里の家ファーム

無農薬・無化学肥料・不耕起の甘いミニトマトがメインです。
園地を開放しております。
自然の中に身を置いてみませんか?

投票率を上げ「政治に声を届ける」

2021年08月31日 | 生活

子どもの貧困に取り組むNPO代表が、コロナ禍で感じた危機感

ハフポスト2021年08月26日 

衆院選に向けて、若者・現役世代の投票率を75%以上にすることを目指すプロジェクトが始まりました。「キッズドア」理事長の渡辺由美子さんにその狙いを聞きました。

澤木香織(Kaori Sawaki)

    秋にある衆院選や今後の選挙に向けて、若者や現役世代の投票率を「75%以上」にすることを目指すプロジェクトが始まった。

    NPO代表や大学生らでつくる実行委員会が8月26日、記者会見して発表した。企画を中心になって進めているのが、子どもの貧困支援に取り組むNPO法人「キッズドア」理事長の渡辺由美子さんだ。

    これまで取り組んできた低所得世帯の子どもの学習支援に加えて、コロナ禍では困窮する家庭の食料支援にも力を注いできた。現場の状況を踏まえ、政府に要望を重ねてきて感じたのが、子どもや子育て世代の声が「政治に届かない」というもどかしさだった。

「政治家にとって無視できない存在となり、政治を国民の手に取り戻したい」。そう語る渡辺さんに、プロジェクト立ち上げの経緯や思いを聞いた。 

 声がなかなか届かなった

「政治に声が届かない」。渡辺さんがそう強く考えたのは、昨年2月に突然要請された、全国一斉休校がきっかけだ。

親が仕事を休まざるを得なくなり、収入が減ったり途絶えたりする家庭が続出した。給食がなくなったことで、十分に栄養が取れない子どももいた。そもそもギリギリの状況で家計をやりくりしていた家庭は困窮を極めた。

政府はその後、児童手当を受給する子ども一人当たりに1万円を給付するなどした。だが、長期休暇が来れば再び同じ状況に陥りかねないと、渡辺さんは他の子育て支援団体とも連携し、追加の「現金給付」を訴え続けた。 

キッズドアは昨年5月、企業の協力を得て困窮家庭に文房具とギフトカードを送った。決して特別なものではなく、日常的に子どもたちが使う市販の文房具だった。それでも「こんな高級なノートをありがとうございます」「定規が壊れていたけど、親に買って欲しいと言えなかったから、嬉しい」と感想が次々届いた。新学期に揃えられなかった体操服や辞書を買うことができた、という声もあった。

実態を調査し、与野党問わず議員を訪ねた。親身に話を聞き、動いてくれた議員もいたが、政策にはなかなか反映されなかった。一方で、同時期に「GoToキャンペーン」事業に多大な事務経費がかかっていることが報道されていた。

そんな日々を過ごすうちに思い始めた。

コロナ禍でみんなが大変なことはわかる。それでも、なぜ子どもの命や食事に関わることにもっと予算がかけられないのか。なぜ政策の優先順位が上がらないのかーー。

コロナ禍で2度目の夏休み「本当に危機的」 

感染の増加が止まらず、各地で夏休みの延長も議論されている現状を、渡辺さんは「本当に危機的」と危惧する。

昨夏は、全国民一律10万円の特別定額給付金が支給されたおかげで、「なんとか夏休みを乗り切った」という家庭も多かったという。しかし今夏は、より深刻な状況だ。

キッズドアが6月〜7月にかけて、高校生までの子どもがいる困窮世帯に調査したところ(1469世帯から回答)、昨年1年間の収入が「200万円未満」と答えたのは65%にのぼった。調査からは、「給食が支えていたぎりぎりの食生活が夏休みに崩壊する可能性がある」という状況が見えた。

 「水道代がかかるからと、水を飲むのを躊躇することがある」「生理用品が買えず、試供品を使っていたが、無くなってしまったから送って欲しい」。渡辺さんの元には各地からそんな声が寄せられている。 

中学生の子を育てているある女性は、経済的な理由で携帯電話を使えず、友人の携帯電話を借りて「食料を送って欲しい」とメッセージを送ってきた。渡辺さんが事情を聞いてみると、昨年納められなかった光熱費を支払ったために生活費が底をつきつつあったという。「自転車操業でなんとか生活している人がたくさんいる。一つ歯車が狂うと、食べ物が買えない状況になってしまうのです」 

先行きが見えない中、精神的な疲れが増していることも気がかりだ。夜眠れなくなった、疲れが取れない、という声もあるという。

キッズドア提供食料支援した家庭から届いた手紙。「冷蔵庫に食べ物がたくさん入っているのを見るだけでホッとします」などと感想が書かれている

苦しいのは「自分のせいじゃない」

「自分が働けないから」

「自分が至らないから」

 渡辺さんが接する親たちの中には、苦しい生活が続く理由を、自分のせいだと考える人もいるという。だが、変化の兆しも感じている。 

「自分が悪いんじゃなくて、政治がおかしいんじゃないか。自分たちが求める政策がなかなか実現しないのは、自分たちが選挙に行かないからじゃないか。そう気づき始めている人も増えていると感じます。それは、困窮家庭の親だけでなく、飲食業界などコロナ禍で苦しい思いをする人たちも、同じではないかと思います」 

プロジェクトが目指す「投票率75%」の目標は、決して簡単なものではない。 

前回(2017年)の衆院選の投票率は全体で54%。10代の投票率は40%とやや高かったものの、20代(34%)と30代(45%)は5割を切り、40代も54%とわずかに5割を上回るという結果だった。若者や子育て世代の投票率は低い一方で、60代は72%にのぼり、各世代の中で最も多かった。

プロジェクトでは、若者や現役世代の意思を政治に反映させるため、前回衆院選の60代の投票率(72%)を上回り、10代、20代、30代、40代の投票率を75%以上にすることを目指す。そのためにまず、若者・現役世代が重視している政策は何かを明らかにするアンケートを実施し、結果を踏まえて争点を公表し、政党・候補者に考えを聞く計画だ。

「政治を国民の手に取り戻したい。争点は自分たちで決めたい。国民主権をもう一度取り戻す大きなうねりを作りたいと思っています」

プロジェクトのサイトでは順次選挙関連のコンテンツをアップする予定で、重視する争点を尋ねるアンケートも始まっている。


こんな切羽詰まったときに国会も開かず「総裁選」?
その一方では
「五輪で未使用のマスクなど廃棄 9会場で500万円相当」(朝日新聞デジタル 

という記事が目についた。弁当の廃棄処分といい・・・

<民なくして>政府と東電は「責任放棄」「卑劣」 原発汚染処理水の海洋投棄阻止へ被災地立ち上がる

2021年08月30日 | 自然・農業・環境問題

「東京新聞」2021年8月29日 

 東日本大震災から10年を迎えた直後の2021年4月、菅政権は東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)の汚染水を浄化処理した後の水を、2年後をめどに海洋放出する方針を決めた。新たな風評被害を懸念する地元の反対を押し切っての判断で、過去に政府や東電が漁業関係者と文書で交わした「約束」を裏切る行為でもあった。市民側では新型コロナウイルスの影響で往来に制約がある中、インターネットを活用した反対の署名集めの動きが起きている。 (市川千晴、中根政人)

【関連記事】コンテナ4000基の中身分からず 福島第一原発で東電ずさん管理
【関連記事】福島第一の放射性廃棄物 高まる漏えいリスク 保管設備の劣化進む
【関連記事】政府が海洋放出の方針決定 漁業者「絶対反対」の声ある中、2023年にも開始

◆ネットで署名呼び掛け

 震災で被災した宮城、福島両県の3つの生活協同組合が19年に合併して運営されているみやぎ生協(仙台市)の副理事長で、処理水海洋放出の反対署名集めに取り組んでいる野中俊吉さん(62)は「手に負えないから海に流してしまえ、というのは責任放棄だ。福島の問題に矮小化するのでなく、国民全体に訴える必要がある」と語る。

 活動は、みやぎ生協など4団体が呼び掛けて21年6月から始まった。野中さんが講師となり、全国の生協でオンライン学習会を計5回開催。3000筆近いオンライン署名が集まっている。同時に行っている用紙署名も1400筆近い。野中さんは「年内に政府と東電に署名を提出したい」と意気込む。

◆反対の声は無視

 福島第一原発の処理水に関して政府と東電は15年8月、それぞれ福島県漁業協同組合連合会に対し「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」と書面で回答。処分方法を決める前に、地元漁業者の同意を丁寧に得るかのような姿勢を示した。

 一方、政府の小委員会は20年2月、海洋や大気への放出が現実的な選択肢であり、海洋放出の方が「確実に実施できる」とする報告書を公表した。

 全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長は21年4月7日、官邸で菅義偉首相と面会した際、海洋放出に反対の意思を伝えたが、政府は6日後の4月13日、関係閣僚会議で海洋放出方針を正式決定した。

 野中さんは「反対の声を確認しておきながら、卑劣なやり方にあぜんとした」と憤る。

◆世論でストップを

 政府は放射性物質トリチウムを含む処理水を海に流しても、人体や環境への有害な影響はないとする。だが、中国や韓国は環境への影響などを挙げ批判を繰り返す。首相は国会答弁で、処理水の海洋放出について「安全性に問題がないことを理解してもらえるよう、引き続き努力したい」と強調するものの、メッセージが国内外へ十分に伝わっているとは言い難い。

 原発政策全般に関しても、政府は「依存度を低減させる」としながら、電源構成上の重要性は維持したまま。新規制基準に適合した原発を「地元の理解」に基づき再稼働させる方針を継続している。一方、世界最悪レベルとなった原発事故の収束作業は終わりが見えない。

 野中さんは処理水を巡る政府の一連の対応について「乱暴で、一般的な国民の感覚で取り組んでいない」と指摘。「反対の世論が高まれば、海洋放出しない方向で決着する可能性だってある」と力を込める。


 ひとたび事故が起きるとその処理に無限のときが費やされる。しかも人体にも自然界にも大きな負の遺産を残す。

 旭川中学女子生徒の「自殺」事件、どうやら犯人による直接的殺人事件の様相を示してきた。それなのに警察が動かない。わたしは、反社勢力との癒着があるのではないかと考えている。世論が無視すると遺族の意に反する結果に押し切られてしまう可能性がある。ぜひ文春砲やYou Tubeなどたくさんの資料が出ているので皆さんにも関心を持っていただきたい。

 


命絶つ子ども増 夏休み明けは特に注意、異変のサイン見逃さないで #今つらいあなたへ

2021年08月29日 | 教育・学校

石井志昂『不登校新聞』編集長、不登校経験者

YAHOO!ニュース〈個人〉8/29(日) 

 今年の小中高生の自殺が、過去最多だった前年を上回るペースになっていることがわかりました(今年は暫定値)。文科省や専門家は、コロナ禍が子どもの心に与える影響を危惧していますが、事態がよくなる兆しは見えていません。そんななか、もっとも注意すべき、夏休み明けを迎えます。私自身も不登校経験があり、加えて全国不登校新聞社での取材活動などを通じた経験を踏まえ、「自殺の増加の背景」「前触れとなるサイン」「周囲にお願いしたいこと」についてお伝えします。

子どもの自殺 過去最多を超える水準に

厚労省「地域における自殺の基礎資料」より編集部作図(2021年のみ2021年7月29日時点の暫定値)

 厚労省によれば、昨年の小中高生の自殺者数は499人。統計を取り始めた1980年以降、最も多くなりました。今年と昨年の上半期(1月から6月)を比較すると、昨年は203人、今年は234人と今年のほうが上回っています(2021年7月29日時点の暫定値)。文科省の有識者会議では「新型コロナウイルス感染症の拡大による家庭や学校の環境変化などによる影響」が背景にあると指摘しました(※注1)。

コロナストレスは放射能ストレスに類似

 臨床現場で子どもたちを診ている心療内科医・明橋大二さんも、コロナが広がっていることの心への影響を指摘しています。

 明橋さんによれば、コロナが子どもの心に与える影響は、東日本大震災の「原発・放射能ストレスに似ている(※2)」と言います。放射能ストレスの特徴は「どこが安全か危険かわからない」「いつ終息するか分からない」などで、もやもやしたストレスが長期に渡り続くことでした。現在のコロナ禍も同じような状況です。明橋さんは「こうした状況がボディブローのように子どもたちの心の健康に影響を与え続け、その結果として、過剰な手洗いや外出恐怖などの強迫症状、不登校などのかたちであらわれている」と話します。

4人に1人の子どもがうつ症状

 多くの子どもたちが慢性的なストレスを抱えていることは、国立成育医療研究センターの調査でも明らかになりました。

第4回コロナ×こどもアンケート調査ダイジェスト版より抜粋

 国立成育医療研究センターでは、昨年末、小学4年生から高校3年生の924名にアンケート調査を行ない、分析。その結果、23.6%の子どもが中程度以上のうつ症状に該当していました(※注3・PHQ-A尺度)。およそ4人に1人です。今年2月から3月にかけて行なわれた調査では「もう死にたい 心の限界が近づいている」(中1・男子)など、苦しい気持ちを抱え込んでいる自由記述なども見られました。

理由もわからないまま不登校

 明橋さんによれば、この半年は不登校の相談も増えているそうです。私が当事者に取材をしたなかでも「コロナ禍の影響を受けた不登校」が、いくつかありました。ひとつめは吉田まき子(仮名)さんの娘さんのケースです。小1の2月末からコロナ禍によって休校が開始。通常登校が始まったのは小2の6月でしたが、朝、登校しようとすると「お腹が痛い」と動けない日々が続いたそうです。何が原因なのか親は理解ができないまま欠席が重なり、不登校になりました。

 娘さんの場合、小1のころから「宿題ができない」とパニックを起こしたり、心因性の病気があったりなど、学校は「疲れる場」だったようです。それでもなんとか通っていましたが、コロナ禍でストレスも重なり、行けなくなったのではと私は思っています。

休校明けから突然のいじめ

 休校明けから突然、いじめを受けて学校へ行けなくなったというケースもありました。現在中学1年生のいちごさん(13歳)です。なかよしだったはずの2人から、急に無視、陰口などを言われるようになり、内容はしだいにエスカレート。きっかけもわからないまま、いちごさんは教室に入るだけで涙が出るほど精神的に追い詰められたそうです。そこでいったん不登校をして、環境を変えるため中学校受験に挑戦。現在は私立中学に通っています。

 いじめを肯定する気はまったくありませんが、いじめた2人はコロナストレスを強く感じ、その発散先にいちごさんを選んだのではと私は考えています。コロナ禍による心への影響は「感染者数」などわかりやすい数字では表れません。理由が不透明なまま不登校になったり、大人が見えないところでいじめが起きたりもします。これまで以上に注意が必要です。

