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保育の9000円はどこへいくのか 「うちは賃上げしない」が横行?

2022年02月28日 | 生活
今野晴NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。
 

 岸田政権の目玉であった介護・保育労働者の9000円賃上げは、今年2月から実施されることになっていた。しかし、職場で賃上げの気配がないという相談が、介護・保育ユニオンには相次いでいるという。一体なぜだろうか。

「うちは賃上げしないと言われた」

 岸田政権の目玉として、今年2月から、ある政策が実施されることになっていたことを、みなさんは覚えているだろうか。介護・保育労働者の「9000円の賃上げ」である。国が補助金を出すことによって、月9000円分にあたる賃上げを実現するという政策であり、その金額などをめぐって、昨年末にはかなりの話題を集めていた。

参考:保育・介護の「9000円賃上げ」は看板倒れ? 「払われない人」が続出する理由

 しかし、肝心の2月も終わるというのに、いまや全くニュースになっていない。順調に支払いが進んでいるから、特に注目されていないのだろうか?

 残念ながら、そうではないようだ。労働組合「介護・保育ユニオン」には、特に保育園で働く労働者たちから、まさにこの賃上げについての労働相談が相次いでいる。そのほとんどが、次のような内容であるという。

 「2月からの賃上げがどうなったのか、園の理事長から全く話が出てこない」

 「社長から、うちは賃上げしないと言われた」

 岸田政権の肝いりで宣言されたエッセンシャルワーカーの待遇改善策に、少額であるとはいえ期待していた労働者は多いだろう。ところが、少なくない私立の保育園の現場において、この改善策が全く手付かずになっているのである。

 一体なぜ経営者は補助金を申請しないのだろうか。そして、もう賃上げは間に合わないのだろうか? 結論から言えば、いま職場で声をあげれば、まだこの制度による賃上げが間に合う可能性はありそうだ。

 本記事では、はじめに待遇改善を望む保育労働者のために賃上げの期限を解説したうえで、経営者が補助金を申請しようとしない理由を考えていきたい。

賃上げの仕組みの概要

 今回の「9000円賃上げ」の政策は、保育労働者については「保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業」として行われる。その特徴を簡単に説明しておこう。細かい例外はあるのだが、簡略化して説明することをご容赦いただきたい。

 まず、この補助金は、行政から労働者に直接支給されるというものではない。今年2月から職員の賃上げを行う予定の経営者に対して、その経営者が市町村に申請を行った場合に、行政から一人当たり「月額9000円」分に当たる補助金が支給され、その補助金を労働者の賃上げに使えるという仕組みだ。対象となる期間は、今年2月から9月分までとなっている。

 対称は保育士に限られない。調理員や栄養士、事務職員など、法人役員を兼務する園長以外であれば、原則的に保育園のどの労働者でも対象とすることができる。非常勤職員であってもいいし、派遣元さえ賃上げを認めれば、派遣職員であっても構わない。

 では、経営者が保育園の全職員の賃上げを行い、その賃上げ分を支給するように市町村に申請すればいいのではないかと思う方もいるかもしれない。残念ながら、そういう仕組みにはなっておらず、賃上げをする全職員分として一人9000円分が行政から支給されるわけではない。

 経営者が誰をどれだけ賃上げしようとも、それと直接関係なく、園に支給される補助金は、あくまで公定価格の配置基準に基づいて計算される。つまり、園児数に応じて決められた最低限の保育士などの職員数の配置基準分しか、国からの補助金は最初から払われない。このため、保育に余裕を持つために職員数を多めに配置している園では、全職員に一人9000円上がるという改善策は、はじめから不可能だということになる。

 さらに、公定価格の配置基準に応じて行政から支給される月9000円分の原資を用いて、誰をいくら賃上げするかは経営者の裁量次第だ(ただし、総額としては国から園に支給される補助金以上の賃上げをしなければならない)。つまり、経営者が賃上げ計画を立て、その賃上げ対象に選ばれなければ、9000円はおろか、1円たりとも賃上げされないというわけだ。

3月中に賃上げ分を支払うことが鉄則

 そもそも、経営者が賃上げの計画を立てて申請しなければ、園に補助金は支給されないし、今回の政策に基づいた賃上げもされない(もちろん補助金と関係なく経営者が賃上げすることは自由である)。

 となると、現時点でまだ、賃上げすることを経営者から聞かされていない保育園労働者からすれば、いつまでに経営者が市町村に申請すれば間に合うのか、ということが気になるところだ。

 期限は明確に定められている。今回の賃上げは、経営者が市町村に、今年2月以降の職員の賃上げ計画を提出することが要件となっている。4月から賃上げ分を申請するから、2月・3月分の賃上げは我慢してくれ、とはいかないのだ。しかし、もう3月になる。いまだに計画が市町村に提出されていない園では、既に手遅れなのだろうか?

 じつは、今回の事業の規定によれば、「賃金規程等の改定に一定の時間を要することを考慮し、3月に、2月分及び3月分をまとめて一時金により支給することも可能」とされている。つまり3月中に2ヶ月分の賃上げ分としてまとめて支払うのなら、2月に間に合わなくても大丈夫なのだ。

 しかし4月以降に、2月、3月の賃上げ分を遡及して支払う場合には補助の対象外となる(なお、2月分の賃金を3月に、3月分の賃金を4月に支給している保育園については、4月支給分も補助金の対象となっている)。職員に3月分の賃金を支払う月までに、賃上げ策を提出して申請を行わないといけないのである。リミットは3月いっぱいということである。

なぜ経営者は申請をしてくれないのか?

 次に、経営者はなぜ補助金の申請そのものを拒否するのだろうか。全員分の賃上げができず、一律ではない配分をするにしても、まずは補助金を申請すればよいではないか。

 第一に、経営者があえて申請をしない理由は、「自分たちの利益」にならないからだと考えられる。この補助金は、人件費以外に流用するという意味での「中抜き」が原則としてできないのである。

 この20年間、保育は規制緩和によって、「利益を求める」事業者が多数新規参入した。また、従来から保育園を運営していた社会福祉法人などの事業者でも、規制緩和を受けて利益追求路線に舵を切ったところは多い。彼らは、行政からの補助金を役員報酬に当てたり、別事業に流用したりするかに心血を注いでいる

 実際に、ジャーナリストの小林美希氏の調査によれば、委託費の約8割が人件費として計上されているが、5〜6割のみしか支給していない保育園も多い。2〜3割しか人件費に用いていない園も少なくない。

 具体的には、保育職員の人件費を最低限に抑え、備品の購入をしぶるといった、現場のコストカットが「利益の源泉」となっている。こうしたビジネスが最優先の目的である保育園経営者にとっては、わざわざ手間をかけてまで、用途の限定された補助金を申請して、職員の賃上げをするモチベーションがわかないのだろう。

 第二に、賃上げ後の待遇の問題だ。今回の補助金事業の実施期間は、あくまで今年2月から9月分までだ。とは言っても、補助金がなくなったからと言って、10月から賃金を下げるというわけにはいかない。

 就業規則を改定し、賃金をあげれば、補助金がきれたことを理由として、一方的に賃金の引き下げを行うことはできないのだ。経営側としては、賃上げで将来の「コスト」を増やしたくないという意図が働いているだろう。

 とはいえ、一応、厚労省は「事業実施期間終了後の令和4年10月以降についても、公定価格を見直す等により、引き続き同様の措置を行うこととしています」としている。だが、まだその内容が具体的に決まっているわけではない。本当に賃上げした分の原資が維持されるのか不安であるため、賃上げを躊躇する経営者も多いと思われる。

 ここでさらに第三の問題が生じる。10月以降は申請した場合の補助金支給ではなく、「公定価格の見直し」になるのだとすれば、今回賃上げをしていなくとも、行政から園に支給される人件費分の原資の金額が上がる可能性がある。

 しかも、公定価格で計算された保育園の運営費は、何にいくら使うかは経営者の裁量次第だ。もし現行の制度のまま10月以降に委託費を引き上げるなら、今回賃上げをしなければ、公定価格の見直しで増額された人件費分をそのまま経営者が自らの役員報酬にしたり、他の事業に流用したり、株の配当に使ったりすることも可能になる。この場合、むしろ今回賃上げを申請しない方が、保育園経営者が儲かるという事態になってしまうのである。

 以上の三つの理由から、多くの経営者が賃上げを忌避し、補助金を申請しようとしないものと考えられる。

経営者の「中抜き」は可能か?

 一方で、今回の制度においても、経営者に都合の良い「流用」が可能となる余地が見て取れる部分もある。一例をあげよう。

 今回の補助金は流用を防ぐため、全額を賃金改善に用いることとされており、賃金改善の合計額の2/3以上を「基本給または決まって毎月支払われる手当てにより行うこと」(ただし2月分、3月分は一時金でも良い)が必要であるとされている。2/3以上であるのは、「基本給を引き上げた場合には、賞与や超過勤務手当等の金額にも影響を与えることを考慮」したからだという。

 加えて、「本事業により改善を行う賃金項目以外の賃金項目」の水準を低下させていないことが必要である。要は、基本給や毎月の手当を通じて賃上げするが、他の手当を下げることで、補助金を実質的に経営者の懐に収めるという手口を許さないというわけだ。

 しかし、後者については「業績等に応じて変動するものを除く」という例外がある。つまり、ある保育園でボーナスについて「業績に応じて支払う」と定めていた場合、補助金は基本的に毎月分の賃上げに使うが、「業績が悪かったから」として賃上げ分に対応して逆にボーナスを大幅に減らすことで、補助金分を別事業に使うことが論理的には可能なのである。

黙っていないで、すぐに声をあげよう

 もともと少額とはいえ、岸田政権の「9000円賃上げ」に期待した保育園職員の方は少なくないだろう。しかし、実際は、手続きは経営者に丸投げされ、経営者にとって申請しない方が「合理的」となる部分すら大きい。また、制度の申請がなされても、ボーナスを下げるなどして、トータルでは労働者の賃上げにならない可能性すらある。

 いずれにしても、賃上げの期限は3月いっぱいだ。自治体によっては申請を2月で打ち切ると説明する地域もある。経営者が賃上げしないと言っている場合、賃上げを明言していない場合はもちろん、賃上げすると言っていてもその内容が不確かな場合は、この制度を使って最大限の賃上げをするように、経営者に働きかけるしかない。

 とはいえ、ひとりで経営者と対峙することは難しい。ぜひ労働組合などの専門家に相談し、経営者と交渉することをおすすめしたい。

無料労働相談窓口

介護・保育ユニオン

03-6804-7650

contact@kaigohoiku-u.com

*関東、仙台圏の保育士、介護職員たちが作っている労働組合です。

NPO法人POSSE 

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*筆者が代表を務めるNPO法人。訓練を受けたスタッフが法律や専門機関の「使い方」をサポートします。

総合サポートユニオン 

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*個別の労働事件に対応している労働組合。労働組合法上の権利を用いることで紛争解決に当たっています。

仙台けやきユニオン

022-796-3894(平日17時~21時 土日祝13時~17時 水曜日定休)

sendai@sougou-u.jp

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ブラック企業被害対策弁護団

03-3288-0112

*「労働側」の専門的弁護士の団体です。

ブラック企業対策仙台弁護団

022-263-3191

*仙台圏で活動する「労働側」の専門的弁護士の団体です。


なんかな~ぁ、せこいなぁ・・・・・
皆9000円上がるんだと思った。少ないけど良かったと思ってたw。
しかも期限付きとは恐れ入り谷の鬼子母神だ。
コロナ禍で頑張っている人たちだ。

