里の家ファーム

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自然の中に身を置いてみませんか?

食料品は少量生産に

2018年11月30日 | 食・レシピ

「食料品は少量生産に戻るべき」安売りも広告もないスーパーまるおかイオンの隣でなぜ顧客が絶えないのか

Yahoo ニュース 9/10(月)

井出留美  | 食品ロス問題専門家・ジャーナリスト・博士(栄養学)

  

群馬県高崎市、スーパーまるおかで販売される、まるおかあんしん牛乳(筆者撮影)

   群馬県高崎市。高崎駅から車を走らせると、巨大なショッピングモール、イオンの高崎店がある。その広大な駐車場のすぐ隣に、よく見ないと見過ごしてしまいそうな小さな店がある。それが、スーパーまるおかだ。

    株式会社まるおかの代表取締役社長、丸岡守氏は、1944年生まれ。その4年後の1948年に、父が、20坪ほどの八百屋「まるおか商店」を創業。守氏は、大学を卒業してからその店を継いだ。

   試行錯誤を重ねながら、商売のあるべき姿を追求し、1998年には優良経営食料品小売店として最高賞の「農林水産大臣賞」を受賞。2015年、現在の場所にスーパーまるおかをオープンした。安売りもしなければ、紙のチラシも打たない。でも、東京や神奈川、軽井沢などから車で数時間かけて、買い物にやってくるファンの顧客がいる。全国の量販店からの視察も絶えない。それはなぜなのだろう。

「食料品は少量生産に戻るべき」

   ーお客さまの健康を考えて、環境に負荷をかけないで継続していく商品作りをしていくと、やっぱり少量生産、というふうに(著書に)書いてらっしゃって。

丸岡守氏(以下、敬称略):「結論言っちゃうと、食料品は少量生産に戻るべきだと思うんです。大量生産っていうのは、やっぱりよくない。美味しくないんです。原料からして違うんです。」

「小麦や大豆、とうもろこし、そういうのをボーンと(まとめて)輸入して、国産の半値ぐらいですから、安い原料で安く作れるわけです。少量生産のものと比べたら、全然、味がまずいんです。」

「じゃあ、どうやってまずいのをごまかすか、ですよ。だって、普通に売ったら、黙って売ったら、美味しい方が売れちゃうんです。でしょう?じゃあ、そのまずいのをどうして隠すかっていうことです。コマーシャルバンバン打って、洗脳しちゃうと、もうそっちしか目がいかなくなっちゃうんです。それ食べたときに、美味しいかどうかって発想じゃなくって、もうそれは美味いんだってインプットされているんです。だから、自分の味、判断じゃないんです。脳がコントロールされちゃって、舌がバカになっちゃってるんです。」

スーパーまるおかの商品棚には手書きのPOP(告知:説明文)が貼られている(筆者撮影)

「チラシは打たない」

ーチラシもやめられたって。やっぱり、チラシのコストって半端ないほどですね。

丸岡:「莫大です。すごい。大手さんほどそうです。おそらくチェーン店なんか、何億でしょう。年間。その何億円使って、何か他に買ってやった方がいいんじゃないかっていうぐらい。」

「レストラン、一度行ってまずけりゃもう行かないようになっちゃいます。そういうもんです。だから、味って、食べ物っていうのは、味が価値なんです。それを、味を抜きにしようっていうの、皆、スーパーっていうのは。値段だよって思ってる。値段だけと思ってるお客さんも多いです。それは、そういう風に感化されちゃったんです。」

チラシは打たないが、商品棚には手書きの丁寧な説明がある(筆者撮影)

土用の丑の日は本格的に売って売り切る」

ーうなぎ、土用の丑の時なんかは、どうでしょうか。ちょっとだけ売るっていう感じでしたか?

丸岡:「いやいや、うちは本格的に売ります。」

ーそれじゃあ、売り切っていくっていう感じなんですか。

丸岡:「うん、そう。昨年は2,700円、今年も2,700円です。予定通り、ちゃんと売ります。まるおかのは美味しいんだって。」

野菜コーナーには生産者の顔写真と名前が貼られている(撮影:丸茂ひろみ氏)

信用を築くのは20年かかる

ーお父さまの代から引き継がれて、信用って一朝一夕じゃないと思うんですけれども、どのくらい・・・

丸岡:「一言で言うと10年。本当は20年ぐらいです。」

ーやはり、そうなんですね。

丸岡:「だから、いいもの売ろうと思っても、いきなり売れないんです。みんな高いから。だから、少しずつです。徐々にグレード上げていくっていうのか。こちらも美味しいです、こちらも美味しいですよってなっていって、ああ、やっぱり違うねってわかる人がだんだん増えてくればいいわけです。だから、20年かかるんです。」

熊本地震の被災地を支援するチョコレート(筆者撮影)

ーいくらフランチャイズの店がここにきて視察して真似しても、追いつかないですね。

丸岡:「そうなんです。みんなすぐ、その商品置けば売れると思ってる。だけど、安く、ずっと安く売ってきたでしょう。それをいきなり、今まで100円ばっかり売ってたのに、いきなり500円って言ったって、売れないんです。お客さん、びっくりしちゃって。」

「(規模が)大きくなればなるほど、社長とその従業員の格差っていうか。要するに、一人一人ができないです、大規模になればなるほど。社長だけ思ってもダメ。それから真ん中の従業員が思ってもダメなんです。両者、両方が一緒に。まして大きくなればなるほど、今度はロスって言ったって、莫大なロスになるんで。」

ーさっき、きな粉を買ったんですけど。きな粉の会社の方が、こちらのスーパーにすごく影響を及ぼしたっていう。

丸岡:「そうです。1袋500円ぐらいかな。それも結構、売れます。周りは100円ぐらいだったんです。だから、使ってみて全然違うっていうのはわかって、それをお客さんが、だーって伝えるわけです。これは違うよって。」

きな粉は他社品より高いが香ばしく売れるという(筆者撮影)

「コンビニは現代版の地主と小作人。昔より残酷」

ー莫大ですよね。それの最たるものがコンビニかなと思うんです。本部の話を聞いて、オーナーさんの話を聞くと、やっぱり、全然通じてないんです。ロスは大量に出てるし。

丸岡:「あれは、地主と小作人って、昔、あったじゃないですか。あれの現代版だと思います。」

ー本当にそうだと思います。

丸岡:「もっと残酷です。契約がきちんとできているから、その通り、やんなきゃなんない。昔は地主と小作人でも、今年はコメがとれなかったから、いつも10俵なんだけど、今年は6俵でいいよ、とかって、地主さんがそういうふうに、臨機応変にやってくれるわけでしょう。とれないのにとっちゃって、干上がっちゃったらそれこそ万歳になっちゃうから、それも困ることなんで。そういう昔の方が、まだ現実的なところがあったんだ。ところがコンビニとなったら、もう細かいところまでびっしり決めて、『これ約束ですから』ってね。」

 食べ物を工業製品と同じに考えちゃってるのはおかしい

ー柳川のスーパー「まるまつ」さん。お魚も、海がシケだととれないじゃないですか。大手は数合わせで買っていくんですって。でも、まるまつさんは、「古くてまずくて高い魚をお客さんに買わせることになるから、それはうちはしない」って。それが本当かなって。

丸岡:「それが本当です。とれなかった、っていうことを正直に言えばいいんです。」

ー元をたどればみんな生き物なので、自然のものって計画通りにいかないから。規格もそうですけど。

丸岡:「そう。だから、食べ物に関しては大量生産できない、オートメーションっていうのはあんまり良くないなと思うんです。それを、工業製品と同じに考えてるんです。そうはいかないです。」

野菜の陳列の仕方やPOPから、そこにかけられている手間や気持ちが伝わる(撮影:丸茂ひろみ氏)

日曜日は定休日、お正月は5日から

ー日曜日は定休日にされているのと、お正月も1月5日から(の営業)。

丸岡:「そうです。」

ー食べ物に対する敬意もそうだし、働く人に対する・・・

丸岡:「そうです。」

ーお客様からこちらで働く(側の)人になった方も何人かいらっしゃるって。

丸岡:「そうですね。今日も一人入ってて、レジ。」

手書きのPOP(撮影:丸茂ひろみ氏)

「食べ物は何なのかを見直す時期」

丸岡:「美味しいっていうことは、価値なんです。価値っていうことは、金銀銅で言うと、金なんです。」

「大事なことは、食べ物は何だって(いうことを)もう一回見直す時期だと思うんです。ただ、お腹満たせばいいっていう、そんな貧しい時代じゃないんです、もう。戦後なら仕方ないです。今、こうやって選べるんですよ。なんでも。だから選んで、自分でいいものを取るべきなんです。その知識がないんです。親が持ってない。だから子どもに伝えられない。こんなの食べちゃダメだよなんて、なかなか言えないです。」

「(食事は)健康を維持するためなんですけど、命をつなぐためなんですけど、もう一つ、食事をして満足するっていうの、すごく大事なんです、心が。」

「もっと深く掘っていくと、人間って何だ、と。」

想いやり牛乳は、数が少ないため、予約が入るという(筆者撮影)

「うちは何百店舗ある自慢」の勘違い

ー大組織になればなるほど「効率化」ですね。(働く)人がいないから、飲食店の持ち帰りも、本当は、生ものはダメで、これはよくって、これはダメで・・・とかやってると、面倒臭いじゃないですか。だから一律やめちゃった方がラク。

丸岡:「組織が大きくなればなるほど、そのマニュアルっていうのは、こういう風にしなさいっていうのが必要になってくるんです。」

ーちゃんとやろうとすると、大きくはできない。

丸岡:「できないですね。」

「それを勘違いしちゃって、うちは何十店舗、何百店舗あるんだって。従業員も、それを誇りに思う。うちは何百店舗。」

「やらなきゃダメなこといっぱいあるのかな。だから120(歳)まで生きるぞって。」

ー120!ありがとうございました!

<取材を終えて>

「食料品は少量生産に戻るべき」という言葉が最も印象に残った。「工業生産と同じに考えている」という言葉は、食品ロスを専門分野にしている大学教授2名からも聞いていた。自然からとれる食べ物が、大きさがバラバラでも当たり前だし、自然の状況によってとれないときもあって当たり前。それを「いつでも同じだけ同じ大きさのがとれる」と、売る側も買う側も勘違いしてしまっているふしがないだろうか。

取材を重ねれば重ねるほど、自然の摂理に従って食べ物を扱い、働く人に敬意を抱き、まっとうな商売をしている店舗は、どこも小規模だ、という思いが募る。そんな店があちこちにある方が、きっと無駄も少ないし、働く人も買う人も幸せなのではないか。

取材日: 2018年8月8日 

取材場所:スーパーまるおか(群馬県高崎市)

 


 

 今年の夏の記事ですが、今気が付きました。 
農業にも通じることです。


地球温暖化、対策上回る速度で進行 国連報告書が警告

2018年11月29日 | 社会・経済

  AFPBB News - 2018年11月28日

【AFP=時事】国連環境計画(UNEP)は27日、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」で定められた目標達成に向けた進捗に関する年次報告書を発表し、現状の温室効果ガス排出量と目標達成に必要な水準との間の差は広がり続けており、人類は気候変動対策でますます遅れをとっていると警告した。

 これまでの気温上昇幅はわずか1度だが、世界各地では大規模な森林火災や熱波、ハリケーンが増加の一途をたどっている。このままのペースで行けば気温上昇幅は今世紀末までにおよそ4度に達するとの予測もあり、科学者らは文明の基盤を揺るがす事態になると警鐘を鳴らしている。

今年で9回目の公表となる「排出ギャップ報告書(Emissions Gap Report)」によると、産業革命以前からの気温上昇幅を2度に抑えるためには、2015年のパリ協定で定められた炭素削減量を2030年までに全体で3倍に、1.5度の上昇幅を目指すなら5倍に増やす必要がある。

 同報告書は、国家レベルでの取り組みが最も不足していると指摘。UNEPの同報告書担当者、フィリップ・ドロスト(Philip Drost)氏はAFPに対し、「各政府は、自国が決定する貢献(NDC)を見直し、目標を引き上げる必要がある」と語った。

 

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COP24「パリ協定」のルール作りの完成を目指して

 世界の国々は、これをどのように実施していくのか。

  ハフポスト BLOG 2018年11月27日

   2015年に開催された、国連の気候変動に関する会議「COP21」において、すべての国を対象とした地球温暖化対策の国際協定「パリ協定」が成立しました。産業革命前から比べて気温上昇を2度未満(可能な限り1.5度未満に抑える努力)に抑えることを目的とした「パリ協定」。世界の国々は、これをどのように実施していくのか。その詳細な実施のためのルール(実施指針)が、2018年12月2日から、ポーランドのカトヴィツェで開かれる国連の会議「COP24」において採択されることになっています。このルールが、真に温室効果ガスの削減につながる野心的なものになるかどうかは、今後の世界の温暖化防止を大きく左右するカギとなります。

 「パリ協定」のルール作りを完成するCOP24

   2015年に、フランスのパリで国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)が開催され、すべての国を対象とした地球温暖化対策の国際協定である「パリ協定」が成立しました。 パリ協定は、温室効果ガス排出量の削減から、温暖化の悪影響に抵抗力をつける「適応」、世界すべての国が取り組むために必要となる途上国への資金と技術支援、森林伐採によって発生するCO2排出の防止まで、あらゆる温暖化対策を含んだ総合的な国際協定です。

    産業革命前から比べて気温上昇を2度未満に抑える(可能な限り1.5度未満に抑える努力をする)ことを目的として、21世紀後半に、世界全体で温室効果ガスの排出を実質ゼロにする、という目標を世界全体で共有する、画期的な協定です。

しかし、どのようにそれらを実施していくかの詳細な実施のためのルール(実施指針)はまだ決まっていません。

成立したパリ協定が発効した2016年から2年間、国連では、これらのルール作りのための交渉が急ピッチで続けられてきました。

 そして、2018年12月2日~14日にポーランドのカトヴィツェで開催されるCOP24において、これらのルールが採択されることになっています。

各国の国別目標の引き上げ機運を作ろうとする「タラノア対話」

   このCOP24には、「パリ協定」のルール作りと並ぶ、もう一つの大きな命題があります。「タラノア対話」と呼ばれる各国の国別目標の引き上げを目指す動きです。

   各国はパリ協定に合意したものの、現状でその国々が提出している削減目標では、すべて足し合わせても、地球の平均気温の上昇を2度未満に抑えることができず、気温は3度程度上昇してしまうことが予測されています。

このため、各国にはそれぞれが掲げる削減目標を引き上げることが求められます。 しかし、どの国も、一度決めた削減目標を変更するのは容易ではありません。また、削減目標を交渉課題としてしまうと、紛糾は必至です。このため、建設的な「対話」を通じて、いかに各国の取り組みを強化できるかのアイディアを出し合おうという精神の下、2018年を通じて、「タラノア対話」は国連や各国・各地域で開催されてきました。

   その集大成として、COP24では各国大臣クラスが集まっての「タラノア対話」が開催されます。この「対話」が、各国が2020年までの目標再提出に向けて、目標強化に向けた具体的なメッセージを出せるかどうかも、COP24に問われる大きな役割なのです。

   タラノア対話においても、上述したルール作りの交渉においても、一筋縄ではいきません。 こうした政府間の交渉では、各国がそれぞれの短期的な国益を追求するあまり、地球益を重んじた合意が得にくい上、これまでの先進国対途上国の深刻な対立がそこかしこに顔を出し、交渉が遅々として進まないことが常であるからです。

 政府間交渉を後押しする非国家アクターの躍動

   とかく進展の遅いこの政府間の交渉を後押ししようと、2014年から、国連の会議では新たな動きが見られるようになりました。

   政府よりも、より先進的な温暖化対策を進める自治体や都市、企業や投資家、WWFのようなNGO(非政府組織)などの「非国家アクター」が、同盟を結んで、「我々はより野心的な温暖化対策を実施する」と宣言する動きが活発化するようになったのです。 これらの非国家アクターたちの活動が、政府間交渉を後押ししたことは、画期的なパリ協定の成立にも寄与する大きな力となりました。

   また、現在進められているパリ協定のルール作りの交渉においても、非国家アクターたちが活発に活動を繰り広げています。

   特にパリ協定離脱を宣言したトランプ大統領下のアメリカでは、「We Are Still In(我々はパリ協定に留まる)」という呼びかけとアクションのもと、3,600を超えるアメリカ国内の非国家アクターが結集。連邦政府の意向とは別に、パリ協定の約束を守っていくことを宣言しました。

   日本でも2018年7月6日、同様に自治体や企業、団体などが集まり、パリ協定の支持と自主的な温暖化防止の取り組みの推進を宣言した「JCI:気候変動イニシアティブ」を発足。 2018年11月6日までに、290までその賛同主体を集めており、COP24 でのアクションも検討しています。

   実際、いよいよ「パリ協定」のルール作りが大詰めを迎えるCOP24に向け、国連交渉と並んで、世界各地でいくつもの非国家アクターによるイベントも予定・実施されており、今後のさらなる動きが注目されています。

   COP24において、パリ協定の野心的なルールブックが採択されるように、そして現状足りない各国の目標の引き上げの機運が高まるように、政府間の交渉も非国家アクターたちの活動も活発化しています。

   WWFも各国から気候変動問題に取り組むスタッフが集まり、COP24に参加。各国への働きかけに取り組みます。 期間中は現地からの報告を、Web記事やTwitterを通して随時行なう予定です。 ぜひご覧ください。


仁藤夢乃“ここがおかしい”第31回 守るべきは何か?

2018年11月28日 | 社会・経済

 バスカフェ運営で感じたこと

  Imidas 連載コラム

 10代女子無料のバスカフェオープン!

