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プーチンのロシアと共に「敗れる」日本―残る希望は若者達?

2022年09月30日 | 社会・経済

YAHOO!ニュース(個人) 9/30(金)

   志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

 結論から言えば、遅かれ早かれ、プーチン大統領は、ウクライナ侵攻で敗れることになる。あまりに多くのものを失い、ロシアも国家的な危機を迎えることになるだろう。そして、この戦争を契機に世界は大きく変化していく。その変化の動きに、日本がついていけるのか。この国における論議の貧困さを観ていると、日本自体もかなり危ういと言える。

〇既に「詰んでいる」プーチン

 プーチン大統領は、既に「詰んでいる」ことを自覚するべきだ。部分動員で何十万人もの兵士を戦地に送ったとしても、ロシア軍の士気は極めて低い上、兵站、つまり兵器などの戦争に必要な物資の供給が不足している状況は変わらない。欧米等の経済制裁で、ロシア国内での生産力は落ちており、それは兵器工場も例外ではないからだ。一方で、ウクライナ軍は欧米諸国、特に米国から無尽蔵とも言える軍事支援を受けており、数で勝るロシア軍相手に善戦を続けている。プーチン大統領は核兵器の使用も示唆し、ウクライナや世界を脅そうとしているが、ロシア側が勝手に始めた侵略戦争で核兵器まで使えば、国際社会の反発はこれまでとは次元の違うものとなるだろう。ウクライナ侵攻で、どちらかと言えばロシア寄りの立場をとり、プーチン大統領が頼る中国も、ロシアが核兵器を使用すれば、かばうことは難しいだろうし、中国自体も難しい立場に置かれることになる。

 例え、ロシア軍がさらなる攻勢をかけ、ウクライナでの戦闘を優勢なものにしたとしても、ロシアの抱える本質的な問題は変わらない。それは、ロシア経済が石油や天然ガス、石炭等の地下資源に依存したもので、かつ、それらの資源の最大の買い手がEU諸国であるということだ。ロシアの輸出相手国をみると、全体の約半分近い44.7%がEU諸国向けである(関連情報)。そのEU諸国に対し、愚かにもプーチン大統領はエネルギー危機を助長するような揺さぶりをかけている。それによってEU諸国は断固たる「エネルギーの脱ロシア化」を進めているのだ。

〇加速する欧州の脱ロシア

 EUの立法・行政機関である欧州委員会は、ウクライナ侵攻を受け、今年5月に新たなエネルギー政策として、「リパワーEU」をまとめた。これは、

再生可能エネルギーへの移行の加速

エネルギー確保の多角化、天然ガスの脱ロシア依存

省エネの推進

 を柱とするもので、それ以前に温暖化対策として決定していた分も含め、2030年までに最大で3000億ユーロ(約40兆円)の投資を行うとしている。

 とりわけ、再生可能エネルギーへの移行の加速では、「現在の2倍以上となる320ギガワット*以上の太陽光発電を2025年までに新設。2030年までに約600ギガワット分の新設を目指す」との目標を掲げている。これを可能とするため、住宅や商業施設等への太陽光発電パネルの設置を段階的に義務化するという。 さらに、再エネ由来の水素の生産を、2030年までに、現行目標の約2倍となる年間約1,000万トンに引き上げるとともに、同量をEU域外から輸入。さらに、2030年までに350億立法メートル分のバイオガスの生産を目指す。これらの対応策により、現在、年間で約1550億立法メートルのロシア産天然ガスへの依存から脱却するというのだ(関連情報)。確かに、現在のEUにおけるエネルギー危機は深刻であるが、中長期的には、脱炭素社会・経済を実現する動きを強力に推し進める要因となっているのだろう。

*1ギガワットは大型原発一基分の電力に相当。

〇ルサンチマンに溺れる日本の末路は?

 正に生存をかけたEUの脱ロシア化への本気度に比べ、日本の動きは鈍い。ウクライナ危機は、石油や石炭、天然ガスといった化石燃料を国外に依存することの危うさを改めて突きつけ、実際に日本経済・社会も原油・ガス等の価格高騰の影響を受けている。だが、そうした事実を踏まえ、エネルギー安全保障を考えなおす建設的な論議よりも、EUの再生可能エネルギー推進や電気自動車の開発・普及へのルサンチマン(弱者が強者に対して抱く恨み・妬み・嫉み)に溺れた主張が蔓延しているのは残念なことだ。とりわけ、保守系の新聞、雑誌系、ネットメディアでの論議のレベルは低く、醜悪ですらある。つまり、「EUの脱炭素は失敗だった」的な主張だ。それでなくとも、この期に及んでなお、日本政府が原発や火力発電に依存し続けるエネルギー政策に固執する中で、それを助長するようなメディアでの論議は、世界的な脱炭素の潮流から、ますます日本を孤立させることとなり、それは日本経済や社会にとって、とてつもない損失をもたらす。

〇希望は若者達?

 EUの苦しみを揶揄するだけで、その先駆的な取り組みから学ぶこともなく、現状維持を正当化しようとする日本の言説を見聞きすると、これだから日本は「失われた〇〇年」を更新し続け、衰退の一途をたどっているのだろうと暗澹たる気持ちになるのだが、希望もある。それは、若者達の行動だ。10代、20代の若者達が参加する「350NewENEration」は、現在、GENESIS松島計画見直しのため、パブリックコメントを送るキャンペーンを行っている。

 この、GENESIS松島計画とは、電源開発株式会社(J-Power)が、長崎県西海市のある旧式の石炭火力発電所に、石炭をガス化する発電設備を付け加え「効率を改善」することで、今後も使い続けようとするものだ。だが、同計画で抑制されるCO2排出はわずかにすぎず、天然ガスに火力発電と比較して2倍以上の排出係数となることには変わりはない。昨年の温暖化対策の国連会議COP26では、温暖化による破局的な影響を防ぐため、「主要経済国は2030年代に石炭火力発電所を全廃する」という国際合意が40カ国以上の賛成でまとまったが、GENESIS松島計画はこうした世界の脱炭素の流れに逆行する。そこで、350NewENErationは「石炭ゾンビ」というサイトを立ち上げ、上述のGENESIS松島計画見直しパブコメの募集や、識者メッセージの紹介、勉強会の開催を行っている。

 これらの若い世代の意識や活動は、ルサンチマンに溺れる古臭いメディアでの論議とは対照的だ。ロシア軍によるウクライナ侵攻は、現地の人々にとっては勿論のこと、世界にとっても大変な悪影響を及ぼしているが、このピンチは独裁者の横暴を挫き、温暖化の破局的な影響を防ぐための社会・経済を変革するチャンスでもある。日本の大人達も、若者達の姿勢に学び、応援すべきなのだろう。 (了)

志葉玲 フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。


アゲラタム


減税断固拒否で510億円の血税浪費 岸田政権のごまかし政策4

2022年09月29日 | 生活

2022/09/29

『女性自身』編集部

    岸田内閣の支持率が下げ止まらない。反対が賛成を上回っている安倍晋三元首相の国葬に加え、次々と明るみに出る旧統一教会と自民党議員のズブズブな関係ーー。

「聞く耳」を持つと強調しているが、実際は聞いたふり、同じ話の繰り返しなどごまかしばかりだ。国葬や統一教会問題以外にも、世論無視のごまかしが続いている。

【1】減税逃れに510億円の無駄遣い

    政府は20日、物価高騰とコロナ対応のため、’22年度予算の予備費から3兆5000億円の支出を決定。

    その目玉として、住民税が非課税の困窮世帯に5万円の支給を決定した。しかし、手続きの事務手数料が、なんと510億円かかるとして波紋を呼んでいるのだ。

「対象世帯へ送る確認書の発送作業の人件費などに約164億円、問い合わせに対応するコールセンター設置に約254億円かかるそうです。こうした給付は、コロナ禍になって3回も行われているので、デジタル化を進めていれば、何百億円もの手数料は必要なかったはず」

そう指摘するのは、立憲民主党の衆議院議員で予算委員会の理事を務める後藤祐一さん。

    さらに、“ガソリン補助金”にかかる事務費と、そのチェック体制も問題だ。後藤さんは続ける。

「政府は今年に入り、ガソリン価格の全国平均が168円以上になった場合、34社の石油元売り会社に1リットルあたり37円の補助金を出して店頭価格上昇を抑えました。9月までに1.9兆円、今回の補正予算で1.3兆円拠出していますが、事務費がそれぞれ59億円、18億円かかり、経産省が委託している広告代理店の博報堂に支払われています」

博報堂は、石油元売り会社の卸売価格が補助金分引き下げられているか確かめ全国のガソリンスタンドの販売価格も調査しているというが、合計77億円の事務費は果たして適切なのか……。

「外部からチェックできておらず万が一どこかで“サヤ抜き”されていてもわからないので、会計検査院に会計検査に入ってもらうよう求めています。消費者がガソリンスタンドで支払う“ガソリン税”をゼロにすれば透明性が担保できるのに」(後藤さん)

    経産省の元官僚で経済評論家の古賀茂明さんは、このような焼け石に水の施策で「減税すべき」との世論をごまかしていると指摘。

「岸田さんは、財務省に操られているので税金を下げたくない。困窮者支援にしても、たった一回5万円を配るより、食料品や光熱費などの軽減税率8%を一時的にでもゼロにしたほうが効果的。他国は、軒並み減税しています」

【2】防衛費のため消費増税も

     増税をもくろむ岸田政権の姿勢は防衛費にも現れている。

「岸田首相は今年5月の日米首脳会談で、防衛費を5年以内にGDP比2%以上にあたる11兆円規模にすると約束してしまいました。“岸田降ろし”を避けるため、安倍派の支持を失いたくない。党内右派の安倍派が満足するまで防衛費を引き上げたいのでしょう」(古賀さん)

    政府与党は先週、防衛費増額のために法人税や金融所得課税などに増税する可能性を示唆している。

「岸田さんは最終的には消費税増税を狙っています。しかしさすがに今はできないので、まずは法人税を上げて消費増税への布石にしたいのです」(古賀さん)

■原発再稼働やコロナの対応にも問題が

【3】政権延命のために原発利用

    防衛力を強化する一方で、攻撃されたら核兵器と同様のリスクがある原発の再稼働や新設まで打ち出した岸田首相。延命をかけて、奇策に出る可能性もあるという。

「来春から、さらに電気料金が値上げされます。東京電力は、『電気料金を値上げしないため』という理由で、来夏までに柏崎刈羽原発7号機(新潟県)の再稼働を目指しています。しかし、同原発はテロ対策の不備が発覚し、原子力規制委員会から事実上、運転禁止命令が出ていて動かせない。そこで岸田さんは、『電力不足の緊急事態対応』『電気代の値上げ回避』などを掲げ政府権限で再稼働を認める特例法を来年1月の国会に提出し、野党が反対すれば、広島サミットが終了後の5月下旬にも原発再稼働の是非を問う“原発解散”に打って出る可能性もあります」(古賀さん)

電力需給が切迫するのは夏季と冬季のうちわずか数日で、しかも数時間。「節電で十分乗り切れる」と古賀さん。政権延命に利用してよいはずはない。

【4】コロナ死者急増も医療費抑制

    もうひとつ忘れてはならないのが新型コロナ対策だ。コロナによる死者数の累計は、9月22日時点で4万4000人を突破。うち半数を超える2万5696人が今年に入ってからの死亡者なのだ。

「治療法も確立され、早期診断・早期治療さえできればコロナは死ぬ病いではなくなりました。第7波が来る前に、政府が音頭をとって、すぐにPCR検査や診察が受けられる医療機関を増やしておけば、これほど死者は増えなかったはず。明らかな失政です」

そう憤るのは、倉持呼吸器内科クリニック院長の倉持仁さん。

    元厚労省官僚は、「第1波から依然として続いているPCR検査の抑制などの背景には、医療費を抑制したい財務省や厚労省の思惑があるといわれています」と話す。

「岸田政権がやろうとしているのは、PCR検査より精度が悪い抗原検査キットを患者に配布し、陽性者は自分でコロナ患者用のサイト(My HER-SYS)に登録して自宅療養しろ、と。受診できる可能性があるのは、65歳以上、基礎疾患あり、妊婦、酸素飽和度が低いなど限られた人だけ。コロナ患者だけ国民皆保険制度から外され、適切な医療が受けられないという異常事態になっているのです」(倉持さん)

    “重症化リスクは低い”と現状をごまかし、医療費抑制を狙っているが、死者数は増える一方だ。

ごまかしはいつまで続くのだろうかーー。


 医療費抑制のために国民を医療から遠ざける政策は本末転倒であろう。後期高齢者の窓口負担の負担増もまた同じことである。先に打つ手はいくらでもある。政党助成金などに手を付けたほうがよろしいかと?まだまだ無駄なことが多すぎる。

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「安倍政治」検証は続く 分断の国葬を終えて

2022年09月28日 | 社会・経済

「東京新聞」社説 2022年9月28日 

 故安倍晋三元首相の国葬がきのう東京・日本武道館で行われた、代表撮影。故人への敬意と弔意を表す国の公式行事として国葬が行われたとしても、国葬実施により国民は分断され、安倍氏の歴史的評価も定まったわけではない。「安倍政治」の検証作業は私たち自身が続ける必要がある。

 安倍氏は二〇一二年十二月の衆院選で首相に復帰し、二〇年九月に体調不良を理由に内閣総辞職した。第一次内閣の一年間と合わせると通算八年八カ月、首相の座にあったことになる。この間、私たちの暮らしや、社会や政治はよくなったのだろうか。

 まず検証すべきは大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という「三本の矢」からなる安倍氏の経済政策「アベノミクス」の功罪だ。

 第二次内閣発足間もない一三年に始まったアベノミクスが当初、国内経済に強い刺激を与えたことは事実だろう。金融緩和と財政出動で金融市場に大量の投資資金が流れ込み、株価は回復。多くの企業が財務環境を好転させた。

 しかし、利益を内部留保にため込んだ企業は人件費に回さず、給与は今に至るまで伸びていない。経済格差も広がっている。

 アベノミクスが描いた「投資活性化による利益が賃上げを促し、消費が伸びる」という好循環は結果として実現しなかった。

 最大の理由は、外国人観光客の増加以外に、効果的な成長戦略を見いだせなかったことだろう。

◆政策縛るアベノミクス

 岸田文雄首相はアベノミクスを事実上継承し、野放図で場当たり的な財政出動と緩和一辺倒の金融政策を続ける。それは結果として政策の手足を縛り、日本経済の懸念材料となっている円安・物価高に対する政府・日銀による政策の選択肢を狭めている。