ようやく、屋根雪のつかえをなくした。


同盟強化論 世界に逆行 ウクライナ情勢利用は許されない

2022年02月27日 | 社会・経済

「しんぶん赤旗」2022年2月27日

 ロシアのプーチン政権によるウクライナ侵略を口実にした、日米同盟強化論が政府・自民党内で強まっています。林芳正外相とブリンケン米国務長官は26日、電話会談で、覇権主義的な動きを強める中国を念頭に、「力による現状変更」の動きは「欧州にとどまるものではない」と述べ、「日米同盟の抑止力・対処力の強化が不可欠である」との認識で一致しました。

 

 まず、ウクライナ侵略は独立国家の主権と領土を脅かす明白な国際法違反であり、戦後の国際秩序を破壊し、他国を好きなように切り取る19世紀の世界に戻すような蛮行です。こうした行為を、北東アジアを含むインド太平洋地域に広げることはあってはなりません。その点で何より重要なのは、「ロシアのウクライナ侵略反対」の一点での国際社会の団結です。中国も当然、その団結に加わることが求められます。憲法9条を持つ日本が行うべきは、そうした国際社会の連携を強めるための外交努力です。

 国際世論の力でロシアを追い詰めることができれば、今後の世界で、いかなる大国であっても「力による現状変更」を許さない決定的な力になります。

 逆に、ロシアのウクライナ侵略から「軍事同盟の強化」「軍事力の強化」こそ必要だという教訓を引き出せば、力で相手を抑え込むというロシアと全く同じ立場に立つことであり、国連憲章に基づく紛争の平和的解決という世界の到達点を大きく後退させることになります。

 プーチン大統領はロシアが核兵器大国であることを誇示し、核兵器の先制使用も辞さない構えを見せています。日米同盟の「抑止力・対処力」には米国の核も含まれています。実際の核使用の危険が高まる中、唯一の被爆国・日本が取るべき道は軍事同盟強化ではなく、核兵器禁止条約への参加です。

 さらに、ロシアとの領土問題では、日本政府は安倍政権以来、従来の「4島返還」さえ投げ捨て、「2島返還」で妥協。「北方領土は固有の領土」との主張さえ言わなくなるなどの卑屈な対応をとっていますが、こうした対応を改め、「領土不拡大」の戦後処理に反したロシアの覇権主義を厳しく批判し、追い詰めることが求められます。

 ましてや、ウクライナ問題を「台湾有事」参戦の口実にすることは筋違いであり、許されません。 (竹下岳)

⁂   ⁂   ⁂

 ウクライナへの侵略を強行したロシアの暴挙に抗議が広がり、世界が包囲する形となっています。国連安全保障理事会ではロシアの孤立が際立ち、各地で抗議の輪が広がりました。欧州では、観光名所がウクライナ国旗の色でライトアップされ、連帯を示しました。ロシアでは、約2000人の科学者らが公開書簡で、侵略に「断固反対」を表明。米国の「核政策法律家委員会」は、プーチン大統領の核兵器使用の威嚇は「国際法違反」との声明を発表しました。


今こそ新しい時代を築き上げる絶好の機会です。これまでのような「力」による「解決」は「過去」のものにしようではありませんか!

今、世界が、一人一人が「戦争反対」の声をあげましょう。

中国の歴史学者らも「反対」の声明を発表したようですが削除された模様です。


今すぐ、プーチンは戦争をやめよ!

2022年02月26日 | 事件

ウクライナ侵攻 生活への打撃も深刻だ

「東京新聞」社説 2022年2月26日 
 
 ロシアによるウクライナ侵攻が私たちにも影響を及ぼしている。原油高騰に伴う燃料費の上昇が暮らしを直撃しているためだ。政府には、政策を総動員して生活を守る手だてを講ずるよう求めたい。
 軍事侵攻後、原油価格はニューヨーク市場で七年七カ月ぶりに一バレル=一〇〇ドルを突破。国内のガソリン価格も二十一日時点ですでに一リットルあたり百七十二円と七週連続の上昇となっている。
 政府は石油元売りに対し一リットルあたり五円の補助金を出しているが、価格抑制の効果は上がっていない。政府は補助金の上限を大幅に拡大して価格を抑える方針だというが、対応が甘い。
 燃料費の高騰はコロナ禍で痛手を受けていた国民の生活苦に一段と拍車をかけている。ガソリンや軽油の高騰は、運送費の値上がりとなって飲食などの店舗や中小企業の経営に打撃を与え、生活関連商品の価格を大きく押し上げる要因になっている。
 電気やガス料金も上がり続けており、このままでは一時的に回復した個人消費が再び落ち込むのは避けられないだろう。消費の鈍化は企業経営者の心理を冷やし、一部企業で出始めた賃上げの気配を一気に打ち消す恐れさえある。
 だが政府は原油高騰の有効な対策となり得るトリガー条項の発動に慎重だ。同条項は、ガソリンの全国平均価格が一定期間百六十円を超えた際に減税を行う仕組みで、東日本大震災の復興財源を賄うため凍結された。
 発動すると国と地方合計で年一兆五千億円超の減収となり、政府内でも財務省を中心に異論が根強い。ただ会計検査院によると、二〇一九年度から二〇年度のコロナ対策費だけで約二十三兆円も余っている。国会で審議中の二二年度予算案にも前年度同様五兆円の予備費が盛り込まれている上、当面必要のないGoTo事業予算も余っているはずだ。
 多くの国民は先の見えない値上げラッシュの中で萎縮している。政府は生活の実態に目を凝らし、柔軟な姿勢で予算を使いこなして物価の上昇を阻止すべきである。

ウクライナは世界の穀物庫でもある。 
多くの命が奪われている。
これからも世界中の貧困層に飢餓をもたらすであろう。

即刻有用な手立ても打てない「国連」は何のためにあるのか?
こうなっては、すべての人々が「声」を上げるしかない。とりわけ、ロシア国内の「声」が重要だ。
すでに53都市以上で抗議集会が広がり、1600人以上が警察に拘束されているという。
ロシアの著名人たちも「声」を上げ始めた。

わたしも彼らを支持し、「戦争反対」を叫ぼう!


プーチン氏自滅、真の勝者は「グレタさん」―ウクライナ危機

2022年02月25日 | 社会・経済

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

 あまりに傲慢であまりに愚かと言うべきだろう。ロシアのプーチン大統領は、24日、対ウクライナ軍事作戦を決定してしまった。ウクライナ政府軍と親ロシア派が衝突を繰り返しているウクライナ東部のみならず、同国首都キエフ近郊もロシア軍によって攻撃されるなど、事態は全面戦争に発展しつつある。ロシアの圧倒的な戦力ならば、軍事的に勝利することも容易、プーチン大統領はそう考えているのだろう。だが、露骨な「力による現状変更」は、国際社会のプーチン大統領への不信感を決定的にした。それでなくても地球温暖化防止のため、脱炭素社会を目指す欧州は、ロシアの天然ガスや石油への依存を見直し、それはプーチン政権の終わりの始まりとなるのだろう。

◯ロシアのガスへの依存、欧州が見直しへ

 ウクライナ情勢が緊迫する中、ここ最近、欧州で活発に論議されていたのが、エネルギー受給における「脱ロシア依存」だ。ロシアは豊富な地下資源を誇り、とりわけ天然ガスの埋蔵量・生産量ともに世界最大で、石油も原油生産量で米国やサウジアラビアに次ぐ第3位(2019年)。そして、欧州各国は、EU(欧州連合)全体として、発電や暖房等のための天然ガス需要の約4割をロシアに依存してきたのである。その気になれば、ロシアは欧州各国をエネルギー危機に陥らせることもできる―それが、プーチン大統領の強気さの要因の一つであることは間違いない。実際、ドイツがウクライナ情勢を鑑み、ロシアからの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の計画を停止したことについて、プーチン大統領の側近でロシア前首相のメドベージェフ氏は、「よろしい。EUは法外な価格で天然ガスを買うことになるだろう」と自身のツイッターに投稿しているのだ。

 こうした、天然ガスを外交・安全保障上の「武器」として使ってくるロシアにエネルギーを依存してきたことへの反省の弁がEU内であがってきている。例えば、EU委員会で温暖化対策を担当するフランス・ティメルマンス副委員長は、今年1月、欧州各国の環境大臣らの会合で「プーチンの懐を肥やしたくないのなら、(太陽光や風力などの)再生可能エネルギーへの投資を迅速に行うべきだ」「人々に安定してエネルギーを供給したいのであれば、再生可能エネルギーがその答え」と語ったという(通信社「ブルームバーグ」等が報道)。

 今月16日には、ウルズラ・フォン・デア・ライエンEU委員長も「EUへの液化天然ガスLNG輸出を多くの国々と協議し、今年1月の時点で120隻の船舶が膨大なLNGを欧州に運んできてくれた」「欧州全域のガスパイプラインと電力相互接続ネットワークを強化した」と、対策を行なっていることを報告した上で、「この危機からすでに得られる教訓の一つは、ロシアのガスへの依存を取り除き、再生可能エネルギー源に多額の投資を行い、エネルギー源を多様化する必要があるということだ。それは地球に優しく、私達のエネルギー安全保障のためにも良い」と強調している。さらに今月23日もノルウェーのストーレ首相との会談後「ロシアや化石燃料にエネルギーを依存するのをやめ、再生可能エネルギーへの移行をすすめなくてはいけない」と語っている。

◯脱石炭だけでなく脱ガス、欧州の再エネ移行が加速

 石炭火力発電に比べれば、天然ガス火力発電から排出されるCO2は半分程度であるため、EU各国は脱石炭をすすめる一方、天然ガス火力への依存を深めてきた。しかし、それは破局的な温暖化の進行を防ぐものではないとして、グレタ・トゥーンベリさんはじめ多くの環境活動家や気候学者らが見直しを求めてきたことなのだ。今回のウクライナへの侵攻で、欧州各国のプーチン政権下のロシアに対する不信感は決定的となり、また天然ガスや原油の供給不足や価格上昇と相まって、再生可能エネルギーの推進や省エネ化がより進むことになるだろう―そう観るのは、筆者だけではなく、米国のテレビネットワークのCNNや、著名誌『タイム』、英紙『ガーディアン』なども同様の論調で報じている。本稿のタイトルを、"真の勝者は「グレタさん」"としたのは、上述ような流れが加速するだろうからである。

◯ロシア経済に打撃

 こうした、ロシアの天然ガスから再生可能エネルギーへのシフトが欧州で進むことで、プーチン政権の「武器」となっていた天然ガスは諸刃の剣として、ロシア経済を揺るがすことになる。ロシアの輸出全体の中で、以前よりは若干減少しているとは言え、EUは最も割合が大きく4割強を占める。もし、これが失われるのなら、ロシア経済にとっては大きな打撃だ。なぜならば、ロシアの政府歳入の約5割を石油・ガス関連収入が占め、文字通り国家の財政基盤であるからだ。仮に、欧州各国だけでなく、米国の呼びかけで日本や韓国、インド、トルコ等がロシアの天然ガス輸入を止めた場合は、さらにプーチン政権は苦しくなる。中国がロシアからの天然ガス輸入量を増やすかもしれないが、中国もまた脱炭素社会の実現に向け、猛烈な勢いで再生可能エネルギーを増やしている。ごく短期的ならともかく、中長期的に欧州その他の国々の穴を中国が埋められるかは、何の保証もない。また、中国に大きく依存することで、同国に経済的に支配されるリスクもある。つまり、プーチン大統領は、軍事力でウクライナを圧倒することはできるだろうが、国家戦略としては、ウクライナへ軍事侵攻した時点で、既に負け始めているとも言えるのだ。

