大分単身赴任日誌

前期高齢者の考えたことを、単身赴任状況だからこそ言えるものとして言ってみます。

地籍問題研究会15回定例研究会(於東北学院大学)

2016-03-23 17:43:52 | 日記
先週の土曜(3.19)、仙台の東北学院大学で、地籍問題研究会の第15回定例研究会があり、参加してきました。
詳しい報告は、大分会にするようにしますが、とりあえずの感想を書きます。

今回の研究会は、東日本大震災の発災から5年、ということでもう一度「東日本大震災により生じた地籍情報の課題」を見直すものとして開催されたものです。私自身とても勉強になりました。

防災科研の花島氏による基調講演では、「生活再建支援から見えてきた地籍情報利活用の課題」をテーマとして、東日本大震災の際に、生活再建支援に携わった経験からの教訓が明らかにされました。
「地籍情報」という領域が、災害対応においてどのような役割を果たしうるのか、ということについて、これまであまり議論されてこなかったけれども、重要な論点を含んだ問題なので、しっかりと取り組む必要がある、という指摘は、地籍情報に関わる業務領域にある者として、反省とともに受け止めさせられたことです。
災害対応における地籍情報の問題というのは、主に「地域復興・創成のための基盤情報」という面から問題にされてきているように思えますが(それはそれで重要なことですが)、「生活再建支援のための基盤情報」という面にも注目する必要がある、との指摘がなされていました。
たとえば、罹災証明の発行、ということ一つをとってみても、「被災情報と地籍情報(地番)との照合」ということが必要となるのであり、それは被災後に行おうとしてもとても困難なことになってしまうので、「平常時から地籍情報に位置情報を紐づけしておくことが必要」ということでした。
さまざまな内容と形式を持つ行政情報を、統一的に取り扱えるようにすること、その媒介の役割を地籍情報が果たして結合しうるようにする仕組みが必要なのだ、という指摘は、地籍情報に関わる業務領域にある者として重く受け止めなければならないことです。

研究会では、被災3県の土地家屋調査士からの「筆界の移動」をめぐる問題を中心とした報告もなされました。
阪神大震災の際に、「地震による地殻の変動に伴い広範囲にわたって地表面が水平移動した場合には、土地の筆界も相対的に移動したものとして取り扱う」とされたことを受けて、東日本大震災においては、さらに様々な形での「筆界の移動」があり、それに対するさまざまな対応策がとられた、ということです。
この経験は、「土地の筆界」ということについて、災害への対応においてどのように取り扱うべきなのか、という問題であり、復旧・復興へ向けて早急に進められるように、東日本大震災時の経験を蓄積し共有化しておくべきものです。
また、より一般的な問題としても、この「非常時の経験」が活かされ、対応していけるようにしていかなければならないことでもあります。
そのような取り組みが十分に行われているのか、というとやはり弱さがあると思わざるを得ないところがあるので、それへの反省を含めて、課題に向き合っていくことの重要性をあらためて認識される研究会でした。