 2018年10月17日、バスを使った無料の夜カフェ「Tsubomi Café(ツボミ・カフェ)」を歌舞伎町(東京都新宿区)でオープンさせた。開催初日は女の子たちが来てくれるか心配していたが、オープンの1時間以上前から待っていてくれた少女たちがいた。

 ツイッターで「#家出」や「#神待ち」といったハッシュタグを調べて、バスカフェのことを知ったという中学生や、親に首を絞められて「家に帰るのが怖い」と話す中学生、「これからホスト(クラブ)に行く」「ネットで知り合った彼氏に浮気されていて、家にも居場所がないし死にたい」などと話す高校生がやってきた。

 家出をして何日も路上をさまよっている時にバスカフェのことを知り、ここへ来ることを目標に過ごしてきたという2人組の高校生や、漫画喫茶で生活をしていたり、体を売って生活をしていたりするという高校生もいた。「お腹すいたー」「早くご飯食べたい」と言い、提供した食事をたくさん食べてくれた。

 バスカフェの周辺で、スタッフに声を掛けられたのがきっかけで来てくれた人もいた。「寝られる場所が欲しい」「お風呂に入りたい」という人もいた。初日は15人が利用し、こうした場所が必要とされていることを改めて感じた。カフェに備え付けていたベンチで仮眠する高校生もいた。

 バスカフェには15歳頃からColabo(コラボ)とつながり、今は20歳前後になった女の子たちが手伝いに来てくれている。オープンを知り、「手伝いたい」と連絡をくれた。「うちが中学の時こういう場所があって、今日なにがあったとか話せれば良かった」と話してくれた人もいる。彼女たちが、カフェにやってくる子たちに「ここ座る〜?」「どこから来たの?中学生?」と声を掛けてくれるのを、うれしく思っている。

 新幹線に乗り家出をしてきていた少女

 2回目の開催は渋谷神宮前(東京都渋谷区)。中心街から少し離れた公園での開催だったが、この日も12人の少女が利用してくれた。

 前回、女の子たちから「寒い!」「温かい物が欲しい」という声があったので、寄付を募ってブランケットやカイロを増やし、お湯を用意して即席の味噌汁やスープを作れるようにした。また、育ってきた環境のせいで手作りの食事を受け付けず、レトルトパウチに入った加工品しか食べることのできない少女もいたため、フードバンクからカップ麺や袋入りのパンを提供してもらった。野菜が苦手で食べられなかったり、煮物など食べ慣れていないものを口にしなかったりする子も多く、今回はボランティアの協力でドライカレーやリンゴのパイも用意した。

 バスカフェ開催日は、スタッフやボランティアが街で少女たちに声掛けを行っているが、この日、渋谷のハチ公前交差点で声を掛けた少女は地方から新幹線に乗り、家出をしてきていた。バスに迎え入れた時のにおいで、何日もお風呂に入れていないのだろうと感じた。家族の虐待から逃れるため「遠くに行きたくて」東京に来たものの、行くあてがなく、お金も尽きて困っていたという。私たちの前にも数人の男性に声を掛けられ、「付き合わない?」「よかったら4人でセックスしない?」などと言われていたそうだ。

 児童相談所にも保護されたことがあるが、自分の言い分を信じてもらえなかったことから、児童相談所は頼れないと思っていたそうだ。もし私たちが出会っていなかったら、どうなっていただろう。性的搾取を目的とする男性に狙われ、さらなる傷を負うことになっていたのではないかと思わせられる出会いだった。

 この少女のような場合には、一時的な宿泊場所を提供し、その後も本人の希望を尊重しながら必要な支援を行っていく。

 「相談」や「問題解決」を目的としない場

 3回目のバスカフェも、13人の少女が利用した。経済的に厳しい生活をしていることから服や下着をとてもありがたがって、持って帰った人もいた。

 この日は有志の人が作ってくれたおでんや、リンゴの蒸しパンを提供した。新宿区の協力で、おでんを温めながら提供することができた。おでんの具は大根と玉子が人気で、練り物を選ぶ人は少なかった。手作りお菓子はうれしいようで、蒸しパンはすぐになくなった。

 白米のご飯は、食べない人も多いことが、だんだん分かってきた。協力してくれた有志の人は、私たちから聞いた女の子たちの反応を受けて、「野菜を、和食を食べさせてあげたい!という当初の意気込みは、やはり心のどこかに上から目線がありましたね。女の子たちが食べてくれる物なら何でも作ります! メニューのご提案をよろしく」と言い、次はどんなメニューにしようかと考えてくださっている。

 まだ3回の開催だが、延べ40人の少女たちが利用してくれた。2回、3回と来てくれた人もいる。困難な状況にある人だけでなく、「声を掛けられたから来た」「タダでご飯を食べられるからラッキー」「携帯充電したかったからちょうど良かった」という理由で立ち寄ってくれる人たちもいる。そういう女の子たちが来てくれる場になることで、本当に困っている人も駆け込みやすくなる。

 以前のエッセーにも書いたが、この活動は「相談」や「問題解決」を目的としない場作りを意識している。「困っている人、集まれ!」などと言ったら、本当に困っている人は来られなくなる。困っていてもいなくても、早い段階でつながり、顔見知りになることで、何かあった時に思い浮かぶ顔の一つになれればと思っている。

 10代女子限定にしなければならなかった理由

 開催初日、新宿区役所前でバスカフェを運営していた私たちに、たくさんの男性たちが「これはなんですか?」と声を掛けてきた。性売買斡旋業者のスカウトが偵察にきたり、「区民なんだから中を見せろ」と言ってくる人もいたりした。

 私たちは、少女たちが安心して過ごせるように「10代女子限定の無料カフェ」としてこの活動をしているが、「なぜ女子だけなのか」「男子だって困っている人はいる」「男性差別だ」などと言う人もいる。こうした反応は「女性専用車両は男性差別だ」「女子大はあるのに男子大がないのはなぜだ」などと同じくよくあるものだが、女性差別の歴史や、男女平等が実現していない現代社会への理解が足りない人々によるものだ。

 私たちは活動で出会った少年に対しても支援を行っており、男性でも被害に遭うことは知っている。しかし日本では、圧倒的に女性の方が搾取されやすく、特に若年女性に対する性暴力や性の商品化が深刻だ。

 参考にした韓国の支援バスは、男女問わず青少年が利用できるようになっていて、日本でもそうできたらいいなと考えていた。しかし日本では同じような境遇の少年たちが、少女を搾取する側のスカウトやホストなどとして使われていることが多いため、「10代女子」を基本にしようとしたのだ。

 初日から早速、少女たちの知人や友人のふりをして偵察に来るスカウトや、バスに女性を送り込んでカフェに来ている少女の様子やシェルターの場所などを探りに来る業者もいた。私たちは、少女たちが安心して利用できる場にするため、「10代女子限定」を徹底せざるを得なくなった。

 そのクレーム対応、ちょっとおかしくない?

 カフェの初日、活動に関係のない男性がやってきて中をのぞこうとした。警備担当者が「何かご用ですか?」と声を掛け、少女たちのための場所であることを説明すると、「区民として何をやっているのか見るくらい、いいだろう」「どこの誰の許可をもらってこの場所を使っているのか」などの質問をしつこく繰り返した。

 クレームを言うことを目的に来ていたように思えたが、都や区と連携して活動していることを伝え、これ以上は行政窓口に問い合わせて欲しいことを伝えてお帰りいただいた。

 すると、「その場で丁寧な対応をしてもらえなかった」「質問にはその場で答えて欲しかった」「次回の開催日に確認に行く。それまでに団体を教育しておくように」「本当は団体に問い合わせたかったが電話番号も公開されていない」「都の事業としてやっているならしっかり教育すべきだ」「テントの中にいる女の子たちの顔や制服が見えており、どこの誰だか特定される恐れもある。プライバシーへの配慮をした方が利用者もより利用しやすいのではないか」「どこの誰が何に基づいてやっているの分わかるようにして欲しい」などと都と区にその男性が連絡を入れたようだった。

 これを受けて都や区から、バスの入り口に「『平成30年度 東京都若年被害女性等支援モデル事業』という看板を掲げさせていただければ……」という連絡があった。

 本事業は、公的機関に自ら相談したり支援を利用したりすることにハードルを感じ、つながれていない少女たちとつながることを目的として始まった。

にもかかわらず人目に付く場所に「若年被害女性等支援モデル事業」などと張り出していたら、本末転倒だと分からないのだろうか? もしあなた方が中高生で、そのカフェを利用するだけで「被害女性」などと思われたら、嫌ではないのだろうのか? とがっかりした。

 問い合わせは全て行政窓口に……では困る

 バスカフェを利用する少女たちが虐待や性暴力の被害に遭ったり、孤立困窮した少女たちとして好奇の目で見らたりすることをなくすためにも、「若年被害女性」などと掲げることは危険である。そうした危険から少女たちを守りつつ、利用のハードルを下げて本当に困っている人と出会いつながるためにも、被害に遭っている/いないにかかわらず、どんな少女たちも利用できる場にすることが必要だと考えている。

 被害に遭った少女たちを隠そうとする社会や、「保護」の名の下に社会から隔絶するようなやり方で彼女たちを管理しようとする公的支援の在り方に問題と限界があるため、このような事業が始まった。開かれた場所に、少女たちが気軽に来たいと思える場所を作ることが必要で、そのためにカフェという形で「街中に、普通に存在すること」を重視してバスカフェを始めたのだ。

 少女たちの利用しやすさを守るためにも「それはできない」と伝えたが、理解を得るには時間が掛かった。東京都からは、こうした行政に対するクレーム対応をColaboが引き受けられるよう業務用の携帯電話を契約し、問い合わせ専用番号を公開して、専用のスタッフを付けることもお願いされた。

 彼らによると、「こうした問い合わせをされるのは高齢の方が多く、連絡手段は主に電話で、話を丁寧に聴くには面談となる」「Colaboは事務所の電話番号が非公開で、所在地も明かせないとしている。それだけで自分たちの問い合わせには答える気がない、と受け取る方が今後も出てくるだろう」という。そうして「このようにクレームを入れたり、メールは嫌なので電話で問い合わせをしたいという方々は、若者を低く見る傾向があるので、年かさの理事などに業務用携帯電話を持たせて対応担当者にするといい」「電話での問い合わせは全て行政窓口に……では困る」などと言われた。

 こうした意見をある程度受け止めたり、対策を考えたりする必要はあると思う。しかし行政と違い、小さな組織で予算も人も限られている私たちは、活動に支障が出ない範囲で可能な対応をしないと本来の目的が達せられなくなる。

 ギリギリまでシビアな活動なのを分かって欲しい

 私たちは、虐待の加害者や買春者、性売買斡旋業者、児童ポルノ愛好家など、活動自体を良く思わない人から過去にさまざまな妨害行為を受けており、相談者やスタッフを守るため拠点の住所や電話番号は非公開としている。問い合わせはメールやホームページからできるようになっているが、レイプ予告を書き込まれたりする。また、「自分は同世代の女性には相手にされない性的弱者だ。少女を眺めて楽しむことくらい許して欲しい」「Colaboに来る子にお尻を拭いて欲しいのでトイレットペーパーを寄付したい」などと言いながら、講演会や活動現場でつきまとう男もいる。そのためスタッフは必ず2人以上で行動し、講演会などではしっかりとした警備をお願いしなければならない状況がある。

 バスカフェについても、性的搾取を企む業者らが盛んに少女たちへのスカウト行為をしている場所であることなどから、暴力団対策に長けた弁護士に警備をお願いしている。カフェに入ろうとしたり、関心を持って声を掛けてきたりする人には、対象者でなくてもできるだけ丁寧に対応するが、あまりにしつこい場合や危険を感じた場合は警察を呼ぶことも考え、都や区にも相談した上で警察署の協力もお願いしている。

 最近、東京都港区では児童相談所の開設に、地元区民が反対の声を上げている。困難を抱えた子どもたちに偏見を持つ大人がたくさんいる社会の中で、「モデル事業」の貼り紙をすれば、「これはなんだ」「どうしてこんな子どもたちを支援するのか」「問題を抱えた子どもをこんなところに集めたら困る」などと言い出す人も現れるのではないか。

 さらに新宿区からは、「行政からの委託を受けていれば、その事業は“行政”なのです」とも言われた。でも行政からの委託を受けていようが、私たちは民間支援団体だ。私も構成員をつとめる厚生労働省の「困難を抱える女性に対する支援のあり方に関する検討会」においても、「行政だけではできない部分を民間に委託したり連携したりする場合、行政と民間との対等な関係性が必要だ」ということが今後の課題として上がっている。が、この間、モデル事業に関する行政とのやりとりの中に「対等な関係性」はほとんど感じられなかった。職員の方の個人的な人柄や想いはよくても、組織としてそういうやり方が染み付いてしまっているのかもしれない。

 私たちは、民間だからできることを今後も行政とも連携しながらもやっていきたいと考えているが、行政の都合に支配されないためにはかなりの時間や労力が必要で、負担も大きいことを身に染みて感じている。このままでは行政との連携のため少女たちが支援を利用できなくなってしまう。

 クレーム対応のための電話やスタッフを確保する費用、現地へ押し掛けてきた人に説明するための場所に掛かる費用、その間の警備費用、応対スタッフのケアに要する費用などを用意してくれるのなら前向きに検討する。だけどそれ以前に、こうした意見する人たちから少女たちを守ろうとするのではなく、ボランティアや寄付金で運営している民間団体にその対応まで押し付けようとする行政に疑問を抱かされた。

 一番大変なのは無自覚に無理解な大人たち

 バスカフェを利用する少女たちやスタッフ、また活動を見守り支えてくれる人の中にも区民や都民はたくさんいるのに、声の大きい人からの意見には過剰に反応し、声を上げられない人への配慮が全然ないのはおかしいのではないか。同時に、「こういう活動は大事!」という声を、多くの市民が行政に届ける必要もあると感じた。

 活動を応援してくれている多くの人は、直接支援することも、声を上げることもなくそっと見守ってくれているだろう。そうした人々が少しでも声を上げ、少しでも支援をしてくれたなら、行政に対して一言でいいから意見してくれたなら、こういった本来の活動からずれた苦労を私たちがしなくても済むかもしれないと思った。

 それとバスカフェの開催中は、活動の邪魔になるのでスタッフへの挨拶や差し入れは遠慮して欲しいと繰り返し伝えているにもかかわらず、取材や見学希望者が相変わらず後を絶たない。Colaboは活動への理解、スタッフや女の子たちへの配慮が感じられない人の取材はお断りしている。応援者の寄付金などに支えられてなんとか運営している以上、スタッフには極力負担を掛けないでもらえるよう理解を求めたいし、何より大人がたくさんいるとカフェに中高生が来なくなってしまう。

 住所公開のオープンな場所に、いつでも駆け込めて、泊まれる場所を作りたいと思い続けて実現できないのは、虐待者や性売買斡旋業者などの加害者、攻撃目的や興味本位で来る人たちから女の子たちやスタッフの安全を確保するためだけではない。自分の都合を優先させる大人たちによる、無自覚な暴力を避けられないからだとも感じている。

 活動していて「大変では?」とよく聞かれるが、女の子たちとのかかわりは苦ではなく、楽しくうれしいこともたくさんある。一番大変なのは、無自覚に無理解な大人たちとのやりとりだ。こんな世の中を少しでも変えたいと思うけど、途方に暮れかける。そんな繰り返しの中で、やれることをやり続けていきたいと思っている。

 


「大阪万博2025」は悪夢でしかない

2018年11月27日 | 社会・経済

経済衰退にトドメか?「大阪万博2025」は悪夢でしかない

   山田順  | 作家、ジャーナリスト、出版プロデューサー

 Yahooニュース  11/25(日)

 たまたま、アメリカに来ていて、こちらで「大阪万博」決定のニュースを知って、本当に情けなくなった。なぜ、いまさら、日本で「万博」(国際博覧会:国際博覧会条約に基づき、博覧会国際事務局(BIE)が認定する博覧会=EXPO)をやる必要があるのだろうか?

 いまや、国を挙げて行うような万博(EXPO)は、発展途上国や権力をアピールしたい強権国家以外は興味を示さない。なぜなら、ネットが進展し、情報も技術も瞬時で共有できる世の中になったのに、わざわざ「展示パビリオン」をつくって観客を集める万博を行う意義がなくなったからだ。もはや、万博はその使命を終え、「オワコン」も同然である。

 それに、たとえば、国際家電見本市 (CES、ラスベガス)、国際モーターショー(世界規模の自動車見本市、デトロイト、フランクフルトなどで開催)、ハノーヴァーメッセ(オートメーションなど世界最大の産業見本市)、SLUSH(IT関連のスタートアップのイベント、ヘルシンキ)、モバイル・ワールド・コングレス(世界最大規模のモバイル関連見本市、バルセロナ)など、万博以上に注目を集め、未来を示してくれるイベントは、毎年、世界中で開催されている。

 さらに、今回、大阪と開催を争ったのは、ロシアのエカテリンブルク、アゼルバイジャンのバクーという、たったの2都市。エカテリンブルクはプーチン大統領が世界に発展を誇示したい工業都市。バクーは石油で儲かったカネで、独裁者アリエフ大統領が金ピカを自慢したい首都。どちらも、「金欠」の大阪が争うべき相手ではなかった。

 しかも、当初は立候補を表明していた本命のフランス(パリ)は、早々と辞退していた。その理由は、「フランスの納税者がリスクを負わないという保証がない」というのだから、もっともである。

  つまり、単なる「タナボタ」にすぎないのに、なぜ、こうもはしゃぐのだろうか?

 多くの日本の報道では、「官民一体の努力が実った」と、招致成功は美談になっている。しかし、本当は、『朝日新聞』などの一部メディアが伝えるように、一致団結した「集票工作」の結果だった。

 BIEは170カ国が参加する組織だが、そこでの大票田はアフリカや中東、欧州の小国家。これらの国の票を集めるために、経済援助や日系企業の現地での雇用などの「エサ」を用意し、官民挙げて招致活動を行ってきたのだ。

  その結果が、決選投票での日本92票、ロシア61票という結果だった。本当に情けない。

 残念だが、大阪万博決定のニュースはアメリカではまったくと言っていいほど、報道されなかった。

 テレビでは『ABC News』が《Japan's Osaka will host the World Expo in 2025, beating out Russia, Azerbaijan for an event that attracts millions.》と、ほんの短く伝えただけ。万博というイベントが「資金を引っ張る」と認識されていることが、日本の情けなさを象徴している。

  さらに、パリ発のAP電は次のように、ベタ記事で伝えた。

 《PARIS (AP) The Japanese city of Osaka will host the World Expo in 2025, after beating out cities in Russia and Azerbaijan in the race to host an event expected to draw millions of visitors and showcase the local economy and culture. Shouts of joy in Japanese erupted in the Paris auditorium when the 170 member states of the Bureau International des Expositions voted Friday in favor of Osaka's bid. Dark-suited officials hugged and jumped up and down, and Japan's economy and trade minister, Hiroshige Seko, said he felt "Excellent! I'm excited! I also feel a heavy responsibility to make Expo 2025 successful."》

 投票で大阪に決まったとき、「日本人たちは喜びの歓声を上げた」と書かれ、さらに「ダークスーツ姿の官僚たちが抱き合いながら飛び跳ねた」などと続けられると、完全にバカにされているのがわかり、哀しくなってくる。

 松井一郎大阪府知事らが肩を抱き合い握手する姿や、「心の底からうれしい」と記者会見で語った世耕弘成経済産業相の上気した表情どれも見るに耐えなかった。なぜ、もっと「大人の対応」ができなかったのだろうか?

 日本国はいまも“経済発展病”という重篤な病にかかっていて、なにかと言うと「経済効果」が叫ばれる。それは、大阪府の試算では2兆3000億円。万博に合わせたイベント開催や観光客の増大などの間接的な誘発効果は大阪府の試算では4兆1000億円。まとめて6兆4000億円の経済波及効果が見込めるという。

  しかし、こんな「皮算用」が一概に信じられるだろうか?

 この経済効果のために、会場建設費に約1250億円がつぎ込まれ、さらに会場となる夢洲へのアクセスで、夢舞大橋の整備と大阪メトロの伸長工事などで約540億円がかかるとされている。

 しかし、これらはあくまでも「試算」だから、東京オリンピックの例を持ち出すまでもなく、今後次第でどうなるかはわからない。結局、予算はどんどん膨らみ、最終的に税金が投入されるだろう。これは、私たち国民にとって「悪夢」だ。

 哀しいことに、大阪万博は世界150カ国の参加を見込み、2025年5月3日~11月3日の185日間開催され、その間に、国内外から約2800万人の来場が見込まれている。中国人観光客ですら、すでに大阪には1度はやって来ている。万博があるからといって、彼らは再び大阪に来るだろうか? まして、欧米の観光客が、この極東の島国までやって来るだろうか?