とくに注意が必要な夏休み明け

 子どもを見守っていく際、とくに注意すべきは夏休み明けです。学校で苦しいことを経験した子は、新学期の準備に入る8月後半から「また同じような生活がはじまってしまう」と不安にかられます。「ジェットコースターに乗ったときと同じような心理になる」とも言われています。ジェットコースターは急降下で落ちている最中よりも、落ちる直前のほうが強い恐怖を感じます。同じように子どもにとって新学期前日の夜がまさにジェットコースターが落ちる前なのです。恐怖を感じたまま新学期の朝を迎え、悲しい選択をしてしまう子が毎年、あとを絶ちません。

小中高生の月別自殺者数(厚労省統計結果より不登校新聞社作図)

 内閣府の『自殺対策白書』(2015年版)でも、長期の休み明けは「大きなプレッシャーや精神的動揺が生じやすい」と指摘しています。昨年と一昨年の小中高生の月別自殺者数でもその傾向は顕著でした。コロナの影響で夏休みが短縮されたために昨年は8月が、一昨年は例年と同様に9月にピークが来ていました。さらに言えば、コロナ禍の昨年8月は前年の倍近い自殺者数がでていました。

「学校へ行きたくない」は命に関わるSOS

 一方、自殺防止に向けて、その兆候をつかむヒントとなる調査結果も出ています。「厚生労働大臣指定法人 いのち支える自殺対策推進センター」が今年6月に公表した分析結果です。調査によれば、ネット上で「学校 行きたくない」というワードの検索数が増加したあと、子どもの自殺者数が増加したという関連性が判明しました(※注3)。

 この調査結果は、20年間、不登校を取材してきた私にとって、実感に沿う説得力のあるものでした。「学校へ行きたくない」と苦しんでいる子のなかには「死にたい」と思うほど追い詰められる子も多いです。「いじめ自殺」で亡くなった子のなかには、「行きたくない」という気持ちを言葉や態度で示していた子もいました。あらためて「学校へ行きたくない」という訴えは、命に関わるSOSだと感じています。

周囲の対応に関するお願い

 私が代表を務める全国不登校新聞社では「緊急アピール」を8月19日に発表しました。緊急アピールでは子どもを持つ親や教育関係者に向けて、お願いしたいことを3点にまとめました。

①「学校へ行きたくない」という訴えは命に関わるSOSです。

②命を守るために「行きたくない」という訴えを見逃さないでください。

③より多くの命を守るため『TALKの原則』に沿った対応をお願いします。

 「学校へ行きたくない」という訴えは、切実なものであり、周囲の返答次第では子どもを追い詰めてしまいます。勉強も社会性もあとから十分に取り返すことができます。子どもは親や周囲に言えないことで悩んでいる場合もありますので、「行きたくない」という言葉や態度が見えたら、躊躇せずに休ませてください。学校は命を削ってまで通うところではありません。

自殺予防の対応原則「TALKの原則」とは

 子どもが精神的に不安定になったり、学校を行きしぶったりなど、周囲が異変を感じたら「TALKの原則」に沿った対応をお願いします。なお異変を示すサインは多様にありますが、親や教員自身が「どこか、おかしい」と感じたら、その直感もサインです。「TALKの原則」とは、カナダの自殺予防のグループがつくったもので、文部科学省や病院のガイドラインなどでも示されています。

(1)Tell:言葉に出して心配していることを伝える。

(2)Ask:「死にたい」という気持ちについて、率直に尋ねる。

(3)Listen:絶望的な気持ちを傾聴する。

(4)Keep safe:安全を確保する。

(文科省『教師が知っておきたい「子どもの自殺予防」』より)

 「安全確保」とは、緊急時ならば目を離さないこと、いじめが起きている場合は学校へ登校させないことです。いじめなどの暴力を受けていると、恐怖感のあまり不登校を本人が拒む場合もありますが、危険な場所からは本人を遠ざけてください。心身の安全が確保できた段階で、あらためて本人の意思確認を行なったり、精神科など専門家へ相談をしたりといった対応をお願いします。

 精神科医・松本俊彦先生は「TALKの原則」について下記の点がポイントだと語っています。

 「ポイントは2つです。ひとつは『自殺についてはっきりと尋ねる(Ask)』ことは悪いことではない。けっして『崖っぷちにいる人の背中を押す』ことにはならないということ、そして、もうひとつは『相手の訴えに傾聴する(Listen)』は、『バカなこと言わないの』『冗談はやめてよ』と相手の話を遮ったり、『死んではいけない』『死んだら残された人はどうするのだ』などといった正論をぶつけたりしないということです」

いま悩んでいる方へ

 いま悩んでいる方へ伝えたいこともあります。どんな言葉も信じられないかもしれませんが、ひとつ信じていただきたいのは「学校へ行かなくても、その先の人生がある」ということです。私も不登校でしたし、400人以上の不登校の人に取材をしてきましたが、学校よりも自分を大切にしても大丈夫なのです。もしも「行きたくない」と思ったら、どんな理由であるにせよ、心のサインです。学校と距離を取ってみるのも一つの手です。心に思い当たることがあれば、下記まで連絡をしてみてください。きっと助けになってくれるはずです。

◎電話相談/「#いのちSOS」 0120-061-338

◎電話相談/チャイルドライン 0120-99-7777

◎SNS相談/生きづらびっと (https://yorisoi-chat.jp/)

※注1文部科学省「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」配布資料より(2021年6月25日)

注2 2011年、東北地方太平洋沖地震による地震・津波の影響で、福島第一原子力発電所で深刻な原子力事故が発生。事故により東北をはじめとした広範囲に渡る地域で放射能汚染の影響が不安視された。

※注3 PHQ-A尺度とは「成人用のうつ症状の重症度を評価する尺度」(PHQ-9)を改訂してつくった思春期のこどもを対象としたうつ症状の重症度尺度のこと。

※注4「コロナ禍における自殺実態分析報告書(仮題)」(2021年6月13日)

石井志昂

『不登校新聞』編集長、不登校経験者

1982年東京都生まれ。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校。同年、フリースクールへ入会。19歳からは創刊号から関わってきた『不登校新聞』のスタッフ。2006年から『不登校新聞』編集長。これまで、不登校の子どもや若者、親など400名以上に取材を行なってきた。また、女優・樹木希林氏や社会学者・小熊英二氏など幅広いジャンルの識者に不登校をテーマに取材を重ねてきた。編著書に『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』、『学校に行かない君へ』(ポプラ社)など。


敷地内で熊の糞発見。〈閲覧注意〉

近くには山ぶどうが・・・

 


五輪食品ロス「13万食1億1600万円分」だけじゃない!

2021年08月28日 | 自然・農業・環境問題

他にもある理由とは?食品の一部は23区で販売

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

 2021年8月27日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は、2021年7月3日から1ヶ月間に、20会場で、およそ13万食の弁当を廃棄していたことを認めた。20会場で準備していた食料のうち、およそ25%を廃棄したことになる(廃棄率25%)。その後、発注量を改善し、7月30日から8月6日にかけての廃棄率は15%に抑えた。閉会式では約6,000食の発注に対し、廃棄が約200食。パラリンピックの開会式では約6,000食の発注に対し、廃棄約100食だった。高谷正哲スポークスパーソンは「会場によってはほぼ廃棄がない場合もあり、改善傾向にある。完全にゼロにするのは難しいが、引き続き発注量の管理に取り組む」と話した(27日付、共同通信より)。

 8月27日、筆者が記事にコメント(1)したように、8月7日のTBS「報道特集」で大会関係者が20会場分の「13万食、1億1600万円相当」を内部告発してバレてしまったため、致し方なく認めただけだろう。しかも会場は20会場だけでなく、全部で42会場ある。これが「13万食」が全てではない1つめの理由だ。選手村のビュフェの食品ロスは明らかになっていない

 2つめの理由は、選手村のビュフェで発生した食品ロスが一切明らかにされていないことである。

 今回、スタッフやボランティア向けの弁当の食品ロスばかりに注目が集まっているが、もともと税金を使って食品ロス削減の実証実験をし、減らそうとしていたのは、選手村のビュフェの食品ロスだ。

 2012年の英ロンドン五輪では、2443トンの廃棄が出たとされている(2)。当時、1日5回の食事を作っていたケータリング会社が廃棄の様子を動画に撮って内部告発し、その映像が長らくBBC通信社の公式サイトに掲載されていた。

 4年後のリオ五輪では、イタリアの世界的シェフ、マッシモ・ボットゥーラ氏を中心に、余剰食品を困窮者向けに調理して提供し、食品ロスを減らす取り組みが行われた。

 日本では、2018年の女子バレーボール世界選手権と2019年のラグビーワールドカップで、食品ロス削減に効果的な啓発手法の実証実験がなされた。これは、農林水産省の委託を受け、みずほ情報総研株式会社が行ったものだ(2)。

 2020年1月27日、東京都内で農林水産省主催「大規模スポーツイベントに向けた食品ロス削減セミナー」が開催され、実証実験の結果が発表された。概要は、ナッジという行動変容の手法を使ってビュフェの食品ロスを最小限に抑えるというものだ。一般的に、ビュフェでは、欲張って一度に食事を取ろうとし、食べきれないで余ってしまいがちだから、「何度でも取りに来てください」と掲示をすることで、食事の取り過ぎを防ぎ、食品ロスを減らすというものだ。

 今大会では、選手村のビュフェの食品ロスは、はたしてどうだったのか?

実証実験を行った農林水産省に伺ったところ、

オリンピック・パラリンピックの食品ロス削減の取組については、組織委員会において、持続可能性に配慮した運営計画(飲食提供対象者数等の考慮、ポーションコントロール、廃棄物の計量と見える化の実施状況等により評価することを計画)の結果をとりまとめた持続可能性大会後報告書を作成し、年度末に公表予定

とのこと。つまり、2022年3月に公表するそうだ。

 2021年7月に起こったことを、8ヶ月後の2022年3月に公表とは、あまりに遅過ぎやしないか。

このあと、農林水産省から補足で教えていただいたには、

年度末に公表予定と記載したのは食品ロス削減を含むオリンピック・パラリンピックの持続可能性に配慮に関する取組全体についての報告についてであり、五輪の弁当廃棄の件については、報道によれば、8月上旬の組織委員会の会見で、全体でどのくらいの廃棄があったのかについて現在、確認をしている。把握に時間がかかるが、出来れば何らかの形でお知らせしたいとの話がされているようなので、別途報告されるのではないか

だそうだ。

 教えていただいたのが8月24日だったので、「別途報告」は、8月27日に組織委員会が認めた「13万食」だったのだろう。だが、これは42会場分全てではないし、選手村のビュフェの食品ロスも含まれていない。

東京都23区内で加工食品の一部は販売

 3つめの理由。8月19日に、東京都大田区にあるマルヤス大森町店を訪問したところ、五輪で海外から来日する取材陣のためのケータリングの食料品が、値引きして大量に販売されていた。

マルヤス大森町店は東京都大田区の住宅街にある(筆者撮影)
マルヤス大森町店は東京都大田区の住宅街にある(筆者撮影)

 マルヤス大森町店は、賞味期限が迫った食品や賞味期限切れ、箱がつぶれたものなど、いわゆる訳あり品を格安販売している。マルヤス大森町店の松井順子さんによれば、ある企業の方からお申し出があり、海外メディアが帰国して大量に余ってしまい、受け入れて販売してほしいとのことで、販売しているという。お店に許可をいただいて写真撮影させていただいた。

オリンピックでの余剰食品であることを掲示した上で並んでいる調味料類(筆者撮影)
オリンピックでの余剰食品であることを掲示した上で並んでいる調味料類(筆者撮影)

 ケータリングで使う予定だったドレッシング小袋が大量に入ったものや、バルサミコ酢、七味唐辛子、タバスコ、ジャムなど。

クラッカーやマヨネーズ(筆者撮影)
クラッカーやマヨネーズ(筆者撮影)

フィンガーフード(片手で食べられる)としてカナッペを提供する予定だったのか、クラッカーもある。

ドレッシング(筆者撮影)
ドレッシング(筆者撮影)

スープのクルトンの大袋も。

クルトン、クラッカー、マヨネーズ(筆者撮影)
クルトン、クラッカー、マヨネーズ(筆者撮影)

サンドウィッチに使う予定だったのか、ツナフレークの大袋もある。

ツナフレーク大袋(筆者撮影)
ツナフレーク大袋(筆者撮影)

    おおむね5日以内のものに表示される消費期限の弁当と違って、これらはおいしさのめやすである賞味期限が表示される加工食品なので、こうして販売することができている。また、関わった企業の方が、廃棄ではなく、販売を選んだということで、廃棄を免れたわけだ。でも、すべてが救われたわけではなく、この背後には、廃棄されたケータリング食品の存在がある。

 松井さんは、「これから間違いなく入荷してくるのは商品にオリンピック・パラリンピックのマークが入った飲料やお菓子など」だと語る。2019年、ラグビーW杯の後、「がんばれ日本!」と印刷されているお菓子や飲料が大量に入荷してきたそうだ。

五輪マスコット「ミライトワ」と「ソメイティ」(福崎聖子さん提供)
五輪マスコット「ミライトワ」と「ソメイティ」(福崎聖子さん提供)

 筆者もフードバンク(3)で働いていた時に感じたことだが、フードバンクでは季節が遅れてやってくる。バレンタインの後に大量のチョコレートが届き、ハロウィンの後には大量のハロウィン菓子が届き、クリスマス後にはクリスマスブーツの菓子が届く。マルヤスのような訳あり食品の販売店舗やフードバンクでは、並んでいる商品に世相が反映される。

注:上記の写真にある食品は、メーカーが直接マルヤス大森町店へ売ったのではなく、メーカーが販売した相手、つまり商品の所有権を持つ企業が売ったものなので、写真にある食品メーカーへの連絡はお控えいただきたい。

余剰弁当の活用を求め、59,072名の署名を集めた弁護士と経営学者が8月26日、組織委員会に署名を渡した

 コロナ禍で仕事を失い、食事の回数や量を減らす大人や子どもが増える中、弁当を廃棄するなんて!活用すべきだ、と署名運動し、59,072名の署名を集めたのが、みなとこども食堂理事長で弁護士の福崎聖子さんと、経営学者の中川有紀子さんだ。8月26日17:30、東京・晴海トリトンにある組織委員会事務所で受け渡しが行われた。

署名を渡す中川有紀子さん(右)と福崎聖子さん(左)(福崎さん提供)
署名を渡す中川有紀子さん(右)と福崎聖子さん(左)(福崎さん提供)

 福崎さんらは、7月24日に、TBS「報道特集」が4,000食の弁当の無駄をスクープしてから署名運動を開始した。スポンサー企業にも弁当廃棄についての質問を送ったところ、味の素・アサヒビール・明治・キッコーマンからは「遺憾です」という趣旨の回答書が届いたが、コカ・コーラは、電話したところ、折り返しの電話で「うちが回答すべき事項ではない」と答えたそうだ。