◯日本も再エネ移行を急げ

 ウクライナ危機は、日本にとっても他人事ではない。ロシア軍の侵攻開始によって、石油や天然ガスの価格は高騰し、日本経済にも悪影響が及ぶだろう。だからこそ、EUと同じく、エネルギー安全保障と脱炭素を兼ねて、再生可能エネルギー中心の社会の実現へギアを上げていくべきである。それは「力による現状変更」に対して、ただ「遺憾」の意の表明するではなく、毅然とした対応をしっかりと取るという意味においても重要なことなのだ。

 最後に、これまで中東の紛争地を取材してきた者としては、流される血が一滴でも少ないうちに、一刻も早く戦争が終結することを心から祈りたい。

志葉玲

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラクなどの紛争地での現地取材、脱原発・自然エネルギー取材の他、入管による在日外国人への人権侵害、米軍基地問題や貧困・格差etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに寄稿、テレビ局に映像を提供。著書に『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共編著に『原発依存国家』(扶桑社新書)、『イラク戦争を検証するための20の論点』(合同ブックレット)など。イラク戦争の検証を求めるネットワークの事務局長。


 各国の思惑が見え隠れしている。プーチンは20年に及ぶ「独裁」を継承するために、支持をつなぎとめるためにも、「民主主義」は邪魔になる。バイデンは迫る中間選挙で支持減を挽回するために。そして中国も日本も虎視眈々とこの機を逃すまいとしているようだ。これをもって軍事力強化や「敵地攻撃」、改憲などを煽るだろう。こんな時こそ冷静でなくてはならない。もう、昔のような大国による支配、軍事(力)による支配から抜け出さなければならない。「核抑止力」の弊害も明らかになった。世界から、地球上から戦争の武器をなくすことが急務だ。それが21世紀を生きる人々の新しい任務だ。


雨宮処凛がゆく!「叱る依存」という病〜指導死、虐待、DV、パワハラ、そしてSNS上のバッシングや「厳罰化」、危険な中絶方法などなどの背景にある根深いもの。

2022年02月24日 | 生活

マガジン9  マガジン9 (maga9.jp) 

 2022年2月23日

 

 2012年、大阪府大阪市の高校に通う男子生徒が自殺した。バスケットボール部のキャプテンをしていた男子生徒の手紙と遺書には、顧問教師から体罰を受けてつらいなどと書かれていた。

 17年、福井県の中学校に通う中学二年生の男子生徒が自殺した。宿題の提出などについて、周囲が身震いするほどの大声で担任などに怒鳴られた末のことだった。

 18年、岩手の高校に通うバレーボール部の男子生徒が自殺した。残されたメモに「ミスをしたら一番怒られ、必要ない、使えないと言われた」と書かれていた。

 19年、茨城県の中学校に通っていた中学三年生の女子生徒が自殺した。自宅に残されたメモには、卓球部顧問の男性教諭から「ばかやろう」「殺すぞ」などの暴言を受けたことなどが書かれていた。

 これらは「指導死」と呼ばれるもので、教育評論家・武田さち子さんの調査によると、未遂も含む指導死は、平成以降94件も起きているのだという。

 私が10代の頃、「指導死」という言葉はまだなかった。が、中学校では体罰は当たり前、「忘れ物をした」「私語をした」などの理由で毎日誰かが殴られ、時に髪を鷲掴みにされ引きずられるなどしていた。部活では「指導」の名のもとに毎日暴言を浴びせられ、なんの理由もなく殴られるのは日常茶飯事だった。

 そんな経験は、今も決して消えない傷として私の中に残っている。同じような経験をした人の中には「それでも厳しく指導してもらってよかった」などと口にする人もいる。が、あの経験を肯定してしまうと自分自身も加害し、それを正当化してしまいそうだから、決して肯定しないようにしている。

 そんな体罰だが、20年4月、親などによる体罰の禁止を盛り込んだ改正児童虐待防止法と改正児童福祉法が施行され、風向きが変わってきてもいる。

 さて、そんなことを突然書いたのは、『〈叱る依存〉がとまらない』 (村中直人著/紀伊國屋書店)という本を読み、非常に感銘を受けたからだ。

 この本を読んで、なぜ「指導死」が今もなくならないのか、なぜDV、虐待、パワハラが起きてしまうのか、そしてSNS上で他者を自殺に追い込むほどの「バッシング」がなぜ収まらないのか、そのメカニズムがよくわかった。

 本書は「叱る」ことには効果がなく、しかし、副作用としての弊害は大きいこと、また「叱る」には依存性があり、エスカレートしていく傾向があること、その理由は脳の報酬系回路にあることなどが指摘されている。

 叱る人は、叱ることによって処罰感情を充足させ、自己効力感を得ており、これが暴走するとDVやパワハラ、他者へのバッシングなどに繋がっていくそうなのだ。また、苦痛を抱えている人が「叱る」行為で快楽を得ることが続くと、「叱る依存」が加速していく傾向があるという。しかも自分が損をしてでも叱りたいという欲を抑えられなくなることもあるそうだ。以下、本書からの引用である。

 米『サイエンス』誌に掲載された研究によると、なんらかのルール違反を犯した相手に罰を与える体験をすると、報酬系回路の主要部位の一つ(背側線条体)が活性化することが報告されています。興味深いことに、この部位が強く活性化した人ほど、自分自身が損をしてでも相手に罰を与えようとする傾向があったのです。

 これはとても不思議なことです。誰かに罰を与えても、自分には何のメリットもないどころか、損をすることがわかっている。その状況で罰を与えようとするというのは、自分が支払う損による「苦痛」以上の、強い「快感」がなければ起こらないはずです。これらの結果は、人が規範違反を罰することで、強い満足感や快感上を得ているという仮説を支持するものだと考えられています。

 このようなことを念頭に置いて、ある虐待死事件を見ていこう。

 18年、目黒区で起きた船戸結愛ちゃんの事件だ。

 「もうおねがい ゆるして ゆるしてください」

 わずか5歳の女の子は一人の部屋でそんな「反省文」を書かされ、満足に食事も与えられずに衰弱死した。

 母親の優里は保護責任者遺棄致死罪で逮捕。養父である雄大は保護責任者遺棄致死に加え傷害罪などでも逮捕。事件発覚後明らかになったのは、サッカーボールのように腹を蹴り上げるなど、雄大による結愛ちゃんへの激しい暴行。それだけでなく、母親の優里もまた雄大から精神的DVを受け、その支配下に置かれていたということだ。

 しかし母親は女性相談を受けた際、「あなたは殴られたり、蹴られたりしていないのでDVではない」という誤った説明を受けていたという。暴力がなくともDVは成立する上、優里は耳を掴む、頭を押さえるなどはされていた。また、ことあるごとにバカと言われ、子どものしつけができていないと2時間も3時間も説教されていた。

 先ほど、「苦痛を抱えている人が「叱る」行為で快楽を得ることが続くと、「叱る依存」が加速していく」傾向があることに触れた。

 雄大の場合はどうだったのか。執拗に優里を説教し、しつけと称して結愛ちゃんを虐待していた雄大は、「とにかく結愛を幸せにする。俺のようになってほしくない」と熱弁していたという。彼は中学の部活でいじめのような体験をし、大手企業に就職するものの会社に不適応を起こし、8年間勤務したうちの最後の2年は毎朝嘔吐しながら通勤していた。そうして会社をやめて辿り着いたのが、香川県のキャバクラのボーイの仕事だったのだ。そこで優里と結愛ちゃんに出会い、事件が起きる(『結愛へ 目黒区虐待死事件 母の獄中手記』。

 『〈叱る依存〉がとまらない』を一読してまず頭に浮かんだのは、この事件の雄大のことだった。妻である優里に執拗に説教を繰り返し、結愛ちゃんに壮絶な暴力を振るっていた彼は、まさに依存的な状態に陥っていたのではないだろうか。

 さて、「叱る依存」が正当化される社会は、厳罰化の流れも歓迎する。

 例えば21年、改正少年法が可決されたが、これは「厳罰化」を意味している。が、20歳未満の子どもの犯罪が増えているのかと言えば、重大事件を含め、急激に減少していることは多くの人も知っているはずだ。その上、厳罰化は再犯率をあげる効果も生み出してしまう。刑期が長くなるほど社会復帰のハードルが高くなるからだ。しかし、厳罰化に向かうのは、法律を決める政治家が〈叱る依存〉に陥っている可能性があるのかもしれないと本書は指摘する。

 政治家は支持者がいることで権力を振るうことができます。「私たちは、悪いやつらに厳罰を与える正義の味方です」というメッセージが、人々の処罰感情を充足させて支持を集めることに、近年の厳罰化傾向の理由を求めることができるのではないかと私は思っています。

 このような「正義の味方パフォーマンス」は、一部政治家による生活保護バッシングにもあてはまるだろう。ある意味、こういった振る舞いは政治家にとって非常にコスパがいい。「けしからん」と言うだけで、いや、ツイートするだけで何もやってないのに何かやってるように見えてしまうのだから。

 本書では、「形を変えた厳罰主義」として、この国の中絶方法も指摘されている。

 それはこの国で主流となっている「掻爬法」。

 日本では人工妊娠中絶をする場合、「かき出す中絶」である掻爬法が主流で、現在、他の方法との併用も合わせて6割以上がこの掻爬法。が、掻爬法は「危険」とされて多くの国ですでに消え、WHOも「時代遅れでやめるべき」としている。

 それなのになぜ、危険でダメージが多い掻爬法が今に至るまで選択されているのか。それだけでなく、世界90カ国では緊急避妊薬が薬局で安く買えるのに、日本ではなぜ薬局で手に入らないのか。また、なぜ薬を飲むだけで中絶できる経口中絶薬がそもそも認可されていないのか(昨年末、やっと承認申請された)。世界70カ国で承認され、WHOも安全な方法として推奨しているのに、である。しかも、日本で中絶手術をすると10〜20万円かかるが、海外での経口中絶薬は430〜1300円。この落差に愕然とするのは私だけではないだろう。

 著者はこのような状況が放置されている理由について、「結果として医療が人を裁いている」と指摘する。

 これらの事実を知ったとき、中絶をする女性たちに医療制度が「罰」を与えることで、後悔や反省を促そうとしているようにしか、私には感じられませんでした。もしくは中絶が危険だと暗に警告を発することが、中絶を減らす抑止力となると考えられているのかもしれないとも思いました。しかしながら、抑止のためのネガティブな感情体験には「中絶せざるを得ない」という事実だけで十分です。その上であえてわざわざ身体的リスクの高い中絶方法を強制しているのだとしたら、その医療制度の背景に〈叱る依存〉の心性が働いていると考えざるをえないでしょう。