 現在、東京オリンピック開催まで2年を切り、会場整備などの準備が進んでいるが、そのなかでもっとも懸念されているのが「ボランティア」である。

 なんと、組織員会と東京都を合わせて11万人が募集され、現在、登録者が8万人を突破したと伝えられている。しかし、これは登録だけの話で、実際に登録者が本当にボランティアをするかどうかはわからない。

 なぜなら、ボランティア募集には批判が多く、とくに「無償」であることで、「体のいい奴隷労働」(タダ働き)などと言われてきたからだ。滞在費も交通費も出ないというのだから、このような批判は当然だろう。こうしたことが、大阪万博でも行われる可能性は十分にある。

 東京オリンピックは灼熱の真夏で行われること、見込まれた当初予算では実行できなくなったことなどから、成功が危ぶまれている。さらに、オリンピック後は、反動不況が来ることが確実視されている。

 少子高齢化と人口減で、縮小していく日本経済。その衰退に、大阪万博がトドメを刺すかもしれない。

 

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 大阪万博“カジノ利権”の証明! オフィシャルスポンサーに安倍首相がトランプにねじこまれた米カジノ企業3社が

リテラ 2018.11.26

 〈略〉

この万博が、日本維新の会と安倍政権が推し進めるカジノ建設に血税をつぎこむための隠れ蓑になってしまっていることだ。

 大阪万博は夢洲という人工島で開催されるが、実は大阪府の計画によると、万博開催の1年前、2024年までにその夢洲でIR、つまりカジノを開設することになっている。そして、2025年、半年で万博が終わった後、その跡地でもカジノ施設をオープンして、規模をどんどん拡大させていくことになっている。

 つまり、最初にカジノありき。カジノだけでは税金投入に反対意見が出るため、万博という大義名分を使ってインフラ整備を図ろうという計画なのだ。

 いや、税金だけではない。安倍政権や松井知事らはカジノ企業を万博に協力させることで、カジノ業者選定を利権化しようという狙いもあるのではないかと言われている。

 そのことは、誘致活動をおこなってきた2025日本万国博覧会誘致委員会のスポンサーの顔ぶれを見ても明らかだ。

 〈略〉

松井府知事もトランプ支援の米カジノ企業会長と会談し、上限撤廃協力

 いや、安倍首相だけではない。昨年9月には、松井大阪府知事、吉村大阪市長とラスベガス・サンズのアデルソン会長が会談。その際、アデルソン会長から当初の政府原案にあったカジノ面積15000平方メートルの上限撤廃を要求されたとみられている。すると、実際に国会へ提出された法案ではその要求どおり、上限規制が撤廃されていたのだ。

「安倍首相や松井知事の間で、ラスベガス・サンズとMGMリゾーツへの大阪のIRへの参入がすでに決まっているんじゃないかという噂もありますね。それで、他の息のかかった国内企業は別の場所に参入させるんじゃないかと言われています(在阪のジャーナリスト)

 これが事実なら、大阪万博は米国のカジノ企業をもうけさせるために開催され、そこに何千億円もの金がつぎ込まれようとしているということだろう。しかも、そのうちのかなりの部分には血税が使われることになる。

 こんなグロテスクなイベントに快哉を叫んでいるこの国のメディアと国民は、ほんとうにオメデタイという他ない。(編集部)


今日は曇りの予報から雨に変わってしまいました。
江部乙の様子。


雪も消えてフキノトウ。


こちらは家に帰ってきたときのもの。10㎝ほどあります。根雪決定でしょう。


メキシコ国境編2 「少女たちの移民」

2018年11月26日 | 社会・経済

「性暴力」を生き延びる少女たち 

 メキシコ国境編2)(→第1回「移民危機の最前線『メキシコ南の国境』」はこちらへ)

  Imidas  連載コラム  工藤律子 (ジャーナリスト )

 

   中米から米国へ向かう移民の波は、今年(2018 年)、10月半ばに「移民キャラバン」が出現する以前から、しだいに大きくなっていた。極度な貧困とギャング団「マラス」の暴力から逃れようと旅するホンジュラス、エルサルバドル、グアテマラの人々を前に、メキシコ政府は米国の圧力に屈し、彼らを「南の国境」で食い止めようと必死だった。移民の安全と人権を守るために奔走する国連やNGO。その支援を受ける移民の中には、大勢の女性や少女たちがいた——。

少女を襲う多重暴力

 首都メキシコシティで今年9月、長年ストリートチルドレンを支援しているNGOの事務所を訪ねた際、20年来の友人であるプログラム運営責任者の男性(54)が、突然こう切り出した。

 「新たに、中米からの移民少女のための施設も開きたいと考えているんだ」

 彼はいつも、重大な問題に気付くと、すぐに何とかしようとするタイプの人間だ。数年前には、路上生活をするシングルマザーの母子を受け入れる施設を開設した。今度は「移民少女」か。聞けば、最近、メキシコシティの北を走る鉄道沿いの町で働く彼の知人が、「移民の少女を大勢見掛ける」と話しているという。

 この問題が気になった私とフォトジャーナリストの篠田有史は、10月、南の国境で活動する人権団体「フライ・マティーアス・デ・コルドバ」の広報担当のリタ(42)に、詳しい話を聞いた。開口一番、彼女は、「移民の中で、少女や若い女性の割合が増えたのは事実です」と言った。

「彼女たちを受け入れている施設では、この変化について、こう話しています。以前は、家族が雇った不法入国の手配人とともに米国へ旅する途中に、数日間だけ滞在する女性や少女が主だったのが、最近は単独でやって来て、メキシコの入国管理局に拘束されるまえに難民申請をし、施設で手続きの完了を待つ少女が増えている、と」

難民申請をするのは、申請書が正式に受理された段階で渡される書類があれば、結論が出るまでは保護され、合法的に滞在できるからだ。

 米国で子ども移民を支援するNGO「KIND(KIDS IN NEED OF DEFENSE)」と「フライ・マティーアス・デ・コルドバ」が17年6月に出した報告書によれば、メキシコから祖国へ強制送還された中米の子ども移民に占める少女の割合は、12年の17%から16年には25%に増加した。米国国境で保護された子ども移民では、23%から33%前後に。危険を覚悟で旅に出るほど、少女たちは追い詰められているということだろう。

「少女たちが移民となるのは、家庭内、あるいは地域で受ける性暴力が深刻化しているうえ、被害少女に対する心身のケアや支援がないために、彼女たちが居場所を奪われるからです」

 リタによれば、それはまさにジェンダーを理由に生まれる、複数の暴力の積み重ねだ。メキシコを含む、男性優位主義(マチスモ)が根強い「途上国」の貧困層においては、少女たちが、幼い頃から家庭で、実父や義父、おじ、兄など、同居男性の誰かに体を触られたり、セックスを強要されたりすることがある。自宅のある場所がマラスの支配地域であれば、家の外でも、マラスメンバーによって同じような目に遭わされるか、遭わせると脅される。マラスは通学・通勤路や学校、職場、どこにでも入り込んでいるため、逃げ場がない。家事手伝いに出された先での被害もある。そんな家庭や地域を離れるために、恋人の元へ走る者もいるが、そこでまた暴力を受けることも多い。「KIND」が保護した移民少女のうち、64%は性暴力の被害者だという。

 たとえ「強要された」にしても、一度「不道徳な性的関係」を持った少女は、疎まれ、守られることがない。相談相手も公的支援もないなか、自分自身を責める羽目になり、沈黙を強いられる。

 そうやって積み重ねられる暴力と周囲の冷淡な目から逃れる道は、「移民」しかないのだ。移民となってからも、問題が待ち受けている。旅で出会う見知らぬ男たち、人権を守るべき立場にある警察官や国家移民庁(入国管理局)の役人、入国管理局の勾留センターにいる大人から、暴力を受けることもある。心から安らげる場を見つけるのは、至難の業だ。

21世紀の奴隷

 メキシコで難民申請を行い、苦難の末に、幸運をつかみつつある少女もいる。

 8月末、私たちは日本人の学生らと一緒に、メキシコシティにあるストリートチルドレンのための女子定住施設を訪れ、十数人の少女たちと工作をしたり、食事をしたりした。すると別れ際、住人の一人でホンジュラス人のアリシア(仮名・17)が、はにかみながら、こう挨拶した。

 「今日はみなさんから元気をもらいました。ありがとう」

 その後、私たちは彼女にインタビューをする機会を得た。施設の一室で同じホンジュラスから来た14歳の少女と二人で待ち受けていた彼女は、自身の経験を自由に話してほしいと告げる私に、身の上話を始めた。

 「この施設に来て、まだひと月も経ってないの」

 そう微笑むアリシアの人生の記憶は、ホンジュラスの田舎にいた2歳の頃にさかのぼる。彼女には8人のきょうだいがいるが、当時は姉と実母との3人暮らしだった。兄3人は実父と米国へ行ってしまい、結婚しているもう一人の姉は別居していた。下の3人は、後に母親と別の男との間に生まれた。

 「母が病気になって、クランデーラ(先住民の伝統的治療を実践する女性)に治してもらいにいったの。2カ月ほど彼女の家に滞在して、治療を受けたわ。完治した時、母が治療費を払うお金がないと言うと、クランデーラは姉と私、どちらかを置いていけばいいと言ったの。母が、“どちらがよろしいですか?”と尋ね、私が選ばれた。まるで商品のように」

 他人の家の子どもにされた少女は、そこの家の娘二人のいじめに耐えながら、3年間過ごす。その後、家を飛び出し、姉夫婦の元へ行くが、義兄がお酒に酔うと暴力を振るったため、今度は母方の祖母の家へ。

 「祖母はかわいがってくれたけど、7歳になる頃、“申し訳ないが、もう学校に通わせる余裕がない”と言った。

私はどうしても学校に行きたかったから、先生に“勉強が続けたい”と訴えると、“住み込みで家事手伝いをするなら、文具も何もかも援助して学校へ通わせてあげる”って」

 それからの2年余り、彼女はその女性教師の家で、毎朝4時に起きては鶏小屋の掃除や餌やりをこなし、7時から正午まで学校で勉強して、帰宅するとまた家事に勤しんだ。

 「大変だったけど、学校に行けるだけで、幸せだった」

 その後も、別の教師の家を転々としながら、住み込みで働き、学校へ通う生活を送った。

 「3軒目では、そこの17歳くらいの息子が、私にセクハラ行為をしてきた。先生に言ったけど、信じてもらえなかった。その家では、皆がごちそうを食べている時も、私だけは何ももらえなかった。寝室も与えられず、いつも書斎の机の下で寝てたわ」

 人間扱いされない暮らしに疲れ果てた頃、祖母が迎えにくる。10歳になった少女は、祖母と暮らしながら学校へ通い、バナナ売りの叔母の手伝いをして、家計を助けた。そして、何とか中学進学までこぎつける。

マラスから逃れる

 「中学には、首都テグシガルパにいる叔母の家から通ったわ。仕立屋をしていた叔母が、学費を援助してくれたの」

 ところが、それがマラスとの遭遇のきっかけとなる。通学路にある狭い路地に、マラスの青年たちがたむろしていたからだ。学校内にもマラスメンバーがいた。

「路地を歩いていると、(二大マラスの一つ)「18(ディエシオチョ)」の連中が、“仲間になれよ”と、声をかけてきた。何とか断わり続けていたんだけど、ある時、こう脅された。“おまえの住んでる場所も家族も知ってるぞ。今日は黙って俺たちに付いてきてもらおう”」

 ギャング青年たちは、彼女に目隠しをして車に乗せ、アジトに連れていく。木板とトタンで作られた小屋で、大量の武器があり、そこで一人の青年が椅子に手足を縛られ、拷問されていた。アリシアは、その正面に置かれた椅子に座らされる。青年は、18メンバーの恋人を殺害したために捕らえられた、敵対するマラスのメンバーだった。

「彼は、“本当のことを吐かないと殺すぞ”と脅され、“エル・サポ(彼のボスのニックネーム)に命じられただけなんだ”と、泣き叫んでた。エル・サポの居場所を聞かれてたけど、知らない様子だった。でも、18の連中は容赦しなかった」

 彼女は恐怖に震えながらも、目をほんの少しだけ開いて、青年の運命を見届けようとする。そして、「知らない」と繰り返すたびに、青年の指が1本ずつ、その次は舌が、ナイフで切り落とされていくのを目撃する。

「最後に腕を切られた瞬間、息絶えてしまった」

 淡々とした口調と残酷な事実のギャップが、聞く者の恐怖を増す。

 彼女自身は、その日、特に危害は加えられなかったという。だが、彼女の言葉が本当ではない可能性もある。性暴力を振るわれても、被害者は真実を理解されない恐れや羞恥(しゅうち)心から、容易には口にしないからだ。

 身の危険を感じ始めたアリシアは、まもなく実母が暮らす農園へ引っ越す。母親は、弟妹と共に、農園主の家政婦として雇われ、敷地内にある家で暮らしていたからだ。そこで弟妹の面倒を見ながら、中学へ通うことにした。ところが、しばらくして、通学路に見覚えのある男が立っていることに気付く。

 「テグシガルパで私を脅したマラスのメンバーだったの」

 背筋が寒くなるのを覚えた彼女は、すぐに実母の家を出て、姉夫婦の家に移った。ところが、携帯電話に「お前がどこにいるかは、知っている」というメッセージが何度も送られてきた。追い詰められた少女は、わずかなお金を手に町のバスターミナルへ向かい、偶然そこにいた友人(20)に「ギャングに追われているの!」と泣きながら助けを求めた。

 「友人はお金を持っていたので、“一緒に行ってあげる”と、私とバスに乗り込んだわ」

 移民少女の旅は、いきなり始まる。それから約1週間後、アリシアと友人は、ヒッチハイクと徒歩での移動を繰り返しながら北上し、ついにグアテマラ北西部とメキシコの国境を越えて間もなくの町、テノシーケの「移民の家」にたどり着く。幸い、道中、手を差し伸べてくれた者たちから、暴力を振るわれることはなかったと話す。

「とにかく用心しながら、神を信じて旅を続けたの」

 年齢よりも大人びて見える少女は、「移民の家」と子ども移民のための施設に計5カ月近く滞在した末に、今いるNGOの定住施設に落ち着いた。共に旅をした友人は、メキシコに着いて1カ月ほどした頃に、他の移民たちのグループと米国へ向かった。

 「今は幸せ! だって、ここでは自分の好きな勉強ができるんですもの」

 少女はそうほほ笑み、苦労の連続だった幼少期の影を払いのけるかのように、きっぱりと言う。

「今の夢は、農業技師になること。とにかく大好きな自然の中で働きたい」

 

 約2時間、語り続けた人生は、「農業技師」とは結び付かない世界だ。が、「子どもの頃から、農園で働くことに憧れていた」と言う少女は、本気で大学進学を夢見る。

 アリシアの隣でずっと話に耳を傾けていたもう一人の少女は、義姉とその弟、友人の3人と連れ立ってメキシコにたどりついた、という話だった。彼女もアリシア同様、テノシーケで難民申請をして、この施設を紹介された。メキシコまでの道中で、何らかの性暴力被害に遭ったようだが、本人は語ろうとしなかった。「メッシのようなプロサッカー選手になるの」と大真面目に語る表情からは、意志の強さがうかがえる。

この1年間にメキシコの入国管理局に拘束される移民少女の数は、子ども移民危機と言われた14~15年と同じレベルだとして、おそらく1万4000人は軽く超えるだろう。「移民キャラバン」を含めれば、さらに多いと予想される。16年に拘束された移民少女1万4178人のうち、1万3625人が強制送還になっていることから考えると、マラスに象徴される暴力から逃れてきた少女の中で、希望の光を見つけられる者は、ごくわずかだ。

 

 そして今、メキシコの土を踏んだ後も、マラスに怯え続けなければならない現実が迫っている。

 

(続く)

 ※最終回となる第3回は、近年メキシコに広がるギャング団「マラス」の脅威を取材。マラスの暴力から逃れるため、命懸けでメキシコに渡った移民たちを待ち構えていたものとは……。12月3日リリース予定。

 当連載を基に大幅加筆した単行本『マラス 暴力に支配される少年たち』(集英社、開高健ノンフィクション賞受賞)が文庫化しました。。(集英社文庫『マラス 暴力に支配される少年たち』のサイトへ


ホットヨーグルト

2018年11月25日 | 食・レシピ

ホットヨーグルトは効果なし?乳酸菌は加熱すると死ぬって本当?

「カラダスタイル」より

 ホットヨーグルトでダイエットですか?痩せるのなら何でもやってしまおうという方のために?ホットヨーグルトのダイエット効果や美容効果をお伝えしたいのですが、ヨーグルトを温めると、特に電子レンジなんか使った日にゃ、乳酸菌さん全滅ですよ~。全員いなくなってしまうかもしれませんよ。

とはいうものの、ホットヨーグルトは美容や健康にいいと言われていますね。ホットヨーグルトが美容やダイエットにどれほどの効果があるのか、ホットヨーグルトの加熱の仕方によっては全く効果がなくなるのか?乳酸菌は死滅してしまうのか調査しました。

〈中略〉

ホットヨーグルトの効果

 ホットヨーグルトを食べるだけで、便秘が改善されます。その結果、代謝が高まって肌ツヤがよくなり、どんどん美肌が作られていきます。さらに体に余分な脂肪分が溜まりにくくなるためダイエット効果が上がると言われています・・・。

本当にそうなんでしょうか?私には大いに疑問があります。後述しますがヨーグルトを温める時に電子レンジを使うのはNGだと考えます。

乳酸菌が活発に活動する

ヨーグルトって、だいたい冷蔵庫で冷やして食べることが多いと思います。しかしヨーグルトの中の乳酸菌は冷やされることで、その活動が抑えられてしまうことが分かっています。乳酸菌を40℃くらいの温度に温めてあげることで、活発に働くようになります。

そのため、冷えたヨーグルトをそのまま食べるのではなく、一旦温めてから食べると健康や美容に良い効果があるとされているのです。

乳酸菌の効果

乳酸菌の働きは、ご存知の方も多いと思いますが、腸内環境を整えることにあります。腸内環境が整うと、腸の動きが活発になり便秘解消・予防につながります。また悪玉コレステロールを排除する働きもあるため、中性脂肪が減少し肥満の予防になります。

また女性にとっては、アンチエイジング効果で肌がキレイになる・シミやシワが出にくくなる嬉しい効果があります。「腸美人」といわれるように美肌やアンチエイジングの要はまずは「腸」の働きを正常化することにあるのです。

ヨーグルトを食べる時には、乳酸菌のエサとなるオリゴ糖を一緒に摂取することで、腸内で乳酸菌が増えさらに整腸効果が上がりますよ。

冷たいヨーグルトを食べてはいけない?

普通はヨーグルトは冷たい状態で保存されていますし、冷蔵庫から出したらそのまま食べてしまいます。しかし冷たい状態でヨーグルトが体内に入ると、乳酸菌はある程度は腸までは届くのですが、腸が冷やされて腸の働きが弱まってしまいます。

腸の働きが弱くなるということは便秘につながりますし、カルシウムを吸収しにくくさせてしまいます。

逆に温かいヨーグルトは、カルシウムの吸収率を上げます。体がカルシウムをしっかり吸収できると、脂肪を体内に蓄積することを防ぐ効果が得られるのです。つまりダイエット効果が大いに期待できるというわけです。

〈中略〉

作り方や食べ方の間違い

ホットヨーグルトが美肌やダイエットに効果があるのかどうかは、やはり「人」によって違うものです。体質や体調によっても効果はまちまちのはずですね。

さらに食べる時間が夜10時~深夜2時が腸のゴールデンタイムといわれ最適なのですが、これ以外の時間帯に摂取しても効果が薄いと考えられます。

〈中略〉

電子レンジを使うと乳酸菌はどうなるの?