 私たちの暮らしにとって、アベノミクスは「功」よりも「罪」の方がはるかに大きい。

 安倍氏の後継政権である菅義偉前首相、岸田首相は国葬での追悼の辞で、いずれもアベノミクスに言及しなかったが、これまでの経済政策を検証し、改めるべきは改めることが、政策の選択肢を広げる第一歩ではないか。

 「安倍一強」の定着とともに発覚した森友・加計両学園や「桜を見る会」を巡る問題ではいずれも安倍氏ら政権中枢に近い人物や団体の優遇が疑われ、公平・公正であるべき行政は大きく傷ついた。

 側近議員や官僚による安倍氏らへの「忖度(そんたく)」が横行し、森友問題では財務省は公文書改ざんに手を染め、改ざんを指示された担当者が自死する事態にもなった。

 桜を見る会前夜の夕食会を巡っては、安倍氏は国会で百回以上の虚偽答弁を繰り返した。日本の議会制民主主義の汚点でもある。

 しかも、これらの問題はいずれも真相解明に至っていない。安倍氏が亡くなっても不問に付さず、解明に努めるのは国会の責任だ。

 安倍氏を中心として、自民党議員と旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との密接な関係も明らかになった。反社会的な活動をしていた団体が政権与党の政策決定に影響を与えていたのではないか、と有権者は疑念を抱いている。

 この際、安倍氏や前派閥会長の細田博之衆院議長を含め、教団との関係やその影響を徹底調査することが、政治への信頼回復につながるのではないか。

◆憲法や国会を軽んじて

 安倍内閣は、歴代政権が違憲としてきた「集団的自衛権の行使」を閣議決定で容認し、安全保障関連法の成立を強行した。時々の政権が国会での議論の積み重ねを軽視し、憲法を都合よく解釈する姿勢は、立憲主義を揺るがす。

 岸田首相も歴代政権が否定してきた敵基地攻撃能力の保有に踏み切ろうとしている。憲法に基づく臨時国会の召集要求に応じない姿勢も、安倍氏と変わらない。

 安倍氏は、街頭演説で抗議の声を上げた有権者に「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と言い放ったことがある。

 世論が二分される中で行われた国葬は、国民を分断することで、賛否の分かれる政策を進めてきた安倍政治の象徴でもあろう。

 ただ、こうした安倍政治は、国政選挙での度重なる自民党勝利の結果である。有権者の政治への諦めや無関心が低投票率となり、政権に驕(おご)りや緩みを許してきたとは言えないだろうか。安倍政治の検証は同時に、私たち主権者の振る舞いを自問することでもある。


 やっと終わりました。でも、明らかにしなければならないことはたくさん残されました。「国葬」が「国」を葬る事にならず、「自公政権」を葬ることができれば・・・そのように思っております。献花に並ぶ「国民」、統一教会員、創価学会員、そして株で儲けさせてもらった「富裕国民」ではないでしょうか?

色あせてきましたが、まだ頑張っています。

良い天気が続き、いも掘りも順調です。


安倍元首相の国葬 「本音のコラムニスト」7人から贈る言葉 さよならだけでは納得できないから…

2022年09月27日 | 社会・経済

「東京新聞」2022年9月27日

 安倍晋三元首相の「国葬」がきょう27日、東京・日本武道館で行われる。世論調査では反対が多数を占める中、岸田文雄首相は「国民への丁寧な説明」を繰り返したが、結局、納得のいく説明はないまま、この日を迎えた。世論に背を向けて強行開催される「国葬」を、どうとらえるべきか。「こちら特報部」の本音のコラムニスト7人に語ってもらった。(特別報道部・山田祐一郎、岸本拓也)

◆説明ないまま一線を越えた

 「民主主義の危機だ」。26日夕、新宿駅西口で行われた反対集会に参加した看護師の宮子あずささんは、壇上でこう声を上げた。岸田文雄首相が、銃撃事件から約2週間で早々に国葬開催を決定した経緯に怒りが収まらない。「丁寧な説明と言いながら、まともに説明していない。選挙で選ばれた国会を無視して何でも決めるのは独裁だ」

 事件によって安倍元首相をはじめとする自民党と旧統一教会との長く、深い関係が白日の下にさらされることになった。「安倍氏の言葉は、宗教右派の言葉を反映したものであり、そこに確固たる国家観はなかった」と批判する。集会には、仕事帰りのサラリーマンや若者も多く足を止め、反対派の主張に耳を傾けた。宮子さんは「みんな今回の国葬決定は一線を越えていると思っている」と話す。

◆議会に諮らず民主主義否定

 「本音のコラム」でたびたび国葬の問題点を取り上げてきたルポライターの鎌田慧さんは「いやな感じ」と率直な思いを述べた。

 「周囲の思い付きで、何の検討もせずに閣議決定したのは、アベノマスクを連想させる。ただの人気取りでしかない」と岸田首相の判断を批判する。戦後民主主義の出発点として廃止されたのが戦前の国葬令だったにもかかわらず今回、議会に諮らずに国葬が決められた。「民主主義の否定であり、許せない」と語気を強める。

 事件により、旧統一教会と自民党との深いつながりが明らかになり、岸田氏は「関係を断つ」と宣言した。だが「安倍氏が三代にわたって教団と近い関係にあり、その拡大に協力してきたことを批判せずに国葬をするという矛盾が解決されていない」と強調する。

 デモなどで拡大する国葬反対の声。安倍氏の死を「政治家として志半ばで亡くなり、残念だっただろう」としつつ、こう指摘する。「矛盾を抱えたまま膨大な金を使って弔意や敬意を国民に押しつける支離滅裂さを、みな嫌がっている」

◆「勇み足」へのブレーキない

 文芸評論家の斎藤美奈子さんは「誰が何のためにやろうとしているのか、謎のイベントが粛々と行われようとしている。やって『よかった』と思う人はいるのだろうか」と疑問を投げかける。内閣支持率は低下し、市民は交通規制で不便を強いられている。外国から要人を迎え入れることでテロの危険性も高まる。旧統一教会にビデオメッセージを送った安倍氏は、国葬に値する立派な人だった、と今後の布教に利用されかねないとし、「誰も得しない。岸田首相も『失敗したな』と思っているのでは」。

 新型コロナ禍で東京五輪・パラリンピックを開催したことと比べ、「国葬は『やめましょう』と頭を下げれば済む話。安倍氏の業績の問題ではなく、やる必要のないことを強行するのは岸田首相のメンツの問題だ」と断じた。

 今回の問題で改めて浮き彫りになったのは一度決めたら引き返せない政治の体質だ。斎藤さんは危機感を抱く。「これ自体はそれほど大きな問題ではないかもしれないが、勇み足へのブレーキがない状態。分かっていてもやめられない。そうやって物事が決められていく怖さがある」

◆制度的に不可 人物的に値せず

 問題だらけの国葬に私たちはどう向き合えば良いのだろう。

 青山学院大名誉教授の三木義一さんは、今回の国葬について、「国葬という制度が可能なのかという問題と、故人がそれにふさわしいかという二つの問題があるが、どちらも不可であろう」との見方を示す。

 とりわけ、後者の問題について「首相として種々の疑惑を抱えていた上に、多くの日本人被害者を出してきた外国宗教団体(旧統一教会)の手を借りて自らの政権を維持してきたこと、銃撃事件もその団体との関わりが生み出した可能性が明らかになった。人間としても政治家としても国葬に値しないと言わざるを得ない」とばっさり。「岸田首相は、国葬強行により、一体誰を励ましたいのだろう?」とかたくなな岸田首相の姿勢に首をかしげる。

◆異論排除する安倍政権を象徴

 「安倍政治を、国が葬る儀式だと考えないといけない」と語るのは、ジャーナリストの北丸雄二さん。その心は「国葬は、安倍政治の集大成だから」。

 北丸さんが続ける。「安倍政治は、国会を軽視し、大切なことは閣議決定で先行して決めた。物事を敵味方主義でとらえ、異論を排除して敵は徹底して無視する。身内やお仲間だけを優遇した安倍政治の結果が、モリ・カケ・サクラや、汚職まみれの五輪だった。そういう政治姿勢が、国葬を強行するに当たってすべてに入っている」

 ただ、過去、強硬姿勢が貫かれたのは「安倍氏という強烈なキャラクターがいたから」とみる。「岸田さんは強行突破で国葬を決めたものの、そういうキャラじゃないので、支持率も下がっておろおろしている。国葬を巡るどたばたは、安倍政治の断末魔のよう。政府も自民党も安倍政治を葬り去るつもりで儀式に取り組まないと未来がないのでは」

◆国家の私物化 ばかにしている

 文筆家の師岡カリーマさんも「モリ・カケ・サクラ疑惑に象徴されるように、安倍さんは権力を私物化したという批判が根強いが、自民党や一部の支持者に大切な人だから国葬をする、というのは、もはや国家の私物化では。しかも、国葬を取り仕切るのが、桜を見る会と同じ会社というのは驚くべきこと。国民の声に耳を傾ける首相のはずだった岸田さんが、これでは国民をばかにしているように見える」と語る。

 安倍氏が戦後最長の首相任期を務めたことを国葬の論拠とした点にも疑問を抱く。「重責だというのは分かりますが、日本の総理大臣であるということは、それほど大きな犠牲を伴う仕事なのでしょうか。自己犠牲というなら、たとえば、福島第一原発の事故収束現場で命を懸けて働き、亡くなった人の方が国葬に値するのでは」

◆立派だと誤認 子供の影響心配

 安倍政権で文部科学次官を務めた現代教育行政研究会代表の前川喜平さんは「国葬とは、国が国民にこぞって悲しみ悼めと要求する、一人一人の内心の自由を侵害する行為。やはり反対だ」と語る。政府から国葬への案内状が届いたが、欠席の返事を出した。

 国葬が強行されることで、心配なのは子供たちへの影響だという。「なぜ今日は国葬があるのか、子供たちは疑問を持つ。しかし、教師の多くは政府の公式見解をそのまま伝えるだけだろう。『安倍さんは立派な人』という観念を植え付け、無批判に権威に従う人間を育ててしまうことになりかねない」と懸念する。

 その上で「良い意味で政治教育のチャンスでもある。心ある教師たちが、国葬を巡って世の中の意見が分かれている状況を説明し、これは政治的な問題で、主権者である国民が考える問題なのだと主権者意識を高める授業をする可能性はある」と期待しつつ、「そういう教師がいったい日本に何人いるだろうか」。

◆デスクメモ

 安倍氏は生前、雑誌で「反日的な人が五輪に強く反対している」と語った。いま同じ雑誌が「国葬反対派は極左暴力集団だ」と断じる。反対を唱える多くの国民を、そのように中傷するのが安倍氏とその仲間たちなのだ。きょうは、そんな異常な考え方を葬送する日として過ごしたい。(歩)

*  *   *

国葬で安倍応援団「悼む気持ちないのか」に騙されるな! 安倍元首相こそ災害や政治の犠牲者を「悼む気持ち」のない冷淡政治家だった(面白い記事だが長文。興味のある方は「国葬で安倍応援団「悼む気持ちないのか」に騙されるな! 安倍元首相こそ災害や政治の犠牲者を「悼む気持ち」のない冷淡政治家だった|LITERA/リテラ (lite-ra.com)」

「リテラ」2022.09.27 07:33|編集部

 

「安倍元首相を悼む気持ちはないのか」「亡くなった人や遺族に寄り添わないのはおかしい」いう主張に対して言っておきたいのは、安倍元首相こそ、自らの政治の犠牲になった国民に寄り添うことも、悼むこともしない政治家だったという事実だ。

「悼む気持ち」どころか、国民の生命を守るという責務さえ果たさず、その態度でさまざまな被害者・遺族を傷つけ、さらなる被害者を出す政策を主導してきたのが、安倍晋三という政治家なのだ。

 そんな人物に弔意を事実上強要しようとする「国葬」を実施することには、真正面から反対と言わなければならないだろう。


落葉きのこ出てきました。


国葬反対、反戦、脱原発にLGBTQ差別抗議…デモのうねり今も 若者に当事者意識 議会の外から政治変える

2022年09月26日 | 社会・経済

「東京新聞」2022年9月26日

<民主主義のあした>
代々木公園で行われた「さようなら戦争 さようなら原発 9・19大集会」で、安倍元首相の国葬反対などを訴える参加者=9月19日午後、東京都渋谷区で

代々木公園で行われた「さようなら戦争 さようなら原発 9・19大集会」で、安倍元首相の国葬反対などを訴える参加者=9月19日午後、東京都渋谷区で

 安倍晋三元首相の国葬が閣議決定された7月以降、東京をはじめ各地で、国葬に抗議するデモや集会が開かれている。新型コロナウイルス禍で外出自粛や密回避を求められ、交流サイト(SNS)などインターネット上での意思表示が盛んになった今も、実際に集まる従来型のデモは健在だ。ただ参加者は、比較的高齢の人たちが目立つ。

 一方、若者が中心となる動きもあった。性的少数者(LGBTQ)への差別に反対し、東京・永田町の自民党本部前で行われた7月のデモは、20代の人たちが呼び掛けた。中心となった海外出身の若者は「選挙権のない自分が社会をよくするには、デモしかない」と意義を強調する。

 昨年10月の衆院選と今年7月の参院選を経て、岸田文雄政権は2025年まで大型の国政選挙がない「黄金の3年」を手にしたという見方もある。デモや集会を通じて為政者に声を届けつつ、こうした運動を将来世代につなげる重要性を指摘する識者も少なくない。

【関連記事】「今すぐ行動しないと…」15歳が訴えた 東京で400人、世界気候アクションに集う若者の「切迫した思い」

◆「無関心でいいはずない」「何かが起きていると気付くきっかけに」

 「初めて参加したが、人が多くてびっくり。でも同世代の人がいない。情けない」。19日、代々木公園(東京都渋谷区)と周辺で行われた国葬中止などを求める集会とデモ。台風の影響による悪天候にもかかわらず1万3000人(主催者発表)が参加したが、若者の姿はまばらで、千葉県流山市の男子大学生(23)はさみしそうな表情を浮かべた。

 新型コロナウイルスの流行が始まった2年ほど前、行動自粛を求めつつ補償も検査もきちんとしようとしない状況に不満で「政治はひどい」と感じたという。

 だが、友人と政治の話をしても「はぐらかされる感じ」という。「忙しくて政治に目が向かないのは分かるが、これから何十年と生きていく私たちの世代がこういう問題に無関心でいいはずがない」と話す。

 それ以降、交流サイト(SNS)で考えを発信してきたが、収まらない。「こういう場所に来て、訴えよう」と思ったという。

 一緒に参加した宇都宮市の男子大学生(21)もデモは初めて。渋谷駅周辺を行進していると、若者の冷たい視線が気になり、ばかにするような言葉を浴びせる若者グループもいたという。