 

59,072名の署名(福崎さん提供)
59,072名の署名(福崎さん提供)

 福崎さんらは、8月23日付で以下の質問状を送り、8月27日17:50にメールで回答を得た。以下、質問に対する組織委員会の回答を四角で囲む。

公財)東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 総務局持続可能性部長 A様

 貴職からの、8月13日付メールのご回答、拝受致しております。

 それを受けまして、再度、明日のパラリンピック開会に先立ちまして下記事項についてお尋ね致しますと共に再度の要望及び署名のお渡しを希望致します。

1. 橋本委員長が、記者会見においてオリンピック期間中の食品ロスにつき、検証し何らかの形で公表すると発言されていたが、今後、どのような調査、検証を行い、どのような形での公表を予定されているのか。

 大会期間中の弁当の廃棄数については精査中です。詳細の数字については全体を網羅的にとりまとめる必要があり、改めて公表いたします。

オリンピックとパラリンピックでは競技日程等により発注量が異なるため単純な比較はできませんが、オリンピック期間中の食品ロス削減の取り組みや経験を活かし、パラリンピックが始まってからは会場によっては昼食又は夕食の余剰がほぼ無い日もあるなど、改善傾向にあります。

一方で、必要な方が喫食できなくなることは避けなければならず、余剰をゼロにすることは極めて困難です。

引き続き、可能な限り発注量の精査をしてまいります。

2. 貴職からのご回答によれば、削減に今後も取り組むとのことですが、明日8月24日開会予定のパラリンピックにおいては、各会場における発注量と残数を把握した上で具体的にどのような削減のための行動をとられたのか、その公表予定の有無。

 各会場における食事は、喫食者からの注文等に基づいて発注することが基本ではあるものの、オリンピック期間における実績も分析の上、引き続き発注量の適正化に取り組んでおります。また、注文のあった弁当については、確実に喫食してもらえるよう、各発注元に喫食を促すメールの送付や、喫食時間の延長等により、喫食数の改善を図っています。

上記の対策をしてもなお残るもののうち、消費期限の比較的長いパンについてはフードバンクに提供し、ご活用いただくこととしました。

3. 貴職からのご回答によれば、弁当提供を行わないとの判断の理由は「衛生面」とのことであったが、民間企業の協力により、冷蔵輸送、賞味期限内の配布が可能である以上、衛生面の問題は存在せず余剰の弁当を廃棄する理由はないはずであるが、それでも尚、引き渡しを拒否されるのか。また、そうであれば、その理由は何か。

  2.のとおり発注数の精査及び注文のあった弁当の喫食数の改善を図っています。

しかし、それでもなお残るもののうち、消費期限の比較的長いパンについてはフードバンクに提供し、ご活用いただくこととしました。

パン以外の調理済みの弁当については、チルド商品でかつ消費期限も短いため、配布後喫食までの時間を考慮すれば、外部への持ち出しは衛生上問題があり、提供は想定しておりません。

4.大切な賞味期限内の食べ物を「飼料」や「バイオガス」化することはリサイクルと言えず食品ロス、無駄に他ならない上「勿体ない」という日本の食文化にも反するが、その点は、どのようにお考えか。

 食品ロス対策は、必要な量を精査したうえで提供することや、提供した食料が喫食されるよう推進することなどを通じて、食べられる食品が 無駄にならないように取り組むことと認識しています。組織委員会も、発注数の精査及び喫食数の改善に継続して取り組んでおります。そのうえで、なお余剰が発生するものについて、飼料化及びバイオガス化により有効活用を図っております。

福崎聖子さん(左)と中川有紀子さん(右)(福崎さん提供)
福崎聖子さん(左)と中川有紀子さん(右)(福崎さん提供)

8月3日には、福崎さんと中川さんがTBSラジオ「アシタノカレッジ」に出演し、当時の実情を語った。

3日間で90個のパンをフードバンクに配った

 社会からの批判を受けて、組織委員会は、消費期限が長いパンを、生活困窮者や福祉施設に食材を無償で配布するフードバンクへ提供を始めたことを公表した。8月24日のパラリンピック開会式から26日までに約90個を配布した(27日付共同通信)。

ただ、7月24日に放送されたTBS「報道特集」で捨てられていたパンは、1日30個でおさまる量ではなかった。

2021年7月24日放送TBS「報道特集」より筆者撮影
2021年7月24日放送TBS「報道特集」より筆者撮影

マスメディアの追及を求む

 組織委員会の言い分をただ右から左へ流すだけではマスメディアの役割を果たしているとはいえない。税金の使い道、そして命の結集の廃棄。マスメディアの追及を求める。

追記(2021.8.28 9:57a.m.)

福崎さんから、組織委員会の回答を送っていただいたので追記した。

参考情報

1)2021年8月27日、組織委員会が13万食弁当廃棄を認めた記事に対する筆者コメント

2)ロンドン五輪は2443t廃棄、食品ロスと闘う東京五輪 日本は「責任、安全、真夏」どう対策(Yahoo!ニュース個人、井出留美、2020/2/13)

3)食品ロスと貧困を救う「フードバンク」は資金不足 持続可能なあり方とは(Yahoo!ニュース個人、井出留美、2018/2/28)

五輪弁当大量廃棄関連

五輪ホテル朝食付き 101名中5人しか来ず余儀なく廃棄 / 2019年JOCが送ったメールを入手した(Yahoo!ニュース個人、井出留美、2021/8/3)

五輪の弁当大量廃棄 発注数の変更はあったのか?JOC(日本オリンピック委員会)関係者の情報を入手した(Yahoo!ニュース個人、井出留美、2021/7/27)

五輪で一日数千食の弁当廃棄 組織委員会の答えは?5月には「キャンセルか転用して無駄を出さない」と回答 (Yahoo!ニュース個人、井出留美、2021/7/26)

五輪の食材、食品ロスはないのか?大会組織委員会に聞いた (Yahoo!ニュース個人、井出留美、2021/6/4)

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。Champions12.3メンバー。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てられる食べものたち』他。食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/令和2年食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞


 仕入れが適切であっても「余剰」は生まれるものだろう。だから、そのときにどうするのかという先を見る頭がないのだ。我々の税金を捨てているとは考えないのか、当然と思っているのか?


上野千鶴子 東京五輪閉幕 日本人が莫大な授業料を払って学んだ「負の遺産」

2021年08月27日 | 社会・経済

AERAdot 2021.8.26 

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって1年延期された東京五輪が幕を閉じた。人の交流を避けることが求められた緊急事態宣言の中、多くの反対を押し切って開かれた大会は、五輪のあり方を問う機会となった。社会学者の上野千鶴子さんの視点を紹介する。

*     *  *

 東京五輪は巨大な負の遺産を残して終わりました。

 東京五輪開催の主催者だった5者に対する信頼はことごとく崩れました。IOCの商業主義があからさまになり、JOCの無力さがみえすき、五輪組織委の寄せ集めと無責任体質がはっきりわかり、政府の独善と強引さ、東京都の無策が伝わりました。

 五輪の開催期間中にコロナ感染者は都内で1日あたり5千人超、全国では1万人を超え、死者の累計は1万6千人近くに達しました。東日本大震災の死者数と同じです。これがもし1年半にわたって続く災厄でなく、短期間に起きた災害なら、五輪開催はあったでしょうか。医療現場はすでに「災害医療現場なみ」と言われています。東日本大震災の時と同じように、ありとあらゆる医療資源を現場に動員しなければならない時期だと思います。それなのに、コロナ感染者が自宅療養を強いられる事態に。医療先進国だった日本の医療の脆弱さと政府の無策に開いた口がふさがりませんでした。「医療崩壊の危機」どころではありません、医療崩壊そのもの、コロナ感染が陽性と判定されても何の治療も受けられない「棄民政策」を政府が堂々と口にするとは。国民はもっと怒って当然です。

 スポーツ界やアスリートに対する反感すら生まれたように思います。さかのぼれば森喜朗オリパラ組織委会長辞任に際してのスポーツ界の沈黙は不気味でした。現役アスリートたちが、利権と金にがんじがらめになっていることがわかりました。アスリートは五輪に人生を賭けてひたすらストイックに鍛錬に励んできた人々、彼らを責めるのは筋がちがう、という声は多く聞かれましたが、メダル獲得後に彼らが口にしたのは、五輪開催にこぎつけた主催者とそれをサポートしたひとたちへの感謝だけでした。同じ時期に自宅療養を強いられるコロナ患者や、疲弊した医療者への配慮や同情は聞かれませんでした。人工呼吸器をつけてコロナと闘っている患者や医療者が、アスリートから「勇気と感動を与えたい」と言われても、素直に受けとれるでしょうか。「アスリート・ファースト」とは、アスリートのエゴイズムかとすら思えます。

    五輪開催による政権浮揚策は、失敗に終わりました。五輪閉幕後の菅政権の支持率低下がそれを物語っています。この「翼賛体制」に協力した文化人、芸能人、タレントたちの総括も聞いてみたいものです。参加者全員がマスク着用で登場した開会式と閉会式、五輪史上異様なその映像をドキュメンタリーに制作する役割を背負った映画監督の河瀬直美さんが、この問題だらけの大会をどんなふうに記録するか、興味があります。

 五輪の虚構がこれだけあきらかになった日本が、この先の将来、ふたたび五輪を誘致することは二度とあるまい、と思います。莫大な授業料を払って日本と日本人が学んだのはそういう負の遺産でした。(寄稿)

うえの・ちづこ/1948年、富山県生まれ。社会学者、東京大学名誉教授。専門は女性学・ジェンダー研究。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク理事長。近著に、『在宅ひとり死のススメ』(文春新書)、『情報生産者になる』(ちくま新書)、『おひとりさまの最期』(朝日文庫)。

※週刊朝日  2021年9月3日号


総裁選ですか、こんな時期に、国会も開かず・・・・
スガさん、頑張ってください。
政権交代が見えてきました。

 


雨宮処凛がゆく! 第567回: DaiGo氏の発言とコロナ禍で深刻化する貧困、そしてこれまでの生活保護をめぐるあれこれについて。

2021年08月26日 | 社会・経済

マガジン9 (maga9.jp) 

「失業中で1年くらいまともに食べていない。以前生活保護の相談に行ったが、いろいろ条件をつきつけられて申請しなかった。保険証もなく病院にも行けない。現金がなく食べ物に困っている」(50代男性)

「離婚し保育園で働いている。借金もあるので風俗のアルバイトもしてきたがコロナで収入が減り、やりくりができなくなっている」(40代女性)

「個人タクシー廃業して生活に困窮。8月からの家賃が払えない。抗がん剤治療中」(70代男性)

「昼は会社で夜はスナックでバイトしてダブルワークしてきたが、会社は廃業、バイト先のスナックも一月から休業で収入がゼロに。生活していけないし、娘の高校の費用が払えない」(40代女性)

「仕事がなく、アパートの家賃払えず、電気、ガス、水道停止。50円しかない」

「タクシー運転手だったが、コロナ感染が怖くて今年の第4波から仕事に行けなくなり、収入が夫婦の年金月12万円だけになった。生活保護も以前ダメと言われたので、こうなれば臓器を売って自分葬儀代を出したい。臓器が売れるところを教えてほしい」(70代夫婦)

「80代の妻が4年前から施設。年間130万円の費用がかかる。自分は年間70万円の年金で生活している。カードで借金が160万円ある。妻が6月に手術。お金がかかるので貸付を受けたい。子どもにはこれ以上援助を頼めない」

「時短協力金が4ヶ月経ってもまだ振り込まれない。総合支援資金の再貸付も申し込んだが3週間以上待たされる。生活が成り立たないので本当に闇金に手を出すしかないと思っている。もう心が折れそう」(お好み焼き店自営)

「手持ち現金10万円。3日後に妻の入院費を支払うと手持ち現金が尽きる。自営業だが仕事もなくどうしたらいいのかわからない」

「家賃を滞納し、来月アパートを出ないといけない」(30代男性)

「就職が決まったがコロナ陽性者が出て2週間の休業となった。家賃の支払いであてにしていたが、収入の目処がなくなった。どうしたらよいか。貯金なし」(20代男性)

「大学生。コロナでアルバイトなくなり、親からの仕送りなく公共料金と携帯電話滞納中」(20代男性)

 これらの言葉は、6月12日に開催された「コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守る なんでも電話相談会」に寄せられたものだ。

 午前10時から午後10時まで、全国38会場、93回線を使って開催されたこの電話相談は8回目。昨年4月から私も相談員をつとめている。この日、寄せられた相談は全部で954件。もっとも多いのは生活費の相談で567件。第一回目の昨年4月には、休業手当や持続化給付金などに関する相談が多く、フリーランスや非正規からの電話が目立った。しかし、一年半経ち、相談内容は労働相談から生活苦の相談に変わり、また相談者における無職者の割合が増えている。

 相談の中には、すぐにでも生活保護申請が必要なケースも多い。が、そこまで困窮していても「生活保護だけは嫌」という忌避感を口にする人が少なくない。

「コロナで外国人観光客が減ってガイドのアルバイトがなくなった。生活が苦しい。緊急小口資金、総合支援資金で借り切った。生活保護は受けたくない」(70代男性)

「65歳で体調不良となり、生活困窮。生活保護は絶対に受けたくない」(自営業)

「デパートでの催事の仕事。今年2月からコロナで仕事がない。年金も少なく、手持ち金もわずか。生活保護以外で支援制度はないか」(60代女性)

「家電小売業だがコロナで収益がゼロに。持ち家で月7.5万円の年金収入のみ。税金や借金の滞納もかなりあるが、生活保護は恥なので受けたくない」(80代夫婦)

「自営でカラオケスナックを30年間やってきたが限界。大阪府に協力金を申請したが3ヶ月経ってももらえない。借金もある。生活保護は絶対に嫌だ」(70代女性)

 こんな言葉を、電話相談で、また対面の相談会でこの一年半、何度も聞いてきた。

 若い人だけではない。紹介したように、70代、80代と高齢であっても「それだけは嫌」と強い拒絶の言葉を口にする。

 この電話相談、8月21日には9回目が開催され、私も相談員をつとめたのだが、その前の週、大きく報じられたのが「メンタリストDaiGo氏による生活保護利用者やホームレスへのヘイト発言」だった。

 このことについては前回の原稿でも少し、触れた。そこでも書いたが、問題は、なぜそのような発言をしても許されると思っていたかだ。その問いとともに頭に浮かぶのはやはり、自民党が野党だった2012年春の生活保護バッシングである。