 考えてもみてほしい。

 もし、なんらかの病気において、その病気の患者に対して、国際的な常識ではやめた方がいいとされる危険かつ痛みとダメージが大きな手術や治療法が「罰を与える」ようになされているとしたら。当然、患者のみならず多くの人から大反対の声が巻き起こるだろう。そのようなやり方を決めた人間に対しては、「お前何様?」「神なの?」「罰する権利なんて誰にあるの?」などと大きな批判が起こるはずだ。

 しかし、それが「中絶する女」が対象になると、なぜか容認されてしまう。それがこの国でずーっと続いていることだ。これって、女性に対する恐ろしい虐待だと思うのは私だけではないだろう。

 さて、最後に「叱る依存」の例として書いておきたいのは、SNS上のバッシングだ。

 SNSでは、今日も誰かがたった一言の失言やちょっとした間違いで大勢から「許せない」と叩かれている。

 被害に遭うのは有名人とは限らない。一般人もちょっとした言動であっという間に炎上し、一度「叩いていい人」認定されると批判の域を超えた人格否定が数千、数万と押し寄せる。場合によってはプライベートを暴かれ、個人情報も流出するなど取り返しのつかないことが起きる。やられる方はたまったものではなく、そのことによって時に命が奪われ、また多くの人が取り返しのつかない傷を負うが、やる方からすると「祭り」感覚で、バッシングがエンタメ化している。そんな状況を著者は、「処罰感情が暴走する現代のコミュニティ」と書いている。

 これまで、私自身もさまざまな誹謗中傷にさらされてきたが、SNSでの執拗な攻撃や炎上を見ながら、常々「依存症的だな」とも思ってきた。私と会ったこともなく、おそらく私が何をしているのかも知らないような人が、執拗に絡み続けてくる謎。その中には、一方的な正義を押し付けてくる人もいれば、炎上という祭りに乗じて誰でもいいから思い存分叩きまくって鬱憤を晴らしたい、という欲望を剥き出しにした人もいる。

 なんにせよ、それぞれが快楽を感じ、同時に、「悪いあいつを懲らしめてやろう」という使命感も満たしている。自らは何もせず、無料で正義感や処罰感情を満たせるなんて他にはないものだ。だからこそ、依存症的になっているのだろう。が、それはいつだって訴えられ、損害賠償を請求されるだけでなく、顔も名前も晒されるリスクも伴っている。それなのに、やめられない。

 本書には、SNSのバッシングだけでなく、ここまで書いたようなさまざまな「叱る依存」からの脱却方法も書かれている。

 今一度、自分が依存に陥っていないか、そして周りの人の言動に叱る依存が見えないか、改めて検証してみるのもいいだろう。

 ということで、コロナ禍でみんながストレスを抱えている今だからこそ、読んでほしい一冊だ。


 今日もほぼ1日雪の日。屋根雪が下の雪にくっついて落ちなくなっている。窓もスッポリト埋まって部屋は真っ暗。除けなければならないのだが、一日数回の除雪だけで体力無し。


2度の児相保護も防げなかった7歳男児の死、壁となった家裁の承認 どうすれば救えたのか

2022年02月23日 | 事件

 

 

山脇由貴子心理カウンセラー 家族問題カウンセラー

YAHOO!ニュース(個人) 2/23(水)

児相2回保護も事件防げず 第1子・2子生後まもなく死亡受け

 神奈川・大和市で3年前、当時7歳の次男を殺害した疑いで、42歳の母親が逮捕された事件が起きました。大和市は、次男が生まれる直前に、第1子と第2子が生後まもなく死亡していることを伝えられ、児童相談所で2回保護していたが、事件は防げませんでした。なぜ防ぐことが出来なかったのでしょうか。

適切だった児相の対応

 この家庭は2002年に長男がミルクの誤嚥で死亡、2003年には長女が生後1か月で乳幼児突然死症候群で死亡しています。大和市は2012年からネグレクトとして支援して来ました。

 その後、2012年10月生後5か月の次男の雄大君が心肺停止で救急搬送され、児童相談所が一時保護しました。その後、施設入所となりましたが、児童相談所は安全が確認されたとし、自宅に戻しました。このことについて児童相談所は虐待リスクの材料として2人の子どもの死亡しかなかったこと、親子関係に問題がなかったことから自宅に戻した、と説明しています。

 雄大君は2015年3月に自宅に戻りましたが、2017年4月に三男が原因不明で死亡した為、児童相談所は2度めの一時保護を実施しました。適切な対応だったと言えます。

 児童相談所は施設入所適当と判断しましたが、母親が同意しなかった為、身体的虐待があるとして、家庭裁判所に申し立てをしました。家庭裁判所の判断が得られれば、児童相談所は親の同意なくとも、子どもを施設に入所させることが出来るからです。ですが、家庭裁判所は施設入所ではなく、在宅指導が適当との判断を出し、児童相談所は雄大君を自宅に戻さざるを得なくなり2018年11月に雄大君は保護解除となりました。そして2019年8月に亡くなってしまったのです。

虐待が日常的とは言い切れず

 家庭裁判所が施設入所の申し立てを却下した理由について、児童相談所は会見でこう説明しました。

「今までお子さんが亡くなったことについて保護者の責任、故意に何かしたという根拠は全くないので」

「児童相談所側でも間違いなくこの家庭で養育するのは不適切だというところまで書類を揃え、提出することが出来なかった」

報道では、雄大君は児童相談所職員に一度だけ、

「お母さんに投げ飛ばされて口から血が出た」

と言ったそうです。でも逆に言えば児童相談所が家裁に提出した身体的虐待の根拠はこれだけだったのだと思います。だとすれば、虐待が日常的だとは言い切れず、家裁が在宅指導が適当と判断したのも、やむを得ないとも考えられます。児童相談所が述べている通り、お子さん達が亡くなったことに、母親が関係しているという根拠は何もないのです。それでも児童相談所が家裁に施設入所の申立をしたという点は、子どもを守る為だったと言えます。児童相談所としては頑張ったと言えるでしょう。

家裁承認の壁は「ミュンヒハウゼン症候群」か(末尾に用語解説を載せた)

 それでも雄大君は亡くなってしまいました。それは児童相談所が母親が、代理によるミュンヒハウゼン症候群の疑いがある、という根拠を家裁に示せなかったのだと思います。確信も持てなかったのでしょう。それは仕方のないことだと思います。私は児童相談所勤務時代に母親が代理によるミュンヒハウゼン症候群の疑いがある子どもを保護し、家裁に施設入所の申立をし、家裁の承認を得られ、子どもを施設に入所させることが出来た経験があります。それが出来たのは、代理によるミュンヒハウゼン症候群に詳しい医師を見つけることが出来て、何度も勉強会を開き、医師に代理によるミュンヒハウゼン症候群について教えてもらいながら、資料を作り、医師に意見書も書いてもらいました。詳しい医師がいたからこそ出来たのです。

 児童相談所は地方自治体の職員の異動先に過ぎず、児童虐待について詳しい人ばかりではありません。知識と経験が全くない人もいます。専門家を集めなくてはならないこと、児童相談所職員の育成をしなければならないことは課題であり続けます。ですが、代理によるミュンヒハウゼン症候群のような、症例も少ない精神疾患の疑いがある親にどのように対応すれば良いのか、家裁にはどんな資料を提出すれば良いのか、経験の長い職員でもわからないこともあるのです。

どうすれば命を救えたのか

 どうすれば雄大君を救えたのか。

現在の全国の児童相談所は横のつながりはほぼない状態です。情報交換もしていません。お互いの経験を共有していないのは残念なことと言えます。例えば、自分たちには経験のない、難しい案件にふつかった時、全国の児童相談所に

「経験のある方いらっしゃいませんか?」

と投げかけるシステムがあれば、経験と知識のある職員からノウハウを教えてもらうことが出来、それが職員の経験と育成につながるのではないでしょうか。

今回のような症例の少ない精神疾患の場合は医師会の協力を得て、児童相談所が詳しい医師を紹介してもらえるシステムなどもきっと役に立ったはずです。そういったシステム作りは国が取り組むべきと言えるでしょう。

 児童相談所職員の専門性を高める、育成を強化する。それには時間がかかります。同じような事件を起こさないためにも、子どもを救うためにも、児童相談所に足りない知識を補うシステムが構築される必要があると思います。

山脇由貴子

心理カウンセラー 家族問題カウンセラー

都内児童相談所に19年間勤務。現在山脇 由貴子心理オフィス代表

 

代理ミュンヒハウゼン症候群 (Wikiより)

ミュンヒハウゼン症候群の一形態であって、傷害の対象が自分自身ではなく、熱心に看病する自己が周囲から『頑張っている』『大変な母親(娘・義娘)』という同情や称賛が集っている状態が心地良いと感じ、虚偽報告・薬物等を用いた薬理操作・隠れた虐待行為で他者を病気・怪我させる精神疾患、医療乱用虐待(MCA)である[1][2]。

女性に多く見られ、多くの場合は傷害対象は幼い自らの子や要介護者であるため、児童虐待、高齢者虐待、障害者虐待で逮捕された際に発覚もされる。適切な介入がなされなければ再発率はほぼ100%。狙われた者の致死率は最大で30%にも上り[要出典]、関係の再統合は難しいのが現実である。しかしながら傷害行為自体は患者の目的ではなく、手段として傷害行為に及び自分に周囲の関心を引き寄せることで、自らの精神的満足を他者から得ようとしているものである。患者への傷害を目的として行っているわけではないとはいえ、行為が反復・継続し、重篤な傷害・死亡の危険がある[1]


わたしにとって、初めて聞く病名でした。すぐに対策を練ってほしいものです。

今日も結構な雪が降っています。2018年の大雪に迫っています。


古賀茂明 政官財の罪と罰 賃上げできない連合に存在意義はあるのか 

2022年02月22日 | 社会・経済

AERAdot 2022/02/22 07:00

 日本の労働者の賃金が30年間ほとんど上がっていないという事実は、かなり広く知られるようになった。その原因については、労働生産性が上がらないからだという解説がよくなされる。確かに日本の労働生産性は、その水準が他の先進国に比べて低く、しかも上昇率も低いのは事実だ。

 しかし、現場の労働者が怠け者なのかというとそんなことはない。先週号でも指摘したとおり、日本の労働者は真面目で一生懸命働くという評価が一般的だ。それにもかかわらず、日本の賃金が低いのは、経営者と政府に大きな責任があるのだが、今回は、別のところに焦点を当ててみたい。それは労働組合、特に連合の存在だ。

 本来、労組の最大の仕事は、労働者の権利を守り拡大していくこと。とりわけ大事なのは、彼らの生活の糧である賃金の引き上げを勝ち取ることだ。

 経団連企業の多くが、「史上最高益!」というニュースに沸き、株価は上昇、ストックオプションで経営陣は濡れ手に粟のような状況が続いているが、労働者の賃金は一向に上がらないという理不尽な現実。労働者は怒っても当然だ。ここまで賃上げ無しの状況が続けば、普通の国では、大規模なストライキが行われ、国民もそれを支持する。

 日本国憲法28条で国民に保障された労働基本権には、当然のことながら、ストライキを行う権利が含まれている。かつての春闘では、鉄道の組合のストで、国民の足が麻痺することがよくあった。しかし、最近、そうした大規模なストが行われることはない。では、どうして憲法で保障された権利を放棄するようなことを続けるのか。

