夜な夜なシネマ

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『チョコレートドーナツ』

2014年05月16日 | 映画(た行)
『チョコレートドーナツ』(原題:Any Day Now)
監督:トラヴィス・ファイン
出演:アラン・カミング,ギャレット・ディラハント,アイザック・レイヴァ,
   フランシス・フィッシャー,クリス・マルケイ,ドン・フランクリン他

このところ、日曜日は眠たい目をこすりながら早起きして映画を2本ハシゴ、
15時ぐらいには帰宅して晩ごはんをつくり(わが家の日曜日の晩ごはんは16時)、
レンタルDVDを2本観るという生活が定番化しています。
そんなわけで、この日も前述の『WOOD JOB!(ウッジョブ) 神去なあなあ日常』とハシゴ。

1979年のアメリカ。
ゲイであることをとっくにカミングアウトしているルディは、
ゲイバーのショーダンサーとして生活費を稼いでいる。
素晴らしい歌唱力を持ちながら、ゲイバーで必要とされるのは女装と口パクで、
いつか歌手になりたいと思うものの、デモテープをつくる金がない。

そのゲイバーに客として訪れたのが、地方検事局に勤務するポール。
彼はゲイであることをひた隠しにして生きてきたが、
舞台上のルディから視線を送られて、ポールはたちまち恋に落ちる。

一方でルディは自宅アパートの隣室に住むダウン症の少年マルコのことを気にかけていた。
マルコの母親マリアンナは薬物依存症で、育児というものをまともにしていない。
ちょうどポールと出会った翌朝、マリアンナが薬物所持で逮捕され、
マルコが施設に送られることを知ったルディは、ポールにアドバイスを求める。

どこからどう見てもゲイのルディに職場に来られては困るポールは、
ルディが電話をかけても秘書に電話を繋がないように指示。
怒るルディにどう詫びていいやらわからないポールだったが、
マルコを引き取って3人で一緒に暮らそうと提案する。

マリアンヌの承諾を得て、法的な問題をクリアしたかに思えたが、
ゲイであるがゆえの偏見と差別に充ち満ちた社会ではそうは行かず……。

『バーレスク』(2010)以来ひさびさに見た気がするアラン・カミング。
バイセクシュアルを公言している彼、やはり素晴らしい演技力。
シリアスな内容のなかにも笑いをもたらせてくれるのも彼ならでは。
「あの人、自覚してないけど、私にゾッコンなの」などと
ポールについてマルコに話すシーンではふきだしてしまいました。

差別が渦巻くなか、偏見抜きで2人を見つめようとする人も何人かいます。
2人がマルコをかよわせる特別学校の可愛らしい女性教師は、
マルコにとって2人は実に愛情深い親であり、
2人と一緒に暮らしていることがいかにマルコに良い影響を与えているかを証言。
また、2人がマルコを引き取ることを最初疑問視していた役所の女性職員も、
2人とマルコ双方の話を聞いたうえで、2人は引受人として何ら問題なしと断言。
厄介な話は断るつもりだった黒人弁護士も、2人の審理に臨みます。

それでも、ゲイが子どもを引き取ることを絶対に認めない人のほうが多い。
ラリって男を部屋に連れ込み、子どもを廊下へ追い出す母親には子どもを育てることを認めるのに。
マルコのこれからについて話したいのに、いつのまにか焦点はゲイの話。
そんなことがいま問題ではないでしょうとポールが叫ぶシーンでは
劇場のあちこちからすすり泣きの声。

とりつくろった審理がもたらす結末。
悲劇を直接描くことなく、抑えて伝えられるのが余計に悲しい。

邦題はマルコの好物にちなんでつけられたものですが、
原題の“Any Day Now”は「今すぐにでも」の意。
ルディが熱唱する歌の歌詞に出てきます。
「もうすぐ 今日にでも 私は解き放たれる 必ず解き放たれる」。
そんな日が来ることを信じて。

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