 自分でも「旗を掲げて、表に出てきて、強い言葉で『反対』を表明する。言葉は悪いが昭和の闘い」と思う。それでも「こんなに多くの人が反対しているんだ、何かが起きているんだと気付いてもらうきっかけにはなる」と感じた。27日の国会正門前の集会にも参加するつもりだ。(加藤益丈)

◆仲間と連帯 政治はすぐには変わらないが、つながりは生まれる

自民党本部前で抗議の声をあげるアンドロメダさん=東京都千代田区で

自民党本部前で抗議の声をあげるアンドロメダさん=東京都千代田区で

 「LGBTQは病気ではありません」

 参院選さなかの7月4日夜、東京・永田町の自民党本部前。会社員の「アンドロメダ」さん(28)=活動名、東京都=はマイクを握り、訴えた。同党議員が多数参加する「神道政治連盟国会議員懇談会」の会合で、同性愛を「後天的な精神の障害、または依存症」などと表現した冊子が配られたことに抗議するデモだった。

 「差別をやめろ」などと書いたプラカードを手にした人たちが、歩道上に長い列を作った。SNSの中継を通じ参加した人もいた。デモを初めて企画したアンドロメダさんは「怒りや悲しみの発散と同時に『こんなに仲間がいる』と連帯を示す意味もあった」と話す。

 メキシコ生まれのカナダ育ち。日本の大学に留学後、日本企業に就職した。「日本は法的にはLGBTQに差別的。選挙の投票権がない自分が、この社会を良くしたいと考えた時、デモしかなかった」という。

 2018年夏、LGBTQを「『生産性』がない」と表現した杉田水脈みお衆院議員への抗議デモに参加。虹色の旗がはためく様子を見て「こんなに怒っている人がいる。日本でもデモはできる」と思ったという。

 その経験が今回につながった。ネットで冊子の差別的な表現を知り「間違った情報で絶望する人がいる。『ダメだ』と言わないと、差別を許すことになる」と思った。SNSに「デモやろうよ」と記すと、友人らが手伝うと名乗り出た。

 当日。登壇者が涙ながらにプライベートな話や思いを伝えた。その一人、トランスジェンダー当事者の浅沼智也さん(33)は「若い人や外国ルーツの人など初めてデモに参加した人が多かったと思う。自分たちの人権問題と考える人が増えていると感じる」と語る。 

 アンドロメダさんも手応えを感じている。「政治はすぐには変わらない。でも、数年前のデモに希望を見いだした自分のような人間が数年後、デモをするかもしれない。つながりは生まれると思う」(奥野斐)

◆為政者に直接声を届け、時には震え上がらせる~五野井郁夫・高千穂大教授(政治学)
インタビューに答える高千穂大の五野井郁夫教授=東京都新宿区で

インタビューに答える高千穂大の五野井郁夫教授=東京都新宿区で

 2010年代以降、暴力的でなく、高齢者や女性、若者を含む多様な人々が参加するデモが各国で登場した。中東の民主化運動「アラブの春」や、香港での雨傘運動が代表的だ。ツイッターなどのSNSが普及し、運動のメッセージや手法が世界に拡散されるようになった。新自由主義が行き詰まり、「選挙だけでは変わらない」と考えた人々が「反乱」を始めた側面もある。

 日本も11年の東京電力福島第一原発事故を機に、変わった。昔のデモは暴力的で悲壮感があったが、脱原発デモにはお祭りのようなムードがあった。政治に関心はあるが、デモに参加した経験がない人も足を運んだ。世論に押され、民主党政権は将来的な「脱原発」の目標を掲げた。政治家や、彼らと利権でつながる一部の人だけでなく、議会の外にいる人にも政治を変える力があると証明した。

 首相官邸や国会議事堂の前で、週末に小規模なデモが行われ始めたのも、画期的だった。SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動、シールズ)らによる安全保障関連法への抗議や、待機児童の解消を求める親らのデモの舞台にもなり、政治家に市民の声を聞かせた。これらと並行し、ヘイトスピーチへの抗議や性暴力・性差別への反対など、各地で多様なデモが行われるようになった。

 市民の声が強まると、政府も一定の配慮を迫られる。政府の判断で検察幹部の定年を延長できるようにする検察庁法改正案は、ツイッター上で抗議が広がり、廃案になった。安倍晋三元首相の国葬を巡っても、当初は1967年の吉田茂元首相と同等の規模・形式を目指したとされるが、弔意表明を求める閣議了解を見送るなど、後退してきた。

 2025年夏まで国政選挙がない可能性が取り沙汰されている。仮にしばらく選挙がなくても、有権者はデモなどを通じて為政者に直接声を届け、時には震え上がらせることもできる。民主主義社会における有権者は、外野や観客ではなく、ボールを持つ為政者に勝負を挑めるプレーヤーなのだ。(聞き手・大野暢子)

◆疑問や違和感 声出せる社会に~富永京子立命館大准教授(社会運動論)
インタビューに答える立命館大学の富永京子准教授=東京都千代田区で

インタビューに答える立命館大学の富永京子准教授=東京都千代田区で

 今年の年始、民放ドラマで、市民のデモが主人公らを突然取り囲み、一方的に主張を浴びせる場面があった。昨年12月、NHKで放送された東京五輪を扱うドキュメンタリーでは、匿名の男性に話を聞く場面で、お金をもらって五輪反対デモに動員されたとする、虚偽の字幕がつけられた。

 なぜデモと負のイメージが結び付けられたのか。2019年にインターネット上でデモへの年代別の意識を調査したところ、60代が最も好意的に捉えていたのに対し、年代が下がるにつれ「迷惑」「偏っている」などの評価が増えた。

 背景にあるのは「怒り」を過剰に忌避する風潮と、「社会は平等であり、努力は報われるはずだ」というかりそめの空気感だ。政治に危機感を抱く人や、自分の力ではどうしようもない理不尽な目に遭った人が立ち上がったのに、「政治や社会のせいにするのは筋違い」「文句を言うのはわがままだ」とみる人がいる。

 では、疑問や違和感をやり過ごすのが正解なのか。安倍晋三元首相の国葬を例に考えたい。1967年に吉田茂元首相の国葬が行われた時、抗議する人々がいたと伝えられている。こうした声がなければ、安倍氏の国葬を「おかしい」と感じても、そう言いづらい。

 声を上げずにいると、政治に問題があっても、違和感さえ抱かなくなるだろう。今の世代が声を上げておけば、将来の世代も同様の事態に際し、疑問や違和感を表に出せる。こうした社会を維持できることが、デモの意義だ。不当に傷つけられ、怒る人に「そつなくかわす力」を求める社会は、やはりおかしい。

 社会運動の規模や成果を評価し、「失敗」と決めつける声もあるが、社会運動の影響は多面的で、すぐに分かるものではない。デモの規模や成果、どれくらい継続したかで価値を測ろうとする必要はない。小さな声だからといって意味がないわけでもなく、誰がやってもよい。たった一人のブログや、シュプレヒコールも行進もしない小規模な運動が、共感を集めて政治を動かすこともある。(聞き手・大野暢子)


今日は何も言うまい。


元電通マン。国葬や統一教会、五輪汚職のすべてに関わる自民党議員の名前

2022年09月25日 | 社会・経済

まぐまぐニュース!2022.09.22 621

         by 『きっこのメルマガ』

自民党の裏に電通人脈あり?

    夏の参院選以来、支持率急落に歯止めが掛からない岸田内閣ですが、先週末17日、18日の両日に実施された毎日新聞と社会調査研究センターの全国世論調査では、1カ月前の前回調査より7ポイント下落し、とうとう「危険水域」と呼ばれる30%を割り込んだ「29%」となってしまいました。一方、不支持率は前回調査より10ポイント増の64%で、完全なるダブルスコアとなりました。

    自民党の歴代内閣の支持率を見ると、「支持」が30%前後の場合、「不支持」は45%ほどで、「どちらとも言えない」が25%くらいのケースがとても多いのです。しかし、今回の岸田内閣の場合は、この「どちらとも言えない」が極めて少なく、多くの無党派層が明確に「不支持」と回答しているところが特徴です。つまり、多くの国民が「この内閣ではダメ」「この首相ではダメ」と、ハッキリと「ダメ出し」をしているのです。

    世論調査の他の項目を見ると、旧統一教会問題に対する岸田首相の対応について、「評価する」が12%、「評価しない」が72%となり、自民党支持者でも半数以上が「評価しない」と回答しています。また、岸田首相が強行する安倍晋三元首相の国葬については、「賛成」が27%、「反対」が62%となっており、この2点が、内閣支持率を急降下させている大きな原因であることが分かります。

    安倍元首相の襲撃事件を発端に表面化したのが旧統一教会問題なので、安倍元首相の国葬の是非と旧統一教会問題とに関連があることは周知の事実です。そして、岸田内閣の支持率を下げ続けているこの2つの問題とは、大きく距離を置いたところで並行的に進んでいるのが、東京五輪の汚職事件です。しかし実際には、この3つの問題が「電通人脈」という横のパイプで繋がっている疑惑が浮上しているのです。

    東京五輪の汚職事件は、電通の元顧問で東京五輪組織委の理事をつとめていた高橋治之容疑者(78)の受託収賄容疑による逮捕で口火が切られました。紳士服大手のAOKI前会長、青木拡憲容疑者(83)が贈賄容疑で逮捕され、組織委の当時の会長だった森喜朗元首相(85)に「現金200万円を手渡した」と供述しました。この供述を受けて、東京地検特捜部は数回にわたり森元首相を参考人聴取しました。

    続いて、出版大手KADOKAWAの会長、角川歴彦(つぐひこ)容疑者(79)も贈賄容疑で逮捕され、JOC前会長の竹田恒和氏(74)が任意の事情聴取を受けていたことも報じられました。他にも細かい流れはありますが、これまでずっと動かなかった東京地検特捜部が、安倍元首相が亡くなったとたんに、まるで水を得た魚のように、誰にも遠慮することなく動き出したように感じるのは、あたしだけでしょうか?

    ま、それはそれとして、「五輪のドン」と呼ばれ、誰も逆らうことのできなかった主犯の高橋治之容疑者は、AOKI側から受け取った約2億3,000万円のうち、約1億円を中抜きし、その一部を自身のコンサルティング会社コモンズが運営する六本木のステーキ店「ステーキそらしお」の赤字補填のために流用していたと報じられました。

    六本木のオフィスビル1階に入居する「ステーキそらしお」は、奥にVIP用の特別席があり、政治家や財界人などの接待に使われて来ました。今回の東京五輪汚職事件でも、高橋容疑者と青木容疑者の打ち合わせは、このステーキ店の特別席で繰り返し行なわれて来たと供述されています。過去の「首相動静」を確認すると、2015年10月19日には安倍晋三元首相が、2020年12月15日には菅義偉前首相が来店しています。

そして、このステーキ店の「常連」だったのが、2018年の第4次安倍改造内閣で内閣府特命担当大臣として初入閣し、翌2020年の菅内閣では新設されたデジタル改革担当大臣に就任した、自民党の平井卓也衆議院議員(64)なのです。平井議員は大学を卒業して電通に入社し、7年ほど勤めた後、元参議院議員の祖父が創業したラジオ四国の社長などの家業を経て、2000年の衆院選に無所属で初当選し、当選後に自民党に入党するという毎度おなじみのパターンの議員です。

    あたしは、この自民党の十八番を見聞きするたびに、巨人が江川卓を獲得した「空白の一日」を連想してしまうのですが、そう言えば平井議員の名前にも「卓」という字が入ってますね(笑)…なんていう箸休めも織り込みつつ、電通出身の平井卓也議員にとって、電通の顧問だった高橋治之容疑者は大先輩というわけで、平井議員は六本木のステーキ店にセッセと通い続けました。そして、グルメサイト「Retty」に、「ステーキそらしお」について「フィレステーキが最高!」などと計9回もオベンチャラのコメントを投稿していました。

    ちなみに平井議員は、数々のネット工作で悪名高い自民党の「J-NSC」の代表をつとめており、第2次安倍政権発足直後の2013年には、安倍人気を高めるためにスマートフォン向けゲーム「あべぴょん」を発案する一方で、ニコニコ動画で生放送された「ネット党首討論会」では、社民党の福島みずほ参議院議員に向けて「黙れ、ばばあ!」と投稿したことが問題視されました。また、2020年には、国会の質疑中にタブレット端末でワニの動画を見ていたとして批判されました。

    ま、そんな些事はどうでもいいのですが、2015年から学生団体「SEALDs(シールズ)」による安倍政権への抗議デモが拡大すると、これに対抗するため旧統一教会の政治組織「国際勝共連合」は学生信者らによる「大学遊説隊UNITE(ユナイト)」を結成し、2016年からシールズを批判し安倍政治を賞賛するデモや演説を開始しました。これは安倍官邸の指示だったと言われていますが、この時、SNS上で「UNITE」の宣伝を行なっていたのが平井議員なのです。

    平井議員は2016年、2017年、2021年と、地元香川で開催された旧統一教会の関連団体「天宙平和連合(UPF)」が主催するサイクリングイベント「ピースロード」の実行委員会の委員長をつとめています。また、2017年1月には、旧統一教会の香川支部などが高松市で開催した「真の父母様御聖誕記念礼拝」に出席しています。そして平井議員は、今年2022年6月13日、「天宙平和連合」が創設した「世界平和国会議員連合」にも複数の自民党議員とともに参加し、日本の議員連盟の幹事に就任しました。

    さて、ここでちょっと話題を変えますが、このまま行くと60%を超える国民の声を無視して9月27日に強行されてしまう安倍元首相の国葬は、企画などの業務を大手イベント会社ムラヤマが1億7,600万円で落札しています。今回の落札について、岸田首相は「正式な手続きのもとに落札されたものだと認識している」と説明しましたが、ムラヤマは安倍政権下の2014年から2019年まで5年連続で「桜を見る会」の会場設営業務を落札している「自民党御用達」の企業です。

    しかし「桜を見る会」と今回の国葬とでは、大きく異なる点があります。それは、日本テレビホールディングスがムラヤマの全株式を取得し、今年2022年3月31日付で、ムラヤマは日本テレビホールディングスの完全子会社となっていたのです。日本テレビと言えば筆頭株主は読売グループ、読売グループと言えば電通、電通と言えば自民党…というわけで、まるで絵にかいたような相互利権の構図が見えて来ました。

    でも、これだけでは終わらないのが、絶対に断ち切ることなどできない自民党と旧統一教会とのディープすぎる癒着なのです。今回、安倍元首相の国葬が行なわれる日本武道館の現在の会長は、安倍元首相と同郷で自民党の憲法改正実現本部の最高顧問をつとめる高村正彦(こうむら まさひこ)氏ですが、その高村氏に旧統一教会から高級乗用車が無償提供されていたことが分かったのです。

    安倍政権が旧統一教会の数々の要望を政策に反映させて来たことは、これまで何度も報じられて来ましたが、その集大成とも言えるのが「憲法改正」なのです。自民党の改憲草案は、旧統一教会の政治組織「国際勝共連合」の希望する改憲案がすべて盛り込まれていますが、安倍政権下でこの改憲草案を作成したのが、自民党の憲法改正実現本部の最高顧問、高村正彦氏なのです。

    こうして見ると、安倍元首相の国葬、旧統一教会問題、東京五輪汚職事件という3つの問題のすべてに「電通人脈」が関わっていることが分かると思います。そして、そのキーパーソンとなるのが、すべての問題に関わっている元電通の平井卓也議員なのです。

    平井議員はデジタル担当相だった2021年4月7日、五輪アプリの事業費に関する戦略会議の席で、共同事業体に参加していたNECに対して「NECには死んでも発注しない」「今回の五輪でぐちぐち言ったら完全に干す」などと暴力団員のような口調で述べ、さらには幹部職員にNECの会長の名前を挙げて「脅しておいた方がいい」と指示しました。そして、この時の音声データが流出したことで、謝罪に追い込まれたことは記憶に新しいと思います。

    権力を傘に相手を恫喝し、自分の思い通りに物事を進めさせる。東京五輪汚職事件の高橋治之容疑者しかり、これが電通出身者の「通常運転」なのでしょう。しかし、私利私欲のための汚職事件ならともかく、日本国民すべての生命や財産にも関わる「憲法改正」がこのような手口で進められ、カルト教団の思い描く通りの内容に書き換えられてしまったら、この国は終わりです。今後は平井卓也議員の動向に注視しつつ、安倍派の操り人形と化した岸田文雄首相のことも監視して行きたいと思います。

(『きっこのメルマガ』2022年9月21日号より一部抜粋・文中敬称略)

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根はまだまだ深く広がって行くようです。
今徹底した「改革」をしなければ、大変な事態に追い込まれそうです。
政権交代を目指して、野党共闘で頑張れ!