 それは、おそらく、連合が、自分たちが国民の支持を得られていないと自ら認めているからではないだろうか。以前、国鉄がストを行うと、親方日の丸などと政府や自民党から批判を受け、それに国民も同調して組合が孤立していったという過去がある。今の連合も、自分たち大企業正社員さえ良ければ良いという本音が国民に見透かされている。非正規労働者の権利も守るとは言うが、誰もそんなことは本気にしない。非正規労働者の待遇をよくすると、正社員の待遇を引き下げられるということを恐れていると見る人も多い。

 そんな後ろめたさがあるから、連合傘下の労組がストをやっても、どうせ国民の支持は得られない。だからやめておこう、という気持ちになるのではないか。

 国民の支持が得られないなら、得られるように努力して欲しいものだが、そんなことは棚に上げて、自分たちの存在感を見せやすい政治の分野に力を注いでいるのが、いまの連合だ。

 共産党批判に異常に熱心で、立憲民主党にも冷たい。弱い者いじめは簡単だ。その一方で、権力者の自民党には露骨に擦り寄り、自分たちが偉くなったと勘違いしている。

 この組織は何のためにあるのだろうか

 まずは、今年の春闘で最低3%以上の賃上げと最低賃金の10%引き上げ要求を掲げ、ゼネストも辞さないという姿勢で臨むべきだ。そこで成果を得られなければ、会長はクビ。そして、政治に口を出すのも自粛。

 それくらいの覚悟で本来の労働運動に取り組むこと。それが連合に課された今一番大事な役割だ。

※週刊朝日  2022年3月4日号より


 まだ雪は降っているが風は収まった。もう爆弾低気圧は要らないが、いつもなら3月に嵐が来て、それからいよいよ春を迎えるのだが、今年はどうなることやら。週間天気を見ると25日あたりから真冬日が崩れてきそうだ。雪融けも進むだろう。一番好きな春の訪れである。


異次元ファンド 危険な大学改革

2022年02月21日 | 教育・学校

「しんぶん赤旗」2022年2月15日~18日

(1)公金10兆円で挑む「錬金術」

 岸田政権が成長戦略の柱と位置づける大学ファンドの運用開始が間近に迫っています。公的資金10兆円を金融市場で運用し毎年4千億円超の利益をあげ、世界レベルの大学を育成するといいます。政府自身が「異次元の政策」と呼ぶ構想に、金融界は株価上昇への期待感を、大学関係者はさらなる教育・研究基盤破壊への危機感を高めています。(佐久間亮)

 「波乱相場の救世主!『大学ファンド』が日本株を下支えする」「TOPIX押し上げ効果最大6%か」―。運用開始が近づくほど金融市場の視線が熱を帯びています。

 運用を開始後、実際に大学への支援が始まるのは2024年度からです。政府は通常国会に、支援対象大学の認定にかかわる法案を提出する予定です。

株で運用

 12年の政権復帰以降、同じく「異次元」を冠した金融緩和策をすすめ、公的年金積立金や日銀を使って株価をつり上げてきた自公政権。大学ファンドのうち65%、6兆5千億円は株での運用が決められており、日本の株式市場はいっそう官製相場の様相が強まります。

 投資の原資は国民から集めた税金約1兆円と国の借金の一種である財政融資資金約9兆円です。財政融資資金を元本保証のない株に投じるのは、借金でギャンブルに興じる危うさに通じます。

 物価上昇を加味した運用目標は4・38%以上。政府は、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の収益率がリーマン・ショック以降3・7%と好調だったことや、米英の有名大学の運用目標が軒並み5%台だということを根拠に、目標は決して高くないといいます。

高リスク

 金融論が専門の鳥畑与一静岡大学教授は、資産を運用する信託会社に払う手数料を加えれば、毎年5~6%の運用収益を上げなければならなくなると指摘。必然的に高い危険を冒して高収益を狙う運用にならざるを得ないと語ります。

 「この間のGPIFの高収益は世界的な金融緩和政策で株式市場に資金が流れ、株価が上昇したことを追い風にしたもの。いま世界は金融引き締めへかじを切っており、市場環境は大きく変わろうとしている」(鳥畑氏)

 同様の声は市場関係者からもあがります。日本証券経済研究所の明田雅昭特任リサーチ・フェローは『証券レビュー』21年8月号で、政府が大学ファンドに「安全かつ効率的」という決して両立しない運用方針を求めていると批判。超低金利下で安全な国債運用では到底政府の運用目標は達成できず、「目標達成のためには元本割れリスクを覚悟した運用が避けられない」と指摘しています。

 多額の損失が生じ財政融資資金が返済できなくなれば、最後は税金の形で国民が負担することになります。財政融資資金を審議する財務省の審議会で昨年7月、冨田俊基元中央大学教授は「錬金術を大学ファンドの名前で行うということだ」と批判しました。

(2)のしかかる成長への重圧

 大学ファンドの危険は支援を受ける大学にも降りかかってきます。支援の要件として課された目標が達成できなければ援助の打ち切りもあり得るため、すさまじい重圧が大学にのしかかってくるからです。

 政府は、本来は各大学が独自にファンドを立ち上げるなど「自律的」に収益を上げられるようにすべきであり、大学ファンドはそうした体制をつくるための時間短縮が目的だと説明します。

積み立て

 そのため大学ファンドの支援を受ける大学には、年3%の事業成長と独自のファンド創設に向けた積み立てが課されます。しかし、支援候補大本命の東京大学でも2005~19年の平均成長率は1・4%。日本の代表的な11の研究大学(RU11)の平均では0・2%にすぎません。

 独自のファンド創設はさらに困難を極めます。政府の大学ファンドは、1校当たり500億円を支援する想定で制度設計されています。同規模の運用益を各大学が独自に稼ぐには、途方もない額を積み立てなければならないからです。

 鳥畑与一静岡大学教授(金融論)は、500億円の運用益を上げるには運用目標を3%としても1兆6667億円の基金が必要になると指摘。毎年400億円ずつ積み立て3%で運用したとしても27年、300億円では33年、220億円では40年かかるといいます。

 他大学と比べ強い経営基盤をもつ東大でも20年度の経常収益は付属病院を含めて約2400億円。経常利益はわずか4億円です。

 事業成長3%とファンド立ち上げに向けた巨額の積立金が強い圧力をかけ、稼げる研究への「選択と集中」が大学の経営戦略に組み込まれることになります。企業などからの外部資金獲得が見込まれる応用研究系の学部などへの資金傾斜と、基礎研究や人文系学部の軽視がいっそう加速しかねません。

 独自のファンドを立ち上げたとして、その運用を担う人材がいるのかという問題もあります。

 「米国の大学が優秀なスタッフを雇い未公開株やヘッジファンドなどハイリスクな投資をしているのは、国際金融市場で圧倒的競争力を持つ米国だからできること。同じことが日本の大学でできるのか」(鳥畑氏)

穴埋めも

 大学ファンドの原資の9割を占める財政融資資金は20年後から返済が始まります。大学ファンドの支援が終わったとき、各大学でそれに代わる収入源が確保できていなければ、研究打ち切りや学部再編など厳しい事業計画見直しを迫られることになります。

 政府は、大学ファンドから支援を受ける大学に拠出金を求め、同ファンドで一体的に運用することで支援からの「卒業」に向けた準備をするとしています。同ファンドから各大学への支援額は、大学の外部資金獲得実績や拠出金の状況をみて決められるため、支援と引き換えに多額の拠出金を求められる可能性もあります。

 大学ファンドが損失を出した際、各大学の拠出金が穴埋めに使われる懸念はないのか。内閣府の担当者は可能性を否定するものの、財務省の審議会は昨年12月「支援を受ける大学も一定のリスクを負うべき」だとする審議まとめを出しています。

(3)研究壊す「毒まんじゅう」

 「科学技術・イノベーションの力で新しい資本主義を実現させる」―。大学ファンドの支援対象となる大学のあり方をまとめた1日の総合科学技術・イノベーション会議で、岸田文雄首相はそう宣言しました。

ごく一部

 10兆円の大学ファンドで世界トップレベルの大学を養成し、日本の研究力と経済を向上させる戦略です。運用益の一部は若手研究者育成のため博士課程の学生の支援にも回すといいます。

 支援の対象となる大学数は現時点で明らかでないものの、政府は昨年の財務省の審議会では6校程度と説明していました。支援対象は段階的に増やすため開始当初はさらに少なくなります。

 一方、支援対象とならない大学向けの「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」は、2022年度予算案でわずか462億円。中身も既存の大学関連予算の寄せ集めです。

 800超ある大学のごく一握りだけ支援して日本の研究力は底上げされるのか。1月の国立大学協会の総会では「日本の一番弱いところは地方大学などすそ野がやられたことだ。まずはそこを活性化しないとだめだ」(山梨大学の島田眞路学長)など、厳しい意見が相次ぎました。

 背景には、国立大学法人運営費交付金を1割以上削減し、一部の大学だけ手厚く支援してきた、この間の「選択と集中」路線への批判があります。

 国の科学政策などについて調査・発信している「科学・政策と社会研究室」の榎木英介代表は大学ファンドについて、支援と引き換えに教育と研究という大学にとって本来最も大切なものを犠牲にする「毒まんじゅう」だと指摘します。

 大学ファンドから支援を受ける大学には年3%程度の事業成長が課されるうえ、企業などから外部資金(競争的資金)を多く獲得した大学ほどファンドからの支援額も大きくなります。

悪循環に

 榎木氏は、国立大学などの交付金が減少し競争的資金を獲得しなければ研究が続けられなくなったことで、資金獲得のための書類作成に研究時間を奪われるようになり、不安定な任期付き教員を増やす要因にもなったと語ります。

 「競争的資金のプロジェクトは長くても5年間なので、任期付きでしか研究者を雇えない。腰を据えて研究できないので短期間で成果が出やすいテーマを選ぶことになり、結果として革新的な研究が生まれない悪循環に陥っている」

 国立大学の40歳未満の教員に「任期付き」が占める割合は2007年の38・7%から20年には67・1%へ激増しています。大学ファンドで博士課程の学生を支援したとしても、その後に安定的なポストがなければ問題はなにも解決されません。

 大学院生にも教員から研究成果が強く求められるなか、博士課程を途中で断念せざるを得なくなった経験を持つ榎木氏。その教員もまた激しい競争に追い詰められていたのではと振り返ります。

 「いまの大学は競争が激しすぎて学生をじっくり育てる余裕がない。時間をかけて育つタイプの人間は役に立たないと切り捨てられる。大学ファンドへの大学関係者の期待は大きかったが、実際の中身はこれまで通りの『選択と集中』だ」

(4)異次元ファンド 危険な大学改革

学長の上に大企業経営者

 岸田政権の大学ファンド政策には、世界的に引用される回数がトップ1%に入る論文数を増やすなどといった、これまでの政府の科学政策に盛り込まれてきた研究力向上にかかわる具体的な目標が見当たりません。

肩代わり

 「科学・政策と社会研究室」の榎木英介代表は「大学ファンドは科学政策というよりも、国際競争で苦境に立たされている日本企業が研究開発費を大学に肩代わりさせたいという思惑から動いているのではないか」と推測します。

