大分単身赴任日誌

前期高齢者の考えたことを、単身赴任状況だからこそ言えるものとして言ってみます。

「法改正」

2015-01-31 08:37:28 | 日記
昨年、いわゆる「士業」関係の法改正がいくつかありました。

行政書士における「行政不服審査法代理権」、社会保険労務士における「ADR単独受任限度額引き上げ、労働裁判出廷陳述権、一人法人」などです。

今あげたものを含めて、果たしてその必要性や必然性をどのように理解すべきか、という点においては、私にもよく理解できないところがあります。

そもそも「法改正」というのは、既成の法律(による規定)では十分に対応しきれない社会的事実がある(これを「立法事実」と言います)場合になされるべきものです。他の士業において、この社会的事実がどのようなものとしてあったのか?・・・事情をよく知らない者としては、わからないところもあるのですが、考えてみました。

一つ確かなこととして言えるのは、これらの法改正事項というのが、「規制改革」の脈絡で論議され、一定の方向を示された内容に沿うものである、ということです。

最近の規制改革関係のテーマとしては「多様な働き方」「農協」といったテーマが中心のようで、「士業」(資格制度)関係のものは取り上げられていないように思えるのですが、だいぶ昔(2009.3.31)になされた「規制改革推進のための3か年計画(再改定)」という閣議決定を見ると、検討すべき事項として「一人法人制度の創設」「社会保険労務士への簡裁代理権付与」「行政書士への行政不服審査の代理権の付与」などといった項目が挙げられています。

これらの問題についてのその後を見ると、あげられた課題そのものについては「継続して検討」といった形ではっきりした方向が示されているわけではないのですが、実際問題としてはこの間の法改正でそれぞれの個別の問題において原形のままではなく少しずつ変更を加えながらテーマとしてあげられていたものが実現している、ということを見ることができます。

このことからすると、全体としての「規制改革」の方向性そのものが「立法事実」としての役割をはたしているのであり、後は個別の領域におけるそれなりの現実感覚があればいい、ということになるのではないか、という感じを受けます。これは、逆に言うと、その方向に添わないと「立法事実」を確認することは容易ではない、ということでもあります。

このような「客観情勢」が考えておかなければならないこととしてあります。それなしに「こうした方が自分たちに都合がいい」というような「主観的事情」からの考える、ということでは、なかなかうまく進まないのでしょう。反対に、「規制改革」が一つの「錦の御旗」になっていながら、必ずしも全般的に一気に進んでいるわけでは決してない、という現実をも見据えておく必要もありますが。

今週の予定

2015-01-28 05:25:39 | 日記
遅くなりましたが、もう済んでしまったものを含めて「今週の予定」。

1.26-27 日調連研究所会議がありました。今期6つの班に分かれて進めてきたそれぞれの研究成果の集約を図るとともに、直面する諸課題への対応について協議しました。

なお、研究成果について、3月19ー20日に「発表会」を開催することにしています。是非、ご参加ください。

1.28-29 日調連正副会長会議。来年度の予算が主なテーマですが、それを含めて全般的な整理をしたいと思っています。

1.31-2.1 九州ブロック新人研修と会長会議。

読んだ本ー「タックス・イーター」(志賀櫻著:岩波新書)

2015-01-23 08:41:01 | 本と雑誌
本書のあとがきで著者は、
「さる専門家が、『今のような日本の財政や経済の状況だと、戦争を起こして解決するのがふつうなのだがねえ』と話すのをきいたことがある。」

と言っています。「客観的に見て、日本のおかれている今の状況は、それほどまでに深刻だということ」を示すものとして言っているのですが、それにしても物騒な話です。その深刻さをもっと考えなければいけないのでしょう。著者は別の個所で
「日本の財政はもはやほとんど破綻をしているのであって、いかなる目標を掲げようが、いかに歳出を削ろうが、どれほど増税しようが、再建はおぼつかないと言うのが現実である。」