「気候危機、止めるのは今しかない」渋谷で若者ら400人がデモ行進

2022年09月24日 | 自然・農業・環境問題

世界の若者が一斉に気候危機対策を求めて声を上げる「世界気候アクション」 が23日に行われました。東京・渋谷のデモに参加した若者が訴えたことは。

気候危機対策の強化を訴えてデモ行進をする参加者=2022年9月23日、東京都渋谷区Huffpost Japan

「進み続ける気候危機。それ止めるのは今しかない」「未来を守るのは私たち。必要なのは気候正義」ーー。

若者らが各国政府などに気候危機対策の強化を訴える「世界気候アクション」が23日、世界各地で一斉に行われた。東京・渋谷では、時折小雨が降るなか、高校生や大学生の若者ら約400人が3キロをデモ行進した。

参加した若者はどんな思いを訴えたのだろうか。

「いのちを傷つけているのは私 守れるのも私」

大学3年生の田原美優さん(20)は「気候危機 いのちを傷つけているのは私 守れるのも私」というプラカードを首から下げて行進した。

田原さんの祖父母が暮らす熊本県では、2018年7月の豪雨で県内を流れる球磨川が氾濫し、浸水した老人ホームで逃げ遅れた老人など県内で70人近くが亡くなった。球磨川といえば、幼い頃に遊んだ大好きな場所。「美しい自然が凶器になって、誰かの命が奪われているのが本当に辛かった」。

一方で、この出来事は、自分の行動を見直す機会にもなったという。豪雨や熱波など世界中で起こっている異常気象の一因は気候危機であり、先進国に住み大量のCO2を排出している自分は「加害者」の側で、知らぬうちに誰かの命を奪っているかもしれないと気付いたからだ。

行進でマイクを持ち、一人でも多くの人に目を向けてもらえるよう、沿道に向けて声を張り上げた。

「気候変動がこんなにやばいって知ったら、絶対誰も行動を起こさずにはいられなくなると思う。だからまずは知って、それから調べてみてほしい」

田原美優さん

田原美優さんHuffpost Japan

「大人も一緒に動いて」

高校2年生の晴奈さん(16)は、2018年に当時15歳だったスウェーデンの環境活動家・グレタ・トゥーンベリさんが世界的なムーブメントを起こすのを目の当たりにして「自分も誰かのアクションのきっかけになりたい」と考えるようになった。

若者だからこそ社会に訴えるパワーがあると思う一方で、選挙権を持たないなど意見を社会に直接反映できないもどかしさも感じる。だからこそ「大人に訴えたい」という思いで、行進に参加したという。

「本当は10代という(貴重な)時間を他のことに充てたかったけれども、これほど(気候危機の)問題が大きくなってしまった以上、いろんな人に知ってもらわなければいけないという思いで参加しています。私たちは未成年でできないことが沢山あるので、大人の方に一緒に動いてほしい」

 世界気候アクションとは?

世界気候アクションは年に数回、世界各国で同時に開催されている。その担い手の中心は、グレタさんの抗議活動を機に広がった運動「Fridays For Future(FFF)」に参加する若者らだ。

日本では23日、各地のFFFの呼びかけで、東京のほか、北海道や宮城、愛知などでス
普段はアパレルブランド「パタゴニア」の渋谷店で働いているという3人。中央の男性は「声を上げることによって偏見の目を向けられることもあるかもしれないが、それでも声を上げ続けたい。何かが変わっていく大きな一歩にもなるかもしれないから」とデモに参加した理由を話した=2022年9月23日、東京都渋谷区

普段はアパレルブランド「パタゴニア」の渋谷店で働いているという3人。中央の男性は「声を上げることによって偏見の目を向けられることもあるかもしれないが、それでも声を上げ続けたい。何かが変わっていく大きな一歩にもなるかもしれないから」とデモに参加した理由を話した=2022年9月23日、東京都渋谷区Huffpost Japan

タンディングアクションや勉強会などが行われた。デモ行進は、新型コロナ感染拡大前の2019年以降、3年ぶりの実施となった。

中学1年生の参加者。「気候危機は、今取り組まないと間に合わない。自分の未来のためにも、みんなの未来のためにも、そして後輩の未来のためにも、頑張りたい」と意気込む=2022年9月23日、東京都渋谷区

中学1年生の参加者。「気候危機は、今取り組まないと間に合わない。自分の未来のためにも、みんなの未来のためにも、そして後輩の未来のためにも、頑張りたい」と意気込む=2022年9月23日、東京都渋谷区Huffpost Japan

両親と参加した10歳。「私の小さな声でも大きな力になると信じている」と力強く語った=2022年9月23日、東京都渋谷区
両親と参加した10歳。「私の小さな声でも大きな力になると信じている」と力強く語った=2022年9月23日、東京都渋谷区Huffpost Japan


きょう昼まで雨。昨日からおよそ40mm。すっかり秋の気配です。

栗拾いができます。

すごい。


雨宮処凛がゆく!コロナ禍と自satu。

2022年09月23日 | 生活

マガジン9  2022年9月21日

コロナ禍で自殺が増えたことは誰もが知る通りだ。

 2020年で2万1081人で、19年と比較して912人増(21年は2万1007人)。実に11年ぶりに前年を上回った。特に女性の増加がすさまじく、935人も増えて7026人。

 要因はさまざまだろう。

 コロナ禍でクビを切られたり、自身で経営していた事業がうまくいかなくなり、先の見えない日々に追い込まれた人々。生活苦に追い詰められて命を絶った人もいれば、コロナ禍特有の孤立がもともとあった精神疾患などを悪化させたケースも少なくないはずだ。

 また、女性特有の事情に目を向けると、多くの困難が浮かんでくる。

 ステイホームが呼びかけられる中、19年と比較して20年には1.5倍となったDV相談。子どもの学校の一斉休校によって、仕事を続けられなくなった女性たち。また、介護施設などでのクラスター発生により、高齢者を自宅で世話しなければならなくなった女性たちもいる。この2年半を見ていると、コロナ禍で女性が貧困に晒されるだけでなく、より無償ケアを強いられる現実が浮かび上がる。

 それに関連する数字もある。女性自殺者のうち、「同居人あり」のケースが209人増加しているのだ。対して男性自殺者のうち「同居人あり」は953人減少。同居人の多くが家族だと思うが、ここから見えてくるのは、男性の場合、同居人の存在が自殺リスクを低めるものの、女性の場合は同居人が自殺リスクを高めるものになっているということではないだろうか。

 さて、コロナ禍ではステイホーム、テレワークが推奨されたわけだが、これらが女性の負担を増やしたことも各種データから明らかだ。たとえば、21年4月28日、内閣府の男女共同参画局が発表した「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会報告書〜誰一人取り残さないポストコロナの社会へ〜」の報告書には、テレワークに関する興味深い調査結果がある。

 男性では、テレワークのメリットを上げる声が目立つ。「通勤が少なくなりストレスが減る」(27.7%)「通勤時間を有意義に使える」(27.7%)「家族と一緒の時間が増えてよい」(19.2%)などだ。

 一方、女性から聞こえてくるのは「家事が増える」(17.6%)「光熱費等の出費が増える」(31.2%)「自分の時間が減ることがストレス」(13.6%)などの声。

 つまり、テレワークで快適になった男性が増えた一方で、女性の負担が増えている傾向があるのだ。「テレワーク、男は天国、女は地獄」という川柳のひとつでも詠みたくなってくるが、「まさにそう」という声は少なくない。

 一方、コロナ禍と自殺を語る時に外せないのは、相次ぐ有名人の自殺だ。

 20年7月18日に三浦春馬氏、9月14日に芦名星氏、9月27日に竹内結子氏が亡くなったことは世間に大きな衝撃を与えた。特に女性芸能人2人の自殺が相次いだ9月のショックは大きかったのだろう。翌10月の自殺者数は跳ね上がり、わずかひと月で2000人を超えて2153人。男性は前年同月比で21.3%増えて1302人。女性は前年同月比でなんと82.6%も増えて851人となっている。

 同時期は、働く女性(特に非正規)にとって不安が募る時期でもあった。20年8月の労働力調査によると、パート、アルバイトは前年同月と比較して74万人減。その多くを占めるのが女性で、その数、63万人となっている。

 先が見えない混乱と、失業から呼び起こされる経済的不安。なかなか人と会えずにたまっていくストレス。孤立。そんな中、テレビからもたらされた、昔からよく知る芸能人の死。やはりこの状況からは、死によってしか脱することができないのかもしれない……。そう思うほど追い詰められている人が、この国には多くいる。だからこそ、自殺報道には配慮が必要なのだ。

 苦しいのは大人だけではない。子どもの自殺も増えている。2020年の小中高生の自殺者を合わせると過去最多の499人。

 ステイホームは子どもから逃げ場をなくした側面もあるだろう。私が耳にしたのは、父親が失業して両親の喧嘩が増え、自分につらくあたるようになったなどの声。「家が地獄」の場合、他に居場所があればいいが、外出自粛や商業施設の休業は、子どもたちからその居場所を根こそぎ奪うものだった。

 20年5月には、木村花さんの自殺が報じられた。ネットの誹謗中傷によって追い詰められたことが原因と言われているが、コロナ禍は、SNSの攻撃性を恐ろしいほどに高めたと思っている。みんなが鬱屈した思いをぶちまけるように、ターゲットと決めた誰かを徹底的に攻撃する。コロナ以前もそうだったが、コロナ禍はその傾向をより一層、病的なまでに執拗なものにした。攻撃される側はたまらない。平時であれば現実という逃げ場があるものの、ステイホームによってネットの世界の比重がどうしても高くなってしまった中での攻撃。それは今もエスカレートし続けている。

 さて、ここまでこんなことを書いたのは、ジャーナリスト・渋井哲也さんの『ルポ自殺 生きづらさの先にあるのか』(河出新書)を読んだからだ。

 1990年代から自殺や生きづらさの問題を追い続けてきた渋井氏の、集大成のような一冊だ。

 本書は、コロナ禍で自ら命を絶ったアイドルの死についても触れている。月乃のあさん(18歳)だ。名古屋市内のビジネスホテルの屋上から飛び降りたのだという。一緒にいた女子高生との自殺で、原因のひとつは、ネット上の誹謗中傷だったようだ。

 彼女の死の背景にも、コロナ禍で攻撃性を暴走させるSNSがあったのだろう。さまざまなトラブルから不安定となり自殺をほのめかす彼女に対して、「死ぬ死ぬ詐欺」という心ない言葉もあったようだ。死を思いとどまらせる言葉をかけることもできる場で、言葉の刃が誰かの死のトリガーになってしまう悲劇。

 本書で驚いたのは、「インターネット時代の自殺」というタイトルの2章だ。

 これを読んで、「自殺配信」が今や「誰にでもできるもの」になってしまっていることに驚いた。ユーストリームやツイキャスで配信するのだ。女子中学生がマンションからの飛び降りを配信し、女子高生が駅での飛び込み自殺を配信する。その光景を思うと、思わず思考停止したくなってくる。

 98年に自殺者が3万人を突破してから、もう24年。国は自殺対策に力を入れ、その数は3万人を下回ったが、それでも、今も1日あたり57人が自ら命を絶っている

 そうしていくら国が力を入れようとも、「死にたい」人々が激減することはないだろう。その背景には、「この国で生きるハードル」が年々上がっていることもありそうだ。

 役に立ち、生産性が高く、コミュ力があり即戦力で、どんなに長時間労働をしても倒れない強靭な肉体とどんなにパワハラされても病まない強靭なメンタルを持つ者しか勝ち残れない過酷なレース。死にたい人の中には、そんな企業社会でボロボロにされてしまった人も多い。

 根本からこの国のシステムをはじめとしていろいろなことを見直さない限り、真の自殺対策にはならないだろう。

 もうひとつ。経済的理由からの自殺は、セーフティネットを拡充することで防ぐことができるという視点も忘れたくない。「生活保護の水際作戦を決してしない」「本人が嫌がり、また扶養が期待できないことがわかっているのに扶養照会(家族に連絡がいくこと)をしない」などを徹底するだけで減らせる自殺は確実にあるのだ。

 しかし、このコロナ禍で生活保護を利用する人が増えているかと言えば、減っているのが現実だ。コロナ前の2019年5月に生活保護を利用している人数は207万8707人。これに対して20年5月は2万人以上減って205万7703人、21年はさらに約1万7000人減って204万11人。そして22年5月はそこからさらに約1万6000人減って202万3336人(厚生労働省・被保護者調査より)。