 日本企業の大学依存はすでに強まっています。日本企業が発表した論文数は1990年代後半をピークに減り続け、論文自体も大学などとの共著が7割近くに達しています。

 そうした企業の思惑を後押しする仕組みも用意されています。大学ファンドの支援要件の一つ「自律と責任あるガバナンス体制」の構築です。ガバナンスは統治体制を意味します。大学自ら利益をあげる統治体制を構築すべきだというものです。なかでも政府が重視するのが国立大学の自治の見直しです。

 国立大学は長年、教職員の投票結果にもとづいて学長を選ぶなど、教授会を中心とした大学自治を築いてきました。自公政権は、2004年の国立大学の法人化に合わせ、大企業の役員など学外者が半数を占める学長選考会議が学長を選ぶ仕組みへ変更。14年には教授会を学長の諮問機関へ格下げし、21年にも学長の権限と文科省支配を強化する法改定を行いました。

 その結果、教職員の意向投票で大差で敗れた候補を選考会議が学長に指名する▽意向投票自体を廃止する▽カリキュラムもトップダウンで変更―など「学長独裁」と呼ばれる事態が各地で起きています。しかし、今回大学ファンドに組み込まれたガバナンス改革は、これまでの大学自治破壊と比べても次元を異にしています。

 現在の国立大学では、学長と理事からなる役員会が意思決定機関と執行機関を兼ねています。理事数は大学ごとに法律で決められ、例えば東京大学は7~8人。学外者はそのうち2人いればいいことになっています。

 一方、大学ファンドの支援を受けるには構成員の「相当程度」を学外者が占める「合議体」を大学の最高意思決定機関にしなければなりません。相当程度について政府は「例えば過半数、半数以上等」とし、メンバーには事業戦略や財務戦略に知見を持つ人物がふさわしいといいます。

自治破壊

 合議体は、事業成長3%という支援要件の達成に向けた「経営戦略」をはじめ、大学の重要事項全般の決定権を掌握。さらに法人の長(学長)の選考と監督まで行います。政府は制度の細部を詰め、来年の国会に法案を提出する構えです。

 実際の業務執行は学長らに委ねるので、教育や学問に合議体が介入することはない、という政府の説明は信用できるのか。

 北海道大学の光本滋准教授(高等教育論)は、合議体が細かく口を出さなくても、合議体の下位に置かれる学長らが経営戦略に基づいて現場に介入してくることになるとし、大企業経営者などからなる学外者が大学を支配する道が開かれると警告します。

 「大学の資金難につけ込んで、大学ファンドを大学自治破壊の強力なテコにしようとしている。事業成長に貢献しない学部の再編やカリキュラムの見直し、大学の収入を増やすための学費値上げがトップダウンで進められる危険がある。学問の自由が無くなれば、大学はもはや学術機関とは言えなくなる」(おわり)


 学問、研究にたいする政権の介入は極力避けなければならないことは先の「学術会議」任命拒否問題でも明らかだ。「教育」にこれ以上の介入を許すわけには行かない。

 「年金」も株に投じられました。「こんなに儲かっている」と胸を張りますが、年金支給額は減らされる一方で株主に。

ホワイトアウト

風が強く、玄関前に吹き溜り、ドアの1/3が埋まっていました。
上2枚は朝のようす。下3枚は先程4時過ぎです。


 

 


岸田政権が都道府県に「PCR検査を抑えろ」の大号令 交付金差配の内閣府を通じた圧力か

2022年02月20日 | 健康・病気

日刊ゲンダイDIGITAL  2022/02/20 

〈1日当たりの検査件数を1月第二週における1日当たり平均検査実績の2倍以内として頂くようお願いします〉──。先月27日、内閣府地方創生推進室と内閣官房コロナ対策推進室が、連名で各都道府県に送付した事務連絡の一文である。意図は自治体の無料PCR検査を「抑えろ」だ。

 当時はオミクロン株が猛烈な勢いで全国に広がり、感染者数はネズミ算式に上昇。寒空の下、各自治体の無料PCR検査会場は長蛇の列で、検査試薬や抗原検査キットの需給逼迫が問題となっていた。そこで同日、厚労省は検査の優先順位を決定。症状がある人を診断する「行政検査」が最優先で、各自治体が行う「無料検査」は下位に位置付けた。それとワンセットで発したのが、前出の事務連絡だ。

 地方創生推進室は、新型コロナ対策のために各自治体に配る「地方創生臨時交付金」を所管する。岸田政権は今年度補正予算で、自治体の無料検査を支援する「検査促進枠」を交付金に創設。予算3200億円を計上した。自治体にすれば、財源を牛耳られた政権サイドの圧力に等しい事務連絡は、こう続く。

〈1日当たりの検査件数の計画値を提出して頂くとともに、2倍超とすることが必要となる特別な事情がある場合については、事前に協議を行うようお願いします〉

 皆、今後の感染拡大に不安を感じていた頃、交付金差配の権限を背景に無料検査が指定を超えそうなら“事前に協議せよ”と迫るとは随分と高圧的だ。実際に通達を受け取った首都圏自治体の担当者は「無料検査を後押ししてきたのに突然ブレーキを踏めなんて、無理難題を押しつけるな」と感じたという。

異常に高い「陽性率」の元凶なのか

 それでも地方の役人にとって“お上”の命令は絶対だ。貴重な財源を握られていれば、なおさらである。結局、各自治体とも指定の枠内で無料検査を継続しているようだが、解せないのは奇妙な符合があること。事務連絡の送付時期をピークに、全国の行政検査数も一向に増えず、完全に頭打ちに陥っているのだ。

 東京都の「検査人数」(7日間平均)は1月29日の2万9698.7人以降はジリジリと減少。大阪の「検査件数」も1月26日の3万9380件を超えていない。おかげで全国の検査件数に占める陽性者の割合を示す「陽性率」は今月6日までの1週間で57.7%に達した。今週は東京と大阪の陽性率も40%台が続く。検査を受ければ、およそ2人に1人が陽性となる異常な高水準だ。

 ひょっとして、お上の「検査を抑えろ」の大号令に萎縮し、試薬確保のため、感染の可能性の高い人しか回さず、行政検査まで抑えているのか。事務連絡を作成した内閣官房コロナ対策推進室は「担当者不在」を理由に無回答。通達を受けた側に影響を聞くと──。

 東京都は「特に萎縮したことはない。陽性者のデータは即座に国のシステムに入力するが、検査件数の報告は業務逼迫で遅れがち。陽性率の高さはそのせいでは」(感染症対策部・検査体制整備担当)とのこと。大阪府は「そもそも需給逼迫を受けた通達。必要な試薬不足は検査頭打ちの要因のひとつ。また、検査省略の『みなし陽性』の導入で、従来より検査数は減少してしまいます」(感染症・検査グループ)と答えた。

 いつになれば「徹底した検査と隔離」という感染対策の基本は実現するのか。


今朝我が家の前、積雪は10cm程ですが除雪車は来ていません。

おわかりかな?道路の境界がはっきりと見えませ。こんなときは電信柱を見て走るのです。さて、これから段々と荒れもようになるようです。

 


休園・休校で出勤できない労働者に賃金保障 「小学校休業等対応助成金」

2022年02月19日 | 生活

手続き簡略化も なお残る課題 休暇付与 事業者に義務化を

「しんぶん赤旗」2022年2月18日

 新型コロナの影響で、保育園の休園や小学校の学級閉鎖などで休む労働者に賃金を保障するために、勤務先に助成する「小学校休業等対応助成金」。「利用できない」「労働局に連絡したら“クビにする”と脅された」などの切実な声をもとに、保護者や労働組合が改善を求めてきました。日本共産党の国会質問なども力になって、手続きが簡単になりました。(染矢ゆう子)

 小学校休業等対応助成金は、通常の有給休暇以外に休園や休校した際に特別の有給休暇を認めた勤務先に、国が1日1万5000円まで助成する制度です。

 各都道府県労働局の特別相談窓口に労働者が相談すると、労働局が勤務先に助成金の利用を説明し、申請を働きかけます。勤務先が利用を拒んだ場合、労働者が個人で休業支援金の利用を申し込みます。この個人申請には、これまで勤務先が事前に休業を認めることが必要でした。

 保護者や首都圏青年ユニオンの改善要求、日本共産党の宮本徹衆院議員が衆院予算委員会(1月)で質問したこともあり、労働局が個人申請を受けた後、勤務先に確認するよう改善されました。

協力拒否

 アパレル企業で働く女性の場合―。昨年8月、子どもが濃厚接触者となり、その後、自身や夫、別の子どもも感染し、1カ月間欠勤しました。月14万円の収入が激減。不安を抱える日々でした。

 1月は小学生の子どもが休校や学級閉鎖の間、祖父に預けたり、夫の職場に連れて行ったりして働き続けました。「保育園が休園になればお手上げ。4月まで残り3日の有給休暇と無給の看護休暇を使うしかない」といいます。

 昨年9月に勤務先に助成金の利用を求めましたが「子どもがいない従業員もおり、従業員間で分断がおきかねない」と断られました。個人申請の協力を求めても拒否しました。

 女性はいいます。「事前に労働者が会社に確認しなくてよいのは、一歩前進です。しかし、個人申請ではもらえるお金が8割に減ります。事後でも会社が休業を認めることが要件です。会社への義務付けを求めたい」

 首都圏青年ユニオンが昨年6月に行ったアンケートでは、閉園や休校になった際、特別休暇で賃金が全額支払われた人は全体の37・7%。非正規雇用では25・8%しかいませんでした。

 岐阜県大垣市で「小学校休業等対応助成金の個人申請を求める親の会」を立ち上げた非正規従業員、沖田麻理子さん(41)は、制度の利用とさらなる改善を呼びかけます。

 「助成金は学校の休校や保育園・幼稚園、学童クラブの休園の場合や、子どもが感染した場合だけでなく、濃厚接触者になった場合でも使えます」と沖田さん。コロナの可能性のある症状での出席停止、登園自粛要請が自治体から出た場合にも使えます。年次有給休暇とは別の制度なので、パートでも使えます

格差生む

 沖田さんは「個人申請の簡略化は前進ですが、問題は会社には従う義務がないことです」といいます。事後でも労働局から会社に確認が入り、休業を認めない会社がある場合は、支給とはなりません。沖田さんは助成金の利用を会社に拒否され、個人申請をするためのごく簡単な書類を持っていきましたが、社長は難色を示しました。

 同僚は申請をあきらめ、沖田さんは退職しました。「雇用が不安定な人ほど有給休暇も取れず無給になり、格差が生まれてしまいます。休校や休園の際には、保護者が平等に休める制度に改善してほしい」

 女性の労働に詳しい名城大准教授の蓑輪(みのわ)明子さんはいいます。「子どもの休校・休園中は子どもの居場所をつくることが必要です。家庭を居場所にできるように、休暇付与を事業者に義務づけるなどして、保護者が安心して休めるようにするべきです」


 政府のコロナ対応、メチャクチャです。自分たちの生活を守るため、連帯して声を上げていきましょう。

時間がある方はこちらもご覧ください。1時間ほどです。

コロナ!始まる前に敗けていた~悲劇のもとは病床削減【金子勝の言いたい放題】20220216


「持続可能な五輪」9割が人工雪…北京スキー競技、雪のためミサイル55発、水を大量消費

2022年02月18日 | 自然・農業・環境問題

「東京新聞」2022年2月18日 

5日、周辺にほとんど雪がないスキージャンプ台=いずれも河北省張家口市で(白山泉撮影)

