世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

ネオの恋①

2018-01-13 04:13:38 | 風紋


夏は過ぎ、もうすぐまたコクリの花が咲くという頃になると、エルヅはまた鉄のナイフを数え始めた。

数えるのは好きだ。毎日何かを数えてばかりいる。数を規則に沿って積み上げていき、位が繰り上がるときが、すごくいいのだ。

「ティンダカルサムイタ(百五十二)だ」

数え終わるとエルヅはため息をついた。楽しい。すごく楽しい。もっといろんなものを数えたい。数えるだけでは足りない。もっと何か、これで面白いことができないだろうか。

エルヅは宝蔵の中を見回し、他に何か数えるものがないかと探した。土器の数はもうとっくに数え終わっていた。今年とれた鹿皮の数も、新しくできた魚骨ビーズの首飾りの数も覚えている。エルヅは記憶もいいのだ。宝蔵においてあるものの数はみんな覚えていた。

カシワナ族には豊かな宝がある。みんな働き者だからだ。働けば働くほど、いい宝ができて、みな幸せになれると、カシワナカの神は教えている。エルヅの仕事は数を数えることだ。エルヅは数えたかった。何かもっと違うものを数えたい。もっとおもしろいものを。なにかいいことを思いつかないだろうか。

エルヅは考えた。星の数なんか数えたことはあるけど、あれは三百四十三であきらめたっけ。アルカ山の木の数を数えようとしたこともあったけど。なんかもっとおもしろいことができないかな。

宝蔵の管理は楽しい。エルヅは自分の仕事に満足していた。ここにひとりいるだけでも楽しかった。そんなエルヅのおかげで、宝蔵はいつもきれいに整っていた。




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