 お笑い芸人の家族の生活保護利用が報じられ、不正受給でもなんでもないのに一部自民党議員がこれを問題視。片山さつき議員は厚労省に調査を求めるなどオオゴトにしていった。そんな中、同議員は生活保護について「恥と思わないことが問題」などと発言。このような報道を受け、制度利用者へのバッシングがあっという間に広がった。

 昨年6月、安倍元首相は国会で、生活保護バッシングをしたのは自民党ではない、などの発言をしたが、誰が見てもバッシングをしていたのは思い切り自民党である。自民党の生活保護プロジェクトチームの世耕弘成氏は12年、雑誌のインタビューで、生活保護利用者に「フルスペックの人権」があることを疑問視するような発言までしている。また、12年9月には、自民党・石原伸晃氏が報道ステーションにて生活保護を「ナマポ」と揶揄する発言をし、社会保障費の抑制などについて述べたあと、「尊厳死協会に入ろうと思うんです」などと述べている。

 そんな生活保護バッシングはメディアにも広がり、テレビ番組の中には「生活保護利用者の監視」を呼びかけるものまであった。当然、生活保護を利用する人々は怯え、外に出られなくなったりうつ病を悪化させていった。命を絶った人もいる。ちなみにバッシングの際、必ず言われる不正受給だが、それは2%ほどである。

 あれから、9年。

 コロナ禍で、このバッシングが今も尾を引き、困窮者を生活保護から遠ざけていることに強い憤りを感じている。

 同時に強調したいのは、このようなバッシングの果てに同年12月、自民党は選挙で勝ち、政権に返り咲いたことだ。その際の選挙公約には、はっきりと「生活保護費の一割削減」が明記されていた。そうして13年から実際に生活保護費の引き下げが始まった。このことに貧困問題に取り組む人々は声を上げ、全国で裁判が始まり、今も続いている。

 この「バッシングからの生活保護基準引き下げ」について、どれほどの人が声を上げただろう? 私の実感で言うと、当事者以外で声をあげる人は圧倒的に少数だった。

 今回、DaiGo氏の発言に、多くの人が怒り、恐怖を感じ、声を上げた。

 だけど私は、彼の発言以前から、貧しい人が踏みにじられることに無関心なこの社会が、ずーっと怖かった。

 特にあれだけの生活保護バッシングを繰り広げたのに自民党が圧勝した12年12月は、「貧乏人は死ね」というメッセージを多くの人から突きつけられたような気持ちだった。生活保護バッシングを「問題ない」とスルーするどころか容認、もしくは積極的に賛成している人たちがこの国に多くいるという恐怖。DaiGo氏は発言を謝罪したが、当時、人の命を奪いかねない発言(実際、自殺者も出ている)をした議員たちは今も議員でい続けている。そして発言を撤回も謝罪もしていない。

 生活保護をめぐっては、12年のバッシング以外にも多くの「非難が集中する」ような出来事があり、ネット上は「祭り」のように盛り上がるものの、それで制度への理解が深まるかと言えばまったくそんな方向にはいかない、という苦い経験もしている。

 まず振り返りたいのは、北九州で相次いだ餓死事件だ。

 07年、北九州で「おにぎり食べたい」とメモを残して52歳男性が餓死。亡くなった男性は生活保護を辞退させられていた。その前年にはやはり北九州で56歳の男性がミイラ化した遺体で発見されている。男性は生活保護の相談に行っていたものの「次男に養ってもらえ」と言われ、電気、ガス、水道が止められ、自力で歩けないほど弱っているのに申請を受け付けてもらえずに餓死した。当時、北九州では生活保護をめぐる自殺も起きていたこともあり、盛大に北九州市へのバッシングが起きた。

 その5年後、今度は札幌で餓死事件が起きる。12年1月、札幌で40代の姉妹が餓死、孤立死しているのが発見されたのだ。姉妹は生活保護の相談に役所を3度も訪れていたが、「若いから働ける」などを理由に追い返されていた。

 同年2月には、埼玉県で60代夫婦と30代の親子3人が餓死しているのを発見される。所持金は数円で冷蔵庫は空。こちらは役所に相談には行っていなかった。

 それ以外にも12年3月には、立川市や足立区などで7件の孤立死が起き、報道されている。本来であれば「もっと生活保護を利用しよう」「役所に相談しよう」という機運になるところだと思うのだが、そんな12年春に起きたのが、散々書いてきた、自民党議員による生活保護バッシングだった。

 それから5年後に起きたのが、「小田原ジャンパー事件」。小田原市の生活保護担当職員が「保護なめんな」などと書かれたジャンパーを着て職務にあたっていたという件だ。当然、役所に抗議が殺到した。ただひとつ、この件で「よかったこと」は、小田原市が批判を真摯に受け止め、その後、生活保護行政を改善していったことである。

 このように、5年周期くらいで生活保護関連で大きな注目が集まることが起きている。が、それは「今はこいつを思う存分叩いていいぞ!」という「祭り」が一瞬盛り上がっただけに見えて仕方ないのは私だけではないだろう。今回はそれで終わらないことを祈っているが、そんな中、現実を少しずつ変えているのは現場の支援者たちの地道な取り組みである。それによって、コロナ禍の今年4月、扶養照会の運用が変わったことは記憶に新しい。

 ここでもう少し過去に遡ると、87年には札幌で3人の子を持つシングルマザーが餓死する事件も起きている。しかも相談に訪れた女性に生活保護申請させず、放置して餓死という最悪の結果を招いたのは12年に姉妹餓死事件が起きた札幌市の白石区。福祉事務所はやはり「まだ若いから働ける」など難癖をつけ女性を追い返していた。女性はそれまで、三つの仕事を掛け持ちしながら三人の子を育てていた。しかし過労で体調を崩し、働けなくなったので申請に行ったのだ。

 結局、女性は最後に相談に行ってから2ヶ月後、骨と皮の状態になった遺体で発見される。

 そんな餓死事件の前に世間を騒がしていたのは「暴力団による生活保護の不正受給事件」で、生活保護バッシングの機運が高まっていた。そんな中でこの事件が起きたのだ。生活保護バッシングは餓死事件のトリガーになりうることを示している一例だと思う。

 ちなみに、今回の件で生活保護などに関心を持った人に伝えたいのは、現在、生活保護は「級地の見直し」によってさらなる引き下げにさらされていることだ。この件もぜひ、関心を持ってほしい。

 さて、最後に書いておきたいのは、DaiGo氏の発言は許されないものであることは当然だが、それでは貧困問題に取り組む以前の私がホームレス問題などにどのような認識だったかと言えば、「怖い」というイメージしかなかったということである。特に90年代前半、北海道から上京して初めて路上にいる人々を時は(ママ)衝撃で、以来、ただただ足早に通り過ぎることしかできなかった。

 それが06年、同世代の生きづらさや自殺の問題を追う中で若年層の貧困問題にぶち当たり、取材していく中で多くの出会いと学びを得た。

 最初の頃は、就職氷河期世代のネットカフェ生活者たちの話を聞いていた。多くが正社員で就職できず、寮付き派遣を転々とする中で住まいを失っていた。そんな人たちの多数が「親に頼れない」事情を抱えていた。虐待や、親も貧困という事情、そして多かったのは養護施設出身者だ。そうした「家族に頼れない」人たちを「家族福祉がない」状態と呼ぶことも知った。同時に、この国では「企業福祉」に守られない人が増えているということも。非正規が増える中、正社員のような福利厚生がない人たちだ。

 一方、ホームレス状態に至るまで、人は五重の排除を受けていることも知った。家族福祉からの排除、企業福祉からの排除、そして教育からの排除、公的福祉からの排除、自分自身からの排除である。この概念は年越し派遣村を開催した湯浅誠氏が唱えていたものだ。

 そのような前提で見てみると、就職氷河期世代のホームレス化と、いわゆる「寄せ場」にいる高齢のホームレスの人たちの問題は構造的に地続きの問題だということが鮮やかに見えてきた。そうして気づいた。これって、高卒でフリーターから物書きになったものの、印税を前借りしながらじゃないと暮らしていけない(当時は常にそうだった)貧乏な書き手である自分の問題じゃん!

 そうして私は、そんな困窮者の人々を支援する「反貧困運動」に参加した。この人たちの近くにいたら、少なくとも野垂れ死にとかしない気がする、という下心からだ。以来、15年間続けているのは100%自分のためである。

 DaiGo氏が今後、どういうことを学んでいくかは未知数だ。だけど、それがちょっとでも「自分ごと」として感じられたら、学びは一気に深くなる気がする。

 今回の件を機に、この国のセーフティネットへの関心が高まり、貧しい人が踏みにじられない社会に1ミリでも近づけばと思っている。

 同時に、生活保護バッシングに加担した政治家の責任も今一度、問われるべきである。


国民の命と生活を守らない「指導者」は即刻やめるべきだ。


大量生産 見直すとき

2021年08月25日 | 自然・農業・環境問題

2021年8月24日「しんぶん赤旗」

 大量生産・消費・廃棄という社会経済が、アパレル産業で環境破壊や人権侵害を深刻化させています。

 日本は国内で供給される衣類の9割を輸入に依存しています。環境省の「ファッションと環境に関する調査」によると、2020年に国内に供給された衣類の量は81・9万トンでした。このうち9割にあたる78・7万トンが事業所や家庭から使用後に手放され、うち51万トン(64・8%)が焼却・埋め立て廃棄されています。

 日本に供給される衣類は、原材料調達から廃棄までに推計9500万トンの二酸化炭素(CO2)を排出します。これは、19年度に国内の全自家用車から排出されたCO2(9458万トン)に匹敵します。また、綿などの原材料生産や染色に必要な水の量は、1着あたり年間約2300リットルです。最大80%の排水が適切に処理されず環境へ放出されているとされます。

 アパレル企業は、利益を最大化するため、在庫不足による売上減(機会ロス)を防ごうと、生産国へ低コスト化と大量生産を押し付けてきました。流行にあわせて安価な商品を大量に供給する企業の商慣行は、消費者に衣服の頻繁な買い替えと廃棄を促します。

 生産を担う途上国の労働者が、生活に事欠く超低賃金と、1日10時間以上の過重労働にあえぎながら作った商品は、多くが過剰在庫として積み上がり、焼却施設へ向かいます。

 縫製労働者と環境に負荷を押し付けてきた責任は、発注元である多国籍アパレル企業にあります。世界的な人権意識の高まりに加え、豪雨や熱波といった気候危機への対処が喫緊に求められる今こそ、こうした社会経済を見直すときです。

(小村優)


ブルーインパルスを見上げているときじゃぁないはずです。

今日はほぼ一日雨。雨の日は作物に触らないようにしていますのでハウス内の草取りです。汗をかいてしまったのでお昼で帰ってきました。

ボケましたが・・・


中田翔、暴行事件おかしくないか?

2021年08月23日 | 事件

中田翔は暴行みそぎ9日間で“コネ移籍”…巨人また「優勝のためなら何でもアリ」で若手スポイル

日刊ゲンダイ 2021/08/21

日本ハムは問題児放出、巨人はチーム強化

 それは、一本の電話から始まった。

 20日に両球団から電撃発表された日本ハム・中田翔(32)の巨人移籍。無期限の出場停止処分を受けるに至った後輩選手への暴行問題は「無償トレード」という思わぬ形で幕引きが図られることになったが、そのウルトラCの発端は16日の夜だったという。

「日本ハムの栗山監督から巨人の原監督に電話があった。中田が後輩選手に手を上げたのが今月4日。調査を終えた日本ハムが無期限の一軍、二軍全試合出場停止処分を発表したのが11日のことです。それを受け、栗山監督が初めて中田の暴行問題に言及したのが16日でした。栗山監督は報道陣に、『正直、このチーム(で復帰すること)は難しい』と語り、かといって『(他球団に獲得を)お願いします、というものでもない』と続けた。スポーツ紙は<中田 放出>と書き立てたが、裏ではその日の夜に人生の師と慕う原監督に直電し、中田の獲得をお願いしたわけです」(球界関係者)

 原監督はすぐに巨人首脳に相談。球団幹部にも「ひとりのプレーヤーとしてこのまま殺しちゃダメだ。痛みを共有して、もう一度生かすんだ」と力説し、中田の獲得を進言したという。事前にチームの主将である坂本勇人(32)にも事情を説明したうえで、フォローを頼むなど“根回し”も済ませていたというから、手回しがいい。栗山監督と原監督のホットラインがあってのコネ入団みたいなものだ。

「栗山監督の『翔にはなんとか野球を続けさせたい』という親心と、それに応えて『才能ある野球人にもう一度チャンスを与えるべき』と復帰の道を用意した原監督の男気という美談になっていますが、日本ハムが問題児を厄介払いし、巨人には現実的な思惑があったのは事実でしょう。強打の一塁手として年俸3億円超で獲得したメジャー通算196本塁打のスモークが家族の問題で6月中旬に退団。首位の阪神を逆転してリーグ3連覇を果たすうえで、打線強化が絶対に必要というのが球団と原監督の共通認識だった。五輪期間中に外野と一塁を守るハイネマン(28)を緊急補強したものの、メジャーでの実績は皆無に等しく(通算68試合で打率.172、5本塁打、17打点)、当たればめっけものという程度の期待。腐っても元日本代表4番の中田が一塁に入れば、ウィーラーの左翼起用で一気に打線の厚みが増す。無償トレードで阪神追い上げ態勢が整うのだから、これ以上の補強はありません。中田獲得による批判は織り込み済みで、チーム強化を優先したのです」(前出の球界関係者)

 優勝するためならなんでもあり、という巨人の考え方を象徴する獲得でもあるというわけだ。

謝罪会見と入団会見を一緒くた「スジが違う」

 今回の中田の巨人入りを巡っては、ファンの間でも賛否が渦巻いている。ネット上では「更生するなら厳しい巨人以外にない」「現状12球団の監督を見た時に中田の手綱を握れるのは確かに原監督くらいしかいないと思う」という好意的なコメントがある一方で、「簡単に手を差し伸べるのも本人のためにならない。もう少しお灸を据えてからでもよかったんじゃ……」「仮にも無期限謹慎になっているのに移籍したから試合に出れるのは違うんじゃないか」といった巨人と日本ハムのやり方に否定的な意見も多い。

 名球会会員の評論家・山崎裕之氏は開口一番、「決まるのが早かったねえ」と驚いたうえで、こう続けた。

「あとは本人次第。反省して取り組むかどうか。次はもう難しくなるわけだから、打撃はもとよりメンタル面においても、すぐにカッとなるんじゃなく、しっかりと『間』を取って柔軟にやらないと。ただ、巨人への入団会見と謝罪会見を一緒くたにしてやったのはスジが違うというか、順序が違う。中田は日本ハムのチームメートに謝罪することなく移籍せざるを得なかったと聞いたし、日本ハムもメールで本人の謝罪コメントを出してはいるが、日本ハムの選手として会見を開き、しかるべき場できちんと謝ってから巨人へ行くべきだった。今回の一件を見てもわかるように、中田がきちんと善悪の判断ができないというなら、中田のためにも、トレードをお膳立てした日本ハムと巨人がしっかりと段取りをつくってやるべきだったと思いますね」