5日、周辺にほとんど雪がないスキージャンプ台=いずれも河北省張家口市で(白山泉撮影)

【北京=白山泉】北京冬季五輪のスキー競技の会場は大半が人工雪だ。競技会場の北京と河北省は降水量が少なく、会場の整備には大量の造雪機を使用した。北京五輪組織委は「安定的な雪質を維持し、競技の公平性を保てる」というが、雪を造るためには大量の水が必要。「持続可能な五輪」との整合性に疑問が残る。
 スキーの競技会場となる河北省張家口市はゴビ砂漠の東端で乾燥する。13日こそ雪が降ったが、それ以前は、ノルディックスキー距離の競技場も一歩外に出ると、土や枯れ草が目立った。北京五輪組織委は会見で「人工雪の使用率は90%」と説明する。
 中国メディアなどによると、北京市延慶区のアルペンスキー競技場では計200台の造雪機を用い、雪を造るのに100万立方メートル以上の水を使ったという。
 人工雪について、アルペン競技のコースを設計した国際スキー連盟(FIS)のベルンハルト・ルッシ氏は会見で「雪質が安定するため、アルペン競技の選手にとって最高な雪だ」と述べた。
 日本選手団の原田雅彦総監督は「人工雪は同じ状況を保てる面で有効だが、バーンが硬くなって危険も伴う。これを攻略して結果を残すのもスキー競技。情報を集め、パフォーマンスを高めるために強化している」と話す。
 中国メディアによると、降雪量を増やすために1月21日には張家口の地元気象当局が55発の降雪ミサイルも発射した。当局の副局長は「雪が少なく、冬季五輪の開催のために行った」と明かした。
 英ラフバラー大の研究者はリポートで「乾燥した北京では、人工雪に依存することは誰もが知っていた」と指摘する。人工雪は1980年から使われるが、過去には農薬や雪を固めるため、添加物を加えたこともあり、環境への影響も懸念される。また、「人工雪でハーフパイプを作ると、硬い垂直の氷の壁のようになる。死亡例もある」と選手への危険性についても述べている。
 地球温暖化が進み、雪不足は北京に限らず世界的な課題となっている。カナダ・ウォータールー大を中心とする研究チームは、温室効果ガスの削減が行われなければ、今世紀末にはこれまでの21の冬季五輪開催地のうち、再び開催できるのは札幌市だけとする報告をまとめた。

 それは困ります。温暖化対策、待ったなしの状況です。そんな期間だけでも「中止」したらいいのではないでしょうか!このためにどれだけの飛行機が飛んだのでしょう?コロナのおかげで無観客でよかった。
 また雪が降っています。北海道の雪、きれいです。世界自然遺産に登録すべきような雪です。世界に誇れる雪です。守ってください。

北原みのり おんなの話はありがたい

2022年02月17日 | 社会・経済

セクハラ発言は「Sキャラ」のちょっかいなのか 加害男性の高笑いに「被害」を実感した

AERAdot 2022/02/16

 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、組織におけるセクハラや性暴力について。

*    *  *

 2月10日、東京高裁で性暴力事件をめぐる控訴審で逆転勝訴の判決が出された。一審では性暴力が認定されなかったが、二審では原告の主張が認められたのだ。

 ひどい事件だった。

 原告は、川崎市にある会社の取締役である男性上司から2年半にわたって性暴力を受け続けた女性だ。会社の飲み会で意識がなくなるまでアルコールを飲まされ、その帰りに性的暴行を受けたのがはじまりだった。その後も、深夜にわたるまで飲み屋を連れ回されたり、男性の自宅に連れていかれたりなどする日々が2年半にわたり続いた。抵抗しようにも解雇をちらつかされ、従うしかない状況だった。女性は心身の健康を損ない会社を辞めざるを得なくなったが、その後も電車に乗れないなどのPTSDのために長期にわたって失職状態が続いている。

 一審の判決は最悪だった。裁判官は、女性が会社を「自主退職している」ことと、最初の性被害から長期にわたる性的行為があったことをもって、「男女関係にあった」としたのだ。

 二審の判決が素晴らしかったのは、事件を被害者の視点で捉えなおしたことだった。一審では長期にわたった被害をもって「男女関係にあった」と決めつけたが、二審では長期にわたったことの悪質さも含め、性暴力を認定したのだ。また、事実を把握していたにもかかわらず全く対応しなかった会社の管理責任も問うた。

 今年大詰めを迎える性犯罪の刑法改正では、地位や関係性に乗じた性暴力の刑罰についても審議されている。就活中の女性が性被害にあったり、知的障がいを持つ人が施設職員から性被害を受けたり、教師からの性被害にあったり、上司からの性被害にあったり……、立場を利用し、相手が訴えるはずがないと考え、性交を強いる暴力がある。この裁判の支援者によると、加害男性の会社はこの判決を「不思議な判決だと感じた」とコメントしたという。加害者側は本当に「わからなかった」のかもしれない。女性の尊厳を守り、敬意を払って、共に働くことがどんなことなのか。性暴力がどういうものなのか。

 地位・関係性を利用した性暴力についての意識をアップデートしていかなければいけない組織は、日本中に山ほどあるのではないか。決定権を持つ女性が社内におらず、安い使い捨ての労働力として女性を考えているような組織であればなおのことだ。

 先日、私の会社が某イベントに出展したときのことだ。他の出展社の男性が近寄ってきて、スタッフに「お姉さんも、バイブ使ってるの?」と聞いてきたのだった。健康に関する商品を扱う数百社が集うビジネスライクなイベント会場でのできごとである。そういう時は一切相手をしないと私たちは決めていて、そのスタッフも「そういう質問には答えません」と言った上で、「そのような発言はセクハラにあたるからやめたほうがいいですよ」と注意してあげたそうだ。立派な振る舞いだと私は思う。が、その男性(50代半ばくらいか)は、彼女がそう言ったとたんに激高したという。何を注意されたか、ではなく、女に注意されたことが気にくわなかったのだろうか。「そんな態度でやってけると思ってんのか?」と声を荒らげたそうだ。

 その報告を受けた私は、イベントの主催者に安全に仕事をするために環境を整えてほしいという旨を伝えた。

 それからが大変だった。私のクレームがどう伝わったのかは不明だが、さらに激高した男性がまた威嚇しに来てしまったのだった。主催者側の人に来てもらったが、男は大きな声を出し、私たちを侮辱し続けた。「セクハラされたくないなら、こんなもの(ドイツから輸入した女性向けのトイ)売ってんじゃねーよ」などという男性の挑発に、残念ながら私は乗ってしまい「謝れ!」「気持ち悪いよ!」と男に向き合ったが、私が怒りを見せると今度はハハハハハと高笑いするのだった。怒っても、冷静に対処しても、何をしても私たちが「勝つ」ことも、「気が済む」ということもなかった。それが被害にあう、ということなのだろう。

 繰り返すがビジネスの場である。もちろんそれがどんな場であっても男の振る舞いは許されるものではないが、やはり衝撃を受けた……日本の企業、どうなってますか? 

その後、主催者側の人もいろいろとフォローしようとしてくれたのだが、つくづく日本の企業はきちんとしたセクハラ研修を受けておらず、問題に対応する能力が欠けているのではないかと感じるものだった。以下はこの日、私たちが主催者側にかけられた言葉の一部だ。

「あの人(私たちを怒鳴った男性)はSキャラで有名なんですよ」

「ふだんはおもしろい人なんですけどね」

「現場を見てないので、私たちは何も言えませんね」

「これからは、ちょっかいを出さないように注意しときますから」

 男性だけでなく女性もそんなふうに私たちを「慰め」ようとし、「戒め」ようとし、そしてただひたすら頭を下げてきた。私たちはその度に、「謝るのは皆さんじゃないし、そもそも皆さんに謝ってほしいのではなくて、対応を考えてほしいんです」と伝えたが伝わらないようだった。「もう、ちょっかいを出さないように注意しときます」と言われたとき、あまりに残念だったので私は、「ちょっかいじゃなくて、ハラスメントです。ハラスメントを軽く捉えないでほしいです」と伝えた。すると、その男性の顔色が一瞬で変わり、いらだちが伝わってきた。何が悪いかわからないまま、頭を下げてくれていたのだろう。そしてこういうやりとりをすればするほど、加害者が問題化されず、声をあげる被害者側が「めんどうくさい人」になっていく空気も生まれてくる。ああ、やりきれない。

 同一労働同一賃金の原則が守られず、多くの女性たちが男性よりも低賃金で働かされている。決定権行使の場に行けば行くほど女性の姿は少なくなり、わずかに残った女性たちも、女性の立場をよりよくすることよりも、男性に同化する道を選んでしまいがちだ。それが生き残る道、とでもいうように。でも、当たり前のような顔をして女たちの人生を潰す、そんな組織に未来はあるだろうか。

 だから組織は本気で学ばなければいけないのだと思う。「キャラだから」とセクハラを放置せず、「どっちの言い分も聞かなくちゃわからない」と泣いている被害者を戒めずに、セクハラや性暴力について学んでほしい。そっちから見たら「ちょっかい」だったり「からかい」だったりするかもしれない。そっちから見たら「恋愛」かもしれない。けれど、こちらから見たらそれは「性暴力」なんだよ。そんな声に耳を傾け、今回の高裁判決のようなアップデートがこれからの組織には求められるはずだ。誰もが安心して自分の尊厳が損なわれることなく働ける、当たり前の社会であってほしいのだ。

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表


いよいよ今季の農作業が始まった。まずはミニトマトの種をまいた。まだ寒いので温度管理が難しい。急な日照りが恐ろしい。




雨宮処凛がゆく! 第584回:なぜ、扶養照会は強行されたのか 杉並区への抗議・要請書。

2022年02月16日 | 生活

マガジン9 

 

 「コロナで住む場所なくしたり、お金がなくなった時、親に知られたくないのはわかります。大変な時に、人生詰んだ、終わりだって考えてほしくないから、杉並区の行政にはいい仕事をしてほしいです」

 50代の男性・高木さん(仮名)はそう口にした。

 2月4日、東京都杉並区・荻窪の福祉事務所に私はいた。この日、困窮者支援に取り組む「つくろい東京ファンド」と「生活保護問題対策全国会議」が杉並区に抗議・要請書を提出したからだ。

 事の発端は、2021年7月に遡る。

 失職し、生活に困っていた高木さんは杉並福祉事務所(荻窪)に生活保護を申請。その際、扶養照会(役所から高木さんの家族に連絡が行き、「面倒を見られませんか」と聞くこと)をされたくないと思い、それを止めるための「申出書」 と「添付シート」をダウンロードして記入したものを持参した。高木さんの両親は地方在住ですでに80代。父親は心臓の手術を何度もし、母親は要介護状態。老々介護状態で暮らす親に心配をかけたくないという思いだった。

