世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

山へ①

2017-11-07 04:13:15 | 風紋


交渉の日からひと月ほど経った。舟を白く塗る方法については、あれからとんとん拍子に話がきまり、もう三人のカシワナ族の男がヤルスベに習いに行っている。村の男の職業を決めている役男が、名をセムドというのだが、トカムをその中に入れてやった。後の二人は成人寸前の少年だった。大人になってもまだはっきりと仕事の決まっていないトカムに、技を覚えさせてやろうという、セムドの計らいだった。アシメックはそれはとてもいいと言った。

白塗りの技術を手に入れることができれば、またいろいろなことができる。そっけない土器や板にも色を塗ることができるらしい。そうなれば楽しみも増えるだろう。ヤルスベ族はやりにくい相手だが、カシワナ族の知らないことをいろいろ知っている。大事にしていて損はない。こちらも、ヤルスベ族の知らないことをたくさん知っているのだ。いい感じで付き合っていけば、何かといいことがある。

秋も深まってきた。米がびっしりと詰っている蔵を見ながら、アシメックは冷たい風を感じた。そろそろ山へ行かねばならない。もう栗もりんごも充分に熟れていることだろう。冬に備えて、榾も充分に拾ってこなければならない。

そう思ったアシメックは早速セムドのところに行った。人集めはセムドの仕事だからだ。




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