■たった9日間で無期限出場停止処分を解除

 野球ファンの吉川潮氏(作家)は、「中田が反省しているのはわからなくはないし、巨人がセカンドチャンスを与えるのは結構ですが……」と、こう話す。

「後輩への暴行事件はもちろん、これまでの素行が問題視されたからこそ、日本ハムは無期限出場停止処分を下し、放出を決めた。それを巨人へ移籍するからといって、たった9日間で解除するほど軽いものなのか。本当に中田を救済、再生するなら、中田自身が心身を見つめ直したり、鍛え直したりする時間が必要でしょう。今季中は出場停止であってしかるべきだし、きちんとみそぎの期間を設けたうえで巨人に入るというならまだわかる。中田の暴行事件や後輩イジリは学校だったらイジメと同じ。反省する時間がロクにないまま『許す』ことは、子供への教育的にもよろしくない。巨人も巨人で、救済という大義名分を掲げ、獲得理由も『涙ながらに反省している』と取ってつけたような美談ばかり。『日本ハムは厄介払いをしたかった』『巨人は補強をしたかった』という下心が透けて見えます。このトレードがまかり通るというなら何でもアリになってしまう。巨人は近年、沢村など問題児を放出してきたわけだし、巨人の選手も複雑ではないか」

 暴力という蛮行を抜きにしても、中田の加入で巨人の中堅、若手はチャンスを失い、成長の芽を摘まれる。原監督は21日からの一軍昇格について、「なんの障害もない」と起用する気満々だ。巨人にとっても中田にとっても決して美談で片づけられない問題をはらんでいる。


 わたしは時間がもったいなくて野球中継は見ない。でも、日ハムが北海道に来た頃の活躍は印象の残っており、道民全体が日ハムを応援する姿を微笑ましく感じたものだ。こんなことをしていたら道民からも見放されてしまうだろう。
 更に驚いたのは長嶋終身名誉監督が激励に訪れ、固い握手を交わしている写真を見たときだ。

 

■寄付行為に長嶋終身名誉監督の激励

 「巨人入りすると、新型コロナウイルス治療の最前線に立つ医療従事者へ300万円を寄付。この日の試合前には長嶋茂雄終身名誉監督から激励される一幕もあった。中田に一発が飛び出すと、長嶋終身名誉監督はネット裏のガラスをたたいて喜んだ。」
日刊ゲンダイより。

「忘れられない一日」と、中田本人(c)日刊ゲンダイ

不要不急のブルーインパルスは中止を!!!


小池知事は児童のパラ観戦をゴリ押し コロナ感染「子どもがスプレッダーの恐れ」とカナダが警鐘

2021年08月22日 | 健康・病気

「日刊ゲンダイダイジェスト」2021/08/21 

「全国一斉の休校要請は考えていない」――。20日の閣議後会見で、萩生田文科相はこう断言した。夏休み明けの授業再開に不安を覚える親もいる中、24日開幕の東京パラリンピックの学校連携観戦に最大14万人の児童生徒が動員される可能性も浮上。10代未満は他者を感染させるリスクが高いとの海外研究が出ているのに大丈夫なのか。

 ◇  ◇  ◇

 20日の全国の新規感染者数は2万5876人で3日連続の最多更新、15府県でも過去最多を更新した。経験したことがない規模の第5波のピークアウトがいつになるのか、まったく見通せない状況だ。

 感染爆発に伴い子供の感染者も急増している。厚労省によると、8月5~11日は10代未満が5422人、10代が1万826人。それが、17日までの1週間で10代未満が7441人、10代が1万4734人。東京では1日当たりの新規感染者に占める10代以下の割合が12%(7月)から14%(8月)へと膨らんでいる。

 海の向こうの米国でも感染して入院した子供の数が過去最多の1900人に上った。国内外で子供の感染・入院リスクが問題となっているのに、「(感染者が出た場合は)学級や学年、学校単位で閉鎖することを想定しないといけない」(萩生田文科相)。これじゃ自治体に丸投げだ。

 小池都知事に至ってはパラリンピックの学校観戦に都教育委員会メンバーの大半が反対したにもかかわらず、「より安心・安全な形でできるように準備を進めていく」とゴリ押し。きのうの定例会見で「デルタ株は、もう皆さんのすぐ隣にいるという意識を持っていただきたい」と危機感をあおる一方、学校観戦は強行では支離滅裂だ。

拡大する年少者は10代と比べ1.4倍の感染力が

 子供を巡っては「感染する」リスクが高まっているだけでなく、「感染させる」リスクも高いとの研究結果が出てきた。年少であるほどスーパースプレッダーになる恐れがある、というものだ。

 カナダのPHO(オンタリオ州保健機関)が昨年6月から12月末までに確認された感染事例を基に、子供による家庭内感染を調査(6280世帯対象)。家庭内で最初に感染が発覚した子供を0~3歳、4~8歳、9~13歳、14~17歳の4グループに分け、他の同居人に感染させるリスクを比べた。

 PHOの研究チームが米医師会雑誌で発表した論文(16日付)によると、14~17歳が家庭内の誰かに感染させる確率を基準とした場合、0~3歳が1.43倍、4~8歳が1.40倍、9~13歳が1.13倍だったという。

 論文は〈年齢の低い子供の方が、年長の子供よりも誰かに感染させる可能性がある〉と指摘。〈小児の年齢ごとの感染力の違いは、家庭内や学校、保育現場の感染予防管理に影響する〉と結論付けた。

 医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏がこう言う。

「あくまでも統計的な調査なので、実際のリスク評価には更なる研究が待たれます。小児の感染を防ぐためにも、やはりワクチン接種が要でしょう。米国では9月末までに、5~11歳に対するファイザー製の治験結果が出るといいます。生後6カ月~5歳のデータもすぐに集まるはず。日本は小児のワクチン接種に関する議論が進んでおらず、冬場の大流行にも無防備のままです」

 子供の安全・安心の確保に向き合わない国や都に、親の不安は増すばかりだ。


 これはまずいでしょ!感染しても入院できる保証・治療される保証はない。少しでも可能性の低いように対処するのが基本です。菅や小池に「命」を託してはいけない!

ブルーインパルスはやめよ!!!

頑張っていました。


コロナ禍で職を失った20代女性のSOSは役所で門前払いに、「これで死ぬ理由ができた…」

2021年08月21日 | 生活

DaiGoに伝えたいコロナ禍の貧困現場 

文春オンライン 2021.8.19藤田 和恵

 

 YouTubeで生活保護利用者やホームレスへの差別を発信したインフルエンサーのDaiGo。批判を受けて、「自分の無知が原因」と反省の弁を述べるに至った彼が知るべき現実とは何なのか。

普通の暮らしが突然どん底へ落ちる

――藤田さんは貧困の取材を長く続けていますが、コロナ禍とそれ以前とでは違いはありますか?

藤田 炊き出しなどの現場では、以前は中高年の男性が中心だったのに対し、コロナ禍では若者や女性、外国人など、年齢や性別、国籍を問わないようになったと感じます。身なりもいわゆる路上生活者には見えない人も増えました。つまり、それまでかろうじて仕事も住まいも持っていた人々が、いきなり明日食べるものにも困るという状態にまで突き落とされているということです。何日も街を放浪し、SOSを受けて駆け付けたときには、「まさか自分がホームレスになるなんて……」とショックを受けている人も少なくありません。

 同行取材では、20代、30代の若者に出会う機会も多いです。生活保護を利用する条件として劣悪な無料低額宿泊所(無低)に放り込まれ、「収容所のようなところに入れられているので助けてほしい」とSOSを発信してきた20代の男性のもとに駆けつけたり、ワンルームマンションの1部屋に8人が詰め込まれた“脱法ドミトリー”で暮らす30代の女性の夜逃げを手伝ったり、取材を始めるなり、さまざまな現場に遭遇しました。

――コロナ禍の当初は「コロナで死ぬか、経済で死ぬか」という議論がありましたが、それも次第に聞かなくなり、感染者数やここ最近はオリンピックの話題ばかりでした。まるで、経済で死んでいる人はいないと錯覚してしまうほど。

藤田 実際には住宅支援や不安定雇用など、これまで放置されてきた問題のツケがコロナ禍で噴出しています。水面下では確実に社会の底が抜けているんです。ただ、悲しいことに、こうした問題が政治やメディアで大きく取り上げられることはありません。

 視聴者のウケばかりを狙い、専門家でもないコメンテーターやタレントに“逆張り”的なコメントを求め、目先の数字ばかりを追い求める――そうした一部のメディアの姿勢も、DaiGoさんのような“無知”を生み出す、ひとつの要因になってきたのではないでしょうか。

 かつて人気お笑い芸人の母親が生活保護を利用していることが分かったことをきっかけに、すさまじい生活保護バッシングが巻き起こりました。当時、一部の政治家やメディアも世の中に不正受給が蔓延しているかのような誤った発言、発信を垂れ流しました。実際は不正受給の総額は生活保護費全体の0.4%に過ぎないのですが。しかし、そうした事実は黙殺され、代わりに社会全体にスティグマと自己責任論が植え付けられました。

頑張っているか頑張っていないかは他者が決めることでない

――その負の遺産が、コロナ禍で追い詰められた人々をますます苦しめているという構造がある。ただ、当時と比較して今回のDaiGoの発言にこれだけ批判が集まっていることには、驚きもあります。

藤田 社会全体が差別発言は許さないという姿勢を示しつつあることはよかったと思います。一方で、多くの人にとって生活困窮に陥ることや生活保護を利用することが、「もはや対岸の火事ではない。明日は我が身だ」と潜在的に身につまされるようになったことが、今回の批判につながったのではないかとも感じます。たとえば同様のヘイトスピーチでも、化粧品大手DHCの会長による在日韓国・朝鮮人に対する差別発言の場合、もちろん批判はありましたが、多くの国民にとって当事者性が希薄だったためか、今回ほど大きな流れにはなりませんでした。

――そう考えると複雑です。

藤田 また、DaiGoさんの一件に関して、ひとつ気がかりなことがありました。それは謝罪動画の中でも「頑張っても抜け出せない人がいる」という旨の発言をしていたことです。コロナ禍の取材で私は、「ぎりぎりまで頑張ってしまう人」にたびたび出会いました。“コロナ切り”に遭った後も体調不良を押してネカフェ生活と就職活動を続けた結果、SOSで駆け付けたときには乳がんで即入院が必要な女性もいました。

 頑張っているか、頑張っていないか。それはDaiGoさんのような他者が決めることではありません。「頑張っているから助けてあげる」「頑張っていないから自己責任」、そんなことを自分で勝手に判断できると思っているのだとしたら、やはり傲慢と言わざるをえませんし、「頑張っていないなら価値はない」という最初の発言とほとんど変わらない思考です。

 DaiGoさん個人の考え方もさることながら、こうした浅薄な自己責任論や傲慢さが支持される社会は、大いに警戒すべきだと思います。

 

 藤田氏が取材してきたコロナ禍の現実は、私たちの耳になかなか届かない。「このままでは『助けてほしい』という声さえ奪われてしまう」と藤田氏は語る。最後にそんな危うい現実を、著書『ハザードランプを探して 黙殺されるコロナ禍の闇を追う』から再び抜粋する。この国で今、何が起こっているかを、私たちは“知る”べきだろう。

「これで死ぬ理由ができた」

「これで死ねると思ったのに……。ほんとに来ちゃったんだ」

 駆け付け支援で現れた瀬戸さんを初めて見たとき、井上未可子さん(仮名・20代)は、そう思ったという。

 2020年の11月中旬。

 飲まず食わずの路上生活が3日続いていた。今晩はこの冬一番の冷え込みになると、街角の大型ビジョンのニュースが報じていた。でも、「全財産」が入っているキャリーケースの中にあるのは夏服だけ。寒さがこたえる。

 この日、料金未払いで携帯の通話機能が止まった。所持金は現金1円とPayPay505円だけ。夕方、東京都の相談窓口「TOKYOチャレンジネット」にフリーWi-Fiを使ってメールで相談した。結果は「電話で連絡をいただけない方はお受けできません」という門前払いだった。

 八方ふさがりの状況で井上さんはこう思ったという。

「これで死ぬ理由ができた」

 妙にすっきりした気持ちになりながらも、最後の最後、ダメ元だと思ってネットで偶然見つけた新型コロナ災害緊急アクションの相談フォームにSOSのメールを送った。すると、井上さんの予想を裏切り、ほどなくして返信があった。返信には待ち合わせの時間と場所などとともに「反貧困ネットワークの瀬戸大作事務局長が車でうかがいます」と書かれている。そして1時間後。約束した東京駅近くの八重洲ブックセンターの前に、ハザードランプを付けた車が止まっているのを見つけた。

 しかし、心身ともに限界だった井上さんの緊張は簡単には緩まなかった。

「車に乗っていいのかな……。運転席の男の人が瀬戸さんっていう人? 大柄で怖そう……。私、終わったな……。きっとこれから、どこか知らないところに連れていかれるんだ。でも、それならそれでいいや。もうどうでもいい……」

 井上さんに心の中で「怖そうな男の人」と思われていたことなど知るよしもない瀬戸さんはこの夜、駆け付け支援の予定が立て続けに入っていた。井上さんに後部座席に乗るように言い、簡単な自己紹介をすると、新たなSOS発信者たちのもとに向かって慌ただしく車を発進させた。その後の相談者は全員男性。瀬戸さんは彼らを1人ずつ助手席に招き入れると、ペンとノートを手に、訴えに耳を傾けていく。必要に応じて食費などを手渡し、「ちゃんと食べてくださいよ」「これからつながっていこう!」などと声をかけては送り出していった。

 瀬戸さんは普段、複数の相談者を同時に車に乗せることはしない。車内で交わされる会話は、極めてプライベートな内容だからだ。このとき井上さんを車に乗せたままにしたのは、薄着の彼女を冷え込みが厳しい屋外で待たせることを躊躇したのだろう。

 ただ、瀬戸さんが真剣に聞き取りにあたる様子を後部座席から見ることで、井上さんはようやく新型コロナ災害緊急アクションが「怪しい団体ではないらしい」と思えたという。気がつくと、井上さんの両目から涙が溢れていた。

「夜、公園で眠る勇気はとてもありませんでした」

 井上さんは都内の私大を卒業後、希望していたテレビ番組制作会社に就職した。労働環境が劣悪な業界であることは覚悟していた。一方で、井上さんは家族関係に問題を抱えていた。多くは語らないが、実家を出て一人暮らしになってからも父親に自宅まで押しかけられ、身体的な暴力を振るわれることもあったらしい。毎日のように終電まで働き、ときに何日も職場に泊まり込むことさえ珍しくない仕事をこなし、その上、家族からのストレスまでは受け止め切れなかった。結局、メンタルに不調をきたし、数年で退職を余儀なくされる。