という身もふたもないようなことも言っています。「それを言っちゃぁおしまいよ」という感じもしますが、元大蔵省のエリート官僚がこのように言う、ということの背景にあるものを、それこそ深刻に考えなければいけないように思わされます。

タイトルに「タックス・イーター」とあるように「税金を食い荒す者」への告発を主な内容にしているものですが、じゃぁ誰がそいつなのか?ということになると具体的に指摘されているものもありつつ「一億総懺悔」ではありませんが「みんな」ということになります。これは、そういう構造をきちんと把握したうえで、はじめて「本当のタックス・イーター」をきちんと退治することができる、という脈絡でいわれていることです。

なぜ1000兆円をも超える借金をしちゃったの?と考えると、いろいろな要因はありつつ、結局「景気がよくなれば返せるさ」という感覚が大きいのだと思います。だから、今も、「トリクルダウン」を期待して「アベノミクス」で金融緩和や財政出動をおこなって、本当のタックス・イーターがさんざん儲けた後には自分たちにもおこぼれがくるだろう、いずれ戻ってくるだろう、と思うようにするわけです。でも、それって本当に平気なの?そういう発想でいいの?それがこれまで傷口を広げてきた原因なんじゃないの、ということになります。そういうものとして「みんな」で食べちゃった、ということを、深刻に考え直さなければならない、ということなのでしょう。

その他具体的に、公的支出を私物化する、「租税特別措置」で税金を払わない、無国籍グローバル企業が租税回避する、等々「既得権益」のさまざまな形が紹介されていて勉強になります。
このがんじがらめの構造を見ると、「どんなことをしても結局ダメ」という気もしてしまいますが、「税・財政に値する国民の無関心」を越えて、それぞれの持ち場で(土地家屋調査士としては不動産登記やその関連領域で)目先の利害に目を奪われるのではなく、しっかりと見つめなおす、ということが必要なのだ、ということで、本書の意義もそこにあるのだと思います。

ところで、さっきも書きましたが、著者は、東大法学部在学中に司法試験合格の上で大蔵省に入って主税局・主計局で要職を歴任した、という典型的なエリートコースを歩んできた人です。そのような人も、個人としては本書のようなことを考えているのだろうし、そういうことを思いながら今も官僚をやっている人もたくさんいるのでしょう。それでも、「組織として」はうまいこと機能しない、ということをも考えさせられてしまいました。


読んだ本-『その女アレックス』 (ピエール・ルメートル著、文春文庫)

2015-01-21 17:15:55 | 日記
 昨年発表の「週刊文春ミステリーベスト10」「ミステリが読みたい!」「このミステリーがすごい!」それぞれの海外部門、「IN☆POCKET」の「文庫翻訳ミステリー・ベスト10」で第1位・・・等々、評判のフランス産ミステリーです。現時点で「9刷34万部」のベストセラーだそうです。

ベストセラーはあまり読まないひねくれ者の私ですが、あまりにも面白そうな評判に負けて、3日間の出張からの帰路に疲れた頭で読むのにはちょうどいいのかな、とも思って読んでみました。

その結果は・・・・、たしかに面白かったです。 

パリの街角で一人の女性が何者かにさらわれた。しかし被害者の身元すら分からない。監禁されたその女は懸命に脱出を試みるが絶望的な状況・・・。この時点で私には刺激的すぎてもうダメです。たしかに、人の心の奥深くにある重いものを表現するのにあたって犯罪にまで至る「事実」によってそれを表現をする、というのがミステリー、サスペンス小説のありかたなわけですから、それが悪いわけではありません。それにしてもその凄惨さはな・・・、というのが軟弱な私の正直な感想です。

「犯罪」を取り扱う小説ですから「悪い事」を描くのは当たり前ですし、日本でも同じようなことが描かれるものがあったりもします。でも、その上でなお言えば、連続テロ事件に現れるようなフランスの社会を覆う「社会の分裂」の深刻さが背景にあるのか、というようなことを思ってしまったりもします。今回の連続テロ事件を受けて、あらためてフランスのことってよく知らないな、と思わされながら読んだので、余計にそう感じるのでしょうが・・・。それにしても「犯罪小説」がもう少し穏やかになること、そうであっても読者が満足するような社会になること、を切に望むものです。