電子レンジは、食品に集中的にマイクロウェイブ(電磁波)を使って加熱するものです。マイクロウェイブは、食べ物の中の水分子を振動させることで摩擦熱を発生させるため、食品が温められるという仕組みになっています。

これだけならいいのですが、電子レンジ加熱は栄養素の分子にも強い影響を与えてその構造を壊してしまいます。このためビタミンやミネラルといった栄養成分はその栄養価が60~90%も減少してしまうこともわかっています。生や、煮込んだり焼いたりしてで食べた方が栄養価は高いのです。

ですからホットヨーグルトの効果を期待するなら、面倒でも鍋を使って温めた方がいいでしょう。


 乳酸菌は生き物です。だから冷蔵庫で保管します。冷たいヨーグルトは口当たりもよく、おいしいですね。「食べたらだめ」ではなく、よく噛んで、口の中で温めてから飲み込めばいいのです。
 温め方ですが、やはり電子レンジはやめた方がいいでしょう。「鍋で」というととても大げさになりますし,
過熱しすぎも起きるかもしれません。一番簡単なのは容器ごと小どんぶりに入れてお湯で加熱することです。

 今日は一日小雨模様。雪はあまり解けていませんが、道路の雪はほぼなくなりました。


果物の「食べ頃」「当たり外れ」を見極める方法

2018年11月24日 | 野菜・花・植物

  食の研究所 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54547より

2018.11.02(Fri) 佐藤 成美

甘味と酸味のバランスが風味の決め手

 実りの秋。ブドウやカキなど色とりどりの果物が店頭に並ぶ。果物のおいしさの特徴は、爽やかな甘味や酸味にある。さらには滑らかだったり、シャキシャキしたりといった歯触りもおいしさには欠かせない。ただし、果物には「甘い・酸っぱい」といった当たり外れがあるのも難点だ。果物の食べ頃とはどんな状態なのだろうか。

 お菓子とは異なる果物の甘さ

 果物のおいしさといえば、まず甘いことである。この甘さはお菓子などの甘さと違って、爽快でさっぱりしており、たくさん食べても飽きることはない。その理由として、甘味を構成する糖の種類が異なることや、果物には水分が多く、酸味があることが挙げられる。

 果物の甘みは、ショ糖やブドウ糖、果糖、ソルビトールなどの糖類によるもの。糖の甘味は糖の種類によって異なる。

 ショ糖は砂糖の主成分で、お菓子などのなじみある甘さはショ糖によるものが多い。ショ糖の甘みを1とすると、ブドウ糖は0.6~0.7、果糖は1.2~1.7と甘味が異なる。果糖の甘みは糖の中でも強いが、キレのよい甘さなのである。また、冷たいほうが甘味を強く感じる。一方、ショ糖は甘味も強く、コクのある甘さだ。

 これら糖類の構成比は果物の種類によって異なり、それが果物の特徴的な甘さを生み出す。たとえば、果糖やブドウ糖が多く含まれると爽やかな甘さになり、ショ糖が多く含まれると濃厚な甘さになる。

 果糖を多く含む果物にはリンゴやナシ、ビワなどがあり、ショ糖を多く含むのはオレンジやグレープフルーツなどの柑橘類やモモ、熟したバナナなどだ。イチゴやブドウは、果糖とブドウ糖を半々ぐらい含む。

同じ果物でも品種で糖の組成は変化し、風味が異なることもある。メロンはショ糖を多く含み、濃厚な甘さが特徴だ。だが、同じメロンでもマスクメロンは、爽やかな甘さで、ブドウ糖や果糖が多く含まれることが知られている。

 果物が熟すことで食べてもらうという生存戦略

 「熟す」とは、果物が食べ頃になること。熟すと果物が甘くなるのは周知のとおりである。果実が成長している間は硬くて酸っぱいが、成長し終わると、色づき、それとともに香りが増し、甘くなる。果肉も柔らかくなり、酸味が減って食べ頃になる。

 このように果実が熟すのは、植物が子孫を増やし、分布を広げるためだ。植物は動けないので、種を鳥など他の生き物に運んでもらわなければばらない。そこで食べ頃の色や香りで動物をひきつけ、甘くておいしい果実を食べてもらう。硬くて食べられない種子を吐き出したり、糞をしてもらえば、種をばらまくことができる。秋に熟す果実が多いのは、冬鳥が多く飛来し、冬に備えてたくさん食べる動物も多いからだという説もある。

 イチゴやリンゴ、ブドウ、スイカ、日本ナシなどでは、果実が成長して食べ頃になるまで待って収穫するが、メロンやキウイ、マンゴー、西洋ナシなどでは、追熟が必要だ。追熟とは、収穫した果物を食べ頃になるまで待つことを指す。傷みやすいバナナや桃は未熟なものを収穫し、輸送中に追熟させて食べ頃にする。熟してから出荷するとあっという間に食べ頃を過ぎてしまうためだ。

 風味を変化させるエチレンガスは諸刃の剣

 成熟期になると、果実はエチレンガスを発生する。エチレンガスは、果実の成熟を促す役割を担っている。リンゴやバナナといっしょにキウイフルーツを保存するとよいとよくいわれるのは、リンゴやバナナがエチレンガスをたくさん出すことで、キウイフルーツが早く甘く柔らかくなるからだ。エチレンガスが発生すると、細胞内の酵素の活性が高まり、色素成分や芳香成分が合成される。酵素の作用で果肉も柔らかくなる。

 成熟の過程で糖の構成も変化する。光合成によりできたブドウ糖は果実に蓄積されるが、成熟している間に果糖などの他の糖に変わるためである。追熟では、蓄えられたデンプンが分解し、他の糖になる。

果実の酸味は、リンゴやモモに含まれるリンゴ酸や柑橘類に含まれるクエン酸といった有機酸である。成熟している間に糖分が増加する一方で、有機酸は減少し、酸味は和らぐ。こうして甘味や酸味、香り、食感などのバランスが整い、果物は食べ頃を迎える。

 だが、果物を置いておけば、風味は落ちていく。エチレンガスは収穫後も発生しつづけ成熟を促す一方、劣化も促す。色は悪くなり、果肉もぐちゃぐちゃになる。酸味も少なすぎると、いくら甘くてもぼけた味になってしまう。

 食べ頃を見極める、色で、香りで、機器で・・・

 果物は、成熟の過程や保存中にどんどん変化していくわけだ。食べ頃に食べるのが一番おいしいのだが、おいしいかどうかは食べてみるまで分からないのが難点となる。一般的に食べ頃は果物の色や香りで判断する。スイカなら叩いて、ポンポンと弾むような音ならシャキッと歯ごたえがあって食べ頃だ。バナナは黒いスポットが出てきているかを見る。このように、いろいろな見分け方がある。

 果物の品質評価には、一般的には甘味の指標として糖度が、また酸味の指標として酸度が使われる。近頃では店頭に糖度が表示されていることもあるので、この言葉を聞いたことある人も多いことだろう。

 糖度は、糖度計で測定する。水に溶けている砂糖などの固形分が多いほど、光の屈折率が高くなることを利用した機器だ。測定は簡単だが、果汁を測った場合、糖度は有機酸など糖以外の成分も含めた含量を示し、厳密には「糖の量」を示す値にはならない。また、ショ糖やブドウ糖、果糖などすべての糖を含んだ値となる。果物中の固形分のほとんどは糖分であり、甘味に関する糖の量と糖度は相関しているので、甘さの目安となるのである。

果物によっては、酸味成分など糖分以外の成分が多いこともあるので、糖度が高くても必ずしも甘くないことがある。特に果物の種類が違うと、糖類以外の組成が異なり、糖度を単純に比べることはできないので注意が必要だ。

 果物の「当たり外れ」が減ってきた

 果物の糖分を簡便に分析する他の尺度や方法がないため、糖度や糖度計は広く使われている。屈折の仕組みを利用した糖度測定では果汁が必要だが、近年では、果物の非破壊分析技術の進歩が目覚ましい。

 たとえば、近赤外線を利用して糖度や酸度が測定されている。また、可視光線を当ててリンゴが蜜入りかを見分けたり、画像処理により食べ頃の色を見分けたりできる。分析機器の小型化も進み、はかりに果物を載せただけで糖度や酸度を測定できるものや、ポケットタイプの非破壊糖度計も開発されており、農場などの現場でも簡便に果物の品質を評価できるようになってきた。

 そういえば、近頃は果物を買っても「外れだ」と感じることは、以前よりも減ったような気がする。日本の果物は甘味が強く、品質がよいことで知られている。それは、品種改良や栽培技術の進歩によるものである。

 だが、国産の果物のみならず、輸入の果物でも外れが少ないのは、果物の検査技術の進歩によることもあるのだろう。今では、食べなくても野菜や果物のおいしさを人工知能で判定するスマホアプリも登場しているとか。近い将来、食べ頃を見逃すこともなくなり、果物に当たり外れがあるのは過去の話になるかもしれない。

 11月はミカンやリンゴの出荷が増えてくる。今年の早生ミカンは味がよいそうだ。果物をおいしく味わい、実りの秋を満喫したい。


昨日の除雪車の出動は朝だけ。夕方にはかなりの雪が積もっていたのだが、来なかった。
夜、仕事に出るとき、タイヤの大きいジムニの車高を超えていた。
巻き上げる雪はフロントガラスに流れ、何もかにも見えなくなる。
車が何台かでも通れば違うのだが他のタイヤ痕はない。


勤労感謝の日に思う。

2018年11月23日 | 社会・経済

外国人実習生を搾取する関係団体役員に麻生、二階、甘利ら大物政治家たちが! 劣悪な労働環境を放置し甘い汁を

  リテラ 2018.11.22.

 安倍政権のゴリ押しがつづいている、外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案の国会審議。きょうも、委員会の定例日ではないにもかかわらず衆院法務委員会の開催を自民党・葉梨康弘委員長の職権で決定、立憲民主党や共産党などの野党が反発し欠席した。しかし、自民党は安倍首相の外遊日程に合わせるべく来週27日までに衆院で同法案を“強行採決”させる予定だという。

 この夏、数々の災害を受けて補正予算案のために臨時国会の召集を野党が求めても応じなかったのに、法案審議から逃げる安倍首相の外遊を理由に審議日程を決定する──。国会を愚弄するにも程がある話だが、そもそも、入管法改正案の問題点はどんどん膨らみつづけている状態だ。

 現に、先日「データの捏造」が発覚した、失踪した外国人技能実習生の聴取票だが、衆院法務委の理事会メンバーしか閲覧ができず、コピーも不可のため、理事会メンバー数人が手書きで書き写すという地道な作業をつづけている。しかし、立憲民主党の山尾志桜里議員が書き写した聴取票20枚からひとりひとりの時間給を換算したところ、最低賃金以下だった人は17人にもおよんだという。しかも、この17人のうち、聴取票の「最低賃金以下」という選択肢にチェックしていた人はゼロで、「低賃金」にチェックした人も7人にすぎなかった。

 ようするに、山下貴司法相は67%の技能実習生たちが「低賃金」を理由に失踪していたのに、それを「より高い賃金を求めて」失踪していると“捏造”したが、もともとの聴取データ自体、実態が正しく反映されていないのだ。

 だが、さらなる問題も浮上した。それは、問題の聴取票には「監理団体」にかんする調査項目が存在していないことだ。

 「監理団体」というのは、技能実習生を受け入れ企業に斡旋する団体のことで、協同組合や商工会など非営利法人であることが条件。さらに監理団体は、受け入れ企業が適正な技能実習をおこなっているかを確認・指導することになっている。だが実際は、監理団体が不正行為を受け入れ企業に指示するなど、劣悪な労働状況に加担していることも多い。

 たとえば、技能実習生問題や入管問題の訴訟を手掛けてきた弁護士の指宿昭一氏は、「多くの場合、不正を指示するのは実習生受け入れ窓口の監理団体です。時給を300円から500円に上げようとしたら監理団体に「300円で統一しているからやめてくれ」と言われた岐阜県の縫製会社もあります」(長崎新聞8月17日付)と語り、ジャーナリストの安田浩一氏も「(監理団体の)実態は利益目的の人材ビジネス。各地で実習先を募り、実習生を送り込む。実習先から手数料を得て、自分たちが管理しやすいよう、長時間労働や低賃金を主導してきた」と指摘している(東京新聞11月16日付)。

 また、今年、技能実習生に原発事故による除染作業をさせていたことが判明したが、このときも監理団体は技能実習生に「仕事は簡単」「誰でも出来る」としか説明していなかったという。

 監理団体はこのように、技能実習制度で横行する不正行為の要因となってきた。にもかかわらず、その問題を隠蔽するかのように、失踪した技能実習生から監理団体について聞き取りさえおこなっていなかったのである。

 法務省は昨年施行された技能実習適正化法によって「監理団体の適正化に取り組んでいる」と主張するが、不正行為はそれでも解消されていない。なぜ、政府は監理団体の問題にメスを入れようとしないのか──。

  じつは、その背景にあるのが、大物政治家たちの存在なのだ。

関係団体の役員に、麻生財務相や二階幹事長ら大物政治家がズラリ

 いま、技能実習生を12万人も送り出している最多国はベトナムだが、そのベトナム人技能実習生受け入れの監理団体のひとつに「公益財団法人東亜総研」という団体がある。そして、この同団体の代表理事・会長を務めているのは、自民党幹事長などを歴任した武部勤・元衆院議員。さらに、同団体の特別顧問に就いているのは、自民党の二階俊博幹事長なのだ。

 監理団体には、技能実習生ひとりあたり毎月数万円の「監理費」が支払われる。「非営利団体」が条件としながらも、その実態は人材派遣業だ。そのため、技能実習生の保護よりも儲けを優先させる監理団体が後を絶たないのだが、そうした監理団体のトップや特別顧問に大物政治家が就いているのである。

 しかも、この問題は同団体だけではない。ミャンマーからの技能実習生受け入れで「求人票の事前審査業務」をおこない、監理団体から手数料を徴収している「一般社団法人日本ミャンマー協会」の役員名簿(今年10月現在)にも、数多くの政治家の名前がズラリと並んでいる。

 まず、名誉会長は中曽根康弘・元総理大臣。最高顧問は麻生太郎・副総理兼財務相。会長・理事職には渡邉秀央・元郵政大臣、理事長代行には古賀誠・元運輸大臣、理事には甘利明・自民党選挙対策委員長、浜田靖一・元防衛相……。このように、現役から引退した議員まで、自民党の大物議員が関係しているのだ。

 また、役員名簿には自民党だけではなく、理事長代行には、公明党の重鎮である白浜一良・元参院議員や、理事に野田内閣で法務相を務めた民進党の田中慶秋・元衆院議員、立憲民主党の福山哲郎幹事長の名も記されている。

 日本ミャンマー協会については、昨年6月6日の参院内閣委員会で自由党の山本太郎議員が取り上げ、大物政治家らの名前を列挙した上で問題をこのように指摘していた。

 「この(日本)ミャンマー協会というのはすごくて、ようは、申請の事前確認作業をするにあたり、受け入れ監理団体から多額の手数料を徴収しているんですよね。しかも、一団体初年度10万円、そして翌年から毎年5万円、さらに送り出した人が3人増えるごとに1万円ずつ支払わなくちゃならないって、この行為、技能実習制度の適正な運用とは思えないんですけれども」

外国人技能実習生から搾取したお金は、政治家や官僚の関係組織に

 まさに山本議員の指摘通りだ。しかも、今回の外国人労働者の受け入れ拡大 では、業種によってはほとんどを技能実習生からの移行を想定しており、受け入れ拡大によって監理団体はさらに儲かり、日本ミャンマー協会のような監理団体から手数料を徴収する団体にも多額の金が転がり込むことになるだろう。

 いや、これだけではない。外国人技能実習生や留学生の問題を取材しつづけ、東亜総研や日本ミャンマー協会に政治家が絡んでいることを指摘してきたジャーナリストの出井康博氏の著書『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社)によると、技能実習制度を統括する「公益財団法人国際研修協力機構」(JITCO)は、監理団体や受け入れ企業からの会費によって年13億円近くを得ているのだが、このJITCOは法務省や厚労省など各省庁の天下り先になっているというのだ。

  こうした問題を、出井氏はこのようにまとめている。

 〈受け入れ企業の上には監理団体と送り出し機関があって、さらに制度全体を統括するJITCOが存在する。このピラミッド構造を通じ、実習生の受け入れが一部の業界関係者と官僚機構の収入源となっている。そして陰では、官僚や政治家たちが利権を貪っているわけだ。その結果、実習生の賃金は不当に抑えられてしまう〉

 技能実習生たちが最低賃金以下で長時間労働を強いられた上、なけなしの給料からさらにむしり取られた金が、大物政治家や元官僚たちが関与する団体・機構に流れ込む──。だからこそ、政府は技能実習生の搾取の実態を「黙認」しようとするのだ。

 しかも、だ。入管法改正案では、新設の「登録支援機関」に外国人労働者の支援をおこなうことになっているが、この機関には監理団体がスライドすると見られている。そして、現行の技能実習法では主務大臣が監理団体に対して指導や改善命令を出すことができるが、それが改正案では、登録支援機関には指導・助言しかおこなえない。つまり、より「甘く」なっているのだ。

 生身の人間ではなく“安価な労働力”としか見ず、さらに外国人労働者を食い物にしようとする政治家や天下り官僚たち。こんな法案を成立させるようなことは断じて許されないだろう。(編集部)


汗水流さないで、転がすだけで儲けている人たちがいる。
株・金・土地・人・・・
誇りを持てる仕事してますか?
いじめられていませんか?
自分を支え、家族を支え、社会を支え、国を支えるる働く人に感謝してますか?
さげすんでいませんか?
総理!