 小さな番組制作会社の給料では貯金をする余裕もなく、ほどなくして1人暮らしをしていたアパートの家賃を払えなくなり、強制退去になった。以後、マンスリーマンションや相部屋のゲストハウス、ネットカフェなどを転々とする暮らしが続く。派遣会社に登録し、検品やピッキング、「日雇い派遣」の仕事をした。しかし、メンタルの波が大きく、仕事を長く続けることができずに収入は安定しなかった。

「派遣以外の仕事も探しました。でも、住所不定がネックになって……。かといって、アパートを借りようにも、派遣の給料では初期費用を用意することができないんです。コロナの感染拡大が本格化してからは、派遣先も少なくなりました」

 2020年の夏以降は、コロナ切りに遭って仕事を失ったアルバイトや契約社員といった非正規労働者が派遣会社の募集に殺到していた。ただでさえ体調が不安定な井上さんに、仕事は次第に回ってこなくなった。

「この頃はもう、お金があるときはネカフェ、ないときは路上という生活になっていました」

 女性の路上生活は、男性に比べて危険に晒されるリスクが高い。生理になったときの負担も大きい。井上さんは「夜、公園で眠る勇気はとてもありませんでした。生理痛が重いほうなのですが、痛み止めを買う余裕がなかったことがつらかったです」と振り返る。

止まらぬ涙の理由

 路上生活になると、井上さんは昼間は公園のベンチや河川敷で仮眠を取り、夜はキャリーケースを引いてひたすら街を歩き回った。寒空の下、薄手の夏服で歩く自分が、どんどん周囲から「普通」に見られなくなっていくようで恐ろしかったという。そんな日々が続く中、「このまま終わっていくんだな」と、次第に死を意識するようになっていく。

「瀬戸さんと会う前の3日間は寒すぎて、昼間ベンチや河川敷に座っていることもできなくて……。昼、夜関係なく1日中、上野、東京、浅草のあたりを歩き回っていました。スニーカーの底に穴が開いて、足が痛くてちゃんと歩けなくなってきて……。(東京都の)TOKYOチャレンジネットから断られたとき、あー、これで絶好の自殺の理由ができたなと思ったんです」

 瀬戸さんを初めて見たとき「ほんとに来ちゃったんだ」と思ったのは、安堵からではない。せっかく死ぬ決意をしたのに、これで死ねなくなってしまったという、どちらかというと戸惑いに近い気持ちだったという。

 相談者を励ます瀬戸さんの姿を見て涙がこぼれたのも、ホッとしたからではない。

「自分が情けなかったんです。いい大人が自立もできない、働けないなんて。ほかの人に普通にできてることが私にはできないと思うと……自分がみじめすぎて涙が止まらなかったんです」

 この日、すべてのSOS対応が終わった瀬戸さんは、井上さんを予約したビジネスホテルまで車で送った。井上さんが埼玉県出身と知った瀬戸さんは、車中でずっと映画「翔んで埼玉」の話をし、映画のテーマ曲を流したという。それでも、井上さんの涙が止まることはなかった。

◆ ◆ ◆(本の紹介です)

「ハザードランプを探して 黙殺されるコロナ禍の闇を追う」(扶桑社)

TOKYOFMで先行ラジオドラマ化。感染者数、ワクチン接種率……コロナ禍が社会に及ぼしている影響は、決して単純な数字だけで表せるものではない。 政治やメディアが連日、数字に一喜一憂する陰で、この国に一体何が起こっているのか? 著者は2020年秋から、「新型コロナ災害緊急アクション」の活動に密着取材。黙殺され続けるコロナ禍の社会の実像に迫る切実なるルポルタージュ。 これは誰しものすぐ隣にある現実――。


 こんな現実がある。そしてコロナにかかった妊婦が自宅待機させられている現実もある。

その一方で「上級国民」は

「リテラ」2021.08.20

驚きのニュースが飛び込んできた。杉田和博官房副長官が入院したことが発表された。発熱を繰り返し、PCR検査では陰性だったが、大事をとって検査入院したという。〈略〉

 冒頭でも書いたように、杉田官房副長官は1週間ほど前から発熱を繰り返していたものの、PCR検査は陰性で、19日まで通常通り、首相官邸で公務を行っていた。ところが、その19日に「大事をとって検査入院」した。

 この事実を伝えるネットニュースのコメント欄に、こんな声があふれているのだ。

〈大事を取って検査入院だと?生き死にでも入院出来ない一般市民が溢れるほどいるのに
なにコロナでもなく発熱しただけで入院できてるんだ おかしいだろ〉
上級国民であればコロナの疑いあっても、検査入院という名目での入院もすぐにできるということか。〉
〈へぇ〜〜。検査のためだけで入院できるんだ。多くの国民が検査すら受けられず、救急車で何時間も受け入れ先を探しても無くて、自宅療養になるのに。
そういえば、横入り入院した議員もいたなぁ。オリンピック前にワクチン接種を優先しろと言った閣僚もいた。その後、そいつはパーティーやってたなぁ。
国民は国会議員や官僚の奴隷とでも思っているんだろう。ふざけんな!〉
〈コロナで苦しんで自宅で亡くなる国民がいる中で検査だけで入院?副長官だか何だか知らないけど一般国民と平等に自宅で待機させるのが当然では?〉
〈重症者が優先的に入院なのに、どうして杉田を入院させるのだ、自宅療養で検査すればいいのに、決まっているでしょう。自分達さえ良ければ、いい政権は、終わらせましょう。〉
〈権力者にとっては医療崩壊なんて関係ない。官邸が現場の危機感を理解できないのも当事者意識が低いのもこうした特権に守られてるからに他ならない。〉
〈どんな方法を使えば即入院が可能か、その、ノウハウを公表していただければ、国民共有の財産とさせていただきます。よろしく。〉
〈この医療状況での優先入院。国民が納得いく説明を求めます。メディアにもその責務があると思う。しっかりと真相を取材してください!国民をバカにするのもいい加減にして欲しい!〉
〈これは信じられない。コロナの中等症でもなかなか入院先が見つからない中、発熱だけのコロナ疑いで入院するとは。受け入れた病院も病院で公平な医療を行なっていませんね。〉

 もちろん杉田副長官は80歳という高齢であり、重大な病気である可能性もある。しかし、一方で、国民は発熱どころか呼吸が苦しくなっても、入院できず、救急搬送を拒否されているのだ。〈略〉

実際、妊婦が入院できず赤ちゃんが死亡していた問題と比較して、杉田官房副長官の検査入院を批判する声も殺到している。

〈このニュース(杉田官房副長官の検査入院のニュースのこと)の下の関連ニュースに、コロナになった妊婦さんが入院できず自宅で早産し、新生児が亡くなったニュースが出てきてつらい。これが、日本という国なんだな。悲しい。〉
〈妊婦だからということで入院がしやすくなることはなく、政治家のじじぃだから入院しやすくなることはあるんだ、命は平等、だけど前者の命の方が重要だと思う。〉
〈妊婦の人でもなかなか入院できないのに、入院できるんですね。どういう基準で入院できるのかはっきりさせて欲しい。〉
〈赤ちゃんが亡くなった妊婦さんは入院出来ずにいたのに爺の杉田はすぐに検査入院出来るんだね!こんなのありか〉

 政権応援団や冷笑系の中立厨はこうした批判を「感情的すぎる」「相手が政権幹部でも入院したことを攻撃するべきでない」などと言うかもしれない。

 しかし、こうした批判を生み出しているのは、国民の命や健康を守る検査や水際対策、医療体制を築こうともせずに、オリンピックを強行して感染を広げ、さらにパラリンピックを強行しようとしている菅政権の無責任姿勢なのだ。〈略〉

命の選択が始まった。

 


雨宮処凛がゆく! 第566回:「幸せそうな女性」を狙った卑劣な事件。

2021年08月20日 | 社会・経済

マガジン9 2021年8月18日

 

 「幸せな女性や一緒にいる男性を殺したいと思っていた」

 8月6日、恐ろしい事件が起きた。

 東京を走る小田急線の車内で36歳の派遣会社員の男が乗客を襲ったのだ。刺された20代の女子大学生が重傷、20〜50代の男女9人も怪我をした。容疑者は床にサラダ油をまいて火をつけようともしていたという。逮捕後は容疑を認め、「人が油断して逃げ場がなく、大量に人を殺せるから電車を選んだ」「人を殺せなくて悔しい」「逃げ惑う姿を見て満足」などと話しているそうだ。

 以前から電車での大量殺人を思い描いていたといい、「電車で近くに座った華やかな女性を狙い、その後は大量に人を殺そうと考えた」とも話しているという。

 真っ先に思い出したのは2016年5月、韓国で起きた事件だ。ソウル江南駅近くのカラオケ店が入った建物のトイレで20代の女性が30代の男に殺されたのだ。被害者と加害者はまったく面識がなく、捕まった犯人は「女性たちから無視されるから犯行に及んだ」と供述。犯人は男女共用のトイレで一時間以上身を隠し、殺害対象を待ち構えていた。そうして6人の男性のあとに入ってきた女性が命を奪われたのだ。

 今回逮捕された容疑者も、「大学のサークル活動の時に女性から見下された」「出会い系でデート代を多く払わされたりした。幸せそうな勝ち組の女性を見ると殺したくなる」など、女性への身勝手な恨みを口にしている。一方、数ヶ月前から生活保護を受けていたことも報道されている。コロナ禍で困窮したのだろうか。「俺はなんて不幸な人生なんだと思っていた」とも話しているそうだ。

 誰もが日常的に利用する電車内で起きた事件。戦慄しながらも、どこかでこのような事件に対して「また起きてしまった」と思っている自分もいる。この十数年、自殺願望といっしょくたになった、誰かを道連れにするような事件を何度も目にしてきた。実際、事件に使った包丁について容疑者は「数年前に自殺するために買った」と言っている。

 しかし、これまでと違うのは、刺す相手は「誰でもよかった」のではなく、「幸せそうな女性」でなくてはならなかったということだ。現場では男性も刺されているが、最初に刺された女性は胸を刺されたのち、逃げたところを執拗に追われて背中も刺され、計7カ所を刺されて重傷となっている。女性を襲ったあとについては「興奮して覚えていない」と容疑者は語っている。

 ロスジェネの一人であり、派遣会社員という容疑者が抱えていただろう剥奪感を、私は想像することしかできない。また、どれほどその剥奪感が大きかったとしても、事件を起こす理由には当然ならないし彼のしたことは絶対に許されない。

 その上で思い出すのは、人生がもっともうまくいかず、自殺願望の塊でリストカットばかりしていた自らのフリーター時代のことだ。

 当時の私は、どこかで「幸せそうな人たちなんかみんな死んでしまえ」と思っていた。いつも漠然と世の中を恨み、自分を呪っていた。では、なぜ彼のような事件を起こさずに済んだかといえば、同じ思いの人たちと、世の中への呪詛の言葉を吐く場があったからだ。

 当時はネットもない時代。一人で悶々としていた私は、このままでは自殺するか何かしでかしてしまう気がして、SOSを発信するような気持ちで自殺未遂イベントを主催した。自殺未遂者しか参加できないイベントだ。確か19歳。生まれて初めて自分が開催したイベントだった。無名のフリーターでしかない私が主催したイベントに誰も来てくれなかったら死のうと思っていた。

 しかし、当日。数人の自殺未遂者が来てくれて、初対面の私たちは「死にたい理由」「世の中がクソすぎて生きづらい理由」なんかについて、息継ぎするのも惜しいほどの勢いで語りまくった。溺れているところに浮き輪が投げ込まれたような、やっと息をつけたような、そんな気分だった。

 当時は90年代後半。昨今、小山田圭吾氏のいじめ問題などで批判を受けている90年代鬼畜系サブカルだが、私も、そして自殺未遂イベントに来てくれた人たちも、久しくそんな世界にどっぷりと浸かっていた(ちなみに小山田氏の属する渋谷系は敵視するスタンス)。鬼畜系にハマる私たちは「幸せそうな」人々を勝手に敵視していて、世を呪う言葉を存分に交わすことができた。そうやって発散することで、自分という犯罪者予備軍を犯罪者にせず社会に軟着陸させているような感覚は確実にあった。

 当時、なぜあれほど鬼畜系カルチャーにハマっていたのかと言えば、「表」の健全できれいな社会には、自分の居場所なんてないと感じていたからだった。実際、当時の私は使い捨て労働力としてしか必要とされていなくて、そこからさえ「使えないからいらない」とよく放り出されていた。あの時期、ある意味で私は鬼畜系カルチャーに命を救われていた。

 そんなふうに自分の醜さを存分に出せる場は、ある時期まで結構あった。例えば2000年代には都内では生きづらさ系のイベントが多く開催されており、その中で自身の殺人願望を大っぴらに語る人たちもいた。男女問わずだ。だけどいつからか、生きづらさ系の集まりの一部はどんどん「死」に向かっていくようになって、それがネット心中に行き着くこともあった。ネットがない時代、自殺未遂イベントで友人を得た私は、数年遅ければネットで一緒に死ぬ相手を見つけていたかもしれないと今でも思う。

 そうして、現在。

 座間で9人の男女が殺される事件が起きて以来、SNSで「死にたい」と弱音を吐くこともリスクが高い行為となった。同時に、「助けて」と同義かもしれない「死にたい」は、運営側に通報される恐れのあるものにもなってしまった。

 一方、自分の中の醜い部分を出すにしても、今はそれが意図せず動画などに残り、切り取られて拡散されかねない時代だ。醜い感情を安心して吐き出せる場は、SNSの普及によって逆になくなったとも言える。

 そんなことを考える一方で、この数年、「この国の男性たちの異様なほどの苛立ち」に恐怖を感じてもきた。数年前から駅のホームなどに出没する「わざとぶつかる男」もそうだ。一歩間違えば線路に転落して大惨事になるのに、それを承知で「女」のみに体当たりしてくる男たち。私自身、いつからか男性とすれ違うだけで身構えるようになっていて、あと少ししたら、いきなり殴られたり刺されたりするのかもしれないという覚悟もどこかでしている。「なんでそんなにわざとぶつかる男にこだわるの?」と聞かれたこともあるが、ある時期から、示し合わせてもいないのに女性にわざと体当たりする男性があちこちに現れ始めたことは、何かの予兆に思えて仕方ないのだ。

 そんな事件が起きた翌日、メンタリストのDaiGo氏がYouTubeで、生活保護を利用する人やホームレスへのヘイト発言を繰り広げた。

 「幸せそうな女性」への殺意を募らせた生活保護利用者が女性を刺した翌日、インフルエンサーの男性が貧しい人々の命を踏みにじる。

 両者に共通するのは、「幸せそうな女性」「怠けていそうなホームレス」という形で自分の脳内で勝手な虚像を作り上げ、攻撃してもいい対象としているところだ。その人たちのことなど、何ひとつ知らないのに。

 DaiGo氏は謝罪し、これから学びたいという意思を示している。

 が、改めて考えたいのは、なぜ、あのような発言が許されると思っていたかだ。そこには12年の、政治家らが主導した生活保護バッシングの影響と、そこから派生した偏見が確実にあるはずだ。この一年半、困窮しながらも「生活保護だけは嫌だ」と拒否する人たちと大勢会ってきた。9年前のバッシングがコロナ禍の今、多くの人の命を脅かし、「公助」から遠ざけてしまっている。それが私がこの一年半、直面してきた現実だ。

 バッシングを繰り広げた自民党議員たちの責任も今一度、問いたい。


もう菅では国民の命と暮らしは守れないことが明白となった。
屈強な千葉真一が亡くなった。
さらに許しがたいことに妊婦も守れなかった。
路頭に迷う人々が更に増えそうだ。


「脱炭素社会を問う」求められる気候正義の視点とは?

