実務家弁護士の法解釈のギモン

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再度の取得時効の完成と抵当権の消長(3)

2017-08-08 09:31:42 | 民法総則
 二重譲渡に関する過去の判例の事案で考えれば、登記を備えた第二譲受人であるCは第一譲受人Bに対して不動産の明け渡しを求める訴訟を提起すれば、それが「裁判上の請求」としての時効中断事由になる。そのために再度の取得時効を認めても、バランス上は何の問題もないといえる。

 では、抵当権の事案ではどうか。考えるまでもなく、不動産を譲り受けたBは元所有者Aから適法に不動産の譲渡を受け、占有している以上、A名義のその不動産に適法に第三者Cが抵当権を設定したとしても、Cには土地引渡請求権はなく、Bの占有権原が奪われることはない以上、抵当権者CがBに対して明け渡しを求めることなどできるはずがない。
 つまり、抵当権の事案では、「請求」としての時効中断措置が考えにくいのである。

 一つの方法としては、抵当権が実行されれば、買受人からの明け渡し請求が可能なので、その時点で時効が中断される。しかし、抵当権はいつでも実行できるわけではなく、あくまでも被担保債権が債務不履行に陥っていることが、抵当権実行の当然の前提である。そうすると、この手段は常にとれるわけではない。