今年初の除雪車出動。

今朝は20㎝程積もっていました。
今年初の雪かき仕事でした。
下は江部乙。
やはり、ここより少ないです。



雨宮処凛がゆく!第466回:私の「壁ドン」体験〜クレジットカードや賃貸物件の審査に落ちるとか、フリーランスとして生きてるとやたらとぶつかる「壁」の数々について

2018年11月22日 | 社会・経済

マガジン9 2018年11月21日

 

 

ちょっと前、安倍首相が来年10月に消費税を予定通り10%に上げることを表明した。

 その際、中小業者支援策として、中小商店でクレジットカードなどキャッシュレスで決済した場合、増税2%分をポイント還元することなどを検討する旨も伝えられた。

 報道を受け、「クレジットカードを持っていないお年寄りや子どもはどうするんだ」「そもそも小さな商店ではクレジットカードなんて使えない」という批判の声が上がった。そんな批判に頷きつつ、思った。

 私、お年寄りでも子どもでもないのに、3年くらい前までクレジットカード持ってなかったんだけど…。

 なぜか? それは審査に落ち続けていたからである。落ち続けた理由はおそらく「フリーランスだから」。これまでの確定申告の書類など、あらゆるものを出しまくってもずーっとずーっと、何度も何度も落とされ続けてきた。

 そんなことを言うと、「ブラックリストに載ってるのでは?」などと怪訝な顔をされるのだが、そもそもカードが作れないのだからブラックリストに載りようがない。これまで一度も借金をせず、一応マトモに働いて本も50冊以上出し、納税もし、社会的信用に繋がりそうな新聞連載などもやってきたし、今もやっている。なのに、たった一枚のクレジットカードすら作ることもできない。これがフリーランスに立ちはだかる「壁」である。

 壁ということで言えば、いろんなところで書き散らかしているが、2年ちょっと前にはマンションの入居審査にも落ちた。不動産業者が言うには、その理由はおそらく仕事がフリーランスだから。また、保証人となる父親が65歳を超えていることもあるらしい。が、単身女性である私が保証人を頼めるのは父親しかいない。結局、その物件は泣く泣く諦め、別のマンションに入居できることになったのだが、社会的信用度が低い私は保証会社をつけなければ入居できず、結果、毎月7千円以上を保証会社に支払っているのである。今、まさに。まるで「フリーランス」であることへの罰を受けるかのような出費。実に年間、8万円以上を「信用」がないために支払っているのだ。

 ちなみにこのマンションの家賃の支払いはクレジットカード。別の物件で審査に落ち、毎月7千円取られることも渋々承諾した上で最後に「クレジットカード払い」ということを明かされたのだが、私がカードを入手したのはそのほんの2ヶ月ほど前のことだった。ギリギリ、「クレジットカードがないからやっと決まったマンションに入居できない」という事態を免れたのである。

 もう現世では無理だと諦めていたクレジットカード。それをどう入手したのかというと、たまたまある百貨店でカードを作ることを勧められ、作ったらそれにクレジット機能がついていたのだ。というか、そのカードを作る時も「どうせ作れないだろう…」と思い込んでいた。今まで、何度もそんなことがあったからだ。しかし、なぜかその時はあっさりと作れて、なんだか騙されたような気分だった。拍子抜けしたものの、やっとみんなから何十周も周回遅れで「社会に参加できた」ような気分に包まれた。それくらい、疎外感を感じていたのだ。

  カードなしの人生は、今思うと随分不便だった。

   もちろん、ネットでの買い物などできない。21世紀になってだいぶ経とうというのに、一人、木で火をおこすような未開の生活を続けていたのである。が、この不便さは5年ほど前に「デビットカード」を入手することによってだいぶ緩和されていた。しかし、会費は取られるし、ネットの買い物では「デビットカードは使えません」てなこともあるし、またセキュリティ的にもいろいろ不安だった。一度、まったく身に覚えのない金額が引き落とされ、カード会社から「犯罪者的な人に勝手に使われた」と連絡があったこともある。結局、しばらくしてお金は戻ってきたが、そのためには警察に被害届を出さなければならず、とにかくいろいろと面倒だった。しかし、クレジットカードがない間は、デビットカードを使うしか選択肢がないのだ。

 さて、このように、「社会的信用がない」と、余計なお金がかかる。社会的信用だけでなく、「貧困」「不安定」という事態も同様だ。保証会社への支払いもそうだし、私の場合、ローンだって組めないだろうと最初から諦めている。今のところ借金の予定はないが、それも無理に決まってる。安定層であれば、金利の低いところからお金を借りられるものの、貧困だったり社会的信用がなければないほど危険な上に金利も高いところからしかお金を借りられない。その究極が、ヤミ金だ。

 このようなことを、「ポバティタックス」(貧困税)というのだが、今、貧困税を払っている人とそうでない人の差が急速に広がっているのをしみじみと感じる。

 例えば私が「入居審査に落ちた」という話をするとしよう。相手が派遣社員だったり非正規の場合、「わかるわかる! 私も派遣だからって理由でこの前入居審査落とされた!」などと「不安定あるある」で盛り上がる。しかし、相手が正社員など安定層の場合、そんな事態がこの国にあることすら知らなかったりする。クレジットカードの審査に落ち続け、つい最近まで持てなかったと言うと、この世の終わりみたいな顔で驚かれるし、「ローンも組めないよ」と言えば、「そんなことがこの国にあるなんて!」と、憐れみの視線を向けられる。

 私がしゅっちょうぶち当たり、その存在に人生を阻まれている壁。それが私と同じように立ちはだかっている人(「壁ドン」系)と、その壁の存在すら知らない人(「非壁ドン」)。何か今、残酷なほどその差が開いているような気がするのだ。

 格差が広がるということは、待遇や賃金などの差が開くだけではなく、このような「壁ドン」系(どうせなら本来の壁ドンがよかった)と「非壁ドン」が同じ職場に居合わせるということである。そこでは「非壁ドン」が「壁ドン」に、「え、マンションの入居審査に落ちた? ならローン組んで買っちゃえばいいじゃん」などと言い放ったりもする。入居審査に落ちる人が、ローンの審査に受かる確率はかなり低い。非壁ドンには悪意などないわけだが、壁ドンには「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない?」に聞こえるという次第である。

 「壁ドン」系になるのは、フリーランスや非正規だけじゃない。持ち家を持たない高齢者の多くもそうだろう。孤独死などの懸念から、高齢者を受け入れてくれる賃貸物件は恐ろしくわずかだ。障害や病気を持つ人の境遇も多くが近いと思う。また、親に頼れない児童養護施設出身者なども苦労が多い。未成年で親がいないと携帯を持つことすら難しいのだから。

 そんなこんなを考えていると、いつも不安になるのが「もし、中国に行くことになったら」ということだ。私が最後に中国に行ったのは2000年頃。その時の中国はまだ、みんな人民服みたいの着て自転車で大渋滞、みたいな光景で、空港で両替したお金に偽札が混ざっていたりと牧歌的(?)だったが、今の中国はすべてスマホ決済というではないか。仕組みなどはまったくの謎なのだが、これまで「自分だけがクレジットカードの審査に落ち続けた」というトラウマから、「何度スマホで決済しようと思っても中国の未来的な機械がピーピー言うばかりで私だけ決済できず、水の一本も買えずに中国で餓死」という夢まで見る始末だ。中国に行く予定などまったくないのに。

 そう思うと、児童養護施設出身の未成年なんてもっと大変だ。スマホ決済しかできないのに、そもそも携帯を持てなかったらどうすればいいのだろう。そして中国に限らず、今後この国も、どんどんそういう方向に行くに決まってるのだ。その時、またしても私だけそういうシステムから排除されてしまったら…。そう思うと、夜も眠れない。らくらくほんユーザーの高齢者ばっかり集めて「スマホ決済反対デモ」「現金使わせろ一揆」とかやるしかないか…と覚悟を決めつつあるところだ。

 40代までクレジットカードを持てなかったことは、それくらい、社会不信や自分への不信につながるのだ。

  ここまで書いて、思った。

 そもそも、フリーランスや非正規が「社会的信用」が低いのって、本人のせいだけじゃなくない? なのに、今はただひたすらに個人が不利益を被り、保証会社にポバティタックスみたいのを払ったりしている。だけど、そもそもそういうことが変じゃないか? なぜなら、正社員を減らして非正規を増やしてきたのは国なのだ。なのに、そこになんの手当ても法整備もしてこなかったからこのようなことが起きるのだ。そもそも、非正規を増やすのであれば「雇用形態によってこのような差別はしない」などの手を打っておくべきだったのだ。それをすべて「自己責任」で片付け、個人が損したりお金を払ったりいちいち壁にぶつかったりしている。

 クレジットカードの審査に落ちるたび、私は「これってもう、日本の身分制度だな」と思っていた。自分だけが、「圏外」にいる気がした。何か悪いことをして、ペナルティとしてそうなっているならわかる。しかし、私は何も罰を受けるようなことなどしていないのだ。

 政府までもが副業を勧める中、今後、フリーランスは増えることはあっても減ることはないだろう。国が進める「働き方改革」を見ていても、フリーランスをより活用・推進していく流れも見てとれる。そうであるならばなおさら、「フリーランスだから」という理由で不利益を被ることがないよう、配慮がなされるべきなのだ。私は、自分の意思でフリーランスを選んだ。しかし、そのことによって様々な審査にこれほど落ちるなんてまったくの想定外だったし、明らかに制度の不備なのである。

 まずは私たちにはこんなに多くの壁があるということを、政策立案に関わる「非壁ドン」の人たちにこそ、知ってほしいものである。


「消費税増税」然り、「入管法」然り。そこに徹底した議論がなされなければならない。

沼に落ちる雪も解けないでそのまま氷になっていくようです。

今、すごい勢いで降ってきました。


紛争地からの“ひとりごと”―白川優子 (看護師)国境なき医師団

2018年11月21日 | 社会・経済

  imidas連載コラム2018/11/21

 「なぜ紛争地に入るのか?」

  何度同じような質問を受けてきただろうか? 私は昔から頭で考えるよりも心の感覚で物事を決断する傾向にあるので、「なぜ」という質問を受けた時、うまく言葉で説明ができなくて困ることがある。今回はこの「なぜ」を掘り下げてみたい。

目の前の道をたどり続けて

 2010年に「国境なき医師団」(MSF)に参加して以来、あまりにも同様の質問を受け続けてきた。私が派遣されるほとんどの場所が紛争地だからだ。最近では、「私はそこまで変わったことをしているらしい」という認識がやっと芽生えたこともあり、何とか自分がどのようにして紛争地の援助活動に関わるようになっていったのか、という説明を言葉に落とし込んでいけるようになった。とは言っても、頭で整理しながら言葉にしてみたところで、結局、経緯はとてもシンプルだ。紛争地で活動するようになるまでには、自然な流れでできた道があり、私はなんら疑問を抱くこともなく、目の前に開けたその道を進んで行っただけの話だ。

 心の声に従って、看護師に

 私が7歳の時、テレビを通して出会ったMSFは、医療の届いていない場所に中立の立場で医療を届ける民間の団体である。国籍や人種、信仰する宗教、政治的な信条などの違いを超えて平等に医療を提供している人々がいると知り、心から尊敬と憧れの念を抱いた。

 その後、私は看護師という素晴らしい職業に就くことができ、この仕事が私の人生における軸となっていった。看護師を選んだ理由も実は言葉で表すのが難しい。心の声に従って選んだという説明しか思いつかない。将来の方向性を決めなくてはならない高校3年生の時に、就職先がどんどん決まっていくクラスメートたちのなかで、一体どんな方向に進むべきなのかが分からずに、私は取り残されていた。企業に就職ということに対しては全くピンとくるものがなく、かといって進学するにもそもそも自分が何を目指しているのかが分からなかった。ある日、クラスメートの1人が「私、看護婦目指しているの」と話した時に、「それだ!看護婦だ!」と私の心が飛びついた。ずっと探していた答えが見つかった。でもなぜ看護師なのか? 私は自分自身も身内にも看護師に特別お世話になった経験や思い出はない。周囲に看護師もいなかった。でも「看護婦」という言葉を聞いた時に私の心は躍り、喜び、それが私の進むべき道なのだ、と確実に教えてくれた。

  定時制の看護学校に進むと、半日を学校で過ごし、もう半日は近隣の病院で勤務するという生活が始まった。資格がないので、実際の仕事内容は動くことに不自由な患者さんのベッド上の生活のサポートが中心だった。食事の介助や、トイレのサポート、体を拭くなど、卒業までの4年間、たくさんの患者さんと接してきた。その中で私が学んだことは、患者さんというのは、一人ひとりがそれぞれ違う歴史を背負った「個」であり、でも結局最後はみんなが「同じ」人間でもあるということだった。私はその「人間」一人ひとりと触れ合いながら、日に日に感じていた。看護師とは、サポートという形でその人たちの大切な生活や人生にお邪魔させていただく仕事だ。その尊さや素晴らしさを知った学生時代だった。

 出会いから30年、ついにMSFの一員に

 卒業後、日本で看護師として働きながら、MSFの一員として働きたいという思いが募ってきたのは、私の中では自然なことであった。ただし、実際に一歩を踏み出そうと、海外派遣スタッフの募集説明会に参加してみると、英語(もしくはフランス語)で活動をしなくてはならないという条件があることを知った。その時からMSFで活動したいという夢に向けて、英語が話せないという現実との闘いが始まった。月日が流れる間も、「夢が叶わない現実」に悶々としていたが、結局は夢を諦められず、30歳を超えてから本格的に英語の勉強に取り組む決心をした。オーストラリアで大学に入り、看護師の現地資格を取得した。その後、4年ほどオーストラリアの医療施設で働いた。英語に自信が持てるようになった時には36歳になっていたが、MSFへの憧れは決して衰えることはなかった。7歳の時の出会いから約30年が経過した2010年、私はついにMSFの一員となった。

  世界各地で医療が不足している理由はさまざまである。自然災害や感染症、貧困、そして紛争。これらが複雑に絡み合うことで、病院や医師がそもそも少ない場所があったり、十分な病院や医師が揃っているにもかかわらず、差別や迫害によって医療にアクセスする手段を絶たれてしまっている人々がいたりする。あるいは、環境が整っていても、治療方法の分からない病気が蔓延しているような場所も、世界には存在する。

  MSFは、これらの現場のニーズと、抱えている人材のスキルや経験をマッチングさせ、派遣を成立させる。

 紛争地では、空爆や砲弾、地雷、銃弾など、戦争の暴力による外傷で、外科手術の必要な患者さんがおおぜい運ばれてくる。私は、外科病棟や手術室で長く積んできた看護師経験を生かせる場所として、主に紛争地にある外科プロジェクトに派遣されるようになった。

 「日本でも救える命があるのに、なぜわざわざ海外に行くのですか?」

  この質問も、よく受ける。

 日本には120万人を超える看護師がいる。故に、私一人がいないからといって医療体制が崩れる状況など想像がつかない。一方、たった一人の看護師が欠けてしまうことで、医療が回らなくなるような場所が世界には本当にあるのだと、私はMSFに入ってから目の当たりにし続けてきた。そのような地域では一人の医者、一人の看護師の重要性はとても高い。そして、今まで医療が不足していた人たちのもとへ医療を届ける喜びも格別だ。

 30年も追い続けてきた夢であるMSFの一員として働くことは、常に私の喜びと誇りそのものである。紛争地であろうとなかろうと、MSFからの依頼であれば私は派遣を断ることも、派遣先を選り好みすることもない。もし非紛争地でのプロジェクトであっても、MSFから依頼されれば、やはり喜んで引き受けるだろう。

 私にとっては「紛争地で活動をしている」という認識よりも、「MSFで活動をしている」、つまり「医療の不足している人々のもとへ医療を届けに行く」という感覚のほうが大きいのだ。

 もちろん、MSFの組織的なバックアップがなくては、この感覚を持つことも難しいだろう、ということはつけ加えておきたい。長年の活動で蓄積された経験と知識や、さまざまな政府、勢力、地元の人々との交渉力などを駆使し、MSFは徹底して、私たちスタッフの安全管理に努めてくれている。病院施設や医薬品も、可能な限り整えられている。こういった支援態勢があってこそ、私は心の声に従って、危険地域に行くことができる。

 紛争地のこんな「現実」、知っていますか

 しかしMSFに参加した当初に大きく大きく感じていた喜びは、紛争地に繰り返し派遣されるうちに、次第に怒りや憤り、無力感や挫折感へと取って変わっていった。

  紛争地で運ばれてくる患者さんの中には、手や足がもぎれかけた状態だったり、爆発時に吹き飛んだ破片が身体中に突き刺さっていたり、また病院に着いた時には息を引き取っている患者さんもいる。お年寄り、妊婦、大人に限らず乳飲み子であろうと無差別に、血を流して運ばれてくる。

 私は紛争地に生きる子どもたちが夜中に遊んでいることなど、現場に行くまで知りもしなかった。空爆と銃撃戦から身を守るために、昼間は家の中で閉じこもり、攻撃の音が止んだ夜になってから外に出て遊ぶのだという。ある夜、8人の子どもが一度に運ばれてきた。道端でとても面白そうなものを発見し、みんなで蹴ったり突いたりして遊んでいたのだが、それは時限爆弾で、そこにいた8人の男の子たちの手や足を吹き飛ばした。私たち外科チームは、朝まで彼らの四肢を切断する手術に追われた。ようやく手術が終わり、まだ麻酔で眠っている子どもたちの寝顔を見ながら、私は苦しくてたまらなかった。目が覚めたら、この子たちは、もう自分の手や足がないのだという現実を知らなくてはならないのだ。

 空爆で夫と4人の子どもと、自分の片足を失くした50代の女性は、麻酔から目を覚ました時、私の目を見て「死なせて」と言った。

任務中は泣かないようにしているが、この時は彼女の手を握りながら泣いた。

 ある地域では、空爆から逃れるために、地雷原と分かっていてそこを通り、安全地帯への脱出を試みる人々が続出した。

 連日、地雷の被害者を収容しているうちに私はある法則に気づいた。集団で運ばれてくるのは家族や親せきで、このうち必ず1人が息を引き取るか、両足を切断しなくてはならないほどの重傷を負っている。重傷者はいつも一家の主。それには理由があった。彼らは1列になって地雷原を歩いてくるのだ。一家の主が先頭に立ち、自分の足で地雷の上か、安全な地面かを判別しながら歩いていく。途中で地雷を踏めば命とりだ。その背中を見て、後に続く妻や子どもたちは、先頭に立つ者の足跡を一歩一歩進む。それは、一家の主が自分を地雷の犠牲にして家族を守るためだった。

  家族を空爆と地雷から守るために、命を失うほどのリスクを自ら引き受けたお父さんたちのずたずたになった両足を見ながら、胸が引き裂かれそうだった。

 怪我は治せても、戦争は止められない

 紛争地では、中立の立場で人道援助活動を行っていても、さまざまな障害が立ちはだかる。私たちの安全の確保も、活動するうえでの絶対条件なのだが、特に近年は、医療施設が空爆される事件が続発し、この条件を脅かしている。

  たった一つの命令、たった一つのボタンによって爆弾が落ちてくる空の下で、医療活動は妨害され、罪のない多くの一般市民が恐怖にさらされ、血を流し、泣き叫んでいる。誰もが平等に与えられてしかるべき医療すら自由に提供できない紛争地で、全く戦争に加担をしていない一般市民を救っても救っても、すぐにまた血だらけの死にそうな人が運ばれてくる。そんな日々を繰り返すうちに、私は戦争そのものを止めなくてはいけないと思うようになっていった。

  MSFは医療援助団体だ。もちろん私に与えられた任務も、目の前の患者さんに医療を提供することだ。しかし、私が行っている活動は、戦争を止めるための根本的な動きに繋がっていない。そのことにジレンマを抱くようになっていった。

 ジャーナリストを志す

 このジレンマが頂点に達した時、私は人生の軸としてきた看護師という職業をやめ、常に憧れと尊敬の対象としてきたMSFを去り、ジャーナリストになろうという大きな決心をした。

 私は怒っていた。自分が目撃している現状を国際社会に訴えて、戦争を止めるための動きに繋げようと思ったのだ。報道では、どの国で戦争が繰り広げられ、空爆され、何人が死亡した、というニュースが流れる。しかし、私の目の前の光景――砕けた骨が皮膚から飛び出し、裂けたお腹から内臓が突き出し、もはや人間の姿をとどめていないような人々の姿までは伝わっているのだろうか。誰かが伝えなくてはならないのではないか。さもないと実情は知られないまま、いつまでも戦争が終わらず、さらに多くの人々が世界に見向きもされずに血を流し死んでいくことになる。

