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『モンゴル野球青春記 バクシャー』

2013年10月14日 | 映画(ま行)
『モンゴル野球青春記 バクシャー』
監督:武正晴
出演:石田卓也,ベヘーオチル・ジャルガルサイハン,サンジャー・ウルジフー,
   ミャグマルジャブ・ムンフチメグ,水澤紳吾,前野朋哉,水野雄仁他

6月半ばからあちこちで公開、大阪では10月に入ってから第七藝術劇場にて。
仕事帰りに十三まで観に行くにはエイッと気合いを入れなきゃならんのですが、
石田くんはかなり好きだし、野球の映画はどうしても外せませんし。

1990年代にモンゴルへの野球支援をおこなった徳島県阿南市。
そんな阿南市の全面協力を得て製作された作品で、実話に基づく

甲子園に出場できるような名門校ではなかったものの、
高校時代は野球に明け暮れた関根淳(まこと)。
敗戦試合のラストバッターという苦い経験を持つ彼は、
その後バックパッカー生活を送っていたが、
あるとき友人からモンゴルへの留学の話を聞かされる。

1995年のモンゴルは社会主義崩壊直後。
そのモンゴルに数年後、日本の援助により野球場が完成する予定だという。
学費などの心配することなくモンゴルへ行けて、好きな野球ができる。
県軟式野球連盟会長の近藤の誘いに淳は二つ返事で承諾。すぐにモンゴル入り。

ところが、モンゴルでは野球はあまりにマイナーなスポーツ。
バットを持って歩けば武器を携帯した危険な奴だと警官に追い回される。
監督は元ボクシング選手、コーチを務めるその妻は元バレーボール選手。
まともに野球ができる施設はなく、練習場所はなんと体育館。
また、毎日まじめに練習している選手は貧乏で、
お金がかかる試合には金持ちしか参加することができない。

「急に来る奴は嫌いだ。野球も、お前も、民主主義も」と言う監督は、
はなから淳のことを見下した態度で、取りつく島もない。
日本語を話せる選手オトゴのおかげでなんとか練習に参加できることにはなったが、
あらゆる面で理想とはほど遠い現実に淳は苦悩し……。

同大学の学生で近くの食堂で働く女性ソロンゴとの出会いなど、
わりとベタな感じで話は進められますが、
真摯につくられた野球映画で、胸が熱くなるシーンがいっぱいあります。

エラそうな監督が酔いつぶれている間に、監督の妻が淳に話すあれこれ。
彼らにとって、野球は新しい風の象徴に思えたのだと。
お金のある人しか外国へは行けないから、
少しでも多くの人が野球によって外国へ行けたらいい。
子どもがやらない競技には未来はないと、淳と共に語り合います。

有料で開催される少年野球教室に、お金を払える家庭の子どもはやってきますが、
町にはマンホール内で生活する子どもたちも。
「いつか弟に野球を教えてやってくれ」というまだ自分だって幼い子どもの姿に、
涙せずにはいられません。

回ってきたお金をすべて自分の懐に入れるモンゴル野球連盟の会長は
どこまでも憎々しく、一発殴ってやりたいと思うほど。
はらわたが煮えくりかえりそうなシーンもひとつやふたつじゃありません。

万事が上手くは行きませんが、監督のひと言に最後は泣かされ、
スポーツの力を強く感じます。
だけど、ヘッドスライディングは福本さんに怒られるよ。(^^;

キャッチボールは、相手を思いやる練習。

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