 なぜ、困窮する人が増えているのに利用者は減り続けるのか。生活保護バッシングによって「どうしても生活保護だけは嫌」と我慢に我慢を重ねている人も多いが、やはり個々に事情を聞くと「役所に行ったものの、もっと大変な人はいると追い返された」など水際作戦はいまだに横行している。

 そんなふうに「最後のセーフティネット」から漏れる人が多くいる一方、都内の食品配布や炊き出しでは、ここに来て過去最多の数字が叩き出されている。

 例えば先週末の9月17日、新宿の都庁前の食品配布(「もやい」と「新宿ごはんプラス」)には、過去最多の584人が並んだ。住まいはなんとか確保しているものの、一食分でも二食分でも食費を節約しなければならない人たちが長い列を作っているのだ。その中には、生活保護を利用できるのに利用できていない人もたくさんいるだろう。

 現在、感染者は減少しており、第7波も収束か、と見られている。が、しばらくすればまた次の波が来るだろう。そのたびに医療崩壊し、自宅療養で亡くなる人が出て、というスパイラルはいつまで続くのだろうか。

 自宅療養で命を落とす人も、困窮の果てに自殺に追い込まれる人も、私には国の無策の犠牲者に思える。

 「自殺」から見えてくる、この国の様々な歪み。改めて、多くのことを考えさせられた。

10月2日(日)18時から高円寺パンディットにて、『ルポ自殺 生きづらさの先にあるのか』著者の渋井哲也さん、そしてジャーナリストの畠山理仁さんとトークイベントをします。
 
 「新刊『ルポ自殺』から考える、生きづらさから政治まで〜長年、同じテーマで取材を続けること


今日は朝から雨。畑にも出ず、色々とやりたいことに時間をつぶす。スマホの機種変更、車の不調を見てもらう。

園のようす。
昨日の写真ですが。

最低気温が注目です。
秋も深まってゆくようです。


旧統一教会問題から考える国葬反対論 自民の新指針、安倍氏不問でよいのか

2022年09月22日 | 社会・経済

「東京新聞」2022年9月22日 

 安倍晋三元首相の国葬を考える際、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の件も見過ごせない。自民党は教団を「問題あり」とみなし、行動指針を改める方針を示した。となると、接点があった安倍氏は自民基準でも要注意人物にならないか。「最長政権を築いた」として現政権はたたえるが、教団側の手も借り、選挙強者になったと疑われるのが安倍氏だ。国葬に値するのか、やはり再考が必要ではないか。(特別報道部・西田直晃、木原育子)

◆「国葬実施は支離滅裂」

 「黙って手を合わせて見送ってあげたらいい」

 16日に放送されたTBSの政治対談番組。自民党の二階俊博元幹事長は無表情でそう言い放った。

 3日後の19日。安倍派の総会で塩谷立会長代理は「粛々と行っていただくことを切に望む」と述べた。

 国葬を既定路線とする党重鎮の2人。しかし彼らこそ、考えを改めるべきだ。

 注目すべきは、自民党総裁でもある岸田文雄首相が肝いりで導入した党の行動指針。いわゆる「ガバナンスコード」だ。

 岸田氏は昨秋の総裁選を前に、この指針を含む党改革案を発表していた。自民党は今年5月、政治資金の疑いがある議員らを念頭に置き、「社会規範の遵守」「透明性と説明責任」を柱にしたガバナンスコードを策定。そして8月下旬、岸田氏は教団を「社会的に問題のある団体」と捉え、「関係を断つ」と追記する方針を示した。

 一方で安倍氏といえば、祖父の岸信介元首相、父の安倍晋太郎元外相と3代にわたり、教団側とのつながりが指摘されてきた。教団に詳しいジャーナリストの藤倉善郎氏は「岸氏から続く歴史的経緯は公然の事実。加えて、第2次安倍政権前夜から、勢力拡大を狙う教団側に呼応する形で、安倍氏は関係を強化してきた」と推し量る。

 深い間柄が疑われる安倍氏に関し、今後まとめるガバナンスコードに照らすと、どう評すべきか。

 藤倉氏は「党と教団側の関わりを築いた『本丸』。調査すべき最重要人物。問題がありながら、国葬は実施するというのは支離滅裂なことだ」と訴える。

◆倫理観が壊れた自民党だからこその「新たな規範」

 ただガバナンスコードは、なじみが薄い言葉でもある。どう捉えるべきか、悩ましいところでもある。

 経済評論家の森永卓郎氏は「もともとは、自分たちのことしか考えない米国型企業が組織内の不正や不祥事を防ぐために構築した制度」と説明する。

 つまり企業向けの内部指針とされたのがガバナンスコードで、「ルールの遵守」「株主への説明」に重きを置き、取り組むべき項目を盛り込むのだという。

 岸田氏の下で自民がこの指針をまとめた裏には、森友・加計学園や「桜を見る会」を巡る問題への反省を示す狙いがあったとされる。法的拘束力は持たないが、岸田氏にとっては党改革を知らしめる象徴になるはずだった。「倫理観が壊れた自民党だからこそ、新たな規範をあえて定める必要があった」(森永氏)

 しかし、そんなガバナンスコードも形骸化しかねない事態が訪れている。

 岸田氏には、教団側と安倍氏の関係を調べる気配はない。当然ながら、ガバナンスコードに照らす様子もない。都合良く運用を変えれば、肝いりの指針でも骨抜きになりかねない。

 ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「岸田さんは説明、説明と強調するが、口だけにすぎない。ルール軽視が著しい。コロナ禍で強行突破した東京五輪と同じで、世論も一切お構いなしだ」と嘆く。

◆「黄金の3年」か「泥舟の3年」か

 安倍氏の国葬を巡る是非を考える際、重要なのはその開催名目もだ。岸田氏は、安倍政権が「憲政史上、最長政権」だから「国葬に値する」と貫く。

 だが、安倍氏は国政選挙の際、教団側の組織票を自民党の候補に差配していたとされる。明治大の西川伸一教授(政治学)は「教団側の票田を背景に、一人の参院議員の当落にまで影響を行使できるほど力を握っていた」とみる。

 つまり安倍氏は、自らの信を問う選挙で教団側から票を回してもらうなどし、政権維持の下支えにした可能性がある。そうして築いた長期政権なら、評価に値するのか。西川氏は「税金をかけて国でたたえるなんてありえない。国葬は日本の恥を世界にさらすようなものだ」と一蹴する。

 昨夏に東京五輪を強行した結果、支持率を急落させ、首相の座を追われた菅義偉前首相を重ね、「あの時と似ている。岸田氏にとって今後は『黄金の3年』ではなく『泥舟の3年』になる」と突き放す。

 共同通信社が17、18両日に実施した全国電話世論調査では、安倍氏の国葬に「反対」「どちらかといえば反対」は計60.8%。「賛成」「どちらかといえば賛成」の計38.5%を大幅に上回る。その一方で気になるのが、国葬を巡る教団側の受け止め方、岸田氏に対する彼らの評価だ。

 北海道大大学院の桜井義秀教授(宗教社会学)は「宗教団体とは概して、世間からの迫害や苦難に満ちれば満ちるほど結束力が高まる。自分たちに有利な物語を新たに作り出していく」と解説する。

 そんな中で、いくら自民党が教団側と「縁切り宣言」したとしても、岸田氏が国葬を即断即決し、それを貫くことで、「『安倍元首相の偉大さを評価できる偉大な首相』として、岸田首相の評価がさらに高まる。縁切りどころではなくなるだろう」とみる。

◆実は因縁浅からぬ「日本武道館」

 ちなみに国葬が開かれる日本武道館は、教団側と縁が深い。勝共運動の一環として1970年9月20日に開かれたWACL(世界反共連盟)世界大会の会場だったからだ。

 同日付の「こちら特報部」は準備の状況を報じた。世界60カ国から約230人の代表、日本全国から1万人を集めると記したほか、大会を控えた教団側については「体当たり的街頭募金、ペタペタはりめぐらした宣伝ポスター」を背景に「とにかく『モーレツ集団』なのだ」と伝えた。

 その数日前には前夜祭が開かれており、ある自民党議員は「万国博で日本人の忍耐強さに外国人が驚いたというが、わたしゃこの総会みて、もっと驚いたネ」と漏らした。

 全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の紀藤正樹弁護士は「武道館は66年にビートルズがコンサートをし、世界的に有名になった場所。教団側は自分たちの権威付けのため、国際的に有名な場所でイベントをやりたがる。武道館を使わせた先人のミスとも言える」と指摘する。

 安倍氏と教団側の関係は不確かな点も多い。同氏の評価には、さらなる検証が必要だ。しかし岸田氏は国葬にまい進する。

 日本の戦後政治を見続けてきた政治評論家の森田実氏は、独断専行に傾く姿に危機を感じる。「ナチスドイツは選挙を経て過半数を取り、最初は社会主義的なニュアンスを保ったが、次第に行政権を盾にファシズムに突き進んだ。岸田さんも最初は穏健派とみられたが、目の上のたんこぶだった安倍元首相がいなくなった途端、本性を現した」

 そして続けた。「日本は今後、『岸田ファシズム』へ翻るか、菅前首相のように挫折していくのか。国葬は日本の岐路になった出来事として刻まれるだろう」

◆デスクメモ

 弔う人物は、教団側と深い間柄が疑われる安倍氏。弔う場所は、教団側と縁深い武道館。弔う際には、半旗を掲げる場所があるかもしれないが、以前に紙面で触れた通り、教団側は日の丸掲揚を推してきた。一体、何のための国葬か。危うい意味付けがなされないか、心配でならない。(榊)

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若者は「国葬」賛成って本当?

福島県民世論調査 18~19歳「反対」100%

「しんぶん赤旗」2022年9月22日

 「若者は『国葬』に賛成している」。最近、一部でそんな声を耳にしますが、本当にそうでしょうか。

 福島民報社と福島テレビが共同で実施した福島県民世論調査(17日実施)では、安倍晋三元首相の「国葬」について「反対」が66・3%となり、「賛成」の21・4%を大きく上回りました。そんな中、世代別でみると驚きの結果が…。最も高かった18~19歳では、なんと「反対」が100%となりました。20代でも55・6%にのぼり、「反対」が「賛成」を上回りました。

 さらに、自民党国会議員と統一協会(世界平和統一家庭連合)との接点に関する自民党調査についても、18~19歳では「評価しない」が100%に。岸田政権に対する厳しい評価は、むしろ若い世代のほうが顕著に出ています。

 内閣支持率にも影響し、「支持する」が34・1%で前回調査(6月)から21ポイント急落。「支持しない」は45・7%で、岸田内閣発足後、初めて「支持しない」が「支持する」を上回りました。

 「国葬」反対は高齢者ばかり、若者は賛成している…。そんな批判をかき消すほどに、幅広い世代から「『国葬』反対」「岸田政権ノー」の世論が示されています。(侃)


 ニュースなどを見ているとたしかに「高齢者」の方が目立つ。若者はこうした場所での意思表示が難しいのだろう。この調査を見てホッとした。

いも掘り
男爵・メークインはすでに終わり、きょうからコナフブキ(お好み焼き用に使う。グルテンフリー、無農薬栽培、味もgoo!)


教育予算 最優先に 国連総長 各国に要請

2022年09月21日 | 教育・学校

現状に深い危機感 貧困層・少女に人生変える能力を

「しんぶん赤旗」2022年9月21日

 【ニューヨーク=島田峰隆】グテレス国連事務総長は19日、国連本部で開かれた「教育変革サミット」で演説し、先進国と貧困国の格差や、富裕層と貧困層の間の格差が広がっているとして「教育に予算をあてることは各国政府の最優先事項にならねばならない」と訴えました。

 教育変革サミットは第77回国連総会に合わせて、グテレス氏が呼び掛けました。新型コロナウイルスの感染拡大による学校閉鎖や、社会の変容に教育が追いついていないことなどによって「教育の危機」が世界的に深刻化しているとして、教育を国際社会の最優先課題に引き上げ、行動を促すことが目的です。

 グテレス氏は、貧困国では10歳までに基礎的な文章を読む力を身につけていない子どもが約7割おり、高校を修了していない生徒は半数近くに達し、7億人の非識字の成人がいることなどを挙げて「教育は深い危機の中にある」と述べました。

 また先進国でも教育制度が世代を超えて不平等を再生産していると指摘。「富裕層は学校や大学に進学し、最良の職を得る一方で、貧困層、特に少女は人生を変える能力を身につけるうえで巨大な障害にぶつかっている」と語りました。

 グテレス氏は、変革の方向として、▽すべての子どもや若者の学習権を保障する環境づくり▽教師の能力や自主性を拡大し、教師に人間らしい労働条件を保障して若者にとって魅力ある職業にする―などを強調。また教育は単なる消費支出ではなく、「どの国にとっても教育予算は国民とその将来への唯一の最も重要な投資になる」と教育予算の拡充を求めました。

 国連によると、新型コロナのパンデミック(世界的流行)の影響で、世界の子どもの9割以上が教育の中断を経験しました。

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待ち受ける「軍事大増税」ラッシュ…防衛費5兆円増の財源に「つなぎ国債」発行で布石着々

日刊ゲンダイDIGITAL 2022/09/21

 増税ラッシュの足音が聞こえてくる──。2023年度予算編成の最大の焦点となっている防衛費増額の財源。岸田政権は財源確保策として「つなぎ国債」を発行する方向で検討していることが明らかになった。防衛力強化や財源を議論する有識者会議の初会合を30日に開く。

 防衛費について、自民党内ではNATO(北大西洋条約機構)水準のGDP比2%以上への増額を求める声があり、5兆円規模の安定財源確保が必要となる。「何らかの将来の償還財源を念頭に置くことは、財政健全化を考えれば必要」(鈴木俊一財務相)、「国債は駄目との立場は取らない」(木原誠二官房副長官)と「つなぎ国債」をにおわす発言が相次いでいたが、どうやら本気で発行するようだ。

「つなぎ国債発行は増税とセットです。当面は借金でしのいでおいて、後で財源を捻出し、ツケを返済するということです。防衛費増額のために5兆円のつなぎ国債を発行すれば、必ず5兆円の増税が行われます」(立正大法制研究所特別研究員の浦野広明氏=税法)

 つなぎ国債は東日本大震災の復興事業で活用された。その後、「復興特別」と称して所得税や法人税を引き上げ、ツケ払いに充てられた。

■いずれ消費税もターゲット

 防衛費増額の財源には、法人税を軸に金融所得課税やたばこ税も検討中だ。与党関係者が経済界の一部に財源案の大枠を伝えたという。

「まずは、富裕層向けや嗜好品への増税から入るのでしょうが、いずれは、所得税や消費税もターゲットにされるのは間違いありません。国防の充実は、収入に限らずあらゆる国民が恩恵にあずかるなど、いくらでも理屈はつけられます。この先、戦時国債のように、どんどんつなぎ国債が発行され、次々と増税が行われる恐れがあります。財源の裏づけがあり、財政規律は維持できるので、財務省は文句を言わない。増税による軍事大国化が加速しかねません」(浦野広明氏)