 ただし、私にはジャーナリストになるための手段が全く分からなかった。紛争地から日本に戻ったときに、何人かのジャーナリストに相談もしてみたが、彼らはそろって同じことを言った。「それは自分たちが頑張っているから任せておきなさい」。

  看護師として現場の援助を続けるようにと説得されたのだった。

 「看護の力」に気づく

 一体どうしたら良いのだろうか。心の整理がつかないまま、再び紛争地派遣の依頼を受けた。また同じようなジレンマに苦しむことは分かっていたが、今、苦しんでいる患者さんがいると知っていて依頼を断る気にはなれなかった。

 しかしこの時の派遣先で、私のその後の人生を左右する大きな気づきを与えられる。きっかけは、ある女の子との出会いだった。彼女は戦争が始まる前まで、普通に高校に通っていた。一瞬で始まってしまった紛争の中で、彼女は空爆の被害に遭った。両足がめちゃめちゃになったことで完全に心を閉ざし、ふさぎこんでいた。そんな彼女に、私は手術室以外でも毎日話しかけ、その手を握り、気にかけ続けていたが反応はなく、彼女はベッドで独り、傷の痛みと、心の痛みと戦っていた。

 そんな日々を過ごしているうちに、帰国しなくてはならない期限がやってきた。そこで、最後に、と彼女に声を掛けてみた。私はもう帰国してしまうけど、あなたのことを忘れたくない、日本でもあなたの顔をずっと見ていたいから、だから一緒に写真を撮りたいのだと伝えた。すると、シャッターを切る時、ついに彼女が笑った。私と手を繋ぎながら一緒に笑っている素敵な写真が撮れた。思わず彼女を抱きしめた。

 この時に気づいたことがある。それは、私が看護師だから、この子の笑顔を見ることができた、ということ。看護師として、この子の手を握り、気に掛けていたから、見ることができた。この日の彼女は言葉を発しなかったかもしれない。でも笑った。私はこの笑顔から、言葉以上のメッセージを受け取った。ジャーナリストの仕事も大変尊い。だけどやはり私は看護師なのだ。看護師として現場に戻ってきて良かった。かつて心の声に従って選んだ、看護師という職業の素晴らしさに改めて気づいた瞬間だった。

 理想の医療など紛争地に存在しない、そう思っていた。物資にも薬剤にも人材にも限りがあり、思うような医療を提供できない中では、志さえ踏みにじられてしまう、そう思ってもいた。医療行為では戦争を止めることはできない。それも事実だ。では、その限界を知ったうえで、私たちに求められているのは何だろうか。

 それは、その時にできる、最善を尽くした医療を提供することだ。時には、手を握ること、話しかけること、これだけでも良いのかもしれない。傷や病気の治療という、直接的な医療ではない。しかし、誰かに話しかけ、その手を握るということは、その人を気に掛けること、その人に寄り添うことだ。恐怖や、絶望、悲しみ、怒り、憎しみが交差する中で、誰かがそばにいて手を握ってくれるということは、現地の人々に大きな力を与えているかもしれない。私はそれが看護の力だと信じたい。

 


 

 本格的な雪になりました。雨よりはましです。ただ、運転は慎重に!

なぜそんな危険な場所へ行くのか?
つい先日も話題になりました。


大規模農園に転換される熱帯林

2018年11月20日 | 野菜・花・植物

森林文化協会ブログ

 2018年11月16日

   背景には、世界的な食料需要の増加に加え、温室効果ガス排出削減への動きに支えられたバイオ・エネルギー需要の増加がある。

   森林文化協会には、森林環境研究会という専門委員会があり、調査・研究に関わる活動をしています。この投稿は、研究会幹事の酒井章子・京都大学准教授からのものです。

 

    ◇

 

なお続く熱帯林の危機

 世界の森林面積は、依然として減少傾向が続いているものの、前世紀に比べると消失速度はゆるやかになった。しかし熱帯地域だけを見ると、消失速度は今なお上昇している。火災や木材生産は森林「劣化」の重要な要因だが、近年目立つのはグローバル市場に向けたパーム油や大豆などを生産するための農地(とりわけ大規模農園)への転換による森林「消失」である。その背景には、世界的な食料需要の増加に加え、温室効果ガス排出削減への動きに支えられたバイオ・エネルギー需要の増加がある。

   熱帯林は、高い生物多様性を誇り、貴重な遺伝資源を擁している。しかし、人口増加や気候変動の緊急性を考えると、熱帯林を犠牲にして食料や燃料生産に活用するのは、やむを得ない。そう考える向きもあろう。しかし、熱帯林の農地への転換にはさまざまな問題点が指摘されており、長期的な食料生産や温室効果ガス削減に結びつくのか疑問も多い。

 熱帯林の大規模農園への転換がもたらすもの

 まず当初から指摘されてきたのは、熱帯林から大規模農園への転換が、大きな二酸化炭素排出源となっていることである。バイオ燃料生産のために森林を伐採するのであれば、化石燃料のかわりにバイオ燃料を使っても、その温室効果ガス削減効果はみかけよりずっと小さいものとなる。とくに、地下部にしばしば地上部を上回る量のバイオマスを蓄積している泥炭湿地林のアブラヤシ園への転換は、その問題が大きい。

   熱帯林の伐採は、その場所のバイオマスや生物多様性の喪失をもたらすばかりではなく、周辺にもさまざまな波及効果をもたらすと考えられている。その一つが、乾燥化である。

 熱帯林が維持されるためには一定以上の降水量が必要だが、その降水量を支えているのは実は熱帯林そのものである。というのも、熱帯林からは日中多くの水分が大気にもどっていく。熱帯林に降り注ぐ雨の大半が、もともとは熱帯林から蒸発したものなのだ。熱帯林が裸地になると蒸発量が少なくなり、残された森林へ降る雨の量も減る。これを裏づけるように、すでに熱帯林での降水量の減少がいろいろな場所で観測されている。雨が必要なのは農地も同じであるが、その農地への雨も、熱帯林によって維持されていることをわたしたちは忘れてはならない。

 開発を免れた熱帯林は、連続した大きな森林ではなく、いびつだったり、小さく分断されたりして残されることが多い。このような森林の大きな問題点は、面積に比して長い『林縁』である。森林の『縁(ふち)』は、森林の内部とは、いろいろな点で違っている。日光や風の影響を受けやすく、乾燥しやすい。人を始め、森の外からやってくる生物にもさらされる。

連続していた森林を伐採して林縁を作ると何がおこるか。アマゾン熱帯林で、大規模な実験が行われてきた。1980年代に作られた林縁では、少しずつ林縁の高木が枯死し、低木が密に生い茂り、現在では薄暗い森林内部とまったく異なる状態となった。一定面積の森林を残したつもりでも、林縁部分の森林は壊れていってしまうのだ。地球上の森林の70%は、林縁(森林の縁から1km以内)である、という推計もある。この林縁効果によって失われた熱帯林も、膨大な面積になるはずだ。

 パーム油利用をめぐる世界の動きと日本

 パーム油は、現在世界で最も生産量の多い植物油である。パーム油生産のためのアブラヤシ農園の栽培面積は増加しつづけており、熱帯林減少の重要な要因となっている。

   パーム油では、このような批判への対応の一つとして認証制度が導入されている。認証制度の主体となっているのは、環境保護NGO、企業、銀行や投資家などが集まって2004年に設立された、RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil、持続可能なパーム油のための円卓会議)である。持続性や環境への配慮に関するRSPOの基準をクリアし認証を受けたパーム油は、認証を受けていないものより高い価格で売買される。RSPOには世界の4000近くもの会社・団体が参加しており、 国際市場に流通するパーム油の約20%が認証パーム油となっている。認証基準が十分なものなのかは議論があるが、一定の効果をもたらしている。

 日本でもパーム油は、インスタント麺やスナック菓子などに広く使われている。製品には『植物油』としか記載されないことが多いため意識されないが、一人あたり年間5kgのパーム油を消費しており、菜種油に次いで重要な植物油となっている。しかし、熱帯の農地開発やRSPO認証に対する日本での認知度は低く、パーム油を使う国内食品メーカーのRSPO加入も遅れている。

   もう一つ、気がかりな日本国内の動きとして、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)におけるパーム油やパームヤシ殻を燃料とするバイオマス発電の認定が増えていることがある。他の記事(https://www.huffingtonpost.jp/shinrinbunka/palm-olein_a_23356149/)でも議論されているのでここでは詳しくはふれないが、パーム油による発電を加速する現行制度は、速やかに再検討されるべきであろう。アメリカやヨーロッパでは、バイオマス燃料としてのパーム油利用は、熱帯林減少への危惧や温室効果ガス排出削減効果が疑問視されていることから、すでに規制が進んでいる。ここでも日本の対応は遅れが目立つ。

 かつて日本は、熱帯林から木材を大量に輸入して国際的な非難をあびた。その一方で国内の林業は衰退していった。現在のパーム油輸入と国内の耕作放棄地の拡大は、その過去にだぶってみえる。大きく違っている点があるとすると、現在のほうが、製品の原料やエネルギー調達に対する企業の責任がより重くなっていることかもしれない。消費者であるわたしたちも、日本で使われるパーム油の由来や使い方に厳しい目を向けていくべきではないだろうか。


とうとう来るべきものが来た。

初積雪。昨年の初積雪が10月23日だったから1か月近く遅いことになる。それはいいのだが、江部乙に行く間、どこにも積雪など見当たらない。我が家の周りだけである。今日もお昼で帰ってきた。途中、薄日もさし、あれこれとやらなければならない外での仕事を考えていた。しかし、家の近くに来ると雨になり、さらに近づくと雪に変わった。外での仕事はやる氣をなくしてしまった。朝の光景がそのまま残っていた。

 話は変わるが、ゴーン氏の件。消費税を10%にするために、ちまちまと食料品はどうだ、あれはどうだ、こんな場合はどうだなどとくだらん議論はやめて、彼らのような富裕層からまともな「所得税」を取り立てる方が理に適う。これ以上の「格差」を広げる消費税は廃止すべきだ。

 


日本はもはや、「経済大国」でないばかりか、「先進国」ですらない、先進国でも発展途上国でもない、世界唯一の「衰退途上国」

2018年11月19日 | 社会・経済

安倍内閣の官房参与が「赤旗」に登場して消費増税批判! 「10%への税率引き上げは日本経済を破壊する」

  リテラ 2018.11.18

 

 来年10月に予定されている消費税10%への引き上げ。メディアでも軽減税率やプレミアム商品券など引き上げ前提の話題ばかりで、消費税増税そのものに対する議論や批判がほとんどなされていない。

 そんなメディアの影響もあってか、この馬鹿馬鹿しいにもほどがある増税に対し国民から大きな反発は起こっていない。今月9日から3日間にわたって実施されたNHK世論調査でも、消費税率10%への引き上げる方針について「賛成」が32%、「反対」が35%、「どちらともいえない」が27%。「ふざけるな」という声が上がっても不思議はないのに、なぜかそうはならないのだ。

そんななか、なんと当の安倍政権を支える現役の内閣官房参与が、「赤旗」一面に登場し「消費税10%反対」を唱えている。

 「私は来年10月の消費税増税は凍結すべきだと思っています。10%への税率引き上げは日本経済を破壊するからです」

 「しんぶん赤旗日曜版」(11月18日付け)で、こう断言しているのは、2012年から安倍内閣で内閣官房参与を務めている、藤井聡・京都大学大学院教授だ。藤井氏は「しんぶん赤旗日曜版」のインタビューに応じ、景気への悪影響、貧困の拡大、被災地復興への打撃といった観点から、2面に渡って消費増税の危険性を語っている。

 実は藤井氏が消費増税反対を唱えるのはこのインタビューが初めてではない。先日刊行された著書『「10%消費税」が日本経済を破壊する』(晶文社)においても、〈デフレ状況にある現在の我が国において消費増税を行うことは、 国民を貧困化させ、日本を貧国化させ、そして、挙げ句に日本の「財政基盤」そのものを破壊することにつながると確信する〉と主張。増税の「凍結」、いや「減税」こそが〈日本経済に最悪の被害がもたらされることを避けるための、最善の策〉だとし、増税の凍結・減税は〈政治の力で変えられるのは、当たり前〉だと述べているのだ。

 そもそも、安倍首相は「日本経済は11年ぶりとなる6四半期連続のプラス成長」「内需主導の力強い経済成長が実現している」などとしきりに景気回復を強調するが、一方で今年9月のJNN世論調査では84%の人がアベノミクスの景気回復について「実感ない」と答えている。だが、これは当然の話だ。藤井氏によると各世帯の年間消費額は、2014年に消費税を5%から8%に引き上げる直前が369万円だったのに、増税後は一気に下がりつづけ、2017年には335万円にまで落ち込んだのだ。つまり、〈消費増税のせいで、私達は一世帯当たり年間 34 万円分も「貧しい暮らし」を余儀なくされるようになった〉というわけだ。

 しかも、「景気回復」との掛け声とは裏腹に、2014年の増税後からサラリーマンの給与水準も低いままで一向に回復していない。中小企業の「景況感」をはかる業況判断指数(DI)も、リーマンショックで「どん底」に落ちて以降はマイナス(景気が悪い)ながらも徐々に回復しつつあったが、2014年の増税によって改善傾向がマイナス領域でピタリと止まったまま。「消費」「賃金」「景況判断」の客観的データからも、2014年消費増税によって庶民の暮らしは大打撃を受け、依然として深刻な状態にあることがわかる。何より、日本経済全体の6割を占める「消費」の総額(実質値)は、消費増税前後で14兆円も下落。その後も消費は冷え込んだままなのだ

安倍首相の経済ブレーンが「アベノミクスで経済上向き」の嘘を指摘

 では、どうして「アベノミクスで経済が上向き」などという報道が出てくるのか。これを藤井氏は〈世界経済が好調なおかげ〉にすぎないと喝破する。実際、GDPは2014年の消費増税前から現在まで約18兆円(実質値)伸びているが、この間に輸出は約15兆円も増加。輸出の増加がなければ〈一年あたり約0.7〜0.8兆円、成長率にして実に年率平均約0.2%しか伸びなかった〉のである。また、この4年で、輸出に次いで伸びたのは「民間投資」だが、これも輸出が伸びた結果であると考えられるという。藤井氏はこう述べている。

〈つまり、世界経済の好況という「他力」がなければ、日本経済はやはり、消費増税によって「衰退」していたのである〉

 〈万一、消費増税によって内需がこれだけ弱々しい状況に至っている中で世界的な経済危機が勃発すれば、衰弱した日本経済は恐るべきダメージを被るであろう〉

 さらに藤井氏は、世界各国の経済成長率(1995〜2015年)に目を向け、〈日本の20年間成長率は断トツの最下位〉〈日本の成長率だけが「マイナス」の水準〉であるとし、〈日本はもはや、「経済大国」でないばかりか、「先進国」ですらない〉〈先進国でも発展途上国でもない、世界唯一の「衰退途上国」とでも言わざるを得ない〉と明言。こうした元凶が、バブル崩壊後の1997年に実施した消費税の3%から5%への引き上げによって「デフレ不況」に突入したためだと説明した上で、〈未だに「デフレ脱却」を果たせていない〉いまの状態で消費税を10%に引き上げることは〈確実に破壊的ダメージがもたらされる〉と警告を発するのだ。

 その上、2014年の消費増税時は「外需の伸び」という幸運があったが、これは「アメリカ経済の好況」と「安い原油価格」があってのこと。ご存じの通り、トランプ大統領は目下、安倍首相に自動車の追加関税をちらつかせており、原油価格も上昇。つまり、〈2019年増税の外需環境は、2014年増税よりも、より深刻な被害をもたらした1997年増税時のそれに類似している〉のである。

 しかも、今回の増税は、安倍首相肝入りの「働き方改革」による〈労働者の所得は8.5兆円縮減される〉という予測や、東京オリンピック投資が縮小に入るというタイミングとぶつかる。また、「10%」という数字の「キリの良さ」「わかりやすさ」が消費行動にブレーキをかけやすいという心的傾向もあると藤井氏は指摘。〈日本経済にもたらす破壊的ダメージは極めて深刻なものになるのは「必至」〉であり、それを回避するためにも「凍結」あるいは「減税」こそが求められるというのである。

「消費税でなく法人税を上げるべき」と主張する藤井聡・内閣官房参与

 だが、こうは言っても「国の借金は1000兆円もあるのに放置していいのか」「消費税を延期ばかりしていたら国の借金で日本は破綻する」という声が必ずや上がるだろう。しかし、藤井氏はこれを〈何の根拠もない「杞憂」(無用の心配)であり、ただ単に、経済学者や増税推進派が撒き散らかした「デマ」であり「プロパガンダ」(主義の宣伝)に煽られているに過ぎぬもの〉と断言。「デマ」である根拠を挙げている。

 そのひとつが、1997年や2014年の増税がそうであったように、デフレ不況下で消費税を増税すれば、〈経済が停滞し、かえって税収が減って、財政が悪化してしまう〉ということ。国の破綻回避を叫ぶなら、税収が減少する増税を止めたほうがいい、というのである。

 さらに、「国の破綻」という曖昧な言葉自体が詐欺的であり、「日本政府の破綻はありえない」ということ。たとえばよく引き合いに出されるギリシャだが、ギリシャの場合は「国の借金が増えた」ことで危機に陥ったのではなく、〈経済が低迷し、失業者が増えてしまったことが「原因」で、税収が減り、借りた金が返せなくなり、「政府が破綻」〉した。ギリシャの借金は「ユーロ」だったが、日本の場合は基本的にすべて円建ての借金であり、円の通貨発行権もある。自国通貨建ての借金であるために破綻することはあり得ないのだ。また、ギリシャが破綻危機にあった際は金利が30〜40%だったというが、日本の国債の金利はいま0.1%程度。だからこそ、市場関係者が「日本政府が破綻する」などと心配している者はいない、というのだ。

 そして、「国が破綻するから消費税」という主張に対し、藤井氏は加えて〈増税する対象として「消費税」を選ぶ必然性など何もない〉といい、消費増税とは反対に税率が下げられてきた法人税を上げるべきだと強調する。

 当然の主張だろう。第二次安倍政権の発足以降、アベノミクスの成長戦略として法人税率はどんどん引き下げられ、法人実効税率は37%から2016年度には29.97%に減少。消費税増収分は法人税の減収の穴埋めに使われたようなものだからだ。実際、藤井氏は過去約30年に遡って現状と比較し、〈金持ちと大企業がかつて支払っていた税金を10兆円以上減らしてやり、その大半を、貧乏な世帯も含めたすべての庶民が肩代わりしてやるようになった〉〈消費増税は確実に、庶民の間の「格差」や「不平等」を拡大させた〉と指摘。法人税のほかにも、“所得税の高額所得者ほど減税の流れの見直し”や、先日、増税見送りが発表された金融所得の税率引き上げ、環境税・混雑税、土地利用是正税なども提案している。

「幼児教育無償化」もインチキ、半分は地方に押し付け

 格差が広がるなか、低所得者であるほど負担が重くなる「逆進性」の消費税を増税するのではなく、法人税や所得税の税率を見直し、不公平な税制を正すべきというのは、至極真っ当な考え方だ。だが、安倍首相はそれを実行しようとはけっしてせず、世界景気の恩恵を受けているだけの結果を「内需主導の成長」などと嘘をつき続けている。

 いや、それだけではない。消費増税の目的として、安倍首相がぶち上げている「幼児教育・保育の無償化」についてもさっそくインチキが発覚した。スタートから半年間は国費で払うものの、無償化に必要な8300億円のうち半分以上となる4370億円は市町村に負担させるというのだ。

 昨年9月に解散表明をしたときの大義名分は「消費税の使い方の見直し」であり、安倍首相は「幼児教育の無償化を一気に進める」と大見得を切った。だが、これも「半分以上は地方でよろしく」とツケを回そうというのである。しかも、〈自治体によっては無償化の負担が消費税の増収分を上回る〉(朝日新聞11月8日付)という。

 政府は混乱必至の軽減税率を筆頭に「プレミアム付き商品券」だの「キャッシュレス決済でポイント還元」だのと愚策ばかり打ち出しているが、幼児教育の無償化にしても、待機児童家庭はその恩恵を受けられないという問題がある。その上、待機児童解消のための地方財源が無償化によって削られる可能性まで出てきたのである。

  幼児教育の無償化を「未来の投資だ」と喧伝するばかり。一方の国民も、政府に言われるがままで「増税しかたなし」と諦めている。

 上述の「赤旗」で藤井氏は「10%への増税は決まったことだから仕方がないと国民が容認すれば、消費税率は15%、20%へとさらに引き上げられる」とも警告。そして消費税10%への増税中止もあり得るとの見方を示し、「カギとなるのは国民世論」「この問題に党派は関係ありません」と国民世論の喚起を呼びかけている。

 「やはり増税はおかしい」と、いまこそ国民が声をあげなくては、安倍政権によってほんとうに立ち直れないほどわたしたちの暮らしは破壊し尽くされてしまうだろう。(編集部)


まさに「格差拡大」の愚策。「反対」の声を上げよう!