 ちなみにこの申出書はつくろい東京ファンドが作ったもの。21年3月、厚労省が出した通知がきっかけだ。通知内容は、本人が扶養照会を拒む場合、丁寧な聞き取りをし、扶養が期待できるか検討すべきというもの。これまで、扶養照会は「家族に知られるくらいなら生活保護は受けない」と申請の壁になっていたが、それが改善されたのだ(完璧にではないが)。

 が、通知が出ただけで現場がすぐ変わるとは思えない。ということで、つくろい東京ファンドが作成したのがこの申出書・添付シートである。

 誰でも使えるようにネットに置かれた申出書・添付シートはこれまで数多くダウンロードされ、全国の福祉事務所に提出されて照会を止める役割を果たしてきた。福祉事務所の職員からは「手間が省ける」など感謝の言葉もあったという。何しろ、扶養照会をした結果、家族から経済的支援を受けられるケースはごくわずか。17年の国の調査では1.45%にすぎないのだ。これではほとんど意味がない。

 しかし、杉並区の対応は驚くべきものだった。なんと高木さんが提出した申出書と添付シートを受け取らなかったのだ。

 「これは受け取ることができないのでお持ち帰りください」

 「なぜですか? この書類は法的にも認められた意思表示で、受け取ることでそちらが困ることはないと思うんだけど……。公共の福祉事務所で、受け取りたくないとかじゃないでしょ?」

 そんな押し問答が続けられた果てに、信じがたいことが起きる。職員は「どうしても受け取らせようというのなら、手続きは進められません」と言い放ち、銀行の通帳や年金手帳など、高木さんが持参した申請関連の書類をすべて机の上に並べて退席してしまったのだ。扶養照会をしないでほしいという書類を出すのであれば、生活保護申請は受け付けない。これはまったくもって完全に完璧に、どう考えても違法な対応である。

 一人、面談室に取り残された高木さん。要請書提出のあと、その時を振り返った。

 「意思表示さえ拒まれるのは屈辱でした。申請自体が屈辱なのに、こういう屈辱を受けなきゃいけないのか……。テレビや新聞、雑誌で『扶養照会が嫌だから生活保護は受けられない』って言っているホームレスの方の言葉を聞いたこともあります。人の命に関わることで、ここで引き下がりたくないって思いましたが、申請しないと生きていけない状態で、背に腹はかえられないので妥協しました。『俺の負けだから誰か来て』って言ったら、すぐに人が来ました」

 そうして面談は再開され、申請手続きは完了した。

 その後も高木さんは「扶養照会はしないでほしい」と訴え続けた。が、数ヶ月後、扶養照会は強行される。生活保護手帳別冊問答集では、扶養が期待できない場合の例として、「概ね70歳以上の高齢者など」と記載があり、高木さんの両親はまさにあてはまる。なのに、まるで嫌がらせのように強行されてしまったのだ。

 一連の事実は、高木さんがつくろい東京ファンドに経緯を伝えたことで発覚した。この件について、区は強行した扶養照会を「本人も了承した」と言っているという。が、事実はどうなのか。高木さんは言う。

 「扶養照会する前に、『照会しますよ』と電話が来ました。『俺、嫌って言ってますよね? やらないでください』って言ったんですけど『それでもやります』と。その時、『どうせ嫌だって言ってもやるんでしょ? 勝手にしろよ』って捨て台詞で言ったかもしれません。それを『了承した』と言ってるんだとしたら……」

 なんだか悪い冗談のような話である。

 それにしても、高木さんはよく途中で「もういいです!」と席を立たないで我慢してくれたとつくづく思う。そんなことからふと思い出したのは、昨年末、大阪で起きた放火事件の61歳の容疑者だ。雑居ビルのクリニックに放火して25人が死亡した事件の容疑者は事件後に死亡。以前から生活に困窮し、生活保護の相談に役所を2度訪れていたが受給には至っていなかった。申請手続きは途中で止まり、「もういいです」と辞退したこともあったという。

 高木さんだって、席を立とうという思いが何度も頭をよぎったはずだ。しかし、なんとか踏みとどまった。だからこそこうして今、支援者につながって声を上げてくれている。

 翻って、大阪の事件の容疑者は役所を訪れた後、より孤立と困窮を極めていったのではないだろうか。残念ながら「途中で席を立たせる」ようなやり方は、ある意味で福祉事務所の常套手段になってしまっている。最後のセーフティネットにひっかかることができず、自暴自棄になったことが事件の遠因になっていたとしたら。役所の罪はあまりにも重い。

 この日、高木さんは何度か「これからコロナで住む場所なくしたりする人たちが増えると思うから、その人のためにもちゃんとしてほしい」という内容のことを口にした。自分のことだけでなく、これから困窮する可能性のある人のことを常に気にしている姿が印象的だった。

 抗議・要請書には、2月末までに本人も交えて話し合いの場を設定すること、昨年4月以降、扶養照会を拒否する人にどのような対応をしてきたのか調査・検証・公開することなどが盛り込まれている。

 杉並区では、第537回で書いた「一度路上に出た人のアパート転宅に難癖をつける」など他の事例の対応も問題となっている。現場では生活保護利用者に寄り添い、頑張っている職員もいる。そのような人たちのやる気が削がれないよう、改めて、注視していきたい。


 今朝、外へ出ると20cm以上の雪が積もっていた。もういらないのだが3月の中旬までは覚悟しなければならない。


婚姻の目的は「生殖」なの?

2022年02月15日 | 生活

 国側の主張に「差別的」と原告が批判 同性婚訴訟、提訴から3年

「東京新聞」2022年2月15日 

 同性カップルを巡っては、東京都がパートナーシップ制度の導入を進めるなど行政の取り組みが広がりをみせるものの、異性カップルと同等の権利が保障されるまでの道のりは険しい。同性婚を認めないのは婚姻の自由を保障する憲法に違反するなどとして、全国の同性カップルらが国に損害賠償を求めて各地で複数の訴訟を提起してから、14日で3年が経過。東京地裁で続く審理では、原告側と国側の対立が深まっている。(奥野斐)
東京地裁に入る「同性婚訴訟」の原告ら=9日、東京・霞が関で

東京地裁に入る「同性婚訴訟」の原告ら=9日、東京・霞が関で

◆国「男女の婚姻と同等とみる社会的な承認ない」

 「文字どおり、自分の目を疑った」。東京の同性婚訴訟の原告代理人を務める寺原真希子弁護士は、9日の東京地裁での意見陳述で、国側の主張をこう批判した。
 国側は、昨年10月に提出した書面で「男性と女性が子を産み育てながら共同生活を送る関係に対し、特に法的保護を与えること」(自然生殖可能性のある関係性の法的保護)が婚姻制度の目的と説明。子を産む意思や可能性がない男女も「自然的かつ基礎的な集団単位」として社会的な承認があり、男女に限る合理性はあるとした。
 逆に、同性婚は議論の途上にあり「(男女の婚姻と)同等の関係とみる社会的な承認がないのだから、同性婚を定めていないことには合理性がある」と正当化した。さらに同性婚を認める法整備は「立法府に裁量がある」と矛先をかわした。

◆原告「国の主張こそが差別や偏見を助長」

 対する原告側は「こうした国の主張こそが差別や偏見を助長する」と、驚きを隠さない。婚姻の目的は「子をもつ意思や可能性にかかわらず、親密な2人の関係に法的な保護を与えること」と強調した上で、同性カップルにも生殖補助医療で子をもうけ、子育てするケースなどがあるとした。
 また、同性婚の社会的な承認が進まないのは「国が同性カップルを婚姻制度から排除した結果」と反論、国側の主張を「差別を容認し、極めて不当だ」と非難した。寺原弁護士は取材に「同性婚を認めるべきだとの社会的承認があることは、複数の調査などが示している」と指摘した。
 さらに原告側は、裁判所に対し「少数者の人権救済は司法の責務だ」と理解を求めている。

◆識者「婚姻に生殖は必須という考え方は一般的なのか」

 同性婚訴訟は、東京地裁など全国5つの地裁・高裁で争われている。昨年3月の札幌地裁判決(原告側が控訴、札幌高裁で審理中)では、同性婚を認めない民法などの規定が「法の下の平等」を定めた憲法14条に違反すると判断。「異性愛と同性愛の差異は性的指向の違いのみ」とし、合理的根拠を欠く差別的取り扱いにあたるとした。
 東京都立大の木村草太教授(憲法学)は「札幌地裁判決により、争点は『婚姻と生殖の関係』に絞られた」と指摘。「婚姻に生殖は必須という考え方は一般的なのか。結婚式で『子どもを産めなかったら離婚しなさいね』などと言えばハラスメント(嫌がらせ)だ。生殖関係の有無にかかわらず、愛し合って共同生活を送っていれば婚姻だとするのが国民意識ではないか」と問い掛ける。

勉強しない裁判官。いつまで経っても進歩がない。

家の前、段切していった。

 

 

 

 


教員の不足 労働環境改善に本腰を

2022年02月14日 | 教育・学校

 

「東京新聞」社説 2022年2月12日 

 

 公立の小中高校や特別支援学校で教員が不足していることが、文部科学省の調査で分かった。背景にあるのは長時間労働などによる若者の教員離れだ。人材を確保するには、教員の仕事をより魅力あるものにする必要がある。

 昨年五月一日時点で、全体の4・8%に当たる千五百九十一校で計画通りの教員配置ができず、欠員は計二千六十五人に上った。

 少人数や習熟度別指導のために自治体が独自に上乗せした教員枠なども含めた数であり、法律上の定員は満たしているが、放置すれば教育の質や学校運営にも支障が出かねない。義務教育の根幹にかかわる問題でもある。

 教員不足は、大量採用された団塊世代の退職により若返った職場で産休や育休を取る人が見込みよりも上回ったことや、病休者が増えたことが一因だ。志願者の減少も拍車を掛ける。採用枠は増えているが、都道府県教委などが二〇二〇年度に行った採用試験の競争率は、小学校で過去最低の二・六倍、中学校は四・四倍だった。

 背景にあるのは、学校現場での長時間労働だろう。小学校で三割強、中学校で六割弱の教員が過労死ラインとされる長時間労働をしているとの国の調査もある。

 小学校では英語やパソコン授業が新教科に加わり、コロナ禍で感染対策やオンライン授業=写真=も必要になった。教員の多忙さは増すばかりであるにもかかわらず、公立学校の教員には残業代が支払われない。基本給に一律4%を上乗せする代わりに、時間外手当は支給しないと定めた教職員給与特別措置法(給特法)があるためだ。

 労働実態と懸け離れた待遇を放置すれば、教員の意欲はそがれ、志願者を増やすことは難しい。

 コロナ禍で注目された少人数学級化への対応や、貧困や虐待、発達障害などがあって支援が必要な子ども一人ひとりと向き合うには教員を増やすことが前提だ。

 教員不足に歯止めをかけるには教員の負担を減らして労働環境を改善し、待遇改善にも本腰を入れる必要がある。政府は、先進国の中でも少ないとされる教育のための予算を増やすべきである。


 これが教職者がやる仕事か?そんな仕事が押し付けられ、子どもたちと直接向かい合う時間が少なくなっているようだ。「でもしか先生」より、志を持つ若い人がなってほしいものだ。精神を病む先生も多いと言われているのに、あまり効果的な対策も打たれていないようだ。パワハラ・モラハラをなくす、自由に物が言える民主的な雰囲気が必要だ。教職員組合の活躍を期待したい。

今日の散歩道。