「何もしない」と称されてきた岸田政権だが、軍事大国への道筋はクリアなようだ。つなぎ国債の発行を許せば、軍事は栄え、暮らしはボロボロになる。

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「お金がないから子どもを持てない」少子化が進む日本と韓国だけ異質な教育費負担

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

yahoo!ニュース(個人)9/21(水) 

結婚も子育ても贅沢品

「お金がないから結婚できない」という層が一定数いることはこの連載でも何度か指摘してきた(→「年収200万未満で豊かに暮らせ?」最低限度の生活しかできない未婚男が恋愛や結婚を考える余裕はない)。同時に、「お金がなくても結婚はできるが、お金がないことで離婚に至る夫婦も多い」ことも事実である(→「金がないからイライラ?」現代夫婦の離婚事情がハードボイルド化)。加えて、「お金がないから子どもを産めない」という話もある。つまり、お金がないということで「結婚も子どもも作られなくなる」わけである。

結婚生活は経済生活なので、お金のことは切っても切り離せない問題ではあるのだが、もはや「結婚も子育ても金次第の贅沢品」と化しているのだ。

ここで、勘違いしてはいけないのは、この「お金がない」ということとは「食うに困るような貧困」と同義ではないということである。

かつて、日本の中心だった中間層がここ30年間「給料があらない時代」の中におり、消費税の増税や社会保障費の細かい値上げなどで可処分所得は減り続け、そしてここにきて生活費全体のインフレにより、全体的に生活が苦しくなってきている。特に、子のいる家庭にとって、子の教育関連費の負担が大きくなってきている。

所得は増えないのに授業料はあがる

顕著な例は、大学の授業料と親の所得との関係である。

ご覧の通り、国立大はともかく、私立大に関しては平均で授業料があがり続け、所得の増えない親の負担は増すばかりだ。平均よりはるかに授業料の高い医学部などはもっと大変だろう。

親に負担をかけられないと、奨学金を借りて進学したものの、その返済に窮する子もいれば、そもそも自ら進学を断念してしまう子もいるだろう。

進学しない事で就職先や生涯賃金にも格差が生まれるばかりか、その流れで子の結婚にまで影響を与える。そうした親の所得によって子の未来が確定されてしまうという現実もある。

そうした現実の中で、「本当はもう一人子どもがほしいけど、今いる子の教育費を考えると無理だからやめておく」という夫婦がいたとしてもおかしくはない。「多く産んでみんなが貧しくなるよりは、少なく産んでその子に苦労はさせたくない」と考えるのも親心だろう。

事実、もはや、親の所得と子の数とはほぼ相関しているからだ(→「貧乏子沢山」どころか「裕福じゃなければ産めない」経済的少子化と「裕福でも産まない」選択的少子化)。

それを受けて、公立だけではなく私立も含めて、学校に関わる教育費を無償にするなど公的支援の必要性の声も高まるのだが、実態はそれでは解決しない。

日本と韓国だけ異質な教育費用

2020年内閣府が実施した「少子化社会に関する国際意識調査」に興味深い結果が出ている。日本、フランス、ドイツ、スウェーデン、米国、韓国という6カ国において「子育てにかかる経済的な負担で大きいもの」は何かを聞いている(米国と韓国は2010年調査)。

これによれば、日本と韓国という東アジアの国とフランスなどの欧米諸国とで明確な違いがある。

日本と韓国でもっとも大きな負担となっているのは「学習塾など学校以外の教育費」で、日本では59.2%、韓国では71.7%にものぼる。欧米諸国が多くてもドイツの24%であるのに比べてきわめて大きい。日本の場合は、「学習塾以外の習い事の費用」も他国と比べて大きい方だ。つまり、日本の親を苦しめているのは直接的な学校教育費ではないということになる。

学習塾にしても、習い事にしても、経済的に余裕のある親がやればよいではないかと思うかもしれない。しかし、中間層の親にしてみれば、余裕があろうがなかろうが、子の将来のためにここにはお金を惜しみたくないというのが正直なところだろう。

それ以上に、やらなければ他所の子と差がついてしまうという恐れがある。差がついてしまうということは子の未来に差がつくことを意味するだけではなく、他の友達と一緒ではないということで、仲間はずれなどのいじめにもつながるリスクもあるからだ。

親の格差が子の格差へ

そうして競い合うように、親たちは学校以外の教育費に無理をするようになる。物理的に無理ができない層は子どもそのものを諦めていく。学校以外の教育費負担がもっとも大きい韓国は、合計特殊出生率が唯一1.0を切る世界最下位の少子化国家でもある。

奇しくも、いつのまにか日本より出生率が低くなってしまった中国も、2021年に「学習塾禁止令」を出している。

小中学生を対象とした学習塾の新規開設および営利目的の活動は一切禁止というもので、小学校1~2年生に対しては宿題すら禁止という厳しいものである。中国政府はこれを少子化対策であるとは明言していないが、少なくとも中国でも教育に金がかかりすぎて、そもそも結婚することすら避けるようになってきたという事態に歯止めをかけたかった意図はあるだろう。しかし、金持ちはアングラで家庭教師を雇うだけで抜本的に何も変わらないだろう。

もう一度前掲の図表をみていただきたい。

日本と韓国は子供に対する学校以外の教育費のかけ方は尋常ではないのだが、レジャーやリクリエーションにかける費用は欧米と比較して圧倒的に少ない。

なんでも「欧米では」と比較したがる欧米出羽守になる必要はないのだが、日韓では教育という名目の詰め込みに終始して、一番大切な子どもの頃の遊びの楽しさや喜びの機会をないがしろにしてしまっているのだとしたら、それこそ子どもの将来にとってどうなんだろう。

そして、親が富裕層であればあるほど、学習塾や習い事だけではなく、このレジャーやリクリエーション、場合によってはよいファッションや美味い食事という経験を子にさせることができるという点がある。

教育費だけで精一杯の親はそこまで手が回らない。そこに子の経験の格差が生じる。

親のせいではない。

富裕層の親も中間層の親も貧困層の親も、それぞれが親として自分のできる範囲の中で頑張っているはずだ。しかし、どの親も頑張っているはずなのに、その子の格差は確実に広がっていく。やがて、それは、結婚できる子、できない子、子を持てる子、持てない子という形で顕在化するのだとしたら残酷なことである。


「国葬」「軍事」よりこどもの教育と子育て世代への援助を!「スタートライン」にさえ立てない子をなくすために。


安保法成立7年 違憲性を問い続けて

2022年09月20日 | 社会・経済

「東京新聞」<社説> 2022年9月19日 

 安全保障関連法の成立が強行されたのは今から七年前。今年七月に銃撃され亡くなった安倍晋三首相の政権時だった。日本を「戦争できる国」に変えた安保法。戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認を明記した憲法九条に合致するのか、問い続けなければならない。

 二年に一度、米海軍主催によりハワイ周辺海域で行われる世界最大規模の海上演習「環太平洋合同演習(リムパック)」。今回は六月二十九日から八月四日まで実施され、日米両国のほか英仏豪印韓など計二十六カ国が参加した。

 一九八〇年から毎回参加する海上自衛隊は今回、ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」や護衛艦「たかなみ」などを派遣したが、これまでとは異なることがあった。安保法で新たに設定された「存立危機事態」を想定した訓練が初めて行われたことである。

◆政府解釈根底から覆す

 「日本政府が存立危機事態の認定を行う前提で、武力の行使を伴うシナリオ訓練」が行われたのは七月二十九日から八月三日まで。当時の岸信夫防衛相が自衛隊の参加を明らかにしたのは終了後だった。詳細は「運用にかかわる」として明らかにされていない。

 存立危機事態は、日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態を指す。他に適当な手段がない場合に「集団的自衛権の行使」も可能とされる。

 国連憲章で認められた集団的自衛権は有しているが、その行使は必要最小限の範囲を超えるため、憲法上認められない。これが国会や政府内での長年の議論を通じて確立し、歴代内閣が踏襲してきた憲法解釈である。

 この解釈を一内閣の判断で根本から覆したのが安倍内閣だ。二〇一四年に集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に踏み切り、翌一五年には行使容認を反映させた安保法の成立を強行した。

 戦後日本は憲法九条の下、国連憲章で認められた自衛権のうち、個別的自衛権しか行使しない「専守防衛」に徹してきた。

 平和国家という国の在り方は、国内外で多大な犠牲を強いた戦争への反省にほかならない。

 訓練には、緊張が続く台湾情勢を踏まえ、軍事的圧力を強める中国に対する抑止力を示し、けん制する狙いがあるのだろう。

 故安倍氏や麻生太郎元首相らから台湾有事は日本の存立危機事態に当たるとの発言が出ていた。

 しかし、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、武力を行使することは、他国同士の戦争に参加することにほかならない。それでも戦争放棄や戦力不保持、交戦権の否認を明記した憲法九条に反しないと強弁できるのか。

 防衛政策を抜本的に転換した安保法の検証は、安倍氏の追悼と切り離して続ける必要がある。

 岸田文雄政権は「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱(防衛大綱)」「中期防衛力整備計画(中期防)」三文書の年内改定に向けた議論を始めた。中国の軍事的台頭や海洋進出の動きなど周辺情勢の変化を改定理由としている。

◆戦争可能国家への変質

 文書改定の焦点は相手国の領域内で軍事拠点などを攻撃する「敵基地攻撃能力」保有の是非だ。安倍政権時代から自民党が繰り返し提言してきたものでもある。

 歴代内閣は座して自滅を待つのは憲法の趣旨でないとして、ほかに方法がない場合、敵のミサイル基地を攻撃することは自衛の範囲とする一方、敵基地攻撃が可能な装備を平素から保有することは憲法の趣旨ではないとしてきた。

 敵基地攻撃可能な装備が常備されれば、存立危機事態の際、日本が直接攻撃されていなくても相手国への攻撃が可能になる。戦後日本の平和国家の歩みは途絶え、戦前のような戦争可能な国家への回帰は避けられまい。

 安保法は平和憲法のタガを外してしまったかのようだ。自衛隊の任務や可能とされる軍事的領域は広がり、国内総生産(GDP)比1%程度で推移してきた防衛費は倍増の2%も視野に入る。そして敵基地攻撃能力の保有である。

 世界を見渡せば、力には力で対抗する緊張が続いているが、平和国家として歩んできた日本はそれに乗じて「軍備」を増強するのではなく、緊張緩和に向けた外交努力こそ尽くすべきではないか。

 平和への構想力を欠く安保政策では、軍拡競争を加速させる安全保障のジレンマに陥り、地域情勢を好転させることはできまい

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「あの時示された民意忘れるな」 安保法成立7年 国会前デモの歴史的意義は 中野晃一上智大教授に聞く

「東京新聞」2022年9月20日

 集団的自衛権の行使容認を柱とした安全保障関連法の成立から、19日で7年。当時の国会前には、多い時で約12万人(主催者発表)が抗議デモに集まり、若者や学者、母親など多様な人々が立場を超え、反対の意思を政権に突きつけた。当時のデモの盛り上がりは、日本の社会に何を残したのか。市民の動きを野党の連携につなげる役割を果たした「市民連合」の中野晃一上智大教授(政治学)に聞いた。(大野暢子)

 —なぜ、あれほど多くの人が声を上げたのか。

 「政治家は、主権者である私たちの民意を代表するべき存在だ。それが、私たちのことを忘れて暴走を始めたため、主権者が公の場に出て『声を聞いて』と訴えざるをえなくなった。議会政治、政党政治を修復させようという動きだ」

 —当時の安倍政権は反対論を押し切り、安保法を成立させた。デモが社会に残したものは。

 「2015年のデモ以降、国会議員や既存のメディアに政治を任せず、自ら意思表明する市民の姿は当たり前になった。森友・加計学園や『桜を見る会』を巡る問題で浮かび上がった権力の私物化や、名古屋出入国在留管理局でのウィシュマさんの死などに市民は怒り、メディアも取り上げた。抗議の回路ができている。最近では安倍晋三元首相の国葬に反対する声が広がり、政権も無視できなくなっている」

 —政党への影響は。

 「市民は安保法成立を『敗北』とはみなさず、粘り強く政党を動かし、選挙の構図や結果を変えた。安保法廃止を目指す複数の野党に働き掛け、選挙の候補者を一本化させる野党共闘が代表的だ。共闘すれば必ず勝てるわけではないが、共闘しなければ巨大与党に対し、勝負にもならないのが現実だ」

 —昨年の衆院選、今年の参院選で市民と連携した野党共闘は不十分だったのでは。

 「15年の運動の遺産は食いつぶしている。世界的にも市民運動が盛り上がり続けることはなく、必ずサイクルがある。悲観していない。また広げていくことが重要だ。主権者の声を反映させる政治を取り戻すための模索は今も続いている。15年に始まった『未完のプロジェクト』だ」

 —年内にも改定される国家安全保障戦略に「敵基地攻撃能力の保有」が明記されれば、憲法9条に基づく専守防衛が揺らぐ。

 「15年に国会前に押し寄せた人々に共通していたのは『戦争する国にならないでほしい』との願いだ。9条改憲や敵基地攻撃能力の保有に前向きな議論を聞くたびに『この政治家たちは民意を代表できているのか』と疑いたくなる。与野党は、あの時に示された民意を忘れてはいけない」

 なかの・こういち 1970年生まれ。上智大国際教養学部教授。米プリンストン大政治学博士号取得。安保法への抗議をきっかけに結集した識者や市民が中心となって、立憲民主党や共産党など複数の野党による国政選挙での連携を後押しする「市民連合」の運営委員。著書に「右傾化する日本政治」(岩波新書)など


 台風の被害もなく胸をなでおろす。雨量は私設雨量計でおよそ80mm。思ったほど多くなかった。
今日の収穫
パブリカ、インゲン。


全国ユニオン 連合会長の国葬出席に反対の声明発表「強い違和感」

2022年09月19日 | 社会・経済

 スポーツニッポン新聞社 2022/09/19 

 労働組合の中央組織である連合の芳野友子会長が安倍晋三元首相の国葬に出席すると表明したことを受け、連合に加盟する全国コミュニティ・ユニオン連合会(全国ユニオン)が19日、芳野会長の国葬出席に反対する声明を発表した。

 全国ユニオンの鈴木剛会長が同日、自身のツイッターを更新。「連合に加盟する全国コミュニティ・ユニオン連合会(全国ユニオン)は、改めて芳野連合会長が国葬に出席することに反対します。産別の総意として声明を発表致します」とし、声明文の写真を掲載した。

