夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『夜のとばりの物語』

2012年07月03日 | 映画(や行)
『夜のとばりの物語』(原題:Les Contes de la Nuit)
監督:ミッシェル・オスロ

メンバーズカードも存在せず、特に割引もない梅田ブルク7は、
お得感がなくて、いままで行ったことがありませんでした。
しかし、本作は上映劇場がごく限られていて、大阪ではここだけ。
ほなら行ってみよかということで。

『キリクと魔女』(1998)、『アズールとアスマール』(2006)の監督による、
フランスの影絵アニメーションです。
字幕版(2D)と吹替版(3D)があり、吹替版ならば西島秀俊の声が聞けるとあって、
日頃は吹替より字幕派の私も吹替版を観たかったのですが、
時間がどうしても合わなくて断念、字幕版に。

夜のとばりが下りる頃、愛はその深さを試される。
そんな惹き文句の、光と影と魔法のような色彩で紡ぐ6つの愛の物語。
古い映画館で芝居の案を練る少年少女と、年輩とおぼしき映写技師。
この3人の案を映像化するという形で話は進められます。

1本目は『狼男』。
同じ男を愛した姉妹だったが、男は結婚相手に姉を選ぶ。
ところが男には満月の夜には狼男に変身するという秘密が。
あっさり男を見捨てる姉と、それでも男を愛する妹。

2本目は『ティ・ジャンと瓜ふたつ姫』。
死者の国へと紛れ込んだ男は、美しい“瓜ふたつ姫”の噂を聞く。
彼女はこの国を支配する王の娘。
途中の障壁を乗り越えて王のもとへたどり着ければ、
姫を娶ることが許されるらしく、チャレンジする。

3本目は『黄金の都と選ばれし者』。
何もかもが黄金でできた都では、その守り神と崇められている怪物に、
毎年美女を捧げて食わせるのが慣わし。
偶然そこを訪れた少年は、怪物に立ち向かう。

4本目は『タムタム少年』。
太鼓を叩くのが大好きな少年は、うるさいと村を追い出される。
困っていた老人を太鼓の力で助けたところ、
その老人から魔法の太鼓を授かり、叩き方も伝授される。

5本目は『嘘をつかなかった若者』。
世にも珍しい、人間の言葉を話す馬。
馬の世話をする若者は、決して嘘をつかない人柄ゆえ、王から絶大な信頼を得ている。
それを聞いた隣国の王が、若者に嘘をつかせてみせると言う。

6本目は『鹿になった娘と建築家の息子』。
愛する女が別の相手と無理やり結婚させられることになり、
結婚式の途中に彼女を奪い去って逃げた男。
しかし、女は結婚するはずだった相手に呪いをかけられ、別の姿に変えられてしまう。
その呪いを解くべく、男は妖精の住む場所へと向かう。

幼少時代をアフリカで過ごした監督であるがゆえ、
いわゆるフランス作品のイメージとはかなりちがいます。
太鼓の音色、弓矢を携えて戦う人々、不思議な動物たち。
その映像は圧倒的な美しさで、思わず息を呑むほど。
沼に浮かぶ月、オレンジやピンクに染まる空、森の木立ち、素晴らしいです。

それぞれの話が10分程度で、上手くまとめられています。
えっ、そんなオチかい!とツッコミたくなる話もありますが、
それはそれで可笑しくてクスッ。
特に2本目は、蜂、マングース、イグアナが助けてくれたのに、
いともあっさり……が小気味よく。

いずれにもきっちり教訓があります。
説教臭さをまったく感じさせないのもいいところ。
これは吹替版のほうも観てみたい、聞いてみたいですね。

恋の力は妖精の力にも勝る。

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