2021年08月19日 | 自然・農業・環境問題
 気鋭の経済思想家と温暖化研究の第一人者が徹底討論
 
47news 全国新聞ネット 2021/08/19
2020年9月、米西部カリフォルニア州フレズノ近郊の山火事現場。米国では熱波の影響で山火事が増加傾向だ(AP=共同)
© 全国新聞ネット 2020年9月、米西部カリフォルニア州フレズノ近郊の山火事現場。米国では熱波の影響で山火事が増加傾向だ(AP=共同)

 昨年、菅義偉首相が「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と宣言、脱炭素社会の実現を目指すと表明した。果たして日本で脱炭素社会は実現できるのか、実現に求められるものは何か―。経済成長の限界や環境破壊を招いた資本主義が抱える問題を論じた著書「人新世(ひとしんせい)の『資本論』」がベストセラーになった気鋭の経済思想家、斎藤幸平・大阪市大准教授と、地球温暖化研究の第一人者、江守正多・国立環境研究所地球システム領域副領域長が徹底討論した。(共同通信=井田徹治)

 ▽常識が変化

 ―温暖化対策の遅れが指摘されていた日本でも急に脱炭素の議論が盛り上がっています。それをどう見ていますか。

 江守 研究者として過去30年間、この問題に関わっていますが、一般社会の関心は低かったと思います。2015年に地球温暖化防止のためのパリ協定ができた時も、その中で「今世紀後半に目指す」とされた温室効果ガスの排出ゼロなどできるはずがないでしょう、という反応がほとんどでした。それが大きく変わったのは、豪雨や干ばつなど地球温暖化の被害が顕在化してきたことが一方にあります。その一方で、人間が温暖化を引き起こしているという科学の結論が明確になったこと、対策として最も重要な再生可能エネルギーの価格が急低下したことなどが大きいでしょう。常識の変化を実感しています。

江守正多氏(左)と斎藤幸平氏
© 全国新聞ネット 江守正多氏(左)と斎藤幸平氏

 斎藤 2011年の東京電力福島第1原発事故の時には私はドイツで研究をしていました。ドイツでは反原発のデモが各地で盛り上がり、私も参加しました。事故とその後に続くこのような動きが、メルケル首相に脱原発を決断させました。日本では残念ながらそういう方向には動きませんでしたが。気候変動の問題に関しては、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんらに代表される若者の活動が大きく盛り上がり、政府を動かす力になって政策が大きく動きました。日本は原発事故後も変わることがなく、脱炭素の動きも結局は外圧頼みなのが残念です。

 ▽政策の決め方

 ―日本の脱炭素を巡る議論には上滑りで危うい部分もあるように思いますが。

 江守 温暖化対策にはエネルギー政策が重要なのですが、日本のエネルギー政策の決め方には強い違和感を覚えずにはいられません。政策を議論することになっている審議会は、「環境派」と「経済派」みたいに分かれていて、自分の組織のために発言するポジショントークが多く、結局は関係省庁の省益と政治的な力関係で決まっています。市民の意見がまともに反映される仕組みも存在しません。地球温暖化を論じる際、原因を作った人と被害者とが別々で先進国と発展途上国の間の不公平、世代間の不公平があるから、それを正そうという「気候正義」の考え方などの倫理問題が重要です。海外では政策議論の中でもこれが語られることが多いのですが、日本では残念ながらそういう議論は一切出てきません。欧州では抽選で選ばれた市民が集まって議論を戦わせ、そこから出てきた提言を政策決定者が可能な限り尊重して温暖化対策を決めるという「気候市民会議」も始まっています。

気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)が開かれているマドリードで、若者らが地球温暖化対策の強化を求めた大規模デモ=2019年12月(AP=共同)© 全国新聞ネット 気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)が開かれているマドリードで、若者らが地球温暖化対策の強化を求めた大規模デモ=2019年12月(AP=共同)

 斎藤 同感です。日本だけではありませんが、環境と経済の両立、グリーンな成長をしよう、そのためのイノベーションを起こそうとかいう点に議論がとどまってしまっていて、脱炭素という重要な問題が、単なる経済的、技術的な問題に矮小(わいしょう)化されています。日本の経済界が熱心な持続可能な開発目標(SDGs)にしても、社会と経済の抜本的な変革が必要だとの根本にある精神を無視し、経済成長、金もうけの手段にしようという形での議論の盛り上がり方に懸念を抱いています。真に必要とされる変革から人々の目をそらす手段になっています。本の中で「SDGsは大衆のアヘンだ」と批判したのはこのような意味です。本当に必要なのは、経済成長や技術革新そのものを問い直すことなのです。

 ▽問われる「成長」の姿

 ―これまで環境を犠牲にし続けてきた経済成長の在り方自体が問われているのでしょうか。

 江守 エネルギー技術の脱炭素化やIT活用を含む経済の脱物質化によって温室効果ガスの排出を減らしつつ、成長をしていこうという「デカップリング」という考えがあります。これまで温室効果ガスの排出量の増加と経済成長は歩調を合わせてきたのですが、最近になって、日本を含め、多くの先進国で、経済成長をしながら、排出は減る、という事態が起こっていて、デカップリングが起こり始めています。再生可能エネルギーの普及と拡大が大きいと思います。この考えでいくと、排出が減れば、国内総生産(GDP)は増えていいし、人間は便利であり続けていい。昔の生活レベルに戻ろう、という議論は、人々に温暖化対策のために我慢を強いるものと受け止められ長続きしないのではないでしょうか。

神戸製鋼所の子会社が建設計画中の石炭火力発電所。産業界の中にも二酸化炭素の排出量が多い石炭火力に批判的な見方が強まっている=3月、神戸市灘区© 全国新聞ネット 神戸製鋼所の子会社が建設計画中の石炭火力発電所。産業界の中にも二酸化炭素の排出量が多い石炭火力に批判的な見方が強まっている=3月、神戸市灘区

 斎藤 私は脱炭素社会実現のためには、デカップリングによる経済成長では不十分で、経済成長という考え方から脱する「脱成長」まで行かなければいけないと考えています。世界の産業革命以来の平均気温の上昇を1・5度に抑えるためのシナリオを検討したモデルの中に、エネルギー需要を40%とか大きく減らしていけば、実現できるというものがあります。今の日本の議論のように、再生可能エネルギー、電気自動車(EV)や水素飛行機さえあれば、脱炭素のもとでいつまでも成長が続けられると考えるのは間違いです。次々と新しいEVを買いましょう、海外旅行もたくさんしましょうとなったら、エネルギー消費は増え続けるし、長時間労働もなくならず、おそらく格差もなくなりません。EVの電池に必要な鉱物資源は発展途上国で産出しますが、これを採掘し続けることで、途上国の環境破壊と人権侵害が続くだろうと思います。そんなことが起これば本末転倒です。

江守正多氏© 全国新聞ネット 江守正多氏

 江守 既に現在の経済成長は、単に金をもうけてぜいたくするためというより、企業の生き残りと雇用の確保のために成長しなければならないと追い立てられているようにみえます。脱成長ではなくても、経済成長しながらも、もうこれ以上、自動車や大きな家はほしくない、という脱物質主義のような生き方があるのではないでしょうか。脱物質化はしても、サービスとか娯楽とかITとかでデカップリングをしながら経済成長をするというのは資本主義を前提としてもあり得るのではないかと思います。

 斎藤 脱炭素のための技術開発や脱物質主義をという点には賛成です。しかし、それでも成長をし続けなければならないという資本主義のシステムが残っていたら、脱炭素をしても、資源やエネルギーの消費量は増えてしまう。格差や過労死もなくならず、ジェンダーの不平等もなくならない。規制緩和や社会保障費削減によって、脱炭素技術開発を促進しようという話になりかねないのです。

 ▽限られた時間

 ―現在の消費のレベルを下げなければ問題は解決できないということですね。

 斎藤 途上国の消費はまだ増やす必要があるので、先進国は減らさなければなりません。温暖化対策を求めるグレタさんらの運動の中にも、成長にブレーキをかけて別の形の経済を回そうという脱成長の考えがある。SDGsも「それを使って成長しましょう」ではなく、そういう根本的な変革を目指す動きの第一歩にするべきなのです。

 江守 「時間軸」というものを考慮することが重要ではないでしょうか。産業革命以来の気温上昇を1・5度に抑えるという目標達成などのためには、早急に国中のエネルギーや交通のインフラを入れ替えなければならない。そのためには資本主義の下で、市場の力を使って、排出を減らす技術を普及させることがないと、限られた時間の中での脱炭素は実現しないのではないかと考えています。

斎藤幸平氏© 全国新聞ネット 斎藤幸平氏

 斎藤 新型コロナウイルス禍で各国政府が行ったのはロックダウンなど強力な市場への介入でした。脱炭素でも必要なのはこのような市場の制限でしょう。どこかから排出枠を購入して削減にあてるカーボンオフセットなどは、富裕層がこれまでの生活を続ける言い訳となります。また技術の開発・普及には長い時間がかかるので、飛行機移動や肉食に制限をかけるといった、今すぐにでもできる措置が必要でしょう。技術に過剰な期待をすることは、むしろ問題解決先送りの口実となると危惧しています。

 ―脱炭素社会を実現するために重要な視点は何でしょう。

 江守 最初は炭素税や規制など市場への介入が必要だが、あるポイントを超えると「そっちの方が得だから」と環境保全に関心のない人も新しい方向に向かう形で高炭素経済は内部崩壊するという議論があります。それが今、再生可能エネルギーの分野などで起こっているのではないでしょうか。中央集権的な巨大技術ではなく、ITの活用を含め地域分散型の再エネなどオープンで民主的な技術の活用に期待しています。

温暖化対策の強化を求めデモ行進する環境活動家グレタ・トゥンベリさん(手前左)=2019年9月、ニューヨーク(ゲッティ=共同)© 全国新聞ネット 温暖化対策の強化を求めデモ行進する環境活動家グレタ・トゥンベリさん(手前左)=2019年9月、ニューヨーク(ゲッティ=共同)

 斎藤 もちろん、ある程度までの脱炭素はEVや再エネで実現できるでしょう。ただ、持続可能な社会を築くにはエネルギーの脱炭素だけでは不十分だという視点も重要です。世界全体で衣食住を含めて最後まで脱炭素を進めるためには、私たちはどこかで資本主義的消費社会そのものを抜本的に変えねばならないのです。脱炭素の動きを、現代のグローバル資本主義が抱える多くの問題を包括的に解決してゆくきっかけにするべきです。この問題を炭素の話だけに限っていては解決できないし、炭素の話だけに限るのはもったいないように思います。

 江守 残された時間は少ないという認識が必要ですが、「炭素の話だけでない」という点には同意します。排出量が大きく減った時に、それがどれだけ幸福な社会かを考え、目指すビジョンをみんなで議論する必要がありますね。

   ×   ×

 えもり・せいた 1970年神奈川県生まれ。地球温暖化の予測とリスク論が専門。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書主執筆者の一人。2021年4月から現職。著書に「異常気象と人類の選択」など。

   ×   ×

 さいとう・こうへい 1987年、東京都生まれ。経済思想史が専門、ドイツ・フンボルト大で博士号取得(哲学)。優れたマルクス研究に贈られる2018年「ドイッチャー記念賞」を日本人初、史上最年少で受賞。17年4月から現職。「人新世の『資本論』」で新書大賞を受賞。


「残された時間は少ないという認識」、猛暑日や熱帯夜の増加だけでは認識できないのでしょうか?水害やがけ崩れに遭遇しなければ認識できないのでしょうか?
想像できる小学生、中学生、高校生の若い感性に期待したい。
農業も高温・干ばつなどで成り立たなくなりつつあります。漁業も海水温の変化などで成り立たなくなります。
一人ひとりの努力も大事ですが、それでは間に合いません。「気候正義」を貫くよう監視し、声を上げていくことのほうが大事だと思うのです。

ひまわり

帰り、踏切でなんとなくシャッターを切りました。

もう何年も乗ってないなぁ~


無意味耐性の高い人たち

2021年08月18日 | 社会・経済

「内田樹の研究室」より

2021-08-16 lundi

 8月6日の広島での平和記念式典で、菅首相がスピーチの一部を読み違えたことが報道された。「原爆」を「原発」、「広島」を「ひろまし」と読むなど7カ所で首相は読み違えをした。だが、問題は核廃絶に向けた日本の立場を示す約120字を読み飛ばしたことである。

 そこには「わが国は、核兵器の非人道性をどの国よりもよく理解する唯一の戦争被爆国」「『核兵器のない世界』の実現に向けた努力を着実に積み重ねていくことが重要」などの文言が含まれていた。そこを読み飛ばしたせいで、首相のスピーチは「日本は非核三原則を堅持しつつ、核兵器のない、核軍縮の進め方を巡っては各国の立場に隔たりがあります」という意味不明のものになった。原稿が糊でくっついてはがれず、一枚飛ばしてしまっただけで、「完全に事務方のミス」というのが政府の言い訳である。

 なるほど、そうなのか。だが、私たちがここから知れるのは、首相がこのスピーチの草稿に事前に目を通さずに式典に臨んだらしいということである。一度でも下読みしていれば、ふつうは7カ所も読み違えをしないし、ましてスピーチの「聞かせどころ」を読み飛ばすというようなことは起こらない。わずか1300字の原稿である。5分あれば誰でも読める。その手間を惜しんだのならば、首相は平和式典をひどく軽んじていたということになる。