 声明文には国葬出席の反対理由として「国が国費で営む葬儀である国葬について、1947年に国葬令が失効した後に根拠法が存在しないこと」「憲法83条において『国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて、これを行使しなければならない』と定めているにもかかわらず、国会での議論を経ていないこと」「安倍元首相は在任時に多くの労働者や過労死家族の会が反対しているにも関わらず、労働時間規制を破壊する『高度プロフェッショナル制度』や不安定を永続化させる労働者派遣法の改悪を成立させた人物であり、『労働者の代表』である芳野友子会長が国葬に出席し弔意を示すこと自体に強い違和感を感ずるため」としている。

 芳野会長は15日の会見で国葬の決定過程や法的根拠に問題があると指摘する一方で、弔意を示すため、労働者代表として出席せざるを得ないとして「苦渋の判断だ」と説明している。


 台風が迫ってきているがどうやら直撃は免れるようだ。それにしても昼過ぎからかなり激しい雨になっている。これから夜中から朝方にかけての予想雨量が半端ない。

園のようす。


ああ敬老の日が怖くなる…ツイッターにあふれる「#老害」の酷い中身

2022年09月18日 | 生活

人生100年時代の歩き方

 日刊ゲンダイDIGITAL  2022/09/16 

 「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛する」ことを目的に制定された敬老の日。ハッピーマンデーが導入される前までは9月15日が祝日だったが、100歳を迎える長寿者には銀杯が贈呈され、お祝いムードに包まれていた。ところが、近年、年寄りは金食い虫として嫌悪され、ツイッターでは「#老害」でヘイトスピーチの対象ともなっている。

  ◇  ◇  ◇

 賃金は上がらず、税金や物価ばかりは高くなる──。そんな閉塞感漂う日本を象徴するかのように、SNS上では若者たちによる高齢者批判が相次いでいる。

〈老害をボコってもやむなしという法律を作ってくれ。喜んで老害駆除するわ〉

〈老害は怒鳴った瞬間に心肺停止になってほしいです〉

〈毎年、原爆投下の日に広島に現れる老害という名のデモ隊〉

〈国葬反対デモ、参加者が高齢者ばかりでネット民大爆笑wwwww〉

 社会負担に喘ぐ若者たちにとって、諸悪の根源は年金をもらって働かない高齢者。多年にわたって社会につくしてきた敬愛すべき対象ではなく、自民党の杉田水脈議員の言葉ではないが、「生産性がない」という認識なのかもしれない。

 もちろん、ツイッターで罵詈雑言を浴びせているのはごく一部で、こうした差別的な書き込みをしている若者こそ、将来的に「老害」になっている可能性が高い。「いつか来た道、いつか行く道」だ。

「昔は長幼の序があったとか嘆いてもせんないこと」

 とはいえ、敬老の日もヘイトは収まりそうにない。老害を主張する人たちにとって、五輪汚職も幼稚園児の送迎バス置き去りもすべて老害たちが引き起こした事件であり、日本の社会や経済が旧態依然なのもすべて老害たちのせい。若者が声を上げようとしても、「老人の有権者が多いから選挙に行っても変わらない」と諦め顔。

 だが、日本が超高齢社会に突入しているのは事実であるが、今や人口のボリュームゾーンは1748万人の40代、1741万人の50代にシフトしている。団塊の世代を含む70代は1637万人で、選挙をすれば若者に有利な政策に変えることも可能だ。当然ながら、80代の有権者より20代の有権者の方も圧倒的に数は多い。

「人は老いるほど豊かになる」と言ったのは孔子だが、国も高齢者には冷たい仕打ちが多い。極端な例だが、国は1963年から毎年、敬老の日を記念して100歳高齢者に銀杯を贈呈してきた。ところが、有識者から「無駄遣い」の指摘が出ると、銀杯の直径を縮小したり、2016年からは純銀製を銀メッキ(銅、亜鉛、ニッケルの合金)に変更してしまった。

〈めでたさも 中くらいなり おらが春〉

 何だか値踏みをされているような気にもなる。

「いやいや、百寿祝いの銀杯の中身が銀だろうが銅だろうが、どうでもいいじゃありませんか。国が表彰してくれただけでもヨシとしなくてはいけません。そんな細かいことを気にするほど、こちらは人生長くないのです」

 こう笑うのは、今年で72歳になる浄土真宗本願寺派僧侶で作家の向谷匡史氏。メッキとはいえ、高齢者を支えてきた家族や介護従事者も表彰する制度だと考えれば、ありがたみも違ってくる。

「昔は長幼の序があったとか嘆いてもせんないことです。実際にモウロクしてきているし、すぐに息は上がる。若者に老害だと指摘されたら、『ああそうか、大変だねえ』とスルーするといい。年を取ったらそれも許されるのです。日本は高齢者に冷たいと言いますが、街を歩けばシニア割引やシニア優待などであふれています。もちろん少ない収入を気の毒がっての割引ではなく、高齢者にお金をたくさん使わせるための手段なのはわかりますが、気持ちよくだまされてシニア割引を利用したらいいと思いますよ。経済の活性化にもつながりますから」(向谷氏)

シニア割引は増えている

 スーパーの「イトーヨーカドー」は毎月15日と25日に、電子マネーのシニアナナコで支払うと料金が5%引き。すでにナナコを持っている人は発行手数料無料だ。

 ドラッグストアの「ウエルシア」は、毎月15日と16日がTポイント3倍。

 運賃が3割安くなる「JR東日本」の大人の休日倶楽部ジパングは、65歳以上から利用可能。台湾では65歳以上で台湾新幹線が半額と聞くが、上を見たらキリがない。

 SNSには老害ヘイトがあふれているが、街の中にはたくさんの敬老感謝が生きている。


ん~ん、なんだかなぁ・・・分断されてるよなぁ。
たしかに森元総理や二階氏の発言等は「老害」と思わずにはいられない。SNSでも結構「ネトウヨ老人」や「分からずや老人」「右翼的老人」いるんだよねぇ。
人はだれでも年をとる。年を取れば体力もなくなる。「排除」ではなく、お互いの存在を認め合うことだ。

園のようす。
シイタケのホダ木を1日プールにつけた。なんと次の日には小さなコブがぼつぼつと盛り上がってきた。


日本共産党創立100周年記念講演会 2022.9.17

2022年09月17日 | 社会・経済

共産党志位委員長、党創立100周年記念講演で「どんな困難でも国民を裏切らない不屈性」を強調

 日本共産党は17日、東京・代々木の党中央委員会で党設立100周年記念講演を行った。志位和夫委員長(68)が「日本共産党100年の歴史と綱領を語る」と題して演説を実施した。  冒頭、志位氏は「1922年7月15日に日本共産党が創立されて100周年の記念すべき年です」と来場者とインターネットでつながる全国で視聴する人たちに話し掛けた。  志位氏はこの100周年講演を迎える前にいくつかの報道メディアに「なぜ100年続いたのか」と問われたと語り、その答えとして「1つの政党が1世紀に渡って生命力を保ち、未来に臨もうとしている意義は小さくないと思う」と述べた。  さらに志位氏は「今回は多少長い講演になります。なにしろ100年に1回のことなのでご容赦いただきた」と話し、共産党の100年を貫く特質として「どんな困難でも国民を裏切らない不屈性がある」を強調した。  俳優仲代達矢(89)からは党機関紙「赤旗」に寄せたコメントが紹介された。「共産党の存在を知ったのは戦後です。私は貧乏のどん底で高校は夜学。自分がみじめで昼間部の生徒と会わないように裏口を通って通学していた」と学生時代の苦い思い出を語った上で「貧しい者の味方が共産党でした。戦争中も弾圧に屈さず反戦を貫いた。以来、私は共産党のファンです」と話した。  そして仲代は今夏の参院選について「野党がもっと一致できただろうに。今後も改憲など問題は山積みです。苦労も多いでしょうが、粘り強く一致点を探して与党に立ち向かってほしい」と応援の弁を述べた。

*   *   *

日本共産党創立100周年記念講演会 2022.9.17


内田樹の研究室  統一教会、安倍国葬について他

2022年09月16日 | 社会・経済

2022-09-12 lundi

あるネットメディアからインタビューを受けた。もう公開されているので、少し長い別ヴァージョンをあげておく。
         
―これから安倍系右翼はどうなると思いますか?

内田 おっしゃっている「安倍系右翼」という言葉の定義を僕は知らないのですけれど、言いたいことは何となくわかります。それが「安倍晋三という個人の求心力やカリスマ性に依存して存在感を発揮していた政治勢力」という意味でなら、その人たちはこの事件をきっかけに力を失い、弱体化すると思います。
 実際に安倍元首相の死後、彼の庇護下でこれまで「いい思い」をしてきたネット論客たちはいまほぼ沈黙状態にあります。どういうスタンスでこの事件に向き合って良いのかについての組織的な合意形成ができていないのでしょう。もともと安倍晋三個人が手作りしたネットワークですから、ハブが不在になると、合意形成のための場も、ルールもない。代わりを務めることのできる人がいない。ですから、このまま弱体化して、存在感が希薄になってゆくことになると思います。
 自民党清和会も組織的危機を迎えると思います。清和会は統一教会との癒着議員が圧倒的に多いので、当分は誰もメディアの前に出てゆくことができない。出てゆけば批判の十字砲火を浴びることがわかっている。次の派閥領袖の座を狙っていた荻生田政調会長も統一教会との親密な関係が暴露されてしまって身動きが取れない。細田博之前会長はセクハラ疑惑とセットで追い込まれていて、これも人前に出て、「えらそうなこと」を言える立場にない。
 そもそも安倍元首相の党運営の基本方針は、自力では国会議員になれないほどに非力な人間を党の丸抱えで当選させ、執行部に絶対に逆らえないイエスマンを揃えてトップダウンの「安倍一強体制」なるものを作り上げることでした。執行部に逆らうことのできるほどの気骨と見識のある政治家を組織的に排除してきたわけですから、党内に今回のような危機的状況に対応できる人材がいないのも当然だと思います。

―安倍さんを「嫌韓」と思っていた勢力は、実は安倍さんが反日的な韓国の団体と親しかったと判明し、「親韓」にすら見えかねない。

内田 安倍元首相の韓国に対するスタンスは、ネトウヨの感情的な「嫌韓」とはかなり異質なものだったと思います。彼の場合は感情的な「嫌韓」でも「親韓」でもない、もっと複雑なものです。とりあえず彼にとって優先するのは、国と国との関係じゃなくて、誰が自分の味方で、誰が敵かということです。自分に反対する人間は自国民であっても敵だし、自分を支援する人間は隣国の人間でも味方である。そういう人のことを「ナショナリスト」とは言いません。

―岸首相のころから韓国とは反共で提携してきたわけですが。

内田 僕の遠い親戚に平野力三という人がいました。戦前は農村組合の活動家で、戦後は社会党の片山哲内閣の農相を務めた政治家でしたが、彼のオフィスに朴正煕大統領からの贈り物の金と翡翠の置物が飾ってありました。どうして社会主義者のはずの人が朴大統領と繋がりがあるのか訊いたら「君らには分からないことがいろいろあるんだ」と笑っていました。反共主義の日韓ネットワークはかなり幅広く、奥の深いものであることだけは分かりました。
 朴正煕は日本の陸軍士官学校の出身で、関東軍に配備された後に満洲国軍中尉で終戦を迎えています。大日本帝国の軍人的エートスがかなり深く浸み込んでいる。ですから、大日本帝国への回帰を夢見る日本の右翼と体質的に親和性があっても不思議はありません。ただ、韓国民に根強い反日感情を配慮して、親日的と解されかねない言動についてはきびしく自制していたのだと思います。1965年の日韓基本条約については韓国内ではこれを「売国的」な条約だとして、激しい反対運動があったわけですけれど、朴大統領は強行採決した。おそらく、条約が締結された場合に見返りとして巨額の政治資金の提供を日本側が大統領に約束したからでしょう。
 でも、こういう日韓の権力者間のアンダーグラウンドのつながりについては、当時の日本人たちはほとんど知らなかった。もちろん野党やメディアの調査力が弱かったということもありますけれど、おおかたの日本人は日本と韓国が複雑なパワーゲームをしているという事実そのものに興味がなかったか、興味がないふりをしていた。
 韓国の最初の大統領李承晩は日韓併合時代はアメリカにいて、現実の日本人との交渉経験のなかった人物です。ですから、李承晩の対日政策は非常に敵対的、硬直的なものでした。それに比べると、朴正煕の対日政策はもっとリアルで複雑なものだったと思います。でも、李承晩から朴正煕へのシフトによって日韓関係がその後どういうふうにねじれてゆくのかを理解していた人は、両国のインターフェイスにいた一握りの「フィクサー」たちを除くと、日本の一般国民の中にはほとんどいなかったと思います。事情は韓国でも同じでしょう。日韓の両国民ともが日韓の権力者の間には入り組んだ利害関係があるというような話は知らなかったし、知りたくもなかったんだと思います。

―嫌韓となっている戦後生まれの世代と違って、直に韓国人を知ってるし、親近感もあったのではなでしょうか?

内田 日本人は35年間朝鮮半島を領土にしていたわけですから、岸や朴の世代でしたら、半島や満州で一緒に仕事をした人は両国にたくさんいたはずです。庶民レベルでしたら植民地での国民同士の間の親密な交流や葛藤を描いている文学作品は存在します。でも、政治家同士、官僚同士、軍人同士の親密な交流や敵対や葛藤については、ほとんど情報がない。
 戦後の日本人は自分たちが朝鮮半島で何をしてきたのかについて口を閉ざしていましたし、一方の韓国は、80年代まで軍部独裁下にありましたから、そもそも言論の自由がなかった。宗主国民と植民地人の間の交流や葛藤が文学の素材としてであれ、歴史研究としてであれ、韓国内には存立する条件がなかった。ですから、日本人も韓国人も、戦前から戦後にかけて、両国間でどういうかけひきがあったのか、正確な情報を持てないで今日にいたってしまった。日韓関係をめぐる言説がつねにつよいイデオロギー的バイアスがかかるのは、「情報の欠如」が最大の理由だと思います。

―ネトウヨ世代は、そうした状況を理解していない。

内田 「ネトウヨ」と言いますけれど、別にこの人たちは「右翼」じゃないですよ。あれは何と言うか、大日本帝国に漠然とした郷愁を感じているレイシストだと思います。
 
―安倍元首相はネトウヨの支持を取り込むうえで、統一教会との関係を隠していたのでしょうか?

