの女に声をかけてみるよ。こどもをくれるって女がいたら、教えにいく」
「ありがとう、頼むよ」
アシメックは御礼を言って、セムドとわかれた。