大分の土地家屋調査士ブログ

「土地家屋調査士の業務と制度」を中心に、それに広い意味で関連する様々なことについて一人の人間として思うところを書きます。

読んだ本―「中国の大問題」(丹羽宇一郎著:PHP新書)

2014-07-29 10:24:27 | インポート

元中国大使、元伊藤忠商事社長の丹羽宇一郎氏による「中国問題」に関する全般的な解説書です。

帯に、「丹羽前大使を『親中派』と決めつけてはいけない。氏の中国論はきわめて誠実でまっとうである。」という橋爪大三郎氏のコメントが載せられていて、確かにその通りなのですが、この言い方も少し腰が引けたものです。

そもそも、最終的な立場が「親中」的になるのか、「反中」的になるのか、というのは情勢のとらえ方やら戦略的な判断から分かれていかざるをえないものなのでしょうけれども、その前の段階で「誠実でまっとうな」事実の把握と分析が必要である、というのは当たり前の前提です。それ抜きに、「嫌中」という感情的なものだけに依拠してどうにかなると思ってしまう、という今の日本に蔓延している風潮はとても危険なことだと言うべきでしょう。

まずは、中国の現状をどのようにとらえるのか、ということが問題になります。経済的な発展が著しい中国ですが、その現状は「中国経済は日本に40年ほど遅れて発展している」状態だと著者は言います。その上で、だからと言って恐れるに足らないと言うのではなく、たとえば「教育」に大きな予算を傾注するなど、より速く強い発展の可能性があることを、その危険性をも含めてしっかり認識しておく必要がある、ということになります。

そしてまた、これは、国際的な環境が変化する中でのこととしてとらえる必要があります。 BRICS  と言われる新興の大国の中の一国としての中国は、より後進の国に対する影響力の大きさも含めて、隣の日本から見ていただけではわからない力を持っている、ということです。

そのような中国の姿を、まずは冷静にしっかりと見た上で、どのよう付き合っていくべきなのか、ということが考えられなければなりません。

本書は、「〇〇〇という大問題」と題された7つの章から成っています。「14億人」「経済」「地方」「少数民族」「日中関係」「安全保障」「日本」の7章です。

前の6つは中国の問題ですが、最終章は「日本という大問題」と言うより「日本の大問題」と言う方が相応しい内容です。日本の中だけの問題として見ていると見えないことが、「中国」という鏡に照らすと見えてくる、という感じで、最終的には日本のあり方を問い直さなければならない、ということになるのでしょう。

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今週の予定

2014-07-28 11:29:13 | 調査士会

今週の会務予定は1件のみ。

7/29(火) 日調連の制度対策本部の一部門として「政策要望」を体系的に詰める作業に着手しており、そのための会議を持ちます。

これまでも「日調連において取り扱うべき問題は制度の問題」と位置付けてきたのですが、「今日の問題」と「未来の問題」とをうまい具合につなぐことにおける難しさがありました。この作業を進めて行かなければならない、ということで、今年度に入ってようやく本格的に動き出すことができるようになり、今週の会議が2回目のものとなります。

土地家屋調査士法をはじめとしたいくつかの法令の改正ということをも視野に入れて具体的に取りまとめていきたいと思っています。

主な問題としては、今後さらに高齢化や過疎化が進行していく中で、境界問題をはじめとして土地の管理が全般的に困難になっていくことが予測される中、土地家屋調査士がこれまでの経験や知識を活かして、これまで以上の貢献をすることが望まれるものと思われるけれど、それはどのような形で可能なのか、そのための制度的枠組みとしてどのような改革が必要なのか、という問題に関する検討を行うこととしています。

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読んだ本―「ヤクザと原発ー福島第一潜入記」(鈴木智彦著;文春文庫)

2014-07-23 06:28:22 | 本と雑誌

「暴力団専門ライター」である著者が、取材の中で暴力団関係者から「原発は儲かる。堅いシノギだ」という話をたまたま聞いたことから、原発への作業員としての潜入取材を行った顛末のルポルタージュです。

このルポルタージュは、一つには著者の「本業」である暴力団に関する取材の一環でしょうし、もう一つには原発問題自体に関する「現場最前線」からのレポートとしての意味をも持っています。「暴力団専門ライター」というのが、どれほどの社会的意義を持つのかはよくわかりませんが、通り一遍の綺麗事で済まされようとしている問題について、そうは済ませず、もっと下層の現実をドロドロとした汚い部分まで含めて迫って行く、というのは、この仕事だからこそできることなのかもしれません。