そう思いつつ、たしかに面白かったんですよ。本書は、捜査側の主人公ヴェールヴェン警部シリーズの第二作で、第一作は日本では今年秋に刊行される予定だそうです。ヴェールヴェン警部を含んだ捜査側のキャラクター造形がとても好感の持てるものなので、順番がひっくり返っちゃいますが第一作がでたら読んでみたいと思っています。

今週の予定

2015-01-18 20:24:15 | 日記
1.19(月) 日調連研究所の「第3研究班会議」。この研究班では、「筆界」についての理論的問題、特に「所有権界」との関係において「筆界」をどのように認定するべきものとするのか、という問題についての整理を行っています。「筆界」という概念が、現実に日本の境界問題の解決のために果たしている役割をとらえなおして位置づけるとともに、逆にあまり硬直的にとらえてしまうと現実離れしてしまうので、そのようなことのないよう整理する必要があるのではないか、という問題意識を持って、私としては出席させてもらうことにしています。

1.24(土) 大分会の今年度最後の全体研修会です。業務部からの報告等、実務に直結した内容になるものと思います。


ここで話は変わって・・・・先日(1.14-15)日調連の全国会長会議がありました。

この時期の会長会議は、今期の事業展開についての報告をするとともに、来期を含んだ今後の方針を議論すべきもので、ここでの議論の内容が総会での方針に活かされるべきものです。正直言って、これまで、この役割が十分に果たせてこなかったような印象を受けていたのですが、今回の会長会議では、いくつかの方針決定にかかわるような意見も出していただけましたので、それを受けて今後内容をより豊かなものにしていくことができるだろうし、そうしていかなければならない、と思っているところです。

会議の中では、「制度改革」をめぐる問題を「法改正」ということをも視野に入れて考えていく、という問題も取り上げられました。
この問題を考えるとき、当然のことながら調査士法をどのように解釈するのか、ということが問題になります。

この「解釈」のありかたについて、会議では「他の業界では、グレーゾーンをも白だと言って解釈している」というような発言もありましたが、確かにそのような業界もあるようでして、これは正しい解釈のありかたではありません。自分の利害に合うことが正しい、とするご都合主義的解釈は正しいものとはとても言えるものではないのです。「グレー」はあくまでも「グレー」として見るべきものであり、無理矢理「白だ」と言いくるめてしまうのが正しい姿勢でないのは当然のことです。
しかし、まったく反対に、(「良心的」な)調査士の世界では、本来は「白」であることについても「グレー」であるかのように心配したり、もう一歩踏み込んで検討すべきことについて初めからダメだとあきらめてしまっているようなところがあるようにも思えます。

一般に法解釈というのは、「条文」と「立法趣旨」から解釈するべきもの、とされます。
まずは、「条文解釈」ですが、、昔ある弁護士さんが「私たちは六法全書の条文をすべて知っているわけではなく、読み方を知っているのだ」と言っていたことを印象深く覚えています。まさにそういうことが大事なのだろうと思います。ある条文を読むとき、当該の条文に書いてあることだけを読むのではなく、法律の全体(六法全書)から読み取ることが必要なわけです。ある条文だけを読んで、「条文に書いてないからダメなんだ」としてしまうのは、そもそも「解釈」とも言えません。

また、「立法趣旨」が重要です。これは、どのような社会的事実に対応するために当該の法律(条文)は定められているのか、という問題です。これは、時間的に立法当時のこととして問題になりますが、単にそれだけではなく法律施行後の社会的現実を含めて考えるべきものです。

このような観点から土地家屋調査士法の解釈にはいるわけですが・・・・、十分に長くなってしまっているので、続きは後日書くようにします。