夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『その夜の侍』

2012年11月25日 | 映画(さ行)
『その夜の侍』
監督:赤堀雅秋
出演:堺雅人,山田孝之,綾野剛,高橋努,山田キヌヲ,坂井真紀,
   谷村美月,安藤サクラ,田口トモロヲ,新井浩文,でんでん他

前述の『ねらわれた学園』とハシゴ。こちらは梅田ブルク7にて。
大阪駅近辺の駐車場はどこも高いので、
両者をハシゴするために決めた福島駅近くの駐車場からぷらぷら歩いて。
いつも最大料金設定のあるタイムズばかり調べて駐めていたら、
先月末にタイムズから「あなたはプレミアム会員です」との連絡が。
そのプレミアム会員とやらは今月から設置されたそうで。
こうしてますますタイムズにしか駐車しなくなるのでした。

本作はもともとは舞台劇とのこと。
劇団“THE SHAMPOO HAT”の旗揚げメンバーで、
同劇団では劇作に脚本、演出まで務めるほか、
俳優として『モテキ』(2011)など多数の映画やTV番組にも出演する赤堀雅秋が、
自身のヒット舞台を自らメガホンを取って映画化した作品です。
堺雅人主演とあらば、『鍵泥棒のメソッド』の余韻もあり、
早く観たくて駆けつけましたが、びっくりするほど評価が割れていますね。

小さな町工場を営む中村健一は、妻の久子を事故で失う。
買い物の帰りにひき逃げにあった久子。
犯人はろくでなしの木島宏という男で、
同乗していた小林英明が良心の呵責に耐えかねて自首したために御用となったが、
数年の懲役刑を受けただけで、服役を終えて出所。

あの事故から5年経ったいまも、骨壺は目の前のちゃぶ台の上に置いたまま。
宏を殺して自分も死ぬと心に決め、健一は毎日を過ごしている。
復讐決行日までをカウントダウンする脅迫状が宏のもとへ届くようになり、
匿名ではあるが、健一の仕業にちがいないと宏は考える。

久子の兄である青木順一は、宏から健一をなんとかしろと脅される。
順一だって遺族のうちの一人なのに、宏は気にもかけない。
なんとかしなければ警察へ連絡するぞ、金を持って来いと言うばかり。
健一の幸せを願う順一は、穏便に済ませてくれと宏に頼み、
一方で健一には再婚も考えるべきだと同僚の川村幸子を紹介する。
しかし、当の健一は復讐以外のことは何も考えられない様子で……。

来る日も来る日も健一が聞く、久子が残した最後の留守電メッセージ。
『さよなら。いつかわかること』(2007)では亡き妻の応答メッセージを
主人公が何度も外から電話をかけて聞いていましたが、
故人が唯一残した声をただただくり返し聞くシーンは本当に切ない。
冒頭では健一が久子のことを愛していたのかどうかすらわかりませんでしたが、
このシーンを見れば、いかに大事な人だったのかが伝わってきます。

堺雅人を食っていると言っても過言ではないのが、宏役の山田孝之。
このろくでなしのアンポンタンさは凄まじい。
おそらく彼も『悪の教典』のハスミンと同じく、共感能力が欠落していますが、
ハスミンよりは人間的な部分も見えるがゆえ、余計にムカつきます。

宏に言われるがままになってしまう同僚(田口トモロヲ)やネエちゃん(谷村美月)。
一人でいるのは寂しいからというだけでは無理があり、
この辺りはちょっと舞台的だなという気はしますが、
英明(綾野剛)や順一(新井浩文)、幸子(山田キヌヲ)の人間味には深いものが。

健一がどう決着をつけるのか、それはぜひともご覧ください。

平凡でありたいだけなんだと叫ぶ英明に対して、順一が言ったこと。
平凡とは、全力で築き上げるものだ。

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