実務家弁護士の法解釈のギモン

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会社の破産と取締役の地位(6)

2009-11-24 12:43:01 | 会社法
 そもそも,同時廃止の場合になぜ,定款の定めに基づき,または株主総会もしくは裁判所が清算人を選任するかというと,破産手続開始決定時までの取締役が会社法478条1項1号によりそのまま清算人となることが出来ないという結論が先にあるはずだからであり,その根拠は,破産手続開始決定が委任終了原因となっているからだったのではなかったのか。
 結局,問題は,会社の破産手続開始決定が委任終了原因として取締役の地位も失うのか否かにすべてがかかっているはずなのであり,最新判例で失わないとした以上は,現行会社法478条1項1号によって従前取締役がそのまま清算人となることもできてしかるべきであるように思うのである。
 そして,破産手続開始決定によって取締役が財産管理処分権を失うという根拠は,以前のブログでも述べたが,破産法47条及び同法78条1項により,会社自身が会社財産の管理処分権を失って破産管財人に専属することによる効果だとしかいいようがないのである。つまり,法人破産の場合でも,当該法人自身が自己の財産に対する管理処分権を失う結果,その法人の代表者も法人財産を管理処分することが出来なくなるのであるとしかいいようがない。どういうことかというと,代表者の代表権限には破産手続開始決定そのものにより(清算人という地位に変化する可能性があるほかは)いささかもその権限が縮小するものではなく,あいかわらず当該法人がなし得ることは全て(代表)取締役が包括的に代表することが出来ると思われるのである。財産管理処分権は,当該法人そのものがなしえないことだから,その代表者も代表権を行使できないというに過ぎない。以前のブログでも,そのような趣旨で述べたつもりであった。

 以上のとおりなので,最新判例は,明示的に判例変更とはいっていないものの,会社の破産により取締役はその地位を失うとする昭和43年3月15日判例とは,その趣旨は矛盾するのであり,実質的な判例変更といわざるを得ないと思うし,そうであれば,同時廃止の場合も,異時廃止の場合も,残余財産があって清算の必要性があるのであれば,従前の取締役がそのまま清算人になることが出来るというべきであり,それが現在の最新判例と整合的なのではないだろうか。
 そして,仮に破産手続開始決定時に株主総会決議取消訴訟が係属中で,従前の会社代表者がそのままその訴訟の会社の代表者として訴訟手続を行う必要があるとすれば,その地位を(代表)取締役というか(代表)清算人というかは,極端には言葉の問題のような気もする。以前のブログでは,(代表)清算人と思っていたが,後述する会社法の規定からすると,(代表)取締役の方が座りがよいのであろうか(ただし,解散した会社の代表者に(代表)取締役という表現を使うことも,個人的にはいささか抵抗はあるのだが。)。

 なお,現行会社法475条1号では,清算をしなければならない場合として,解散した場合を掲げているが,その括弧書において,合併により解散する場合と破産手続開始決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く,と規定している。この括弧書は,旧法とは若干表現が変化している。前掲の各文献の指摘で,このことに気づいた。
 この規定からすると,会社法そのものも破産手続が終了した場合は清算手続を行う必要性がある場合を想定しているとも読める。もしそうだとすると,会社法上も破産手続が終了した後は,他の解散の場合と同様の清算手続を行うことを想定しているとも理解でき,かつ,清算人の選任につき破産手続が終了した場合について特別の定めをしていない以上,破産手続終了後の清算の場合であっても(極端には,同時廃止,異時廃止の場合に限らず,配当終了による破産手続終結決定の場合であっても,破産管財人が放棄した財産があれば,会社は当該財産に関して清算手続を行う必要が出てきそうである。),会社法478条1項が全面的に適用できる(従って,同条1号の適用もある)とも理解でき,判例が破産手続開始決定により従前取締役がその地位を失わないとする以上,従前取締役がそのまま清算人となりうるといえそうであるが,いかがであろうか。

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