まずは、福島第一原発に限らず、「原発と暴力団」の間に「癒着」というか「相互利用関係」がある、ということが示されています。おそらくそういうことなのだろうな、と思いつつなかなか確証の取れないことについて、片方からの事実の提示のあることについては、きちんと受け止める必要があるのでしょう。特に、今後、本当の意味での「事故収束」と、その後の廃炉への長い道のりを考えた時、それを担う人材の確保が必要なのであり、これまでのような五次、六次・・・の下請関係で、責任の所在が明らかでなくなってしまう、というような構造、その中で暴力団の暗躍も可能になってしまうような構造、というものを問題にしていかなければならないのだと思います。

本書については、福島第一原発における「事故収束」へ向けての作業に関する数少ない報告としての意味も持っています。「暴力団ライター」という、まさに「ヤクザな稼業」の中にあって、ジャーナリストとしての本筋を曲げずに貫いている姿に感心いたしました。もっともこれは、そういう稼業だからこそ日常的な緊張関係を求められていて変な妥協はできない、ということなのかもしれません。「職業的良心」を貫く、ということの大変さと大事さを感じさせてくれる本でした。

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今週の予定

2014-07-22 06:21:48 | 調査士会

7.24(木) 法務省打合せ、日調連業務部電子会議、日司連打合せ

7.25(金) 「日調連主催実務講座~土地境界実務~」実行委員会会議 ・・・ 今年の12月14~16日に開催する講座の開催準備のための会議を開催します。

ここ数年、日調連として直接講座・研修会を開催する、ということがなかったのですが、「業務の改善進歩のための指導連絡」における連合会・単位会の役割、ということを見つめなおしつつ、激しく動く情勢に的確に対応で知るようにするための体制をつくるための一環として、上記講座を開催することとしています。時代の要請、その中で「土地家屋調査士のなすべきこと」、が明らかになるような講座として準備していきたいと思っています。

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読んだ本「空き家問題ー1000万戸の衝撃」(牧野知弘著;祥伝社新書)

2014-07-20 11:17:15 | 本と雑誌

まず初めに、統計数字です。総務省の「住宅土地統計調査」(5年毎に実施)によると、平成20年の国内の住宅総数は5759万戸で平成15年に比べて370万戸、6.9%伸びているそうです。そして、空き家数は757万戸で、97万戸、14.6%の増加、とのことです。これは、総住宅数の13.1%が空き家である、ということです。

空き家の率はスピードを増して増大しているのですが、もしもこのままの増加数が続くのだと仮定したとしても平成32年(2020年)には、1000万戸の空き家を抱える、ということになります。総住宅戸数も増え続けるとしても15%以上です。

これは、過去の数字から単純に導き出したものですが、実相を見るともっと深刻になります。現在、独居老人の暮らしている住宅は、その方が亡くなると「空き家」化する可能性が高いので、「団塊の世代」が本格的に高齢化して行くと、より激しく「空き家化」は進行して行くものと思われるのです。

たしかに私の住んでいる住宅団地を見てみても、40年前に開発された住宅を30代、40代で購入して入居した人たちは現在70-80代です。亡くなられたり、老人施設に入って本人がいなくなり、子供も帰ってこないので空き家になっている、というのが多く見られます。

著者によると、「空き家問題」というのは、

「売れない」から流動化できない、「貸せない」から活用できない、そして「解体」したら税金負担に耐えられない、だからそのまま放置されている

ことによって起きているのであり、まさに構造的なものだということです。一昔前のように、不動産というのは「右肩上がり」のもので、持っていれば必ず値上がりしてどうにかなる、という時代は終わっている一方、高齢化が進んでいて相続を受ける側がすでに立派な高齢者になってしまっていて、不動産を保有するリスクがありつつそれを回避する手だてが取り得なくなって、やむにやまれずに「空家化」して、それがさらに状況を悪化させる、ということが、全国的に(大都市圏をも含んで)進行してしまっているわけです。。

この「空き家」と、それの存在する土地の問題について、著者は現実を整理して提示してくれていて、とても有益なものだと感じました。その反面、「解決方策」として示されているものは「不動産開発」の志向性が強すぎ、現実性に疑問を抱かざるを得ないところもあります。いずれにしろ私たちは、実相をよく知りうる実務者の立場において、問題の解決に寄与しうる道を考えていかなければならない、ということなのでしょう。

 

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