 昼頃から本格的な雨模様。
ハウスビニールも降ろしたし、雨を遮る松の枝木の下で片づけ仕事。
それでも本降りになるとかなり濡れてしまう。そんなわけで、今日はお昼で帰ってきた。
昨年の今日は少し吹雪気味だった。寒いけど濡れるよりましだ。今年の雪は遅い。


人間ジョブ”に高い賃金払い生産性上がる欧州、単純労働者を輸入してまで“機械ジョブ”を低賃金で人間にやらせ続ける日本

2018年11月18日 | 社会・経済

 

MyNewsJapan

18:18 11/17 2018

渡邉正裕

   
 

 オランダは、賃金が高い欧州主要国のなかでも、もっとも最低賃金が高い。その影響をもろに受ける“マック・ジョブ”は当然のように機械化が進められ、マクドナルドもバーガーキングも、自動注文機を多数設置し、電子決済で支払いまで完了する。他の欧州主要国も同様に、注文&決済の自動化は進行中だ。一方、日本は逆に、政府が単純労働者を輸入解禁することで外食産業の給与上昇を抑え込み、機械化できる仕事を人間にやらせ続けようとしている。それを見越して、日本のファストフード店は自動注文機を導入していない。このままでは機械化が進まず、生産性は上がらず、日本人の給料は永遠に低いままだ。オランダにおける“人間ジョブ”はどのようなものなのか。現地で経営者に、時給相場や労働者の権利について聞いた。


【Digest】
◇日本の1.5倍!総じて高い欧州の最低賃金
◇機械化できるプロセスは機械化
◇現金決済というボトルネック
◇機械化努力ない「人手不足」が、なぜかまかり通る日本
◇有期契約24か月で永久契約に
◇実際の賃金相場――業務委託と直接雇用の2形態
◇コンビニバイト仕事の相場が時給1700~1800円
◇日本人メリットはあるのか
◇「営業権」というハードル


日本の1.5倍!総じて高い欧州の最低賃金

 

 日本の最低賃金は、他の主要国と比べるとかなり安く、時給874円(2018年、全国平均)、東京で985円だ。1か月に換算すると1,165ユーロ(計算式=874円×週40時間×年52週/12か月/130円=1,165)となる。左記グラフのとおり、ちょうど、「スペイン・ポルトガル」と、「蘭英独仏」の、中間くらいにあたる。

 欧州では英独仏蘭が高く、オランダで月1,594ユーロ(2018年7月~)、時給換算では約10.2ユーロ、約1,328円である(※計算式=1594×12か月/52週/36時間×130円=1,328)。

 実に、日本の52%増し、1.5倍だ。人為的な日銀の円安誘導政策の分を考慮してもなお、日本は安い。

 最低賃金ではなく、実勢相場はどうなのか。現在、日本の外食・小売店の、いわゆるノースキル&ノーキャリアの単純労働採用(=マック・ジョブ)における時給相場は、東京・横浜で1000~1200円くらいである(※横浜駅のセブンイレブンが全時間帯で、時給1千円で募集していた)。

 現地の日本人に最新の相場を調べて貰ったところ、オランダで上位3位に入るスーパー「Dirk」で現在、募集がかかっているのが、時給14.15ユーロ(22歳)から、だという。日本円で、1,840円だ。若者の時給が激安なのもオランダの特徴で、15歳で4.56ユーロ、18歳で6.6ユーロ、などと年齢が若いとまともな時給は貰えない。

 ただ、22歳以上でバイトの時給1,840円と言っても、ビックマックセットが8.85ユーロ(1,150円)と物価のほうも高いうえに、確定申告で納める税率も日本より高い(最低でも課税所得の36.55%)ため、労働者が生活するうえでの購買力という点では、デフレで何でも毎日がバーゲンセールな日本と、いい勝負かもしれない。

 欧州主要国(英独仏蘭)のなかで一番高いオランダは、時給制による「同一労働同一賃金」を徹底することによって、短時間勤務でも不当な扱いを受けず、“働き方改革”にもっとも成功した国として知られる。日本の「労使で合意して36協定を結べば青天井で残業可能」といった、ブラック企業のために国が用意した抜け道など、もちろん存在せず、週36~40時間を上限に、従業員の長時間労働は厳しく禁じられているという。

機械化できるプロセスは機械化
 人間の労働コストが高いと、経営者にとっては、機械化を進めるインセンティブになる。実際、マクドナルドやバーガーキングの注文&決済は機械化されていた。普通に人間に注文するより、トッピング(ピクルス、レタス、チーズ…のアリ/ナシ)まで細かく正確に指定できるので、満足度も高い。PIN(デビット)かクレジットで決済すると番号が記されたシートが出てきて、あとはその番号が電光掲示板に表示されたら、商品を取りに行くだけ。合理的だ。

 自動化によって、注文を受けて決済を行うカウンタースタッフの工数(人数)を減らせる。人間が注文を受ける場合は、マニュアル通りに店員が客から聞き取った内容をもとに、レジのタッチパネルに打ち込み、決済方法を客に聞いて決済する。それと同じ作業を、客が1人で、自分のペースでやるだけ。これまでは、「注文」「決済」のプロセスが、客と店員の双方の時間を同時に消費する無駄な「重複業務」だったわけである。

 残された“人間ジョブ”は、注文の通りにハンバーガー類を制作してポテトを揚げ、ジュースを入れ、トレイに乗せる…というバックヤード作業のみ。この工程がどこまで自動化されているのかは見えないのでわからない。全体として機械化が必要人員数を減らしているのは間違いない。

 

 実はオランダには、ハンバーガーの自動販売機も街中に普及している。「FEBO」という店をはじめ、こちらは古くからオランダ中にあるそうだが、2.5ユーロの現金を入れると、ガチャっと開いて、保温室から、温かいハンバーガー(やコロッケ、ホットドック等)を取り出せる。

 売れると、店員がバックヤードで完成させたハンバーガーをまた入れに来る。この作業はアナログである。決済が非接触デビット(PIN)でできる店もあった。

 「注文を受ける」「決済する」というプロセスを自動化している点はマックと同じだが、さらに「商品を渡す」というプロセスまで自動化されている。店員は、黙々とバーガー制作に専念し、客とは一切、接点を持たず、全員の待ち時間がゼロ。

 人件費を最小限にしている分、価格はマクドナルドよりも多少、安い。つまり、人件費が高いオランダだからこそ、成り立っているビジネスモデルとも理解できる。

現金決済というボトルネック
 デビット(PIN)決済が6割と、オランダでキャッシュレスが進んだ背景にも、人件費の高さがあると考えてよい。完全キャッシュレスのバーガー店「ビーガンジャンク」を観察すると、テラス含め40席ほどの店だったが、注文受けから机へのデリバリーまで、ホール全体を従業員1人だけで回していた。

 これができるのは、現金を一切受け取らないことで、決済に手間取らないからだ。日本のスーパーのレジ業務でも、一番時間がかかるのは「決済」プロセスであることがわかってきている。客が小銭を数えたり札を用意したりカードを探したり財布に釣りを戻したり…という時間が、人によって異なり、長いのだ。その結果、現在は、商品読み取りプロセスを分離し、「決済のみセルフ化方式」が主流となりつつある。

 つまり、ピッ、ピッ…という、商品のバーコードを読ませてカゴに入れていく作業のみを店員が手作業で行い、その1つのレーンに、3つほどの決済専用自動レジが後工程で設置されている。電子マネーやカード決済の客は後工程がないが、現金払いの客には「〇番レジでお支払いください」と伝え、そこでゆっくり決済だけをセルフサービスでやって貰う、というハイブリッド方式だ。これは、行列のボトルネックになっていたのが「現金決済」であったことを示している。現金払いという行為が、いかに客自身だけでなく店員の時間(つまり人件費)をも奪い、生産性を下げてきたか、がわかるだろう。

 

 閉店後に、レジの数字と実際のキャッシュが合っているかを数えたり、現金を保管して銀行に人間が輸送する時間も、すべて人件費がかかっている。

 ビーガンジャンクでは、これがキャッシュレス化で、全くかからなくなり、レジスペースもこれだけ(右記参照)で済み、強盗に遭うリスクもなければ、店員がキャッシュをちょろまかす可能性もない。実にクールだ。

機械化努力ない「人手不足」が、なぜかまかり通る日本
 ファストフード店の機械化は、ここ数年で一気に導入が進み、他の欧州各国(ドイツ、イギリス、フランス、イタリア…)でも同様に、空港や中心街にある店から普及しつつあるが、日本では実験だけ済ませて、導入は全く進めていない。人件費が安いと、機械の設備投資をする必要がないので、そのまま人間に機械ジョブをやらせておくほうが合理的な判断となる。こうして日本は、人間が機械ジョブをやり続けている。人間の価値が低い途上国なのだ。

 それで、外食業は「(安い給料でも働く人材の)人手不足」だから、国際的な経済格差を利用して、海外から安い労働力を輸入する、と政府が言っている。その人数は、外食業で「5万3千人」と公表されており、介護(6万人)に次ぐ規模となっている。

 機械化を進めてもいないのに「人手不足」と言うのが、いかに論理的におかしなことか、欧州の店を見ればすぐにわかる。正しくは、「機械化すれば人手不足を補えるし技術的にも既に100%クリアされているが、時給相場が欧州よりも激安なため、設備投資がペイしない」という途上国状態なのが現状で、「従業員の給料を欧州並みに上げたくない」「機械化投資もしたくない」という、怠慢な外食経営者のエゴで、外国人単純労働者が導入されようとしているわけである。合理性のかけらもない政策だ。

 人手が足りなくなると、「売り手市場」となり、時給相場は少しずつ上がっていく。だが、給料が上がりかけると、外国人を輸入してまで上昇を抑え込み、非正規を徹底的に搾取するのが、日本政府の方針である。これは、外食の経営者集団に比べ、非正規社員たちに政治力がないためだ。ご存知の通り、ワタミ創業者・渡邉美樹は政権与党・自民党の現職国会議員である。

有期契約24か月で永久契約に
 一方で、オランダは日本とは対照的に、従業員の権利が手厚く保護されている。単に時給が1.5倍と高いだけではない。

 欧州では一般的だが、スーパーのレジで店員が座ったまま無言で作業しているのは、日本人には新鮮な風景である(アルバート・ハインのレジ)。客のほうは立って列を待っているわけで、何やら店員のほうがエラそうだ。そして、レジ労働者に、日本のような「いらっしゃいませ」感はない。ウェルカムな態度を求めてはいけないようだ。労働者の権利をわかりやすく象徴している。

 実際に、従業員と雇い主との関係は、どのようなものなのか。30代の日本人オーナー経営者に、匿名を条件に実態と本音を聞いた(※実際に2ケタの従業員が働いているため)。業態としては世界中にある“和食系居酒屋”の一種である。

「こちらでは、日本に比べ、従業員の権利が強くて、守られているな、と感じます。たとえば、同じ人をパートで2年間雇用し続けたら、3年目に『永久契約』の義務が課されるんです。日本でいう正社員みたいなものです。

 永久契約になった社員が、たとえばちょっとした怪我をすると、それが(日本では休む理由にならないような)軽いものでも、有給で長期間(※最大104週間)、休む権利が発生して、その間、経営者は、給料を払い続けなきゃいけないんです(※1日あたり賃金の70%)。これは経営側としては、かなりのリスクです」

 つまり、通常の有休とは別に、プライベートで打撲・捻挫・風邪などを患い、働けません、と傷病休暇が申請される。それは働く者の権利なので、従業員にとっては助かる。一方で、実はたいしたことない軽い怪我でも、悪用されかねない可能性もあり、1年の有期契約なら契約期間内で賃金支払い義務は終わるが、永久契約社員だと104週(2年間)に及ぶ可能性がある。

 詳細は、「Buren N.V.」(世界5都市に事務所を構えるオランダの総合法律事務所)労働法グループがまとめた文書『オランダ労働法概説』に詳しい。以下が、その該当箇所だ。

 民法典第 7 巻 668a 条に、契約の連鎖(chain of contracts)に関する規定があり、有期労働契約が連続して延長され、(i) 合計連続契約期間が24ヶ月を超える場合、または、(ii) 連続した契約が 3 つを超える場合、自動的に無期雇用契約に自動的に移行します。

 民法典第 7 巻 629 条によると、労働者は傷病により就労不能となった場合、労働契約の契約期間に限り、104 週の間、原則として、少なくとも一日あたりの賃金の 70%を、使用者から受領する権利があります。また、病気になった最初の 1 年間については、当該金額が、法定の最低賃金額を下回ることがあってはなりません。

 

 この継続雇用2年で永久契約に移行する権利については、日本でも遅ればせながら2013年から、「非正規雇用5年連続」で無期限雇用に転換する権利が発生するようになり、5年たった2018年4月から最初の転換が始まったばかり。オランダは、わずか24か月(2年)だ。いかに日本の非正規が、労働者として大事にされていないか、がわかる。

実際の賃金相場――業務委託と直接雇用の2形態
 オランダでは、実際の時給は、どのくらいの相場で、経営者の総人件費負担はどの程度の重さなのか。

「フリーのシェフ経験者だと、時給15~16ユーロくらいから、が採用できる相場で、日本に比べると、かなり高いと感じます。ウチの場合、ありがたいことに、日本びいきな現地のオランダ人が応募してくれるので、相場よりも安い時給で、パートのスタッフを採用できています。直雇用の場合だと.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。

 

 

 


BTS問題のヘイト的本質とファンダムの新しい力(後編)

2018年11月17日 | 社会・経済

BTSファン「ARMY」がスゴイ! ネトウヨの差別攻撃にもメディアの嫌韓にも負けず、国境を超える連帯と勇気

  リテラ 2018.11.13.

 

  BTSバッシングがエスカレートし、ネトウヨたちは「原爆」「ナチス」と次々と新しいバッシングを展開しているが、その多くが歪曲やでっち上げで、バッシングの本質は「韓国ヘイト」であることは前編でお伝えした。

 しかし、メディアではこうした冷静な議論、検証は一切なく、ネトウヨと一緒になって、BTSバッシング・韓国バッシングをエスカレートさせている。そして、少しBTSに好意的なことを語っただけで、炎上し、総攻撃を受ける状況が起きているのだ。

 たとえば、昨日の『直撃LIVEグッディ!』(フジテレビ)でトレンディエンジェルの斎藤司が「パフォーマンスとか歌とかもすばらしいし、世界に向けた今までの人たちと違うような感じのパフォーマンスをしている。個人個人も、若いし、人なつっこいし、日本語も上手だし、すごい好きなんだな日本のこと、みたいに僕は個人的には感じた」「だから、いまいちTシャツ云々が何故こういうことになってしまったのかということがいまいち僕も分からないし、音楽と政治みたいなものが一緒になってしまうというのがもったいないなと思う」とBTSと共演した素直な印象を語ったのだが、ネットではそれだけで「トレエン斎藤が反日というのがよく分かりました」「反日芸人発見」などと、大炎上した。

 また、今日の『グッディ!』では、北村晴男弁護士が事務所ぐるみでの確信犯的な反日行為だと陰謀論を主張した際、サバンナの高橋茂雄が「意図があってやるならもっとわかりやすくやると思う。ただのファッション雑誌に帽子1回かぶっただけ。ツアーグッズとして出してるんやったら意図あると思うけど。謝罪して削除してるっていうのは意図的じゃない」「これ彼らがデザインしたものじゃないと思うんです」などと冷静に反論。すると、高橋に対してさっそく「サバンナ高橋、貴様もやな」「サバンナ高橋、今すぐ日本から消えろ」などと、攻撃が浴びせられている。

 ようするに、BTS問題は徴用工問題以降、急速に悪化する日韓の分断に利用され、擁護どころか冷静な議論すらタブーとなってしまっているのだ。

 しかし、そんな絶望的な状況のなかで、一筋の希望のようなものもある。それは、「ARMY」と呼ばれるBTSのファンたちがこうした動きに臆することなく、敢然と声を上げていることだ。

 「原爆Tシャツ」問題が持ち上がった当初から、BTSのファンたちは原爆Tシャツのデザインの悪趣味さや軽率さを指摘しつつも、Tシャツの主題は「原爆」ではなく、「光復節」(日本の植民地支配から解放された8月15日のこと)に関するものであり、決して「原爆万歳」と賞賛するものではないとの正しい情報を広めようとしていた。ツイッター上では「#LiberationTshirtNotBombTshirt」(光復節Tシャツは原爆Tシャツではない)というハッシュタグを用いて、盛んに反論ツイートを行ってきた。

 その後、ネトウヨたちが次々と新しいバッシングを始めても、あきらめることなくそのデマや歪曲にこうして逐一反論し続けている。

〈これ原爆って言ってる人いるけど完全に飛行船だよね。それにユニセフの動画見てからツイートしましたか? 司会の方が『飛行船の模型持って撮ります』と言ってましたよ?〉

 〈この写真には写っていない下のほうにANTIとかかれています。ANTIというのは日本語で反対という意味です。このブルゾンは原子爆弾反対という意味を持っています〉

 〈(RUN Japanese ver.)のpvが3月11日に出て、ワンシーンに水に溺れるシーンがある→東日本大震災を揶揄みたいなのもありますが、完全に根も葉もないイチャモンです。溺れるシーンはこの曲も含む《花様年華》シリーズの一貫したテーマの1つです〉