 だが、そのこと以上に私が当惑したのは、首相が意味をなさない文を平然と読み続けたということである。そういうことはふつう起きないからだ。

 文法的にかたちをなさないセンテンスを読むと、私たちは「気持ちが悪い」と感じる。しかし、首相はそこで立ち止まることをせず、無味をなさない文を平然と読み続けた。これはかなり深刻な問題だと私は思う。というのは、この事実から私たちは首相が「意味をなさない言葉を人前で堂々と話しても気にならない人」だということを知るからである。

 いや、たしかにそういう人は世の中にいる。大勢いる。あるいはもう日本人の過半がそうなのかも知れない。そうでなければ、そういう人が総理大臣に上り詰めるはずがない。

「意味のない言葉を口にしても気にならない」人のことを私は「無意味耐性の高い人」というふうに呼んでいる。無意味な言葉を朗々と読み上げることができ、無意味な仕事に必死に汗をかくことができる人たち、それが「無意味耐性の高い人」である。これは現代日本ではある種の「社会的能力」として高く評価されている。

 受験秀才は「なぜこんなことを覚えなくちゃいけないんだ? こんな知識に何の意味があるんだ?」という問いを自分に向けない。会社で重宝されるのは上司が発する業務命令に対して「どうして、こんな仕事しなくちゃいけないんですか? これ、意味ないじゃないですか?」と言わない人間である。

 上意下達組織において最も重んじられるのは「イエスマンシップ」であるが、これを考査するための最も簡単な方法は無意味なタスクを課すことである。トップが下したまるで無意味な命令が、途中で「ちょっと待って。これ何の意味があるの? オレはそんな無意味な仕事はやりたくないぜ」というタイプの抵抗に出会うことなく、末端まで遅滞なく示達される組織は「完璧なトップダウンが実現されている」とみなされる。そして、現代日本ではそれが組織の理想なのである。

 組織が上意下達的になればなるほど、「ブルシット・ジョブ」が増えるのはそのせいである。今、日本人は「無意味な言葉と無意味な仕事」という「おろし金」で日々すり減らされている。(山形新聞、2021年8月12日)


噛み合わない国会答弁もそうなのだろう。

今日は朝から雨。ハウスを閉めて昼前に帰宅した。

メマツヨイグサ。


東京で感染拡大収まらず 菅首相だけでなく、小池都知事にも「無能すぎる」と批判の矛先が

2021年08月17日 | 社会・経済

AERAdot 牧忠則2021.8.17 

 小池百合子知事への風向きが変わってきている。感染拡大する新型コロナウイルスへの対応が大きな要因だろう。東京都内では8月16日、月曜では過去最多の2962人の新規感染者数が確認されたほか、重症者数は7日連続で過去最多の268人が確認された。

 緊急事態宣言が出ているにもかかわらず、都内の光景には変化がみられる。駅では通勤ラッシュが珍しくなく、リモートワークが進んでいるとは言い切れない。飲食店は酒類の提供停止と午後8時までの時短営業が要請されているが、繁華街の映像が映し出されると、深夜まで営業している飲食店の数が見られ、20代の若者を中心に路上を行きかう人の数も多い。公園でも路上飲みの光景が見られる。

「緊急事態宣言が延長に次ぐ延長で効力がなくなってきている。十分な説明責任がないまま東京五輪を開催した代償は大きい。国民の間で政治不信が募り、国や東京都の呼びかけに耳を傾けなくなっている。飲食店の経営者に話を聞くと、『もう小池さんの話は聞いていられない。納得する説明もなく、我慢してくれの一点張り。それなら、なぜ政府と一緒に東京五輪開催に賛同したのか。これ以上我慢していたら店もつぶれてしまう』と話していました。菅首相だけでなく、小池都知事も都民の求心力を失ってきている状況です」(テレビ局の政治部記者)

 小池都知事は13日に記者団からコロナの感染拡大で医療体制がひっ迫していることに質問が及ぶと、「外出を控えてください。今日もたくさんの人が出ておられますが、大雨もコロナも同じです。災害になります。よろしくお願いします」と呼び掛けた。だが、その災害と捉えたコロナ感染拡大の状況で、政府と共に東京五輪開催へ突き進んだ。この矛盾に対し、説明責任を果たしているだろうか。

 12日の東京都のモニタリング会議では、国立国際医療研究センターの大曲貴夫・国際感染症センター長が五輪の影響について言及。「感染リスクが高いにもかかわらず、五輪競技場の周辺や沿道では、大勢の人が集まり、応援する姿が見られた。いま一度、屋外であっても密集・密接することは、感染リスクが高いことを啓発する必要がある」と警鐘を鳴らすと、小池都知事は真っ向から否定した。「大曲先生は印象論でおっしゃっている」とバッサリ。「交通需要マネジメントも人流抑制に役立った。数字にも表れている。テレワークの推進も図った。ライブサイトも見直し、ステイホームで応援していただいたからこそ、視聴率も上がった」と強調した上で、「エピソードベースではなくエビデンスベースで語ることが重要だ」と述べた。

 この小池都知事の対応に対し、SNS、ネット上では、「テレワークは浸透していないし、テレビの視聴率が上がっただけの脆弱な根拠をエビデンスベースとか言うなよ。こんな人が都知事であることが恥ずかしい。菅さんも小池さんもやっていることは国民感情を逆なですることばかりで無能すぎる。そりゃ誰も言うことを聞かないよ(原文ママ)」、「都民や国民の自粛努力を、オリパラ強行開催で無にする。にもかかわらず、人流が~、自粛慣れが~、若者が~、と悉く他人のせいにされては、協力する気も話を聞く気も無くなるのは、当然の事だとは思えないのでしょうかね、小池も菅も。逆ギレしたいのはこちらですよ(原文ママ)」など批判的なコメントが殺到する事態になった。

 7月4日に投開票された都議会議員選挙では、小池都知事を支える地域政党・都民ファーストの会が自民とわずか2議席差の第2党。告示前の情勢調査などで「自民圧勝・都民ファ惨敗」との予測を覆す結果になった。告示直前に過労で入院したが、選挙終盤で公務に復帰した小池知事は最終日に都民ファ候補の応援に駆け付けて流れを変えた。「小池マジック」の健在ぶりを見せつけた。

 ただ、前出の政治部記者は「都民ファーストの会が善戦したのは小池さんの力だけではない」と話す。

「あの時は東京五輪で観客を入れて開催することに前向きだった菅首相への怒りや不満で自民党が自滅した部分もあった。今は小池都知事に対しても国民の不信感が募っている。コロナ対策で正念場を迎えていることは間違いない」

 小池都知事はこの逆境を乗り越えることができるか

*   *   *

「東京新聞」<社説>2021年8月17日

変異株の拡大 最大限の警戒をせねば

 新型コロナウイルスの感染者増が止まらない。強い感染力のインド由来のデルタ株の広がりが大きな要因だ。専門家の危機感を共有して警戒せねばならない。

 新規感染者数は全国で一日二万人を超えた日もある。感染者の多くが現役世代で、高齢者のワクチン接種効果を上回る勢いだ。重症者も増え医療の逼迫(ひっぱく)は深刻化の一途である。

 厚生労働省の専門家会議は医療の逼迫を「災害時の状況に近い局面」と訴えた。他の専門家からも東京の感染は「制御不能」と悲鳴にも近い声が聞こえる。

 医療への負荷を減らし重症者や死亡者を抑えるには、やはり感染者自体を減らすことが重要だ。

 だが、対策を困難にしている要因がデルタ株の拡大である。感染力は従来株の約二倍とみられ、全国で置き換わりが進んでいる。

 感染者のウイルス量は従来株より多く増殖速度も速いといわれ、より感染しやすい。

 七月下旬から八月上旬にかけ東京や大阪などの百貨店十三店舗で計約三百七十人が感染した。一階や地下など混雑しやすい売り場が多い。これまでの対策では十分に防ぎ切れていないようだ。

 生徒七十人以上が感染した学習塾もある。学校のクラブ活動やスポーツ施設、パチンコ店、ゲームセンターなど、これまで感染が目立たなかった施設でもクラスター(感染者集団)が発生している。

 室内の換気や人との距離が不十分なケース、更衣室や休憩室でのマスクの不徹底などが原因と指摘された。

 帰省先での親族や友人らとの会食、職場の会食でも感染者を広げている。

 デルタ株はこれまでの対策の隙を突いてくる。対策の要は人との接触を減らすことだ。政府の対策分科会の尾身茂会長は、東京の人出を五割減らす努力を訴えた。

 個人でも従来の対策を見直す必要がある。買い物や旅行、会食などをさらに控えられないか考えたい。感染力が強いため換気がより重要になる。三密(密閉、密集、密接)対策を再度徹底したい。

 感染が繰り返されると日本発の変異株が生まれる懸念もある。これ以上の感染拡大は防がねばならない。政府はワクチン接種の推進ばかり強調するが、感染封じ込めへ危機感が伝わる姿勢を国民に見せるべきだ。


「直ちに自分や大切な人のために行動をおこしてください。」
無能な指導者のもと自分で守るしかない。

それにしても「パラ」まだやる氣でいる。

パラ入国 感染相次ぐ

事前合宿 自治体も苦慮

「しんぶん赤旗」2021年8月17日

 東京パラリンピック大会(24日~9月5日)のために各国から選手団の入国が始まっています。来日した選手団から新型コロナウイルスへの感染が複数判明。事前合宿を受け入れた自治体も対応に苦慮しています。(オリパラ問題取材班)

 パラリンピックの選手団は3日から来日し始めています。大会には国内選手を含め最大4400人が出場します。内閣官房オリンピック・パラリンピック推進本部によると、15日までに感染が確認されたのは5カ国の6人で、102人が濃厚接触者と判定されました。

 6日にはブラジルから126人の選手団が成田空港に到着。空港検疫で1人の陽性が確認されました。

 ブラジル選手団の事前合宿を受け入れた浜松市の担当者は言います。

 「選手団のうち50人が濃厚接触者候補とされ、国が用意したバスで浜松市に来ました。市の聞き取りで52人が濃厚接触者となり、そのうち1人が新たに陽性と確認されました」

 成田から浜松まで約330キロ。濃厚接触者を判断しないまま、バスで長時間かけて移動するというリスクが高い方法をとったのです。

移動法・費用…不透明

 新型コロナウイルスの濃厚接触者候補がいるパラリンピック選手団の移動が5時間未満の場合、内閣官房は専用バスなどで移動が可能としています。ただグーグルマップで成田から浜松まで車で移動する時間を計算すると最短で4時間22分程度。これは渋滞や休憩を考慮に入れない時間です。

 浜松市の担当者に「5時間未満で到着できるのか?」と聞くと「まあ難しいでしょう。内閣官房が5時間未満と判断したということです」と苦笑します。

 五輪では濃厚接触者の確認をしないままウガンダ選手団が大阪府泉佐野市まで約8時間かけてバスで移動。泉佐野市に到着後に1人の陽性が確認され、バス運転手や同乗した市職員が濃厚接触者として隔離されました。

 事前合宿地で濃厚接触者となると、東京などの大会会場までの移動は原則的に公共交通機関が使えません。新幹線の1車両を丸ごと借り切るか、バスや航空機をチャーターする必要があります。

 9日に来日したパラのメキシコ選手団は、搭乗した航空機の乗客から感染者が確認されました。このため選手団の計14人が濃厚接触者となりました。

 うち4人は広島県府中市で事前合宿をしています。府中市の担当者は「21日には会場に移動する選手がいます。どうやって移動するかは相談中です」と言います。

 五輪では鹿児島市で事前合宿していた南アフリカの選手団から感染者が出て、多数が濃厚接触者となりました。同市の担当者は「座席が150人分くらいの航空機をチャーターし、19人の選手団を運びました。費用は国で持つよう調整中です」と話しました。


始まったコロナ「インフラ崩壊」

2021年08月16日 | 生活

職員感染でゴミ収集休止、JR渋谷駅員12人陽性etc. ライフライン断絶なら“人工透析難民”多数、医療崩壊に拍車も

MAG2NEWS  2021.08.16
 

 台東区によると、15日までに職員148人のうち16人が新型コロナに感染。保健所からクラスター認定はされていないものの、業務に必要な職員の確保が困難となったことから、16~31日に区内全域で「燃やさないごみ(不燃ごみ)」の収集を休止することを決めたという。

なお、燃やすごみ(可燃ごみ)、資源ごみ、粗大ごみは、通常通り収集する。人員が確保できないため、より多く出る可燃ごみの収集を優先させた形だ。

 コロナ感染がインフラに影響を及ぼす中、JR東日本でも渋谷駅でみどりの窓口や改札などで業務を担当する社員12人の感染が明らかになった。

業務中は、常にマスクを着けており、いずれも体調不良になった後や、陽性が判明した後は休んでいて、濃厚接触者に当たる駅利用者はいないという。なお、クラスターではないため、列車運行などに影響はないと説明している。

【関連】京大教授が嘆く、ワクチンと死亡者数の関係を「数字」で理解できない人々

コロナ感染のリスクに晒されるエッセンシャルワーカー

 恐れていた事態がいよいよ表面化してきたといっても過言ではない。

行政サービスや交通機関といった社会インフラを支える人たちにも広がり始めたコロナウイルスの恐怖。これまで大きなクラスターが出ていなかった業種でも続々と陽性者が出てきている。

清掃職員や鉄道社員は典型的なエッセンシャルワーカー(必要不可欠な労働者)であり、テレワークでは代替不可能な私たちの生活基盤を支える重要な仕事を担っている。

そんな彼らは感染リスクと常に隣り合わせで働いており、いつコロナを発症して業務を遂行できなくなってもおかしくない状態だ。

「今回のような感染がより広まれば、生活・社会インフラにも影響が及びかねません。電力、ガス、上下水道、通信、鉄道、道路、物流など、どれも私たちの生命維持には欠かせないもの。これらが万一ストップすれば、2次被害、3次被害が出てしまう可能性は十分に考えられます」(都内の病院に勤務する医療関係者)

 北海道札幌市では今年春以降の新型コロナウイルス感染「第4波」で、人工透析を受けている患者118人が感染し、半数余りの53%の人が死亡していたことが市の調べでわかったとNHKが報じた。

亡くなった患者のほとんどは糖尿病や高血圧などの持病があり、重症化のリスクが特に高かったため、クラスターが相次いだことが背景にある。

 ただでさえ医療が逼迫した状況が続いている中、そこに加えてライフラインまで寸断されてしまってはとんでもない事態になってしまう。

 実際に2018年9月に発生した北海道胆振東部地震によって大規模な停電が起き、人工透析に支障をきたした病院が多数あった。自家発電で透析可能な施設もあったが、ほとんどの施設が患者の引受先探しに追われたという。

【関連】ラムダ株“隠蔽”の菅政権に「ふざけるな」国民激怒。人命より五輪、最凶ウイルス日本上陸を隠しクソ開会式を決行していた?


腹の虫がおさまらない。イベルメクチンを国民に配って虫退治!