内田 いや、隠してないでしょう。第一次安倍政権の頃は隠していたかも知れないけれど、第二次政権からはもう隠していなかった。だから、ネトウヨの嫌韓センチメントというのはつじつまが合わないんです。本気で嫌韓なら、韓国が拠点の宗教団体とつるんでいて、巨大な利権を提供している安倍晋三を許せるはずがない。それが許せるというのは、ネトウヨにとっては「韓国が嫌い」よりも「安倍が好き」の方が優先するということです。
 さきほど「安倍系右翼」という言い方をしましたけれど、それだと思うんです。要するに「安倍系」ということなんです。彼らはうまく言葉に出来ない独特の怨念を安倍さんに託した。怨念の一つは反知性主義で、もう一つは宗主国アメリカに対する属国民としての反米感情です。知性や論理や倫理といった欧米の近代市民社会の基本になる原理が大嫌いで、アメリカも実は嫌いなのだけれど、それをうまく整合的な政治的言説にまとめることができない。
 安倍外交の特徴は、表面は親米だが裏面は反米という点です。これは祖父の岸信介元首相以来の「家風」と言ってよいと思います。アメリカを相手に戦争を仕掛けた人間が、戦争に敗けて、獄中転向して、アメリカのエージェントになることで政界に返り咲いて総理大臣になり、アメリカの軍事的属国になる条約を結んだ。だから、岸はアメリカに対しては恨みと恩義の両方を感じている。愛憎入り混じった感情を持っている。従属はしているけれど、機会があればひと泡吹かせたい。アメリカの子分としてふるまっているけれど、いつかアメリカと対等になりたい。いつかもう一度アメリカ相手に戦争をする機会があれば勝ちたい...それは日本国民の抑圧された集合的な欲望なのです。政治家も知識人も誰もそれは口に出さない。そんなこと公言したとたんに日本のシステム内ではたちまち地位を失うことが分かっているから。日本ではアメリカの国益を最優先に配慮する人間しか「上」に行けないようにキャリアパスが設計されているから、しかたがないのです。
 戦後の自民党の国家戦略は「対米従属を通じての対米自立」というものでした。徹底的に対米従属して、アメリカの信頼を勝ち得る。アメリカの戦略的パートナーという足場を固めてから、「のれん分け」をしてもらう。そして、アメリカのくびきから逃れたら、改憲して、核武装して、ほんものの主権国家たる「第二大日本帝国」に回帰する...そういう「口に出されないシナリオ」があった。
 安倍晋三に対する「安倍系」からの期待というのは、このシナリオを踏まえたものだったと思います。「もしかしたらこの人はもう一度日本を大国にしてくれるんじゃないか。もう一度日本を『戦争の出来る国』にしてくれるんじゃないか。日本をもう一度大日本帝国に回帰させてくれるんじゃないか」という期待が安倍政権を支える感情的な基盤だった。大家族でも、教育勅語でも、「八紘一宇」でも、戦前の日本を見たこともない人たちが、大日本帝国に幻想的な憧れを抱いた。それが「安倍系」をかたちづくる心理的核だったと思います。

―「日本を取り戻す」という発言に現れている。

内田 「美しい国」とかね。どれもそうです。「戦前の日本は美しかった」という安倍自身も、安倍系右翼も誰一人見たこともない体制に対する幻想的なノスタルジーが安倍体制の求心力だった。これはイデオロギーではないし、ただの懐古気分というのとも違う。もっと幻想的で、もっと生々しく、もっと混乱したものです。だから、その分始末に負えない。安倍晋三はそのカオス的な国民感情を個人として体現できた稀有の政治家でした。それは安倍晋三の「個人技」だったと思います。だから、誰かが代わりをするということはできないだろうと思います。高市早苗が「後継者」と言われていましたけれど、安倍晋三のような幾重にも屈折したものを持っていない。

―彼女は最初、無所属で出馬して、どちらかと言うとリベラルなイメージで売り出した(注:実際、後に「リベラルズ」という政策集団に高市氏は参加している)人ですからね。

内田 もともと安倍元首相の周りに集まって来た政治家たちは出世のために忠義面をしてきたわけですから、内面に安倍ほどに深い屈託を抱えているわけではない。出世主義者は別に特に実現したい政治的目標があるわけじゃありませんから、他に国民的人気のあるリーダーが出てきたら、「勝ち馬に乗る」ために簡単に路線を切り替えるでしょう。

―なんちゃって右翼が多いですね。

内田 あの、もう一度いいますけれど、あの人たちを「右翼」とか「ナショナリスト」と呼ぶのは止めませんか。国内に外国軍の基地があるときに反基地運動の先頭に立たない右翼なんか世界中探してもどこにもいませんよ。親米右翼というのは、日本だけに存在している奇形的な存在なんです。

―沖縄で基地の周辺にピケを張っている人のかなりの部分を新左翼系の団体が占めています。

内田 あの人たちの動機だって別に「左翼」的なものだと僕は思いませんね。彼らこそむしろナショナリストですよ。「外国軍から国土を守れ」って言っているんですから。

―軽薄な政治家が増えたと感じます。元々そういう思想を形成してきた人々じゃなくて、出世のために主張する。

内田 いつの間にか政治家が世襲の職業になってしまったからでしょうね。国会でも地方議会でも祖父の代から三代議員という人がたくさんいます。ほとんど「家業」として議員をしている。別に何か実現したい政治目標があるわけじゃない。その時その時の「受けのよい」スローガンにくっついてゆく。だから、統一教会と親密になると選挙で便利だと知るとすぐにくっつく。

―「統一教会はお得意さんなんだもん」という感じですね。

内田 たぶんそうだと思います。先代からごひいきのお得意さまから「ちょっと顔出してよ」と言われたら断れないでしょう。

―今後、どうなりますか?

内田 日本の統一教会が組織として解体する可能性はかなり高いと思います。でも、統一教会は米韓日に広がる国際ネットワークで、米韓では宗教活動よりもビジネス主体のグループです。日本は「集金」のための場所、ただの「草刈り場」ですから、ここに教会の本体はない。仮に「日本支社」がつぶれても米韓の統一教会の本体は生き延びることができます。「日本支社」が採算不芳部門と判断されたら、「閉店」になる可能性はあると思います。
 これだけ大々的に報道されると、もう新規信者の獲得は難しいでしょうし、脱会者もしだいに増えてくると思いますから日本の統一教会は組織的危機を迎えると思います。

―30年前の桜田淳子さん、山崎浩子さん騒動も信者にはるとショックだったらしいですけどね。

内田 あの時はワイドショーネタでしたから。テレビと週刊誌と新聞の社会面が中心だった。今回は全然違います。政権との癒着というど真ん中の政治ネタですから。「視聴率が落ちたから、もう採り上げるの止めよう」ということにはならないでしょう。

―国会の中心部に直撃ですからね。

内田 統一教会は自民党に関係を絶たれると生き延びることが難しい。ですから、「自分たちが潰れるときは自民党も共倒れだぞ」と脅しをかけていると思います。もし、自民党が宗教法人格の剥奪とか、解散命令とかに同意するようなら、ただでは済まさない、と。

―永田町では、統一教会と決別すると言ったら反感を買う。ズドンとやられる政治家がいるんじゃないかと噂になっています。

内田 それはないでしょう。先頭を切って宗教法人格の剥奪とか、国税調査の必要とかを言い出す議員がいたら、統一教会から恨まれはするでしょうけれども、まさか襲ったりはしないと思います。そんなことが起きたら、誰だって「統一教会の仕業だ」と思います。それによって世論の反感がさらに高まることはあっても、政治家も警察もメディアも「怖いからもう統一教会には手を出さずにおこう」という話にはならないでしょう。

―国葬になりますけど、外交はどうなると思いますか?

内田 期待されていた「弔問外交」は無理でしょう。バイデンは来ないし、マクロンは来ないし、もちろんプーチンも習近平も来ない。何より、国葬より先に統一教会葬が先に行われていますからね。「統一教会と弔意を共有する」というかたちになるのはどこの国の首脳にしてもあまり歓迎できる話じゃない。
 国葬にすると口走ったのは岸田さんのフライングだと思います。事件直後はふだん安倍批判をしている人たちも「快癒をお祈りする」という論調でしたから、国葬で行けると判断したのでしょうけれども、背後に統一教会問題があると分かってから世論が一変した。どうして殺されることになったのか、その文脈を明らかにしないままに「国民的英雄」に祭り上げるわけにはゆかない思うのは当然でしょう。

―こういう状況になると思っていたら、やらなかったでしょう。

内田 ここまで反対が増えると思ったら、自民党・内閣葬で済ませたでしょうね。どうして、岸田さんがこんな愚かなフライングをしたのかわかりません。たぶん安倍派を取り込むためにやったんでしょうけれど、焦り過ぎでした。
 国葬に法的根拠がないというだけでなく、池田隼人、佐藤栄作、田中角栄、中曽根康弘、福田赳夫といった印象深い総理大臣たちを差し置いて、「戦後政治史に卓越した政治家」であるという評価をあわてて確定しようとした。これは無理ですよ。人物の評価は「棺を覆いてこと定まる」と言われるように長い歴史の風雪に耐えて、後世の史家が判定するものです。死んで一週間で「評価が確定した」と言い出したわけですから、それは岸田の方に政治的な計算があって無理していると誰だってわかります。

―国会でも証人喚問なんて動きになるかもしれない。

内田 本来なら、国会内に特別調査委員会を作るべきなのですが、自民党と公明党と維新が反対して委員会はできないでしょう。でも、「特別調査委員会を作らない」というのは、調査されたら疚しいことがあると自分から告白しているようなものです。だから、癒着していた政治家にはもう逃げ場がないんです。ひたすら隠れて、メディアの追及から逃れて、「人の噂も75日」で、世間の関心が冷めて、別の問題に移るのを待つしかない。国葬も「話題をそらす」ために仕掛けた要素があると思います、でも、逆に火種になってしまった。
 だから、今は自民党の議員たちはひたすら大事件や大災害が起こるのを待っていると思いますよ。例えば、自民党サイドから台湾有事についての言及が急に増えましたけれど、あれは「国難的事局に際して、こんなつまらない話をしている余裕はない。挙国一致でこの危機を乗り越えよう」というふうに話を逸らそうとしているからだと思います。
 でも、そうやって必死になって統一教会の炎上を消そうとしている間に、五輪スキャンダルがぼろぼろ出てきてしまった。これまで統一教会であれ、五輪組織委の醜聞であれ、検察や公安や国税やメディアを抑え込んでいたのは安倍の「個人技」でしたから、彼がいなくなると「重石」が取れてしまった。萩生田政調会長も大手メディア相手なら「報道を控えろ」というくらいの圧力はかけられるでしょうけれど、検察や公安や国税にまで「仕事をするな」と圧力をかけられるほどの力はない。

―これまでの違法収入なんかを全部調査してやりたいと思うでしょうしね。

内田 公安だって国税だって、ほんとうは統一教会を監視したり、査察に入ったりしたかったんだと思いますよ。でも、「政治的な圧力」がかかって、活動できなかった。そんな中でも、公安調査庁や国税局は官邸には黙って統一教会の調査を続けていたと僕は思います。プロフェッショナルなんですから、やっていないはずがない。
 東京五輪の贈収賄容疑で高橋治之元五輪組織委員会元理事が逮捕されましたたけれど、あれだって、安倍元首相存命中だったら「五輪については触るな」という指示があって、検察は動けなかったはずです。

―岸田内閣はどうなりますかね?

内田 それほど長くは持たないと思います。低迷する支持率をV字回復させたければ、コロナ対策か、対ロ・対中国外交か、円安対策か、統一教会問題かどこかで華々しい成功を収める必要がある。でも、どれも無理でしょう。
 それに、統一教会問題がぐずぐずしたまま来年四月の統一地方選を迎えた場合には、統一教会とかかわりのあった自民党の地方議員が大量に落選する可能性がある。その場合には、岸田さんは責任をとる他ない。「黄金の三年」と言われていましたけれど、思わぬところに落とし穴があった。ポスト岸田は統一教会問題については「手が白い人」を担ぐしかないと思いますが、適当な人がいるかどうか。
 
―河野太郎さんなどもそうじゃないでしょうか?

内田 教会と関係があった議員は全員が「総裁候補の資格なし」ということになると自民党にはもう要職に就けるだけの手ごまがなくなってしまう。どこかでグレーな議員であっても救済しなければいけない。鈴木エイトさんも有田芳生さんも「祝電を送ったり、イベントに出た程度の浅い付き合いだけの人と、選挙応援をしてもらったとか、秘書が信者とかいう深い付き合いがあった人は分けて扱うべきだ」と言っていますね。あれ、一見すると自民党に対して親身な言葉のように聞こえますけれど、実際にそれをやると結果的に自民党内に深刻な分断を持ち込むことになる。グレーゾーンにデジタルな「有罪/無罪」の線を引くと、それによって党が分断される。執行部としてはそれだけは避けたい。だから、自民党は「全員シロ」で突っ張ってくると思います。「統一教会関係団体とは知らなかった」「統一教会が何であるかを知らなかった」と「無知」で押し通すつもりでいる。「それほど世情に疎くて国会議員が務まるのか」と批判されても、「無知であることは国会議員の欠格条件ではない。現にあそこにもここにも無知な議員が山ほどいるが、みんなあなたがた有権者が選んだんじゃないか」と居直ることができる。だから、そうするでしょう。

―何処の勢力が伸びるでしょうかね。維新はどうですか。

内田 統一教会問題で自民党が支持率を下げても、そこに維新が入り込むのは無理でしょう。カジノでも万博誘致でも大阪のコロナ対策でも、まったく成果を出せないでいることを、大阪住民以外は知っている。この機会に党勢を伸ばすことはできないと思います。それよりは自民党が割れて、保守新党を作った場合、そこが台風の目になるでしょうけど。

―「腐敗政治と決別する」とか言って。

内田 そうです、保守新党はいつも「腐敗政治・金権政治と決別する」という旗じるしを掲げる。そして、政局を作って、世間の耳目を集めておいて、何年かしてからそっと自民党に復党する。党の延命のために一時的に分裂してみせるということは自民党の得意技なんです。今なら国民民主党と立憲民主党の右派と連合を巻き込んで、保守新党を作った場合に、次の統一地方選なら大勝する可能性がある。国民民主党と立憲民主党は先がないですから、もし自民党を割って出た政治家がいた場合、それに乗って来る議員は出てくると思います。「先がない者同士」でも合流すると一時的にはメディアの注目を浴びる。これまであきるほど見てきた光景です。小池新党だって、一瞬は第一党になるという夢を見てたでしょう。
 それに、いま政界再編ゲームを始めると、統一教会問題から「新党」に一気にメディアの関心が移る。その方がじっとうつむいてほとぼりが冷めるのを待つよりも効果的かも知れない。永田町界隈ではそれくらいの「仕掛け」を考えている人はもういると思いますよ。