 〈これは花様年華シリーズのコンセプトであり、韓国版のMVにも水に沈むシーンはあります。東日本大震災をネタにしたものではありません〉

 〈帽子は完全にアウトですけど、2014年の出来事で、用意した雑誌社が削除、謝罪済み〉

 「ソテジさんのコンサートで、「教室イデア」の曲の時にコンセプトが不良だから長ラン着てるのになぜこれがナチスの親衛隊だと言われてるの?」

 K-POPグループを支えるファンダムの力

 また、彼らはBTSのひとつひとつの言動を擁護するだけでなく、このBTSバッシングの本質が「韓国差別」であることも喝破し、それにも抗議の声をあげている。

 〈原爆弄りは本当にしてはいけないことです。だからあのTシャツを着てしまったBTSのメンバーは軽率だったと私も思っています。しかし高須さんは「それは韓国では解放の日かもしれないが、日本では悲劇の日なんだ」ということを“教える”のではなく、「原爆少年団」と弄り、晒しあげ、20代の若者の未来を“潰す”行動をしている。これは虐めと同じだと思います。その姿が大変不快です。〉

 〈BTSが日本で活動して何が悪いの? 韓国人だからって差別とかよっぽど叩いてる人の方が許せないんだけど。同じ人間として嫌になるわ。〉

 〈BTSがMステ出演無くなるのはおかしい、そもそも日本人が、韓国に対して慰安婦問題とか、そもそも戦争を起こした事が悪い

BTSは何も悪く無いじゃん

反日の人への悪口とか文句ってもう日本では、差別みたいになってる〉

 また、本サイトは9日の記事で、BTSが「韓国バッシング」の道具にされていることを指摘したが、この記事も、ARMYたちの手によって、英語や韓国語はもちろん、スペイン語やアラビア語にまで翻訳され、世界中に拡散している。

 これまで芸能人やアーティストがネトウヨから激しい攻撃にさらされるとそのファンたちも沈黙。結果的に芸能人やアーティストが孤立し、謝罪に追い込まれるということが繰り返されてきたが、ARMYたちはネトウヨたちのデマ攻撃や差別攻撃に必死で抵抗し、少しでも問題の本質を知らせようと地道に活動を続けているのだ。

 いったいなぜ、彼らはBTSのためにここまで真摯に向き合い、闘えるのか。そこにはK-POPならではのファンダム文化が大きく関係している。「ファンダム」と呼ばれる熱心なファンの存在感やコミュニティの連帯感、影響力の大きさは、とりわけK-POPでよく見られるものだ。

「ユリイカ」(青土社)2018年11月号のなかで北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授の金成玟氏はこのように記している。

〈たびたび韓国政府をK-POPの立役者として取り上げるのを耳にするが、もし立役者を選ばなければならないのなら、その答えはファンダムになるべきである。H.O.T.からBTSまで、数々のアーティストを支えてきた献身的なファンダムこそ、K-POPが築きたかった、そして築かなければならなかった「ソーシャルメディア的想像力」の音楽空間を可能にした存在だからだ〉

 こうしたファンダム文化のなかでも、BTSを支えるファンであるARMYはとくに連帯が強いと言われている。sMエンターテインメント、YG エンターテインメント、JYPエンターテインメントといった大手芸能事務所ではなく、Big Hitエンターテインメントという新興の事務所から生まれたBTSが「ビルボード総合アルバムチャート2作連続1位」という東アジアのグループが歴史上誰もなし得なかった偉業を(しかも、英語ではなく韓国語で歌ったアルバムで)達成した背景には、最強のファンダムであるARMYの存在がある。

 秋元康コラボ、女性蔑視歌詞…ARMYの声がBTSを変えた

 しかも、ARMYはたんに、BTSの活動を支えるだけでなく、その表現をブラッシュアップする役割も果たしてきた。BTSの向かう方向性にARMYが疑問を感じたときは遠慮なくその不満をぶつけ、そういったファンの行動がBTSの動きを変えてきたのだ。

 その典型が2015年末から2016年の夏にかけて起きた炎上だろう。「ホルモン戦争」の〈女は最高の贈り物だ〉や、「Can You Turn Off Your Phone」の〈食事を目で食べるっていうのか? 女みたいに〉といった歌詞が女性蔑視的であるとして、ファンからSNSなどを通じて異論が噴出したのだ。

 これを受け、事務所は謝罪に加えて〈今回自主検討と論議を通じて、音楽創作活動は個人の成長過程と経験、そして社会から見て学んだことの影響を受けるため、どのような社会の偏見や間違いでも自由にはなれないことを学ぶこととなりました。また社会での女性の役割や価値を男性的な観点にて定義しようとすることも正しくない可能性があることを知りました。(中略)今後も継続して防弾少年団の成長を見守っていただき、不足している点について指摘していただければ、より努力する姿でファンと社会の助言に耳を傾けます〉(2016年7月6日付ニュースサイト「もっと!コリア」)とコメントを出した。

 ただテンプレートの謝罪を出すだけにとどまらず、騒動を受けてミソジニーへの真摯な反省を自分たちなりの言葉で発信する対応は、多くの人々を驚かせた。「アイドル」と「ファン」の間で完璧に意見の交換が成り立っている関係性は、他のグループではなかなかつくれるものではない。

 これは少し前の秋元康とのコラボ中止騒動においても同様だ。ファンはインターネット上で意見を述べるばかりではなく、事務所のビルにコラボ中止を要請する付箋を貼り付けるなどの見事な非暴力抵抗行動を起こした。

 今回の「原爆Tシャツ」問題をめぐるバッシングに対してARMYたちが堂々と反論、抵抗しているのは、自分たちがBTSを盲信してきたのでなく、「いけないことはいけない」と声を上げてきたという自負があるからだろう。だからこそ、BTSの軽率さについては諌めながらも、問題の本質を見抜き、バッシングに「NO」の声を上げることができるのだ。

 しかも、ファンダムはただ、バッシングに「NO」を叫んでいるだけではない。ヘイトを乗り越える新たな“連帯”の芽になろうとしている。

 徴用工問題などをめぐって、激しい憎悪と差別が飛び交い、これまでにない分断が進行しているネットにあって、日韓のARMYの周囲には180度ちがった光景が広がり始めているのだ。

 たとえば、BTSが「韓国バッシング」の道具にされていることを指摘した本サイトの記事を翻訳した韓国のファンに対して、日本のファンが〈韓国語に翻訳してくれてありがとうございます 日本のarmyもくやしいです。もっとひろめてください。BTSをまもりたい〉とリプライし、そのリプライを見たまた別の韓国のファンが〈日本のarmyですか? あなたはとても優しいんですね。私たちはあなたを愛しています。いつもBTSの側にいてくださってありがとうございます〉(編集部訳。原文は英語で書かれている)と返信するというやりとりがあった。

 韓国差別も日韓関係悪化も超えて世界中で連帯するARMYは希望だ

 また、韓国のファンによる〈日本のarmyの皆さん、最近の日韓関係には摩擦があるのにも関わらず、少年たち(BTS)に愛を示していただきありがとうございます〉(編集部訳。原文は英語)というツイートもみることができたし、日本語でこのようにツイートしている人たちもいた。

 〈日本語ができないので翻訳機を使います。すまないと思わないでください。 J-armyの過ちではありません。少年たちを一緒に大切にしてくれる人じゃないですか。心を慰めて,今は安らかな寝床に入ったことをお祈りします。ありがとう〉

 〈こんにちは。韓国のarmyです。韓国は日本の行動に腹が立ちました。でも,私は韓国を理解しようとするarmyを愛しています。韓国を理解してくださって,ありがとうございました〉

 〈外国ARMY代表として一言。

 今までの問題のせいで全世界のARMY達が不安になってしまったが、

イルアミの皆さんを責めたりするツイートを見たので、イルアミさん達に謝りたいと思います

 バンタンのことを愛してくれてありがとうございます

 そして、ご苦労様でした。

#BTSの日本活動を永遠に応援します〉

 (編集部注:「イルアミ」とは「日本のARMY」の略語で、「バンタン」はBTSのことを指す)。

 

 日韓だけではない。BTSは世界中にファンのコミュニティがあり、そういった多くの国のファンからも、バッシングと闘っている日韓のARMYを励ます声が届いている。その励ましに対して、ある日本のファンはこのようにツイートして感謝を示していた。

 〈心痛い中、バンタンで検索すると色んな国のarmyがjarmy頑張れって言ってくれて、“世界のarmyは一つ”て日本語でハッシュタグつけてくれてて嬉しくてまた涙。ほんとarmyでよかった。BTSだからこそ国境越えてこんな素敵なファンで溢れてるんだよ。

#BTS

 #バンタン

#世界のARMYは一つ〉

 日韓関係が悪化し嫌韓感情が極まっているなか、このように若者たちが草の根で友情を育んでいる姿は数少ない「希望」だ。本サイトは9日の記事で、「K-POPは人々の分断を煽る道具ではない」「ポップミュージックなどの文化を通して交流することは、国際親善のきっかけのひとつとして大きく機能するもの」と書いたが、まさにそれが現実となっている。

 ネトウヨたちは、ARMYたちにも心ない言葉を投げつけ、映画やCMにも電話攻撃、ライブ会場などでの抗議行動も始めた。そうした差別主義者たちの卑劣な行為を批判してくれるメディアも皆無だ。そんな状況のもと、恐怖や不安を感じているARMYは少なくないだろう。

 しかし、それでも屈することなく声を上げ、国を超えて連帯するARMYを見ていると、「原爆少年団は日本に来るな」「韓国とは国交断絶」などとわめき散らすネトウヨが幅を利かす時代はきっと終わる、そんな一縷の希望を抱かずにはいられないのだ。(編集部)


BTS問題のヘイト的本質とファンダムの新しい力

2018年11月16日 | 社会・経済

 当ブログ先日12日『ユダヤ人権団体、BTSに謝罪要求』という記事を掲載したが、どうやら「裏」があったようで、その見解をリテラが報じています。


 

BTS問題のヘイト的本質とファンダムの新しい力(前編)

 

 BTSバッシングの異常! BTSの軍事独裁政権 ・管理教育批判の演出を「ナチス礼賛だ」と歪曲攻撃したのはナチ信奉者だった

 

  リテラ 2018.11.13.

 

   BTSバッシングが止まらない。「原爆Tシャツ」問題を理由に、『ミュージックステーション』(テレビ朝日)がBTS(防弾少年団)の出演をキャンセルし、番組から締め出した問題については本サイトでも報じたが、BTSに対する攻撃はおさまるどころか、ますますヒートアップしている。

  『NHK紅白歌合戦』や『FNS歌謡祭』(フジテレビ)といった音楽番組も、『Mステ』に追随し、オファーの検討を見送ったり、出演の打診を撤回するなどしているという。『NHK紅白』に至ってはBTSとまったく関係のないTWICEへの出演オファーについて苦慮しているという報道まで出ている。K-POPアーティストというだけで排除するなど、異常事態と言うほかない。

 さらにBTSは本日11 月13日から日本ツアーが始まり、今回の来日では東京ドーム2公演と京セラドーム大阪3公演が予定されているが(名古屋と福岡の公演は来年)、そのライブ会場でレイシストやネトウヨ層が抗議行動の実施をほのめかしているなど、不穏な状況は続いている。

 それだけではない。ネット上でも「原爆Tシャツ」以外にもBTSの過去の活動を掘り返し、「原爆写真が背中にプリントされた原爆ブルゾンを着ていた」「ユニセフのイベントに原爆型の看板を持ち込んだ」「MVで東日本大震災の被害者を愚弄していた」「ナチスの制服に似て見える衣装をステージ上や雑誌撮影で着ていた」などと、次々と新しいバッシングが展開されている。

  しかし、そのほとんどがデマや無理やりなこじつけによる、言いがかりやイチャモンの類だ。

 たとえば、「ユニセフ韓国支部での会見に、原子爆弾をイメージした原爆看板を持ち込んだ」なる内容をネトウヨ系ニュースサイト「Buzz Plus News」が報じたが、これは完全なデマだ。彼らが持っていたのは、原爆でなく「LOVE MYSELF」というロゴの入った飛行船のミニチュアで、会見に先立って同じロゴとメンバーの写真がプリントされた実際の飛行船が飛ばされたこともニュースになっている。そもそも写真を見れば、そのニュースを知らなくとも明らかに飛行船の形をしていて、広島の原爆とも長崎の原爆とは全然形が違う。そのほかも、話にならないようなこじつけや言いがかりのようなものばかりだ。

 唯一、ナチス問題については、外形的にはデマとは言えない。しかしこれも、現在広まっている「ナチスをオマージュした」「ナチスを礼賛した」というような情報は、事実と異なる。

 問題となっているステージは、2017年9月、K-POPのベテラン歌手ソ・テジのデビュー25周年記念ライブにBTSがゲスト出演し、「Classroom Idea」という曲を披露した際のもので、BTSが「ハーケンクロイツを模した赤い旗を手に、ナチスの制服を模したステージ衣装」でパフォーマンスしたとされている。

 しかし、実際のメッセージはナチス礼賛どころか、全体主義を批判した内容だ。「Classroom Idea」は、もともとソ・テジが1994年に発表したもので、BTSはこのソ・テジの曲をカバーしているのだが、軍事独裁政権下で育ったソ・テジが韓国の管理教育を批判したプロテストソングだ。このライブのパフォーマンスで使われた旗に描かれているのは、ハーケンクロイツではなく管理教育を象徴する卒業帽や時計を組み合わせた意匠で、ナチス風の衣装も学校の制服をモチーフにしたもので、批判的な意味合いでそれらは使っている。

 しかも、問題になっている旗や制服風衣装は、ソ・テジが90年代のライブで使ったことのあるスタイルで、BTSがほかのステージでこの曲を披露した際は詰襟制服を着崩したスタイルの衣装だ。問題のステージは、ソ・テジの25周年記念ライブへのゲスト出演だったことから、ソ・テジがかつて披露したスタイルをオマージュしたのだろう。もちろんそれらがナチスを想起させるという点は配慮が足りなかったし、詰襟制服を着崩したスタイルのほうが、本来の管理教育批判のメッセージが際立ちふさわしいとも思う。しかしこのライブパフォーマンスで、BTSがオマージュしたのはソ・テジであって、ナチスをオマージュしたわけでも、ましてや礼賛したわけでもない。「Classroom Idea」は前述した通り、徹底した管理教育で若者の心を殺し、画一的な人間につくり変えようとする学校のシステムを批判した曲だ。それは時代は変われど、BTSがそれまでのキャリアを通じてファンに向けて発信してきたメッセージと共通するもので、BTSが「Classroom Idea」をカヴァーし、またソ・テジの25周年ライブでソ・テジと共に同曲を演奏した意義はそこにある。彼らがナチス的思想を批判する姿勢をもっているのは明らかだろう。

 

ナチ礼賛をツイートした高須克弥がSWCにBTSを通報

 こうしたデマや陰謀論、こじつけや言いがかりによる攻撃が繰り広げられるのにはもちろん、理由がある。本サイトでも報じた通り(https://lite-ra.com/2018/11/post-4362.html)、この問題の本質は「韓国ヘイト」だからだ。事実、『ミュージックステーション』出演キャンセルの裏には、レイシストに扇動されたネトウヨ層たちの電話攻撃があった。

 たとえば、韓国人や中国人へのジェノサイドまでをも主張するレイシスト団体「在特会(在日特権を許さない市民の会)」元会長の桜井誠氏は、11月5日に更新したブログで『ミュージックステーション』のスポンサー企業に“電凸”する旨を告知。また、〈桜井は個人的にこれらの企業に11月9日(金)のテレビ朝日の番組について、「貴社は番組に出演する韓国人グループが原爆Tシャツを着て、日本への原爆投下を祝っていることを知っているのか?」「日韓基本条約破棄判決が出たばかりの現在、国民世論が日韓断交で湧き上がっている中で、こうした韓国人を出演させることを是とするのか?」「貴社は反日企業なのか?」など問い糺したいと思っています。恐らく、こうした問い合わせは、桜井だけではなく日本中の心ある皆さんが行っていることと思います。日本人であれば、誰でも自分の国が好き、そこには左右の思想は関係ないはずです〉と書いて、同様の抗議行動を煽っていた。

 在特会はこれまで、原爆ドーム解体を主張したり、8月6日に核武装推進を訴えたデモ行進を行うなどしてきた。本当に原爆や核の問題を考えているというのであれば、問い糺されるべきは、ただ単に原爆の写真がプリントされていたTシャツを着ていただけのジミンではなく、桜井氏自身ではないか。

 また、ナチスに似ているとされる旗や衣装の告発をユダヤ人権団体のサイモン・ウィーゼンタール・センターに対して盛んに行っているのは、高須クリニック院長の高須克弥氏だが、当の高須氏は以前〈我が国の医学は大東亜戦争に負けるまではドイツ医学だった。ナチス政権下のドイツ医学の発展は目覚ましいものだった〉〈南京もアウシュビッツも捏造だと思う〉といったツイートを投稿して問題となり、いまだ謝罪も撤回もせず開き直っている。

 こういったことからわかる通り、彼らは本気で「原爆」や「ナチス」について考えているのではなく、BTSを使って韓国叩きをしたいだけであり、レイシスト的な言動の正当化のために「原爆」や「ナチス」をもち出しているにすぎない。BTSは韓国ヘイトのための単なる道具に過ぎないのだ。

 

問題の本質をネグり、BTSバッシングに走るマスコミとネット

 ところが、その差別を目的とした行動が、いつのまにか、あたかも「社会的な正義」であるかのように変換され、どんどん広まっている。

 たとえば、高須氏やネトウヨたちが通報したことで、昨日サイモン・ウィーゼンタール・センターはBTSに対して嫌悪感を示す声明を出した。

 

 在特会らの呼びかけるヘイトデモでは、ナチス旗に似ているどころかハーケンクロイツそのものが掲げられていることも少なくない。日本のレイシストやネオナチが自らの韓国差別を正当化するために、長年ユダヤ差別と戦い続けてきたサイモン・ウィーゼンタール・センターの権威を、「差別の道具」として利用するという、醜悪極まりない事態になっているのだ。

 さらに、こうした状況に拍車をかけているのがメディアだ。BTSの問題はワイドショーなども取り上げ始めたが、問題の本質、ヘイトの構造に一切触れることなく、「原爆Tシャツけしからん」というBTSバッシングと韓国バッシングだけを叫んでいる。

 ネットニュースも、少しでもBTSを擁護しようものなら大炎上する状況に怯えているのか、擁護論や冷静な分析を展開しているメディアは皆無。逆に、ネトウヨ層に媚びて、BTSバッシング・韓国バッシングをエスカレートさせている。

 そして、問題はどんどん広がり。徴用工問題以降、急速に悪化する日韓関係の分断をさらに煽る結果をもたらしている。

 まさに絶望的な状況だが、今回のBTSバッシングにはたったひとつ救いがある。それは、「ARMY」と呼ばれるBTSのファンたちがこうした動きに敢然と声を上げていることだ。

 これまで、芸能人やアーティストなどがネトウヨの激しい攻撃や炎上にさらされたとき、当人だけでなく、ファンも沈黙してしまうことが少なくなかった。結果的にその芸能人やアーティストは孤立し、一切の弁明の余地もないまま謝罪に追い込まれるのがパターンだった。

 ところが、ARMYたちは今回、ネトウヨたちのデマ攻撃や差別攻撃に対して、地道に間違いや歪曲を指摘し、抵抗を続けているのだ。

 いや、抵抗を続けているだけではない。今回の問題を通じて、日本と韓国の若者の間で分断を乗り越える新たな動きも出てきている。そのことについては、後編でお届けしたい。(編集部)